日本株を左右する外国投資家の2008年動向|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/1/16(水)  
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日本株を左右する外国投資家の2008年動向

下のグラフは日本の主要取引所における投資主体別売買動向です。つまり、どの投資家がどのくらい日本株を売ったり買ったりしているかというグラフです。


本当は、売りと買いは均衡しなくてはいけないので、このグラフは同じ長さのはずなのですが、変化を出すために、いわゆる証券会社の自己ポジションの分は除いてあります。

なぜなら、証券会社の自己ポジションというのは、投資家たちが"売り越したら買う"、"買い越したら売る"ということで相殺するのであまり意味がないからです。なので「意味のある動き」として証券会社の自己ポジションの分は除いて表しています。

グラフからも一部の直近データは見て取れますが、過去15年間にも渡って外国投資家たちは日本株をほとんど買い越してきました。唯一売り越したのは2002年の7月から9月にかけての1クォーターだけです。

ところが2007年の4つのクォーターに注目してみましょう。


7~9月期の3rdクォーターは売り越していることがわかると思います。このままいけば12月も売り越すことが予想されるので、そうなれば2期連続で世界の投資家は日本の株を売り越すことになります。これは1992年以来、実に15年ぶりのことです。

これはプロの間ではベアボトムと言われていて、要するに、マーケットがどん底になった時のシグナルなのです。また、どん底ということでリバウンドシグナルとも呼ばれています。

このような渦中に、もう一つリバウンドシグナルが出ています。日経225の12ヶ月後のPERは15倍を割って14.75倍くらいで、TOPIXの16倍前後と比べてみても非常に安くなってきています。この14倍台というのも24年ぶりのことで、実に1983年以来のことなのです。

そして、上記2つの大きなベアボトムシグナルがついている現状を考えると、本来ならば、爆発的に日本の株が上がっていてもおかしくはないはずなのです。

しかし現状は、ご存じの通り、逆の一途を辿っていますが、それには外国投資家の動向が影響しています。

つまり外国投資家の大方は、日本株は上がるには上がるだろうけれど、良く見積もっても1万7500円程度で、日本にしかない技術が世界中に出ていった1983年や84年頃のVTR相場並みの爆発的な上昇力は「無い」と判断しているためなのです。

あの頃は、ソニーの井深さんや盛田さん全盛の時代で、今の任天堂のような成長企業が日本中にひしめいていたのです。だから海外の企業は日本の企業の将来性に大きな価値を見出したわけです。

これをコーポレートバリューや企業価値といいます。

ところが、現在の日本の会社においては「企業価値を創造する能力」が失われつつあります。

あえてそうではない企業、能力の高いほうの代表例を挙げるなら、言わずと知れた「トヨタ」です。トヨタは1年間に1兆円もR&Dにコストをかけられる会社で、しかもそのコストのほとんどが電気代なのです。

並大抵のメーカーではR&Dコストに1兆円もかけられません。ところが、トヨタはかけています。なぜかというと、自動車のコストの79%は電気だからです。そういうポテンシャルこそが、コーポレートバリューを押し上げる要因になるのです。

それからヨーロッパでも一際評価の高い自転車部品メーカーの島野自転車も、企業価値創造能力の高い企業です。実際、ブレーキの世界シェアの92%は島野自転車が作っていることもあり、日本よりはるかに自転車文化のあるヨーロッパにおいて、島野の株はずっと買い続けられています。

上記のような企業価値の高い銘柄は継続的に買われてくると思いますが、日本全体のコーポレートバリューの創出額は今後も落ちてくると推測されます。

その理由として特に外国投資家の方々が指摘するのは、日本の企業には65歳以上の高齢者の社長が多すぎるという点です。実に3人に2人は65歳以上で、英語を話せる社長となれば3人に1人だけです。

かたや日本以外のアジア企業に目をむけると、社長のほとんどが英語を話せるばかりでなく、平均年齢は48歳で50代を割っています。

さらには、外国投資家の日本企業の社長に対するイメージが「温泉に入って帰ってしまう人たち」、つまりヨーロッパのIRに来てお風呂に入って帰ってしまうだけで、「一体何をしに来ているのか分からない・・・・・」という不可解感が根強いこともあるように思われます。

仮にそれが主観的に過ぎたとしても、そういうIRという印象を与えてしまっていること自体が決定的にマイナスなわけです。

このように外国投資家は、若さがあり、コミュニケーション能力もあって、IRを大事にする会社が「コーポレートバリューを生みだせる」と判断するので、今の日本の状況では、日経平均において2万円や3万円を望める相場ではないということになります。

ただし、日本株の中でも50銘柄ぐらいは「コーポレートバリューを生みだせる力がある」と考えられているので、そのような銘柄に関しては30%から40%は上がっていくと思って良いでしょう。

ここまでで、外国投資家が考える日本企業の今後についてはわかったと思いますが、具体的な動きについても考えてみたいと思います。


これは先ほどの投資売買動向を国別にしたものです。

グラフ右の青色のイギリスに注目してみると、今年の夏ごろから日本株を大量に売り続けていることがわかります。一番売っているのはおそらくイギリスの年金ファンドでしょう。

