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環境問題が叫ばれるなか、石油に代わる代替エネルギーで注目されているエタノール。その主要原料でもある「トウモロコシ」の価格について注目したいと思います。
このグラフをご覧いただければ分かりますが、
昨年の9月から、時々ファンドの利食いによる下落はありますが、
傾向としては一貫した上昇基調にあります。
では、この先はどうなるでしょうか?
これまで価格が上昇している理由も含め、予測していきたいと思います。
ところで、トウモロコシの主な供給元ですが、それはアメリカです。
世界の4割弱を生産し、世界の輸出量の7割弱を供給しています。
中国は2割を生産しています
「輸入は?」というと日本が2割強で最大となっています。
そこで、疑問が出ると思います。
トウモロコシは一体何に使用されるのでしょうか?
すぐ頭に浮かぶのは、
普通に家庭やお店で食べるトウモロコシだと思います。
しかし、実は主なものは家畜の「飼料」なのです。
そのため、最近まで中国が、東南アジア向けのとうもろこし輸出国でしたが、
肉類の国内消費量が増え、家畜の餌需要が増加したため、
中国の輸出が急激に減少しています。
そしてもうひとつ、最近トウモロコシが注目されている理由は、
トウモロコシがエタノールの主要原料になっているからです。
そのエタノールですが、
アメリカでエネルギー政策法(2005)ができ、
ブッシュ大統領は今年の年頭教書で
2010年にはガソリンの2割をエタノールに変える政策を打ち出しました。
そのために、エタノール生産やガソリンスタンドの改修費用等に対する
優遇税制・補助金の措置を作りました。
それでは
なぜ、これまでトウモロコシの価格が上がったのでしょう?
とうもろこしの価格が上昇してきた理由の主な要因は二つあります。一つは天候要因、もう一つは需給要因です。
天候要因としては、
昨年9月から今年の3月までのエルニーニョ現象、
そして、4月から始まり秋まで続きそうなラニーニャ現象があります。
通常、赤道付近の太平洋上では、インドネシア側の海面温度が上がるため、太平洋の西側で上昇気流が発生し、雨が降ります。
しかし、昨年から今年にかけては
太平洋の東側の海面水温が上昇し西側は低温となりました。
これがエルニーニョ現象というものです。
そのため、昨年の秋以降オーストラリアで大干ばつが発生し、
小麦の生産が6割減となりました。
この現象により、
家畜の餌である配合飼料としての小麦が不足し、
その代替飼料にトウモロコシの需要が出るため、
トウモロコシの価格が高騰しました。
つまり、配合飼料メーカーによるトウモロコシの奪い合いが
起こったわけです。
そして現在ですが、エルニーニョ現象から
ラニーニャ現象に変わってきています。
ラニーニャ現象とは、エルニーニョの反対で、
太平洋の東側が、例年より極端に海面水温が上がり熱くなるのに対し、
南米沖の海面温度が例年より冷たくなる現象を言います。
この現象は世界的に気象の変動を起こし、
米国のコーンベルトでは干ばつになることが多いのです。
既にウクライナや中国遼寧省では大干ばつが発生しています。
トウモロコシの受粉には、適度の雨量が必要です。
受粉する7月初旬の米国中西部の天候が、高温乾燥(HOT&DRY)になると、メシベが乾燥して受粉できません。
そして、その時期は、まさにこれからです。
現在、ラニーニャ現象も始まっています。さらに、
もし、とうもろこしの受粉時期に当る
6月末から7月前半にかけて(大豆は7月末から8月初旬)
米国中西部の天候が高温乾燥になれば、相場は更に高騰するでしょう。
また、もうひとつのトウモロコシ価格が上がった理由に、
今年から「エタノール向け」という大きな需要が出てきたことがあります。
この需要により、米国から海外への輸出も好調です。
アメリカでは、エタノール製造工場の数が
昨年から急速に増加してきており、
エタノール向けのとうもろこしの注文が増えることが予測できます。
毎月定期的に米国のUSDA(米国農務省)は
穀物の需給予測のレポートを発行していますが、それによると、
2ヵ月後の2007年8月末の期末在庫は4週間分足らずだと言っています。
以上から、エタノールの需要が拡大し、
そこにラニーニャ現象による干ばつが米国を襲うと、
とうもろこし価格は更に急騰するでしょう。
ただし、ファンドが既に大量に買い越しており、
時々利食いするときに価格は下がります。
また、米国政府を初めとして中国や日本など世界中で
とうもろこしやサトウキビに代わるエタノール供給源を研究しています。
これらの開発の成果が発表されるのは時間の問題なので、
とうもろこし価格も「いつまでも上がる」というわけではありません。
