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世界が金融危機を回避したニュースの裏側とは?
カタールの首都ドーハで開催された湾岸協力会議、GCCの首脳会議は、4日、共同声明を採択して2日間の日程を終えました。
焦点だった加盟国通貨のドル連動、ペッグ制維持の是非については意見が分かれ、結論を先送りしました。一部の加盟国は、ドルペッグを維持した上で通貨を切り上げ、輸入価格上昇を抑える動きを見せており、外国為替市場では各国が「いつ、どれくらいの幅」で通貨を切り上げるのかに注目が集まっています。
このニュースが伝えようとしている核心部分は「差し当たり、世界の金融危機が回避された」という一事に尽きます。
何故なら、もし湾岸諸国がドルペッグ制を辞めるという意思決定をしていれば、恐らくドルは大暴落をし、その結果として世界経済は考えられうる最悪の状況に陥っていたと思われるからです。
このことに対する懸念がGCCの首脳会議前から取り沙汰されていたことと、起こりうる事態の影響の大きさを考慮したためかは分かりませんが、湾岸諸国GCCのメンバーは、今回はドルペッグ制からの離脱については見送ろうという結論に達しました。
ただ、このあとは「段階的に通貨を切り上げて、自国通貨を強くするという方向に動いてくるのでは」と思います。
とはいえ、オイルについては長い間ドルでの取引が主となっているので、ドルへの信認はかなり強いものなのがあります。仮に、オイルがユーロでニューヨークマーカンタイル取引所やシカゴマーカンタイル取引所などで取引が行われるようになれば状況は違うでしょうが、オイル諸国がドルに対する信認を放棄するということは、現実問題としてドルが暴落し、世界経済への悪影響が引き起こされてしまうことから、天に向かって唾を吐くことにもなります。
また、ビジネスウィークのジェームス・クーパーさんの記事には「まだドルの信認が失われたわけではない」という主旨のことが書かれています。
「外国の人がドルを正味どのくらい買っているのか?」という点に着目してみると、実は歴年、40billionから80billionをネットで買い越してきています。
ですので、逆にいえば、月でマイナス10billionになろうとも、今まで買い貯めてきた膨大なドルからみれば「どう」ということはなく、ゆえに「ドルに対する信認が揺らいでいるわけじゃない」というのがジェームス・クーパーさんの見解です。
では次に、ドルペッグがいつ頃から始まったのかを以下の表でみてみましょう。
カタール・バーレーンなどは80年、それからオマーン・サウジアラビアが86年、UAEが97年に導入していることがわかります。
それに対して、クウェートはすでに今年の5月にドルペッグ制を廃止して、通貨バスケット連動制に移行しています。
この制度のメリットは、ユーロやドルなどで取引する際の為替リスクの回避、つまり複数の主要貿易相手国通貨と自国通貨の間で一定のバランスを保つことで、オイルの価格変動を抑えることができる点にあります。
湾岸諸国とドルにはこのような関係にあるわけですが、今回のGCCの首脳会議で産油国があまり敏感に反応しなかった理由は他にもあります。
例えば、カメラを作って輸出する場合の輸出価格を100とすると、カメラの製造原価というのは、輸出している段階では70くらいです。
とはいうものの、実は末端価格に対しては25から30ぐらいなのですが、FOB(Free on Board)や流通経路を経由させることから発生する経費が上乗せされるため、コストは60~70というところまでいくのです。
つまり、このコストのために通貨の変動次第では、かなりの打撃にもなるわけです。
ところが、原油の場合のコストを考えてみると、1バレル90ドルという数字に対して、原油を掘ってくる時のコストが2・3ドルなのです。つまり、ほとんどが利益といえるわけです。
ですから、産油国にしてみれば、少しくらいドルやユーロによって為替差損が生じたとしても大した問題ではなく、懐は温かい状態に変わりはありません。掘れば掘るほど利益なのですから、88か89なのか?程度の差は気にもならないでしょう。
このように原油価格というのはコストがあって無いようなものなので、今回の状況でも産油国はのんびりと構えていられるわけです。
これは、現状のドルが厳しいアメリカにとっても非常にありがたいことです。もしも今週のGCCの首脳会議で湾岸諸国がドルペッグを辞める意思決定をしていたら、ドルを基軸とした世界のマーケットもかなり過剰反応したと思いますから。
しかし、アメリカの置かれた状態を考えるとまだまだ不安材料がたくさんあるので、引き続き注意深くマーケットをみていく必要があるでしょう。
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ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一
12月16日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。 |
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ブレークスルー経済学 |
