世界中で食料価格が高騰!その真実は?|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/4/16(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第46回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。
メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の一戸です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。
あなたの理想とする資産運用、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

本文タイトル
世界中で食料価格が高騰!その真実は?

"トウモロコシ価格が急騰して大豆が下がった"世界の穀物生産事情

朝のTBSラジオ森本毅郎スタンバイで、世界各地で食料価格が高騰しており、暴動が起こっている、これはサブプライムローン問題により投資資金が金融商品からコモディティーに回ったせいだ。投機マネーが穀物を買っているからこうなる。穀物を投機の対象からはずすべきだというご意見があった。しかし、これは認識の間違いであると思う。

サブプライムローン問題で投機資金がコモディティーを買っているのはその通りである。また、投機マネーが穀物を買っているのもその通りである。しかし、仮に投機資金が穀物を買わなくても、穀物価格は上がる点が違う。これは純粋に需要と供給の問題からそうなるはずだ。投機マネーはそれを助長しているかもしれないが、仮に穀物は商品先物取引からはずしたとしても食料価格は上がるだろうし、ヘッジャーのヘッジ場所である先物市場が世の中から無くなれば、価格変動は更に大きくなる点が、認識の誤りである。

商品先物市場を見てみれば、米国でも日本でも売り手は生産者や当業者のヘッジャーである。これら売り手の大量の売りが無くなれば、価格はもっと騰貴する。投機家がその激しい動きをなだらかにしているときもある。いずれにせよ、市場をコントロールしようとする姿勢は、資本主義の世の中においては間違いであることを認識されたい。

さて、FAO(国際連合食糧農業機関)の発表によれば、2006年12月から2007年12月の間に世界の食糧価格は37%上昇したという。また、世界銀行によれば、この3年間で食糧価格は83%上昇し、30カ国以上で食糧価格高騰を原因とする暴動が起こっているという。

穀物価格が上昇した原因には主に五つある。[1]異常な天候、[2]新たなエタノールという需要の出現、[3]中国やインド等の経済発展による需要増、[4]世界人口増加、それに[5]限られた耕地面積や水資源である。

一昨年豪州を襲った干ばつは、豪州の小麦生産を約6割減少させた。また欧州でも小麦生産地帯で干ばつが起こった。そのため世界の小麦生産はグラフで見られるように06~07年度は5億9,296万トンと前年の6億2,130万トンから2,834万トン、約5%の減少となり、また昨年07~08年度も6億669万トンと元に戻っていない。


(注)07~08年度という表記は米国の穀物年度を示し、北半球の場合は2007年の春に作付けして11月頃に収穫し、11月以降輸出したり消費して、米国の年度末に当る2008年8月末の在庫量を期末在庫という。南半球の場合だと、9月から10月頃に作付けして3月~5月頃収穫し出荷することになる。北半球の季節に6ヶ月を足せば良い。それらが8月末にどうなっているかを予測するもの。従って今年の天候は08~09年度の統計に影響する。なお、穀物年度は国によって異なるが、世界的には米国を基準にする。

小麦が足りなくなると、家畜の餌に困る。小麦は配合飼料の約3分の1を占めるため、小麦価格が上がったり、供給が少なくなると、トウモロコシや大豆ミール(大豆の油を絞った粕)等の代替需要が増える。ところが問題はトウモロコシや大豆が自動車燃料に使われるようになったことだ。トウモロコシはエタノールにしてガソリンの代わりとなるし、大豆はバイオディーゼル油として軽油の代替となる。この新たな需要の量は、これまでの穀物需要のボリュームをはるかに凌ぐものであった。


1999年米国におけるエタノール工場は50工場であったが、2008年初めには134工場と2.7倍になり、その生産能力は年産17億ガロンから72億ガロンに拡大している。更に現在建設中の工場は77工場あり、拡張規模とあわせると、近い将来138億ガロンの生産能力となる。

ブッシュ政権は2012年までに75億ガロン、2017年までに350億ガロンのエタノールを生産してガソリン消費量を2割削減すると公約し、2010年まではエタノール1ガロンあたり51セントの物品税を控除する措置を採っている。計算上、350億ガロンのエタノールをトウモロコシから作るには122億ブッシェルのトウモロコシが必要である。2007/08年度の米国のトウモロコシ生産量は、130億ブッシェルなので、ブッシュの公約を満たすには、ほとんど全てのトウモロコシを食糧や飼料分野からはずしてガソリン代替用にしなければならない。