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ビジネス・ブレークスルー大学院大学 株式・資産形成講座講師
株式会社フィスコ コモディティー代表取締役社長
近藤 雅世
6月8日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです |
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ブレークスルー経済学 vol.2 |
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。 |
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第2回 『輸出競争力と為替レート』
今回は輸出競争力と為替レートの話をします。
「モノ」を作る場合、原材料や人件費などが低ければ低いほど、また、生産工程の改善やイノベーション等により生産効率が高くなれば高くなるほど、低いコストで作れます。低コストで作ることができれば、同じものを販売する場合でも、競争が有利(つまり、「競争力がある」ということ)になります。
したがって、世界で競争をするような輸出産業は、競争力をつけるべく、世界市場を意識して「人件費などを引き下げ」「生産効率をぎりぎりまで引き上げる」ことにより「できるだけ低い価格」=「世界市場で競争可能な価格(「貿易財の価格」)」を実現させています。
この「貿易財の価格」こそ「為替レート」に直接関係する物価です。
しかし、国内には「国内でしか競争をしない産業(サービス業など)」も多くあり、このような国内向け産業の場合、その価格は国際競争に晒されていないため、輸出産業に比べて「高い価格水準」になっていることがよくあります。
また、「国内の物価」という場合、この「貿易財の価格」と「国内向け産業の価格」とを加重平均して求めます。そのため、「国内向け産業の価格」の水準に大きな変化がなくても、「貿易財の価格」が何らかの理由により「低く」なれば(つまり、人件費等が低いか、生産効率が高い場合)、それに基づいて為替レートが決定されるので、その国の通貨価値は高くなる方向に為替レートがシフトします(但し、ここでは賃金等の変化や労働移動については考慮していません)。
例えば、日本のように「優秀な製造業」がより一層「生産効率」を高めていけば、国内のサービス業等の生産性が同じであっても(つまり、国内向け産業の価格に大きな変化がなくても)、円高になっていく可能性のあるのです。
以上から、「製造業の競争力が高まる」ことにより「貿易財の競争力が高まる」と国内向け産業の物価に変動がなくても、その国の通貨価値は上昇する方向に為替レートがシフトすることになります。
他方、中国などの場合には、先進国よりも人件費や材料費が低価格で調達できるため、輸出価格を低く抑えることが可能です。それゆえ、中国は相対的に競争力が高い状態にあるので、本来、人民元はもっと高い水準になっていてもいいはずです。
ところが、中国では緩やかな固定相場制を維持している(いわゆる「管理変動相場制」という制度で、米ドルとの換算レートを中国金融当局が「ある程度の自由度」を持って規制している)ので、本来の人民元の価値は現時点の水準から乖離している可能性があります。
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前田拓生(Takuo Maeda)
ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
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グローバルマネー・ジャーナル第5号、いかがでしたでしょうか。
スティール・パートナーズのTOBを争点としたブルドックソースの
株主総会、見事にブルドック側に軍配が上がりましたね。
目先の利益より安定成長を応援する、そうした株主の判断が
はっきりと示されたというわけです。
私が運営している株式・資産形成講座の講師が、
以前こんなことを言っていました。
「本当に応援したいと思える企業は、そう多くは無い。
だからそうした企業が見つかったなら、ぜひ投資して欲しい。
自分が心から応援する企業なら、仮に株価が大きく下落したと
しても、損切りせず持ち続けることができる。
そして、良いものを社会に提供する企業は、やがて成長し、
株価も上昇する。」
私はこの言葉に、とても共感しました。
皆さんはいかがですか?
来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!
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