韓国政府は10日、対日赤字の縮小策を柱とする行動計画を策定しました。
国内で取り扱う素材や部品の対日依存度を20%に引き下げることを決め、6月末までに包括的な対策をまとめます。
イ・ビョンバク大統領は、慢性的な対日赤字について、訪日を契機に対策を準備しなければならないと指摘し、新政権の重要課題にまで浮上しています。
韓国の2007年の対日貿易赤字は、298億8000万ドル、およそ3兆円で、過去最大となっています。
前にも言いましたように、韓国というのは日本から機械と部品を輸入して、韓国または中国で生産して、アメリカ・ヨーロッパに売っています。
これをパススルー経済といいますが、この経済形態のもとでイ・ビョンバク大統領はどんな秘策があって対日赤字を減らそうとしているのかに非常に興味があります。
それでは、ここで図を見ていただきたいと思います。
これは2000年と2007年の韓国の貿易相手国との貿易額をとったグラフですが、中国に対しての輸出・輸入が爆発的に伸びているのが分かります。
日本に対しても輸入がそれと同じぐらい伸びているのですが、輸出のほうはそれほど伸びていません。
それから韓国からのアメリカに対する輸出もあまり伸びていませんが、これは中国からの輸出のほうにアメリカ向けのものが含まれてしまうためです。
つまり、韓国企業は中国で作ったものがアメリカに輸出されるので、ここのところはそれほど大きくでてきていないということになります。
一番下のサウジアラビアからのものは油の輸入ということになります。
それでは、次の図を見ていただきたいと思います。
こういうグラフを見ると韓国のパススルー経済の実態がはっきり分かるのですが、貿易は総じてまあまあの黒字を保っているものの、今はこれが減る傾向にあります。
一方で対日赤字のほうは遮二無二がんばってみても3兆円あるので、トータルの黒字をこれで相殺してしまうくらい大きいということがいえます。
もっとも、このマイナスは貿易のトータルの中に入ってはいますが、グラフでも示されているようにものすごく大きなものなので、これさえなければ韓国は巨額の外貨が稼げるわけです。
では、韓国がなぜ日本から部品と機械を入れなくてはいけないかというと、韓国企業は基幹部品を作りたくなく、またそのような根気を必要とするようなことをやる会社もないからです。
機械などという七面倒臭いものは作りたくないということですから、こういう韓国の持っている工業のインフラ、それから経営者のオリエンテーションを変えようと思ったら並大抵のことではありません。
つまり、韓国には東京都大田区や東大阪市、浜松市や諏訪といった、モノづくりにものすごい執着心のある中小企業の経営者たちが今までずっといなくて、今日もいないにもかかわらず、「これをどうやって作るのか?」という話なのです。
実際、もっと簡単にお金を儲ける方法は日本から部品と機械を買ってきて中国で売ればよくて、しかも儲からなくなってきたら夜逃げすればすむというようなこのご時世に、果たして大統領1代でもってできるようなことなのかと思うわけです。
それよりも、日本がなぜこういう中小企業や巨大な裾野産業を育てることができたのかという問題に着目すべきでしょう。
表面的に「巨大化させてグローバル化」などといっていますが、韓国の産業に根が無いことには変わりないわけです。
とはいえ、韓国の経済人にはそういう発想がありませんので、ここの部分について本当に問題点をとらまえて反省し、新しい体制を作ったら、これはもう偉大な大統領になるでしょう。
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