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。 |
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第26回 『景気がピークから下落にかけての状況』
景気のピーク(山の頂点付近)ではコモディティ価格や地価、株価などが最高潮になります。後になってよく考えれば「狂っている」と思えるものの、その時点では「まだ上昇する」と考えてしまうのが人情というものなのです。
本来は「収益力」を考えて買うのがスジであり、実際、上昇の初期は「合理的な購入行動」が中心なのですが、そのうち、「上がるから買う、買うから上がる」になり、バブル化してくることがよくあります。
このような上昇になっていても、不思議に「ピーク」であることは誰も気がつかないため、バブルという名の「ババ抜き」は継続されることになります。
そして、「些細な事」を契機に市場から「誰も(買い手が)いなくなり」、ゲームセットを迎えることになります。
この時以降、「あった」はずの「評価益」は「単なる評価であった」ということがわかり、「評価益」なる幻は「消えてなくなってしまった」ということを投資家は知ることになるのです。
「ある」はずのものが「なくなった」ことで、一気に消費は減退し、景気は下降していくことになります。
景気のピークからの下落はピークに至った状況の真逆ですから、「売るから下がる、下がるから売る」というマイナスの連鎖に陥り、収益還元価格(つまり、理論的に妥当とされるような価格)を目指して下落を続けることになります。
このような資産価格の下落は「逆資産効果」により、一層、個人消費を冷やすことになります。さらに消費の減少は有効需要の減退を意味するので、投資収益機会を減少させることになります。そのため、景気の良い時期の「金利(この時期は「高金利」になっているのが普通です)」では投資機会がなく、GDPの「投資」項目も減少することになります。
以上より、景気は一転して悪化することになるのですが、このような状態において民間では有効な手を打つことはできません。そのため、このまま市場に任せておくと、パニック的な「不況」、つまり、「恐慌」まで一気に陥る可能性があります。
このような場合に「経済政策」が必要になると考えられています。
経済政策とは政府が行う「財政政策」と中央銀行が行う「金融政策」に分かれますが、上記のような状態になった場合には、ともに"一応"有効であるとされています。
財政政策(この場合「財政拡大政策」)においては、政府支出を増加させるので、需要を喚起させることが可能になります。また、金融政策(この場合「金融緩和政策」)においては、金利を低下させる働きがあるので、投資機会を生み出し、「投資」の需要を喚起させる可能性があります。
但し、経済政策は人為的に操作するものなので「市場」という流れの速い川に「棹差す」ことに等しく、「景気」そのものは"相当程度"まで落ちないと「復活しない」と考えられているのも事実です。
この場合、"相当程度(つまり、「相場の底」)"が重要になりますが、この「時点」は誰にもわからないので、この時期,多くの人は「暗いトンネルの中をひたすら走っている」という心境に陥ることになります。
「夜明け前が一番暗い」という諺通り、どこが「終点」なのかわからないので、多くの人々が相場に対して悲観的になっていくのも、この時期の特徴です。
しかし、このような「暗く、混沌とした状態」から「新しいもの(イノベーション)」が芽生えるのであり、この時期の目利き能力によっては非常に大きな利益の種を見つけることが出来る時期でもあります。
また、逆資産効果から収益還元価格をも下回る低い価格で放置される優良銘柄も多く存在するのも、この時期です。
情に流されず、しっかりとした投資眼をもっていれば、この時期にこそ「大きな収益を得ることができる」ともいえそうです。
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前田拓生(Takuo Maeda)
ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
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グローバルマネー・ジャーナル第31号、いかがでしたでしょうか。
さて皆さん、2007年の運用実績はどうでしたか。
今年は不二家の不祥事に始まりコムスン事件やミートホープ事件、
赤福など、一部上場企業を含む数々の偽装改ざんが目立った一年
でした。
自社成長と株主への利益還元という目指す目標を達成するために、
「無理」を強いた結果というべきでしょうか。
思えばサブプライムも無理な貸付によるものでしたし。。
皆さんも無理な投資はせず、あくまで投資は余剰資金で
おこなってくださいね。
来年も皆さんの学びになるネタを毎週お送りしていきます!
それでは、来年もグローバルマネー・ジャーナルをお楽しみに!良いお年を~。
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