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設備投資・資金需要・GDPの直近の動きから、投資行動のポイントを探っていきます。
内閣府が9月11日に発表した7月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は1兆1235億円で、前月比で17%増えました。これは非常に大きな動きといえます。
では、この上下動の非常に激しいグラフの、一番右の部分に注目してください。
この17%増になる前の直近までは、かなり下に向かっていました。それが今では、設備投資の増加のおかげで急激に切り返し、大きく上に向かっている状況になりました。
この急激な「上げ・下げ」のところが、機械受注の一喜一憂させられるところで、17%も増えたということになると、それだけ「設備投資などが旺盛なのだ」と考えられると思います。
この増加は二か月ぶりなのですが、中身としては「どういうものが増加を支えたのか?」というと、やはり鉄道車両などの大型案件が上昇の要因なのです。
内閣府の基調判断という形でみると17%も増加はしているのですが、一部の影響によって大きく押し上げられているということで、政府としては、拡大基調という煽るようなことは言えませんので「一進一退」というところに収まっています。
ですから、「今、上がった」というだけではなくて、今後の8月・9月とみていった時に、さらに需要が増えていくかどうかがキーポイントになってきます。
これが、もし、その伸びが続いて増えていくようであれば、「ITバブル」と言われた2000年の上限の1兆2000億円弱のラインまで来るかどうかを見ていただき、その後のポイントは、それより以前の96年と90年の1兆3000億円のラインになってきます。
まずは1兆2000億くらいのところが指標になりますが、「これを抜いていく」というようなことがあると、景気の先行きも、設備投資も、旺盛で「需要を見込んでいる」ということになります。
ただ、勢いよく上向きになるのも問題で、行きすぎるとオーバーシュートになりますから、ここも気をつけたいところです。
続いての指標の推移ということで、通貨供給量(マネーサプライ)をみていきたいと思います。
日銀が10日発表した8月の通貨供給量は、代表的な指標である「M2+CD(現金、要求払い預金、譲渡性預金など)」が、前年同月比の1.8%増の723兆6000億円となりました。
血液である通貨供給量(M2+CD(黄色いライン))の直近状況を見ていただきたいのですが、これも少し上向きの増加基調だということがわかると思います。
全体としてみると小さな動きなのですが、その小さなところが気づいているか、いないかで、投資をする際の重要な「背中を押すポイント」になることから、小さくても「良い話」として覚えておいたほうがいいでしょう。
このグラフでは見づらいですが、4月までは1%前後の低い伸びでウロウロしていましたが、ここ最近では一気に上に向かい、2%に近づくところまできました。
ですから、伸びとしては「非常にいい伸び」といえるのですが、実は、前月と比べると伸び率は0.2%縮小しているのです。
ですから、長いトレンドでみた時にはかなり上向きなのですが、直近でみると「少し減速感もある」というような形となっています。
前述した通り、「あまりに勢いよく伸びてくる」とバブルに近づいてくる可能性もありますから、そういう意味では少し調整しながら、前年同月比でジワジワ上がっていくというのが良い傾向ではないでしょうか。
つまり、この通貨供給量でわかることは、資金のほうも少しずつ需要が増えてきているということだと思います。
この2つの指標を見てみると「日本の景気はそんなに悪くはないのではないか?」という気がしてきますが、GDPの指標を見てみると、今まで話したことを疑問に思うような数値になっています。
グラフの赤いラインが実質GDPの前期比伸び率です。
まん中の黒い線が「ゼロライン」なので、この線よりも上にある方がプラス成長ということになり「望ましい」わけです。
では、今回の第1四半期に注目をしてみましょう。
9月10日発表、2007年4-6月期の実質GDP(速報値ではなく改定値)を見たところ、前期比で0.3%減ということになっています。
それを、四半期ということで、単純に4倍して年率の換算でいうと「マイナス1.2%」になってしまいます。これは、3四半期ぶりのマイナス成長ということになります。
このグラフを見ていただくと、白いところと水色のところがあることに気がつくと思います。長い間マイナス成長が続いているところは、景気の後退期ということで、水色で表しています。
これまでも、薄氷を踏む思いで、乱高下をみてきましたが、ここ最近で一番激しい動きだったのは、2006年の第4四半期に当たるところです。それまでマイナスだったのが、急激に上に向かい、結果、大きく伸びてプラスを保ちました。
そして現在は、また大きく下げている局面で、直近の2004年の下げを通り越して、2003年のマイナスのところに近づいています。
過去の傾向として、過去マイナスだった最大値を下に抜いてしまうと、景気後退期に入ってしまい、水色の状態に入る気がしています。
それでは、判断材料としてはどうすればいいのでしょうか?
