アメリカFRBは先月30日のFOMCで、最重要の政策金利であるFF金利の誘導目標を0.5%引き下げ、年3%とすることを賛成多数で決定、即日実施しました。22日に発表した0.75%の緊急利下げも含め、1週間あまりで合計1.25%に達する異例の大幅引き下げに踏み切ったものです。
それではまず、下の図を見ていただきたいと思います。
このような急速な利下げは「異例」と言われていますが、グラフを見ていただければ分かるように、2001年にも同じように急速に誘導金利を引き下げた時があります。
その時はITバブルの崩壊と呼ばれたりしましたが、6.5%ぐらいあったものをグリーンスパンが立て続けに下げていったので、当時の下げ方を覚えている人も多いかと思います。
したがって、今回の下げ方も「2001年のITバブル崩壊により急激に経済が悪化した時と同じようなものだ」といえますが、下げ幅として1回に0.75%というのはめずらしいように思います。
当時はもっと高い金利レベルから落としてきたのですが、今回はそれより下から3%まで落としています。
3%という数字についてですが、この値についてもアメリカは、グラフ上でも2ヶ所、それからさらに以前にもありますから、別にそれほど「低い」ということにはなりません。
ちなみに今の日銀の場合は0.5%ですから、0.75%も下げたらマイナスになり、「お金を借りてくれたら金利を差し上げます」といったことになってしまいます
いずれにしろ、ヨーロッパのほうは堅調さを保っているのに対して、アメリカは大きく落としてきたことになります。
そして原因が分からないまま、とりあえず、景気が腰折れしないようにやっているということ自体が、今のFRBの焦りを示しています。
原油高などの要因によってインフレの可能性がある時に、こういうことをやるのは理解に苦しむばかりですが、背に腹は変えられないというわけなのでしょう。
こういったアメリカの動きと世界の動きが必ずしも一致してないことで、実際に欧州中央銀行も今のところは静観している状態です。
またドルを支えるアメリカの優良企業は全世界で展開をしつつ2割近くで成長する一方で、アメリカ国内を中心とした企業の中で今回のショックについてドメスティックでつかまってしまったところはもはや成長性を失っています。
このようにアメリカは2極化しつつあるのですが、全世界で見ると今のアメリカのような状況に陥っているところは必ずしもたくさんあるわけではありません。
急成長中の中国にもたくさんの問題がありますが、それらはアメリカとは全く別な理由によるものです。
だからそういった要素をきちんと分析して1つずつ見ていく必要があります。
例えるなら、原油が60ドル、50ドルに落ちれば中近東やロシアがおかしくなるはずですが、今の原油の値段だったら何があっても七難隠すことになるでしょう。
アメリカに不用意な投資をして「損」をしてしまったとしても「原油と比較したら○○バレル分でしかない」というわけです。
要するに、パニックに「なっているところ」と「なっていないところ」があるというのが今回の特徴だといえるでしょう。
世の中には連結している部分とまったく関係のない部分とがあるので、その辺りのことを分けて見ないといけないということです。
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