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EUのユーロ圏13ヶ国全てが、2007年に「安定成長協定違反」を解消する見込みとなりました。通貨ユーロの全導入国が3%基準を満たすのは2002年の流通開始以来はじめてのことで、景気回復で財政収支の改善が急速に進んだ結果といえます。
また欧州委員会は、ユーロ圏の拡大に関する報告書で、地中海のキプロスとマルタによる通貨ユーロの導入を最終承認しました。
これで、両国が2008年1月に通貨を切り替えれば、ユーロの採用国は15ヶ国に拡大します。
いよいよEUのメンバー25か国のうちの15か国が、"ユーロ"という通貨になるわけです。
このニュースが問いかけている極めて重要な点は、「何故、円とドルが弱くなり、ユーロが強くなるか?」ということですが、お解りになるでしょうか。
この答えを一言でいうと、通貨ユーロというのは、「箍(タガ)がはまっているから」ということになります。
それとは反対に、円とドルには箍がなく、その国の為政者が好き勝手に通貨供給量を調整し、一国の決断で動かせるために無駄遣いなどを引き起こしています。
ところが、ユーロの場合には、それぞれの国がディシプリン(規律)を持って自国経済を動かしていかないとユーロに加盟し続けることができません。
さらには、通貨供給量を増やしてインフレを引き起こしたり、財政赤字を悪化させたりすると、次の年のユーロの発行額、つまり印刷してもいい数が減らされてしまうので、当該各国にとってはこれほどシリアスな問題はないでしょう。
このことだけをとってみても、そういう箍のはまっている国の総合通貨であるEUのユーロと、箍がはまってない野放図で規制がゆるゆるの日本の円やアメリカのドルとを比べられたら、どちらが勝つかは言わずもがなです。
では「この先のユーロとドルはどうなっていくのか?」ということですが、私はドルが最終的にユーロにクリンチをして、世界の基軸通貨として一つに収斂された「ユーラー(ユーロ+ダラー)」ができあがると思っています。
そうなれば、日本の円も中国の元も無くならざるを得ないでしょう。
なぜならば、現在のユーロとドルの比率から考えてみても、「ユーラー」になるその時には、他の通貨を全部足しても80%対20%ほどだろうと思います。このような状態になれば、まさにゴリラとリングの中で素手により戦うようなものですから、まったく勝ち目がなく、他の通貨も自動的にクリンチせざるを得なくなるからです。
このようにして世界の統一基軸通貨としての「ユーラー」が誕生することになるのでしょうが、もしそれが実現したら、通貨におけるパワーバランスも変わってくることになります。
ユーロ誕生当初を例に挙げると、もともとユーロの基軸通貨がドイツマルクだったということもあり、ドイツが強い力を持っていました。
ですので、今度ユーロにドルがクリンチした場合もユーロが強い力を持つことになり、日本の円や中国の元も吸収されて、ユーロ中心の経済圏が出来上がることでしょう。
それでは、「なぜここまでユーロが強くなっているのか?」というと、欧州連合(EU)創設時に締結されたマーストリヒト条約の中で、通貨統合の計画や国内経済の一定基準を定めたからです。
この"基準"こそが、他の国と照らし合わせたルールもなく、自己中心的にわがままができてしまうアメリカや日本との明暗を分ける最大の理由でしょう。
ここはかなり重要なポイントなので、各国で定めた一定基準である「ユーロ導入の条件」について詳しく解説したいと思います。
ユーロ導入の条件は、まず財政赤字がGDP比3%以下である必要があります。
債務残高については、GDP比60%以下であることが定められています。
つまり、ここだけでも日本はユーロに参加する資格がないということになります。
物価については、過去1年間の消費者物価上昇率が、現在ユーロを導入している15カ国中の消費者物価上昇率の最も低い3カ国の平均値の1.5%より多く上回らないことです。
為替については、欧州為替制度の為替相場メカニズムの通常の変動幅を尊重し、2年間は独自に切り下げを行わないこと。つまり、泣きを入れないということです。
それから、金利は過去1年間、長期金利が消費者物価上昇率の最も低い3カ国の平均値を2%より多く上回らないこと。つまり、金利を勝手に高くしてしまうようなところは駄目ということです。
以上のことからもわかるように、ユーロ導入の成功は、明確な基準を設けたことによる"規律の遵守"だともいえるわけです。
そこで、具体的な数値として表されたグラフをみていただきたいと思います。
この3年間を見ただけでも、ユーロ圏全体の財政赤字の対GDP比は、03年に3.1だったものが06年には1.5にまで下がっていることが分かります。
その一方で、日米英についても改善はしていますが、箍がはまっていないために、ユーロ圏と比べてみても全然かなわないわけです。
つまりここでも、いわゆるディシプリン(規律)がユーロを強くしていることがわかると思います。
それでは、このことをさらに端的に示しているユーロ圏各国の財政赤字比較を見てください。
これを見ると、ポルトガルが一番財政赤字は大きいのですが、それでも3.3です。かつてポルトガルは10%近くあったわけですから、かなり改善しているといえます。
そして、フィンランド、アイルランド、スペイン、ルクセンブルグ、ベルギーなどは見事に黒字で、ご覧の通り、他にも財政黒字に転換した国が出てきています。
ドイツのような鈍重と思われている国でさえ0.7まできているわけです。
ここに日本をあてはめてみるなら、いくらGDPが500兆だとしても、国債を30兆、40兆と出してしまうようなことをするわけですから、ユーロ圏と比べるまでもなく結果は明らかでしょう。