この矛盾に気付いてブッシュ政権は4億ドルをかけてトウモロコシ以外の素材からエタノールを作る開発を進めている。エネルギーを制すれば世界を制することが出来るとして、多くの民間企業がスィッチグラス、キャッサバ(芋)、パームオイル、廃材や海草などからエタノールを作る技術の開発競争を世界中で繰広げている。

トウモロコシは米国で世界の約4割が生産されている。昨年(07/08年度)の生産高は13,074百万ブッシェル(注:トウモロコシの1ブッシェルは25.401キログラム:大豆や小麦の1ブッシェルは27.216キログラム)、2008年はどうなるかが注目される。

まずは作付面積が今年の生産量の上限を決める。3月末の米国農家の作付け意向(Intention)を探る米国農務省発表の作付け意向面積は、予想に反して(私の予想にも反して)トウモロコシの作付けが予想以上に減少した。もっとトウモロコシを植えるかと思ったが、農家は大豆を選択したようだ。コーンは事前予想の8,760万エーカーに対して、USDA(農務省)の発表では8,601万エーカーと159万エーカーも少なく、大豆は7,130万エーカーの予想に対して7,479万エーカーと大幅増であった。トウモロコシは肥料が余分にかかるため肥料価格の高騰が農家の生産コスト意識を動かし、利益よりも手間隙の少ない大豆の栽培を選んだ農家が多かったようである。そのため、トウモロコシ価格が急騰して大豆が下がった。しかし、大豆はその後アルゼンチンの輸出税付加に対する農民のストライキで反騰している。これから7月にかけては天候が穀物価格を一喜一憂させる季節となる。

講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学 株式・資産形成講座講師
株式会社フィスコ コモディティー代表取締役社長
近藤 雅世

3月27日放送
「金融リアルタイムライブ」よりトピックを抜粋し、構成したものです
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第40回 『ケインズの雇用についての考え方』

古典派では、「物価が変動しても名目賃金が変化して(実質賃金が元に戻るため)雇用量は変化しない」と考えられています。

それに対してケインズは「名目賃金は下方に対して硬直的である」という仮定を付加して理論を再構築しました。この点については先週お話をしましたが、中心が「古典派」についてのものだったので、今週は、主にケインズの考え方を解説します。

まず、ある実質賃金で労働需給が均衡していると仮定します。

この時の実質賃金であれば、労働者も企業側も同じ水準の雇用量で合意することになります。また、この水準よりも物価が高くなった場合には実質賃金は低下することになるので、労働者は「働きたくない」と考えるため、企業は名目賃金が上昇させ、当初の均衡点に戻ることになります(名目賃金は上方向には硬直しないと考えています)。

つまり、物価水準が均衡点よりも高くなった場合には、古典派が想定しているように「名目賃金が高くなる」ことにより、均衡点に戻ることになります。

他方、均衡水準から十分に物価が低い場合、実質賃金は非常に高い水準になります。そのため、名目賃金が伸縮的であれば、名目賃金が下がることによって当初の「均衡に戻る」と考えられるのですが、上述のようにケインズは「名目賃金は下方硬直的である」と考えています。そのため、実質賃金は高い状態になってしまいます。

この時、労働者は(実質賃金が高いので)働きたい者が増加するのに対して、企業側は雇用を渋ることになります。つまり、超過供給の状態になっています。

超過供給になっても「プライス」である実質賃金が変化しないので、当初の均衡点には至らず、超過供給が常態化することになります。

この「超過供給部分」が「失業」に当たることになります。

この考え方によれば、物価が上昇することにより、労働市場における超過供給が徐々に解消され、失業率が低下することになります。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第46号、いかがでしたでしょうか。

みなさんはファンドをどの程度利用していますか。

「今は辛抱の時」とばかりにコツコツと長期スタンスで購入を続けている方もいらっしゃれば「新興国ファンドで一発」を狙う方もいらっしゃるでしょう。

リスク・リターンの大きいファンドと小さいファンド、どちらを利用するのが良いのかは断言できませんが、ファンドにも個々に特性があることはよく理解しておくべきだと思います。

先日お話したとあるアナリストは、そのことを野球に例えてこうおっしゃっていました。

「確実にヒットを放つ1番打者だけでも、逆に一発ホームランを狙う4番打者だけでも試合には勝てない。ファンドもそれと同じで、個々の役割を認識して組み合わせることが大切ですね」

資産運用にファンドを活用している方もそうでない方も、ぜひこの辺り、一考してみてはいかがでしょうか。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
一戸

| 配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み