世界から置いていかれるアメリカと日本|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/1/23(水)  
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世界から置いていかれるアメリカと日本

アメリカ発の株安が年明け以降も日本やヨーロッパの市場を揺さぶっています。 サブプライムローン問題によるアメリカの景気減速観測が強まり、投資家がアメリカ株の動向に一段と警戒を強めているためですが、一方で中国・インド市場は高い成長力を背景に株価が堅調で、先進国と新興国の間で二極化する可能性もでてきています。

ブラックマンデーの時は世界全体が一気に暴落し、さほど影響が及ばなかったのは韓国ぐらいでした。ところが、ここ最近の市場の動きは、まだヨーロッパやアメリカなどの動向に引きずられる傾向があるものの、いくつかの国によっては逆に良くなるところもあるようです。

そこでお金の流れについて考えてみたいのですが、世界には一定のお金がありますから、「株安になった」ということは誰かが売り逃げたわけです。そして「売り逃げたお金がどこへ行くのか?」というと、金や石油などのコモディティ関係にいく場合が多いのです。

それ以外には不動産にいったり、今後期待できる新興諸国などの他の国にいくなどして分散されるので、結局みんなが同時にヘコむことはないといえます。

要するに「横にしたビンの中の水」と同じで、片方が上がれば片方が下がるというようにビンの中では水のバランスがとれているだけであり、体積が増えることはありません。

グラフなどで見てしまうと株価の乱高下は目立たざるを得ないのですが、実際にはそうでもないということです。

このような点を含めて2007年を観てみると、非常におもしろいことが分かります。


このグラフは1年前の金融市場比較で、主要国の07年の年初と今年08年の年初である1月4日の騰落率です。

ご覧の通り、東京だけがヘコむという輝かしい(!?)記録になりました。

要するに海外の投資家などは「ブルドックソースを守るような国にお金を置くことはできない」といっているのです。

海外の投資家にとって、あの裁判はものすごくネガティブな印象が強く、世界中どこへいっても「単なるソース屋を国が助けるとは」などの批判がついてまわるほどです。

それに加えて通産次官の某氏が「鉄は命を懸けても守る」などと言おうものなら、徳川時代の鎖国さながらの「閉鎖感」だけを与えるだけになり、投資家たちはますます白けていくことになるわけです。

このような状況だからこそ、さすがに東証の新しい社長の斉藤惇さんも新年の挨拶で「そういった裁判の判断が株式市場をおかしくしている」と言っていましたが、私もまったく同感です。そしてこの一部始終を見ていた世界には、当然の帰結として、「東京にお金を置いていたらどうなるか知れたものではない」という不信感だけが募ることになるのです。

ですから、去年1年間の株式市場の成績表であるこのデータを見て、少しは日本の政治家や官僚には反省してもらいたいと思います。

何故なら、グラフには書かれていないものの、20~30%伸びているところは中南米や中近東を含めてザラにあるからです。

ユーロネクストのマーケットに関しては、1月で取らなければちょうどゼロくらいですので、明らかに東京だけが駄目だったことが分かります。

それから次に、IMFが発表したGDPの実質経済成長率2007年版を見てください。


最も濃い茶色が10%以上の高い成長率を記録した地域で、ブルーっぽいのは0~3%程度です。

アフリカやアジアをみても茶色やこげ茶色、つまり成長しているところはあり、伸び率も5~10%前後近くあります。

それとは対照的に日本とアメリカ、それからヨーロッパ主要国はブルーっぽい状態になっていることは一目瞭然です。

先進国にある問題、日本にある問題、それから去年から今年にかけてのアメリカの問題・・・。

これらのことが全体として物語るのは、もうブッシュ政権の"戦争にはお金を使うが経済には使わない"というやり方が完全に行き詰ってしまっているにもかかわらず、そういう姿勢を変えようとしないブッシュ政権に対する拒否反応が世界中で起こっているということです。

この傾向は、特に去年の最後の2ヶ月ぐらいから顕著に見られ、お金でさえアメリカから大量に逃げ出しているようです。

この動向から米国市場というものを考えた時、やはり「アメリカが落っこちてしまったら世界はどうなるのか...」といった恐怖が大きいということなのでしょう。

「これまでのアメリカは」というと、騙し騙し、手を変え、品を変えて様々なシナリオを用意しつつ、お金が集まるような金融政策を考案してきました。

そして金利を上げたり、市場開放するなどして、少なくとも40~50年にも渡って世界中のお金を集めてきたのです。

ところが、そのアメリカもいよいよここへきてネタ切れになるどころか、明確な方針さえ示せないという状況になってしまいました。

それをブッシュさんに期待できないのはしょうがないこととして、FRB議長に任命されたバーナンキさんまでもが「万策尽きた」となれば、これはかなり危機的状況だといえるでしょう。