以上のことから、ユーロというものはルールの中で成長したからこそ、その規律により、強い通貨になっていったことがわかるかと思います。
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ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一
12月2日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。 |
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ブレークスルー経済学 |
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。 |
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第24回 『景気の「底から回復期」における業種選択』
景気は以下のように循環するとされています。
底→回復→上昇→天井→陰り→下降→底→・・・・
この循環のそれぞれの「局面」は、各需要項目の変化及び政府(含む中央銀行)の行動により、変化していくと考えられています。
ここで景気が「底の状態(これを「景気の谷」ともいいます)」においては、金利が(相対的に)低い状態にあるものの、多くの企業において生産が滞り、国民所得も(相対的に)減少している状態を言います。但し、この「底の状態」とは、好況時期に比べての「相対的なもの」であり、どのくらい「国民所得が減少した」とか、どのくらい「金利が低い」とか、を具体的な数値として示すことの出来るようなものではありません。
このような「底(または「谷」)」では、金利が低いので、それまでは実行されなかったような「プロジェクト(これが「イノベーション」などです)」が実行され、そこをキッカケとして「企業活動の芽」が出るようになります。
とはいえ、「企業活動の芽」が出るような「景気の底」においては、いつ「腰折れするか」わからないという不安定さが残っているので、企業としても大規模な「設備投資」は行わず、しかも、給与も増加させないのが普通です。つまり、この時期は「一部の設備投資」が景気(=GDP)を支えているだけであり、国民所得は増加しないことから、個人消費はそれほど伸びないのが一般的です。
このようにこの時期は、ベンチャー企業のような企業やニッチ産業の他、「素材関係」の業種だけが「辛うじて伸びる」という時期であり、今後しばらくは景気が回復しても「物価」が上昇するほど良いわけではなく、むしろ「腰折れ」の心配があるので、中央銀行は「金利を引き上げる」ということはしないのが普通です。
この時期を何とか乗り切って、「腰折れ」の不安が薄らいでくる(回復期に至る)と、企業は本格的に「設備投資」に乗り出します。ただ、景気の底入れ時期に長い時間を要したような場合、企業が増設を欲している機械自体を生産する機械(「工作機械」といいます)が、まずは必要になるため、この時期では、機械産業などの業種の業績が良くなることが見込まれます。
但し、この時期でも企業は給与をあまり増加させないことが多いので、国民所得は増加しないのが普通です。しかし、人々の景気に対する期待は高まるので、現在の所得水準に対する不安が遠のくと同時に消費支出は「上昇」に転じることが多くなります。とはいえ、「生活関係」の消費が主であり、贅沢品の消費はあまり伸びないので、一般的な小売り(スーパーなど)やファミレスなどの業種が比較的良くなってくる場合が多く見受けられます。
なお、「回復時期の後半(つまり、「上昇時期の初期」)」では「金利」が上昇する可能性は、「底入れ~回復時期の初期」同様、高くないのですが、徐々に「景気の上昇期待が高まってくる」と「物価の上昇」が気になるので、中央銀行も神経質になってきます。
金利が上昇すると設備投資にマイナスの影響を及ぼすことになるので、この時期には金利(無担保コール翌日物レートや長期金利)に注目が集まり、中央銀行の関係者の言動などにより、相場が大きく変動することがあります。
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前田拓生(Takuo Maeda)
ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
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グローバルマネー・ジャーナル第29号、いかがでしたでしょうか。
昨日、財務管理ソフトの営業マンと話をしました。
日本では今のところあまり普及していない財務管理ソフトですが、
これはPC上で日々の収支管理や資産管理を一括して行うソフトで、
アメリカではQuicken、Microsoft Moneyなどが有名です。
何故日米でそんなに普及の差があるのかと思い、いろいろお聞き
したところ、アメリカではユーザの半数以上が女性(特に仕事を
持つ女性が多いとのこと)なのだそうです。
日本でこうしたソフトウェアを購入するのはほとんど男性ですから、
きっとそういうところにまず大きな違いがあるのだろうと思いました。
今後日本でも家計を管理するだけでなく、運用する女性が増えれば
こうした需要もおのずと増えてくるのかもしれません。
来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに! |
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