サブプライム問題の初期反応は「ドル買い」!?|株式・資産形成講座メルマガ

  2007/09/05(水)  
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サブプライム問題の初期反応は「ドル買い」!?

サブプライム・ショックの顛末と、為替市場の意外な反応とは?

このグラフは、1年後の米国の政策金利を市場がどう織り込んできているか、というのを表しています。


一回当たりの利下げを-25bp(0.25%)として、過去1年に0~1回から3~4回の利下げの間を行ったり来たりしています。しかし、マーケットの金利予想が上下動しているほど、実際には、米国の経済そのものが、変化しているわけではありません。

「実際には?」というと緩やかに鈍化してきたという程度で推移してきました。

実はこうした市場の予想の振れは、経済の変化を受けた反応というより、自分自身の「ポジション」の反映であることが多いのです。

例えば、何かのきっかけで売る人が増え、相場が下がったとしましょう。皆が「何で相場が下がったの?」という視点で材料を探せば、売り材料がクローズアップされ、それがさらに売りを促します。

しかし、経済の変化は実際に緩慢であれば積み上がった売りポジションを正当化する材料が、それほど出てこないことにいずれ気づかされます。そして今度は、その買い戻しが起こります。

それで相場が上がると、今度は買い材料がクローズアップされ、買いポジションの積み上がりとともに、市場の強気も嵩じていきます。

だから、実態経済がそんなに変わらなくてもポジションと相場の流れに好都合な材料がクローズアップされて、マーケットの景気や金利見通しは上記グラフのように大きく振れてしまうのです。

7月に一旦米国経済は堅調で「利下げはない」とばかりに、米国に対する強気ポジションが積み上がりました。それが巻き戻される調整相場の中で、サブプライム問題という材料が殊更にクローズアップされ、FRBは「1年後までに4回の利下げ(5.25%から4.25%まで)をする」と市場が織り込むまでになりました。

しかし、これも相場の動きやポジション状況の反映で誇張されている面があり、米国経済の数字はまだそこまで悪化してはいません。本当に経済が悪化すれば、グラフは-200bp、すなわち2%の利下げで3.25%になっても違和感はないでしょう。

ただ、今もなおそこまで悪くなるデータは確認されていません。結果的には-50bp前後で行ったり来たりする程度に、今回のサブプライム・ショックは収束し、落ち着くのではないかと判断しています。

次のグラフをみてください。



ドル・ドル・スワップ・スプレッドといって、国債の金利と民間の金利の格差を表したグラフです。市場で信用不安が高まると、信用力の高い国債が好まれるようになり、信用力が低い民間の金利の方が高くなります。

ですから、その分だけ格差が広がります。グラフが、サブプライム・ショックでググッと右肩あがりになっているのはこの格差拡大を示しています。

さて、今回の金融ショックを受けて、為替市場で何が起こったか?

実は、ショックに対する初期反応は、リスクを回避するために、「既に保有しているポジションを削減する」ことです。


このグラフはドルの主要6通貨に対する平均指数です。ドルは基調的に下落してきましたが、意外なことに、サブプライム・ショックを受けて上昇しています。つまり買われているわけです。

円に対してはドルが売られたので、日本では【サブプライム=米国の問題=ドル売り】と、とくに違和感もなく認識されているでしょう。

しかし、実のところ、豪ドル、ニュージーランド・ドル、ポンド、ユーロ、アジア通貨などいろいろな通貨に対してドルは買われたのです。

なぜでしょう?

そのメカニズムは、リスク回避のためのポジション削減という行動にあります。今回のサブプライム・ショックが起こる前に、ドルは円やスイス・フランなどに対しては買われていました。これに対して、豪ドルやニュージーランド・ドル、ポンド、ユーロに対しては、ドル売りだったのです。

さて、今回の金融ショックを受けて、為替市場で何が起こったか?


これは、サブプライム問題で市場が動意付きはじめた7月25日の対ドル・レートを100としてそれぞれの主要通貨の動きを示しているグラフです。

市場の動揺が広がる中で、円やスイス・フランが買われているのに対して、ニュージーランド・ドル、豪ドルは大きく売られて、ポンド、ユーロ、アジア通貨、カナダドルはドル対して安くなっています。

サブプライムは米国を震源とする問題だから、「ドル売りか」と直感的には考えがちでしょうが、実は「既存のポジションの巻き戻し」の結果、全般的には「ドル高になった」というわけです。

もう一つこのグラフで気がつくことは、円が極端に高くなっている一方、日本人投資家が好んで買ってきたニュージーランド・ドル、豪ドル、ポンドの売られ方が大きいという点です。