一方でクリントン政権の時はというと、ラリー・サマーズ、ロバート・ルービン、アラン・グリーンスパンという、いわゆる三羽烏がいました。そのため、クリントンがルビンスキーさんとどこで何をやっていても、この三人がしたたかに世界中からお金を集めていました。

要するに、クリントンの時には個性の違う辣腕実務家が3人いて、これがアメリカに対する信頼につながっていたわけですが、ブッシュは同じことができる状況にはなく、せいぜいバーナンキ一人が奮闘するというところが関の山でしょう。

つまり、アメリカの大きな問題というのは「人材の問題」なのです。

信頼できる人間が「国の中央にいない」と、結局はアメリカ人の資産も含めたお金がヨーロッパやその他の世界に逃避してしまうわけです。

そして、その逃避した世界のお金が「日本に来ない」ということが日本の最大の問題なのは言うまでもありません。

講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

1月13日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第29回 『「円全面高」の怪』

このところの為替相場では不思議なことが起っています。どう見ても「円が強い状態にある」とは思えないにも関わらず、「円」が強い状態になっています。

まぁ、「ドル」に対して「強い」というのは、米国自身が「サブプライム問題」の震源地なので、それ自体は「そうかなぁ~」と思うものの、「ユーロ」に対して「円が強い」というのは「??」と感じるかたも多いと思います。

景気状況にしても、株価等の状態にしても、日本がユーロ圏の経済に「優っているようには思えない」と感じる人は多いのではないでしょうか。

でも、このところの「円高」は「ドル」だけではなく、「ユーロ」に対しても円は強含みの展開になっています。

これは「何故?」なのでしょうか。

これに対してはいろいろな見方があり、一概には言えないのですが、「例えば」としては以下のようなことが考えられます。

今回は「ドル独歩安」であり、世界中の通貨に対して「ドル」が弱含みになったと考えられます。実際にも「ドル」サイドで見た場合、すべての通貨に対して弱くなっています(シカゴIMMの投機筋のポジション[1/19現在]においては、ポンド以外のほとんどの通貨が、ドルに対してロング・ポジションになっています・・・ポンドのショートも非常に少ない状態になっています)。

しかも、「ドル」以外の通貨が「単独で強くなっている」ようにも感じられません。つまり、「ドル」だけがそれぞれの通貨に対して「それぞれ」に弱くなっているといえます。

この場合、為替相場での「取引履歴」というものが常に存在しているので、各国の通貨はそれぞれ"それなりに"強くなることになります。

この「それなり」というのが曲者です。

例えば、「大根が高くなった」といった場合、1本100円の大根が「150円になった」というのはありうることですよね。ところが、「缶コーヒーが高くなった」といった時に1本100円の缶コーヒーが「150円になった」としたら、これは大変なことですよね(スキー場などの特別の場所以外では、このようなことは、通常、あまり起らないでしょう)。つまり、「缶コーヒーが高くなった」といっても、せいぜい「110円~120円」くらいでしょう。

このように値段というものには、それぞれ、相対的な「粘性」というものがあり、一斉に「値上がりした」といっても、値上がり率に差が生じることになります(この場合、「粘性が弱いこと」を「ボラティリティが高い」などということがあります)。

これは「貨幣の価値尺度機能」というものが働いているからであり、このような「差」に対しては、「何故」という問題ではありません。

以上より、「一斉に値上がりした(今回の場合は、「ドル」が全面的に下がったのであり、他の通貨においては「値上がりした」と同じ状況です)」といっても、「値上がり率」に「差」が生じることになることがわかります。

この時、上の例では「大根」と「缶コーヒー」が、当初、同じ値段であったのに、事後では「大根が(缶コーヒーに比べて)高くなった」ことになります。 これは「大根」が「優れている」のではなく、缶コーヒーに比べて「粘性が弱かった」だけなのです。

これと同じことがドルに対する「円(例では「大根」)」と「ユーロ(例では「缶コーヒー」)」の為替レートで起ったと考えられます。

一般に「円/ドルレート」というのは、他の為替レート(例えば、ドル/ユーロレート)に比べて「ボラティリティが高い」ことが知られています。
講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第34号、いかがでしたでしょうか。

先週末の午前中、表参道に行ったのですが、 周囲の閑散をよそに多くの女性が集まる一角が。

近づいてみるとそこには、国産ブランドバッグなどを 扱うサマンサタバサがありました。

10代~20代前半の女性を中心にブランド品としては 非常に低価格な商品を手がける同社ですが、 最近は20代後半の女性客もターゲットに加え、 より幅広い商品開発、販売を行っているようでした。

大物タレントの起用や新規出店など先行投資がかさみ、 上場後の株価は下降の一途を辿っていますが、 67%もの自社株を保有する寺田社長は業績修正などせず あくまで強気。

同社の最終業績に注目です。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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