アメリカ発の株安が年明け以降も日本やヨーロッパの市場を揺さぶっています。
サブプライムローン問題によるアメリカの景気減速観測が強まり、投資家がアメリカ株の動向に一段と警戒を強めているためですが、一方で中国・インド市場は高い成長力を背景に株価が堅調で、先進国と新興国の間で二極化する可能性もでてきています。
ブラックマンデーの時は世界全体が一気に暴落し、さほど影響が及ばなかったのは韓国ぐらいでした。ところが、ここ最近の市場の動きは、まだヨーロッパやアメリカなどの動向に引きずられる傾向があるものの、いくつかの国によっては逆に良くなるところもあるようです。
そこでお金の流れについて考えてみたいのですが、世界には一定のお金がありますから、「株安になった」ということは誰かが売り逃げたわけです。そして「売り逃げたお金がどこへ行くのか?」というと、金や石油などのコモディティ関係にいく場合が多いのです。
それ以外には不動産にいったり、今後期待できる新興諸国などの他の国にいくなどして分散されるので、結局みんなが同時にヘコむことはないといえます。
要するに「横にしたビンの中の水」と同じで、片方が上がれば片方が下がるというようにビンの中では水のバランスがとれているだけであり、体積が増えることはありません。
グラフなどで見てしまうと株価の乱高下は目立たざるを得ないのですが、実際にはそうでもないということです。
このような点を含めて2007年を観てみると、非常におもしろいことが分かります。
このグラフは1年前の金融市場比較で、主要国の07年の年初と今年08年の年初である1月4日の騰落率です。
ご覧の通り、東京だけがヘコむという輝かしい(!?)記録になりました。
要するに海外の投資家などは「ブルドックソースを守るような国にお金を置くことはできない」といっているのです。
海外の投資家にとって、あの裁判はものすごくネガティブな印象が強く、世界中どこへいっても「単なるソース屋を国が助けるとは」などの批判がついてまわるほどです。
それに加えて通産次官の某氏が「鉄は命を懸けても守る」などと言おうものなら、徳川時代の鎖国さながらの「閉鎖感」だけを与えるだけになり、投資家たちはますます白けていくことになるわけです。
このような状況だからこそ、さすがに東証の新しい社長の斉藤惇さんも新年の挨拶で「そういった裁判の判断が株式市場をおかしくしている」と言っていましたが、私もまったく同感です。そしてこの一部始終を見ていた世界には、当然の帰結として、「東京にお金を置いていたらどうなるか知れたものではない」という不信感だけが募ることになるのです。
ですから、去年1年間の株式市場の成績表であるこのデータを見て、少しは日本の政治家や官僚には反省してもらいたいと思います。
何故なら、グラフには書かれていないものの、20~30%伸びているところは中南米や中近東を含めてザラにあるからです。
ユーロネクストのマーケットに関しては、1月で取らなければちょうどゼロくらいですので、明らかに東京だけが駄目だったことが分かります。
それから次に、IMFが発表したGDPの実質経済成長率2007年版を見てください。
最も濃い茶色が10%以上の高い成長率を記録した地域で、ブルーっぽいのは0~3%程度です。
アフリカやアジアをみても茶色やこげ茶色、つまり成長しているところはあり、伸び率も5~10%前後近くあります。
それとは対照的に日本とアメリカ、それからヨーロッパ主要国はブルーっぽい状態になっていることは一目瞭然です。
先進国にある問題、日本にある問題、それから去年から今年にかけてのアメリカの問題・・・。
これらのことが全体として物語るのは、もうブッシュ政権の"戦争にはお金を使うが経済には使わない"というやり方が完全に行き詰ってしまっているにもかかわらず、そういう姿勢を変えようとしないブッシュ政権に対する拒否反応が世界中で起こっているということです。
この傾向は、特に去年の最後の2ヶ月ぐらいから顕著に見られ、お金でさえアメリカから大量に逃げ出しているようです。
この動向から米国市場というものを考えた時、やはり「アメリカが落っこちてしまったら世界はどうなるのか...」といった恐怖が大きいということなのでしょう。
「これまでのアメリカは」というと、騙し騙し、手を変え、品を変えて様々なシナリオを用意しつつ、お金が集まるような金融政策を考案してきました。
そして金利を上げたり、市場開放するなどして、少なくとも40~50年にも渡って世界中のお金を集めてきたのです。
ところが、そのアメリカもいよいよここへきてネタ切れになるどころか、明確な方針さえ示せないという状況になってしまいました。
それをブッシュさんに期待できないのはしょうがないこととして、FRB議長に任命されたバーナンキさんまでもが「万策尽きた」となれば、これはかなり危機的状況だといえるでしょう。
一方でクリントン政権の時はというと、ラリー・サマーズ、ロバート・ルービン、アラン・グリーンスパンという、いわゆる三羽烏がいました。そのため、クリントンがルビンスキーさんとどこで何をやっていても、この三人がしたたかに世界中からお金を集めていました。
要するに、クリントンの時には個性の違う辣腕実務家が3人いて、これがアメリカに対する信頼につながっていたわけですが、ブッシュは同じことができる状況にはなく、せいぜいバーナンキ一人が奮闘するというところが関の山でしょう。
つまり、アメリカの大きな問題というのは「人材の問題」なのです。
信頼できる人間が「国の中央にいない」と、結局はアメリカ人の資産も含めたお金がヨーロッパやその他の世界に逃避してしまうわけです。
そして、その逃避した世界のお金が「日本に来ない」ということが日本の最大の問題なのは言うまでもありません。
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