つまり「豪ドル/円」とか「ニュージーランド・ドル/円」といったクロス・レートで見ると、円高はさらに極端に進んだことになります。米国を震源とするサブプライム・ショックですが、津波の余波は日本投資家に殊更に厳しく表れたことがこのグラフから理解されます。

しかし、長期的な趨勢の中で見れば、今回の為替市場の反応もあくまで調整の範囲にとどまっています。フォンダメンタルズへの影響は限定的であり、市場の混乱は徐々に収束し、落ち着いていくと判断しています。

講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学 株式・資産形成講座講師
ブックフィールドキャピタル株式会社取締役副社長
田中 泰輔

8月23日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第12回 『エコノミストによって予測が違う理由』

為替レートの変化は、おおよそ5つの経済指標の変化により、説明することができると一般に考えられています。つまり、単純化すれば「以下の式が成り立ち」ということになります(この式は、単に「それぞれの影響が積み重なって、為替レートの変化になる」といっているだけですから、あまり難しく考えないでいいですよ)。

為替レートの変化=α+β1×(金利差の変化)+β2×(国民所得差の変化)+β3×(相手国のリスク度の変化)+β4×(経常収支の変化)+β5×(予想物価上昇率差の変化)

ここで、α:ある定数、β1~β5はそれぞれの経済指数の変化における係数。

上記の式を詳しく解説することはしませんが、要するに「この式」では、例えば米国の状態に全く変化がない状態において、日本の経済指標の予想が変化した場合に「円/ドルレートがどのように変化するか」を知ることが出来ます(自国の指標を一定とした場合、「当該相手国の指標の変化」でもOKです)。

つまり、それぞれの経済指標が変化した場合、為替レートは理論的に、以下のように変化します(変化する経済指標以外は一定と仮定しています)。

・日本の金利が今後上昇するのであれば、円の価値は増価するので、為替レートは円高方向に動きます。

・日本の国民所得が増加する(景気が良くなる)のであれば、円の価値は増価するので、為替レートは円高方向に動きます。

・米国などの他の国のリスク度が高まる(相手国の地政学的リスク等が高まる)のであれば、円の価値は増価するので、為替レートは円高方向に動きます。

・日本の経常収支が黒字になるのであれば、円の価値は増価するので、為替レートは円高方向に動きます。

・日本の物価が今後低下するのであれば、円の価値は増価するので、為替レートは円高方向に動きます。

しかし、経済指標はそれぞれ単独で変化することは少なく、しかも、「予想値」となると、それぞれの経済指標が複雑に関係しているため、容易には判断できません。

例えば、①「景気が良い」、②「金利が高い」、これはともに「円高要因」です。しかし、景気が良い時には金利が高くなるので「経常収支は赤字化」することが知られています。この場合「対外純資産も減少方向になる」ことが考えられるとともに、「物価は上昇する」ことが予想されるので、このような「予想」が高まれば「円安要因」になります。

したがって、「どの要因が主因なのか」ということを、常に見極めないと、為替レートの方向性は読めないのです。

このように為替レートを予想する場合には、「現時点」において、それぞれの経済指標の変化が為替レートに与える影響を考慮して「どの経済指標の変化が注目されるのか」をしっかりと見極めることが必要になるのです。

一応、αやβ1~β5は、統計確率の理論により具体的に算出することは可能ですが、データの取り方如何で、その値は大きく変化するため、研究者によってまちまちです。

そのため、研究者やエコノミストそれぞれが違った予想を立てることになるのです。

しかし逆に、上記の解説を知っていると、為替レートを予測しているエコノミストが、「今、何を重視していて、何を重視していないのか」がわかるので、その予想の検証にも役立ちます。
講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
 
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第15号、いかがでしたでしょうか。

私はよく喫茶店に行くのですが、最近は喫茶店業界も値引競争から 付加価値競争に変わってきていることを感じます。

例えば、トラベルカフェ。

カフェと旅行代理店を併設することで、利用者はお茶をしながら 旅行の検討をしたり、詳細な説明を受けたり、申込をすることができます。

また、バンダイが手がける会員制カフェ、ロアシスでは、 会員になるための条件として8歳以下の子供の同伴を義務付けており、 親は子供が室内遊技場で遊ぶ姿を見ながらお茶を楽しむことができます。

先日オープンしたマックカフェも、家族連れが入店しやすい 内装やメニューを新たに考案、提供しており、 これまでの喫茶店には無いコンセプトという意味で付加価値と 言えるでしょう。

皆さんの周囲にも、こうした「変化の兆し」があると思います。

ぜひ、ふとしたことを敏感に感じられるよう意識してみてください、 きっとご自身の資産運用にも通じることがあると思います。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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