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イギリス野党保守党は17日、相続税の廃止や法人減税など大幅な減税策を打ち出しました
。6月末に発足したブラウン政権も、法人税と所得税の減税を打ちしており、早ければ年内
にも予想される次期総選挙は、与野党が減税の規模を争う展開になりそうです。
この16年間、イギリスというのは景気拡大で、インフレ気味のところもありますが、全体として非常に調子がいいのです。
そこで、この法人減税なのですが、ポンドが非常に高くなっているので、ここで減税することによって「さらに消費を拡大してもらおう」という意図があります。
それを顕著に表すグラフがあります。
日本の場合には法人税を【52%】から【40%】にして威張っていますが、ヨーロッパをみてみると、どこも【25%】に向けて下がってきています。
現にドイツも【25%】まで下げると言っていますし、今回のイギリスの提案もまさに「来年25%に引き下げる」というものです。
次に平均法人税の推移をみてみましょう。
ご覧の通り、日本は圧倒的に法人税が高いのです。
OECDの平均は【27%】に対して、EUの平均は【24%】です。
この数字からも、EU経済の調子がいい理由が、ここに関係しているのがわかると思います。
レーガン元大統領がやった政策と同じなのですが、「税金を低くして、みんなにお金を持た
せて、さらに消費を活発にする」、これが経済に良い影響を与えているわけです。
ヨーロッパの国々というのは、まさにそれを実行しているのです。
ところが、我が日本に目を向けてみると、依然として国策政策で「税金を取って、みんなが
萎縮して、残っている手元のお金がないから使う人がいない」という悲しい状況です。
そこで消費が期待される高額所得者の場合は、実質税率というのが【55%】(限界税率40%
と住民税が15%で計算)ですから、手元に残るのは【45%】しかありません。
稼いだお金の半分以上取られている状況では、消費しにくいことは明らかです。
ですので、これからの日本は今までしてきたことの反対をしなくてはいけないのです。しか
し、政府税調とか役人というは、なかなかそういうような発想ができません。
そして、イギリスはもう一つ非常におもしろいことをやろうとしています。
それは来年に「相続税の廃止」をしようとしていることです。
アングロサクソン系のところは、元々相続税というのはあんまり高くありませんが、イギリスは来
年あたりから相続税を廃止しようとしています。
「他の国は?」というと、オーストラリアではもう"0"にしていますし、アメリカは2010
年に相続税を"0"にする予定です。
そこでも世界に標準に対して極端に違う方向に走っているのが日本です。
日本という国は、相続税を【60%】(額にもよる)というもの凄く高い税金を取っています
。そういう意味では、法人税、所得税、相続税という、この3つの税金をとにかく下げない
と日本の場合には消費するためのお金が手元に残らないわけです。
私が考える日本の政策としては、まず、アングロサクソン系のように相続税を"0"にして
、資産に対して資産課税という形で課税をしていきます。
具体的には、金融資産と固定資産の時価に対して「1%」かけていくというようなことをす
れば、相続の有無に関わらず平等に課税していけます。
たとえば、息子に資産を継いだ場合にまったく相続税を取らなくても継いだ息子が「1%」
払ってくれますから、国としては問題ないわけです。
嫌だったら売ってしまえばいいのですから、これこそがフェアだと思います。
日本も相続に対して、変な対策ばかりするのではなく、資産課税にすればいいのです。
このように世界と対比させると、この日本に起こっている状況もよく見えてきます。
とくに税の変化に関しては、アングロサクソン系の国をウォッチしていく必要があるのでは
ないかなと思っています。
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ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一
8月19日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。 |
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ブレークスルー経済学 |
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。 |
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第11回 『為替レート(短期)の予想』
人々は、「ある事象」が起こった時にその事象によって「今後、どのように経済指標(金利や景気動向など)が変化するか」を考え、その考えに基づいて「資金を移動させる」ので、それに伴って「為替レートは変化する」ことになります。
つまり、為替レートの変動は「現時点の経済指数」ではなく、「将来予想される経済指数によって変化をする」ということになります。
ここでは「物価水準の変化が起こらない期間=短期」と考え、短期の為替レートにおける変動要因を考えてみましょう。
以下は、経済学の常識に基づいて、通貨価値が低下する(つまり、日本サイドに立って「円安」になる)メカニズムを書きました。(注意ですが、自国通貨価値が低下する場合には、「e↑」と表記します(逆は逆です))。
自国の金利の低下(i↓→e↑)
自国の国民所得の減少(Y↓→e↑)
相手国(または相手国通貨)のリスク度の低下(rp↓→e↑)
自国の経常収支の赤字化(NX↓→e↑)
このような関係は、「短期」ということなので「物価水準の変化が起こらない期間」ではありますが、「予想」ということであれば、現時点では「物価水準の変化はない」ものの、将来時点では「変化が予想される」ということも考えられます。
つまり、「短期」ということであっても、ある事情によって「将来物価が変化するだろう」という予想が存在する場合には、為替レートは当然変動することになります。
この点を考慮しないと「短期の為替レート」であっても「判断を誤る」ことになります。
では、「物価」についての為替レートへの影響を考えてみましょう。
但し、労働生産性などを考えなければ、「今後、自国の物価が高騰する」という意味は、「おカネの量」との関係だけでいって「今後、自国のおカネの量が増加する」ということなのであり、「今後、自国の貨幣価値は低下する」というを別の言い方でいったに過ぎないのです(逆は逆)。
したがって、上記の経済指標と為替レートとの関係に加え、以下の関係を追加することになります。
自国の予想物価上昇率が上昇(π↑→e↑)
つまり、「予想物価上昇率が上昇(π↑)」すれば、「通貨価値が低下する(円安e↑)」ことになるのです。
このように短期の為替レートの場合、「金利」「景気動向」「地政学的リスク」「対外資産負債状況」「物価予想」が関係していることがわかります。つまり、一つの要因で為替レートが決定されているわけではなく、いくつかの要因が為替に影響するのであり、しかも、その影響度合いは時代や状況によって変わるため、一つだけの要因を捉えて「為替は今後こう動く」とはいえないことになります。
但し、「景気動向」や「対外資産負債の状況」「物価予想」のコンセンサスが急激に変更されることはあまりないので、当面の為替レートを予想する場合には、「金利」「地政学的リスク」に対する予想が大きく左右する時が多いといえます。
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前田拓生(Takuo Maeda)
ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
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グローバルマネー・ジャーナル第14号、いかがでしたでしょうか。
一昨日、SBIホールディングスが株式の夜間取引システムを
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夜間取引についてはこれまでにマネックス、カブコム等も
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夜間取引は、日中が多忙なビジネスマンの潜在的需要はもちろん、
通常の取引が終了する15時以降に発表される企業情報や
時差のある海外のニュースに即時反応できるメリットもあります。
普及の鍵は機能面、価格面といった、より一層のサービスレベル
向上にあるのかも知れません。
来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!
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