そのためには、前述している機械受注や通貨供給量、個人消費などのいろいろな指標が「どれだけ足元でしっかりしているか」がポイントになります。
その足元がしっかりしていれば、これらの指標などはあくまでも四半期ベースに直しているだけですので、実績が出てきて通期にならした時には、数値は全然違ってきます。
今回は、GDPの7割を占めている設備投資と個人消費が伸びていないものの、8月のニュースを見てみると、支出は少し伸びているという話ですから、このグラフについては、少し割り引いて考えた方が良いかもしれません。
そこで7月-9月については、「回復する兆しと、こういうGDP指標、直近の動きと実績を照らし合わせて、自分なりに判断する」ということが大事になると思います。
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楽天証券経済研究所
チーフストラテジスト
IFTA国際検定テクニカルアナリスト
福永 博之
10月2日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。 |
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ブレークスルー経済学 |
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。 |
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第18回 『アメリカ経済と為替レート』
アメリカの場合、[1]自国通貨(ドル)は「世界の基軸通貨」として「世界のおカネ」であること、[2]対外債務が多いことで知られていますが、実際には対外資産も多く、中南米などへの資金流出が非常に多額になっているということ、この2点が他の国と大きく違うところです(最近はユーロ圏についても資金流入・流出ともに多く、米国と同じような構造になりつつあります)。
以上の特徴を踏まえて、アメリカ経済をみていきます。
1998年の通貨危機で世界的に経済が混乱したものの、アメリカ経済はいち早くその混乱を抜け出しました。その後、一時的にITバブルを経験するものの、現在に至るまで力強い経済成長を続けています。
力強い経済成長は国民所得を向上させ「輸入」を増加させます(この時、金利は上昇することになります)。「輸入の増加」による経常(≒貿易)赤字は、アメリカ金利の上昇により他国からの資金流入を誘い、資本黒字によって賄われることになります。
ここまでは「通常の経済モデル分析」と同じです。したがって、「通常」は、資本黒字によって自国通貨(ドル)が増価し、輸出が減少することによって国民所得を減らす方向になるため、変化前の国民所得水準に戻るというシナリオが考えられます。
しかし、アメリカの場合には「自国通貨であるドル」が「世界通貨」であるため、「米国への資金流入」とは、すなわち「ドル紙幣の数の増加」を意味するだけであり、アメリカの国民にとって通貨価値の変動は大きな問題にならないと考えられます。
なぜなら、「米ドル=世界通貨」ということは、米ドルですべてのモノが決済できる、つまり「購入が可能」ということを意味するからです。
したがって、アメリカでは市場金利を高止まりさせたまま「数が増加したドル紙幣」を使って、輸入をしたり、他国の金融商品を購入したりすることになります。
ところが、ひとたび「アメリカが危ない」または「ドルが減価する」と予想されるときには、アメリカに向かって流れていた資金が一斉に「引き上げられる」可能性があります。そうなると、すぐさま「アメリカの対外負債が減少する」という事態を招くことになります。
この場合、必然的にアメリカは対外資産を減少させざるを得ないことになり、アメリカからの資金供与の多い、つまり、「米国のドルの傘」にある「中南米」や「アジア諸国」は、資金が引き上げられ、当該国の資金が枯渇するとともに、その国の通貨は暴落するなどの事態が想定されます。
このようにアメリカでは経常赤字になり、そのファイナンスのために金利が上昇し、資金流入から自国通貨(ドル)が増価しても、その増価した状態を維持しなければ世界経済に多大な影響を及ぼすことになるのです。そのため、常にアメリカは「金利上昇期待(または、高金利の維持)」を市場に印象付けることにより、「強いドルを演出する」ということが必要なのです。
けれども、現在、サブプライム問題によって、金融機関等の流動性に疑問が出てきたことから、その流動性を担保するため、各国中央銀行は大量に資金供給せざるを得ない状態になっています。
震源地である米国は、当然、各国以上に資金供給を強いられるため、金利低下を招いています。この金利低下およびサブプライム問題の震源地という事実によって、米ドルはユーロに対して安くなっているのです。
現在の状況が一過性であれば、問題はこれ以上大きくなることはありませんが、長期に及ぶことになると「米国のドルの傘」にある中南米などの経済に大きなダメージを与える可能性があるので、十分に注意しなければなりません。
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前田拓生(Takuo Maeda)
ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
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グローバルマネー・ジャーナル第21号、いかがでしたでしょうか。
先日実家に帰った時、両親と保険の話をしました。
私の父は「いざというときのために手厚い保険に入っている」
と言って、契約内容を見せてくれたのですが、私を養っていた
時ならともかく、どう見ても今は不要と思われる保障がいくつも
ぶら下がっていました。
日本人は「保険はとりあえず入っておくもの」という認識が強く、
また、一度加入した保険はまず見直しをしません。
保険がいざという時、強力なバックアップになることは確かですが、
適宜、自分の経済状況から「今必要な保障は何なのか」を考え直す
姿勢が必要だと思います。
来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!
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株式・資産形成講座
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