日経平均株価と日銀短観指数の相関関係の歴史から、現在のトレンドを読み解く方法とは?
それでは、まずは図を見ていただきたいと思います。
これは業況判断DIといって、今見ていただいているのが大企業のもので、右上にありますように製造業と非製造業というふうに分かれています。
1983年からずっと出ている業況判断DIのポイントは何かといいますと、ちょっと歴史の勉強になりますが、バブル絶頂期の88年とか89年当時の日銀の短観を見てみると50以上で、一時は60近くまでありました。
となるとこれはバブルとは言いながらも、私としてはやはり「バブルだから」という理由だけで否定するのはよくないと思うわけです。
もちろん失敗から学ばないといけないので、バブル自体を奨励するわけにはいきませんが、指標的にもよかったということからも、実態として何かがあったからこそあそこまでいったのだと思います。
今の水準はグラフ右側の中段あたりで、実数値は確か8とかだったと思いますが、ここからまた後ろにさかのぼって今現在がどういう水準にあるのかを見てみると、1番直近で突き当たるのは2002年~03年の水準になります。
その2003年~04年は、株価が7600円の安値をつけたあとに、1万1000円~2000円のところでずっと揉み合っていたという時代で、今年の3月の安値が1万1691円ですので、まさしくこの水準まで一旦落ちた株価が戻していると考えられるのではないかということです。
ですが、この株価は今戻してはいるものの、これがもし落ち込むようなことになると、もう1回下落がくる可能性があるかも知れませんので、注意して日銀短観を見ておく必要があるでしょう。
それからもう1つのポイントについては、次の図を見て説明させていただきたいと思います。
こちらは中小企業の業況判断DIですけれども、製造業・非製造業ともに先ほどのグラフと同じように2002年~03年と同じぐらいの水準になっています。
やはり株価というのは景気やいろいろなものが織り込まれて作られていて、指数などは割と顕著にその側面が出ているということなのだと思います。
それでは、さらに別の図を見ていただきたいと思います。
このグラフを見る時のちょっとしたヒントなのですが、今は特に利益を稼いでいるのはグローバル企業が多いですから、内需型というよりもグローバルな大企業の製造業をピックアップしてあります。
順番に説明していきますと、グラフ右上にありますように赤い折れ線が実際の製造業の数値で、青色のグラフは製造業との差分になりますが、差分が分かるのは日銀短観の予測値がでているからです。
その予測値と実績値との乖離が「0」の状態を基準にしてはかった時に、0よりも下に行くとマイナス乖離、上に上がるとプラス乖離ということになり、それぞれ下方修正・上方修正されたということになります。
ここで見ていただきたいのは、バブル期の87年~89年のところで、実際に短観の数値は上がっていて、青色のグラフの盛り上がりも異常に大きくなっています。
これは予想よりもはるかに良かったためで、この上方修正があったからこそ、株価にもマインド的にも大きく影響して上昇していったということだと思います。
一方で89年・90年・91年を見てみると青色のグラフが逆転して、下方修正が目立つようになりました。その結果、株価は1992年~93年に数度にわたって大きく落ちていくことになり、ようやく2003年あたりぐらいから、少しずつ上向きがでてきて「底入れをした」ということになります。
さらに、2000年の4月のITバブルの時も、短観を見てみるとやはり上方修正になっています。
ITバブルでは、2000年の1月から4月の間にそれぞれ個別銘柄が高値をつけ、その時にもやはり上方修正になっていますが、今現在、直近があまりよくないのは下方修正だからです。
そして実は、次回の予測が出ているのですが、もし仮に実績値が下向きになったとしても、差分を表す線が上向きに出るような状況になれば、マインドはよくなっているとも考えられるので、プラスの解釈に変わるかも知れません。
同じようなケースで顕著なのは2004年あたりで、実績値が下向きになっているにもかかわらず数度上方修正されていて、その後一旦マイナスになってから再び上向きに変わっています。
ですので、今回の短観ではこのグラフのような結果になっていて、政府の月例経済報告などを見てもちょっと下方修正されてはいるものの、中身的には本当にどちらにいくのか分からない分岐点にあるといえます。
難しい局面ではありますが、もしこういった最悪期を脱するような形になれば株価的にも上向いてくる可能性があると思いますので、ぜひこのような判断材料も注視して長期のトレンドをつかんでいっていただきたいと思います。
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