これは、1月から始まるヨーロッパの金融機関の決算で、1年間に1回しか決算しないような会社が出てくることを見越しての動きです。

1年間に1回しか決算をしない会社の場合、悪い材料は極力直前まで隠しておく傾向があるので、今回の決算でも溜まったサブプライムローンの損失などがドサッと出てくることが予想されています。

そういう事情を加味すれば、グラフ上ではイギリスの年金ファンドの売りが減少しているように見えるとはいえ、もう一度1月に大きく売られて日本株が1万4500円を割るようなことになると考えられます。そして、その暴落をもって初めて禊(みそぎ)が終わるというような捉え方をしたほうがいいのではないかと思います。

もう一つ気になるサブプライムローンについてですが、現在この問題のために身動きが取れなくなっている投資家は二種類のタイプに分けられます。

一方はサブプライムローンの債務者で、ローンが払えず次々に破綻していき、他方のサブプライムローンの債権者は、買ってはみたものの現在では無価値になったものを抱えて途方に暮れています。

しかし債権者側のリスクのピークは、おそらく「この1月の時点で終わる」と思います。債務者側のリスクも来年の2月以降まで存在はしますが、政府が様々な形のテコ入れを行って保護しようとしているので、やはり1月~2月の下落がボトムになり、そこで外国人投資家の需給は好転していくと思います。


講師紹介
大前研一
リーマン・ブラザーズ証券株式会社
株式調査部 シニアヴァイスプレジデント チーフストラテジスト
宮島秀直

12月21日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第28回 『景気下降期における銘柄選択』

景気の下降局面では「暗いトンネルの中をひたすら走っている」という心境に陥ることになるため、企業の投資マインドは冷え切った状態になるとともに、売上の減少から費用の削減を積極的に推し進め、給与カットから国民の所得が減少することになります。

そのため「消費も減少する」ことから、さらに事態は悪化していくことになります。

そんな中、唯一、拡大が可能な「需要項目」は政府支出だけなので、これに関する業種(および、その周辺業種)の業績は改善する可能性があり、政府高官の発言が注目されることになります。

したがって、この時期は政府高官等の発言を根拠として、将来的に有望視される公共事業関連の業種の株式が買われることになります。

例えば、この時期によく行われるのが「○○減税」というもので、これも経済政策の一環ではありますが、この減税で恩恵を受ける業種の株式は買われる可能性が高いとされています。

特に、「住宅減税」が行われることが多く、不況下でも「マンション」・「住宅」投資が活発化し、その業界の株式が急騰することもよくあります。

「住宅減税」のメリットは、「住宅業界」だけに恩恵を与えるというよりも、広く、いろいろな業界に恩恵が及ぶことにあり、この経済政策がうまくいけば、景気の下降局面からの脱出につながる場合もあります(但し、現在は「住宅審査の遅れ」が景気に影響を与えているだけに、住宅減税等の経済政策は使用しづらいと思いますが・・・)。

他方、その他の業種は、景気が下降局面である以上、業績が改善する見込みが薄いため、ほぼ全面的に見送られることになります。

しかし、人間は「生活は続ける」ので、その関係の業種の場合、業績は比較的堅調に保たれます。そのため、食品や医薬品関係の業種は「ディフェンシブ銘柄」として、注目されることがよくあります。

これは、この種の業界に属する企業の場合、「業績が堅調だから・・・」というだけでなく、例えば「○○の特効薬」や「△△ワクチン」などの「開発に成功した」という報道を受け、業績が大きく変化する可能性があるからです。

したがって、景気下降局面ではその他の業界の株価が思わしくなく株式投資に関する資金の「持っていく場」を失ってしまうので、「ディフェンシブ銘柄」のような下落リスクが少ない上に、急騰するチャンスがあるという銘柄に資金が集中し、「人気化」することがよくあります(今後の状況を考えれば、「環境」もテーマになる可能性はあるのでしょうね)。

とはいえ、「景気の底」は「誰にもわからない」ので、株価としての恩恵は「限定的」に留まることが多いのです。
講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
 
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第33号、いかがでしたでしょうか。

今週末は恒例の大学入試センター試験が行われますね。

驚いたことに、あるTV番組の調べでは受験生の約半数である 45%が「任天堂DSを受験勉強に活用している」との事でした。

しかも、たかがゲームと侮るなかれ、国語や英語、日本史など、 遊ばれている各ソフトは実在の検定協会や教科書出版社が監修 している本格的な内容ばかり!

DSとWiiによって伸び続けてきた任天堂の株価は単元株で600万円弱と、 とても気軽に買える金額ではありませんが、「海外市場のニーズは まだまだある」「優秀な技術者のいる会社は伸び続ける」と、 更なる株価大幅上昇を予測するアナリストも少なくありません。

私も余裕ができたら、投資対象に加えてみようかな~。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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