割高?割安?拡大した通貨価値のアンバランスが一部是正へ|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/6/11(水)  
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割高?割安?拡大した通貨価値のアンバランスが一部是正へ

ドルペッグとインフレのコントロールとの関係性とは?

世界各国の通貨の大きな流れの中で捉えてみたいと思います。


このグラフは2002年初めの対ドル相場を100として、いろいろな通貨がどう推移してきたか、を示しています。 下に行くほどドル安です。ご覧の通りほとんどの通貨が基調的にドルに対して強くなってきました。

中でもユーロと豪ドルの強さが目立っています。実は、豪ドルの強さは資源高によって説明ができます。 しかしユーロは、景気や金利が相対的にしっかりしているからといって、それで豪ドルに負けず劣らずの強さであるというのは、相当の割高になっていると考えられます。二大通貨の一方として、ドル安の代替先として買われている面もあります。

今回の米経済・金融問題の悪影響で、英国では経済が減速し、金利も少し下がりました。ポンドはこの状況で割高すぎる分の一部を下落させました。

ユーロも年末までには金利の引き下げがありうると見ています。その場合、ポンドと同様に割高すぎる分の一部が下がることになるでしょう。 豪ドルも、米国、英国、ユーロ圏と景気減速が広がり、資源価格が下がる展開になれば、下がる可能性が出てきます。

ここ数年、新興国ブーム、アジア・ブームのように言われて、人民元やその他アジア通貨の多くが相当に上昇しているように思っていたかもしれません。しかしグラフが示す通り、たいして上がってはいません。 人民元は割安水準に人為的にコントロールされ、その分経常黒字も蓄積されてきました。海外情勢の悪化ばかりか、中国の株価が半分以下に下落するなど国内経済・市況が悪化しても、人民元がジリジリと高くなりやすいのは、巨額の黒字を蓄積してきた日本の円と似た構図になっているともいえます。

もっとも人民元の過去1年を振り返ると、上昇ペースが少し加速しています。 なぜでしょうか。ドルに準ペッグ(=連動)させている人民元は、ドル安局面では通貨市場全体の中で割安になってしまいます。 ドル安局面は通常、米国経済の悪化とともに米金利が下がりますが、中国は為替レートの上昇圧力を抑えるために、金利を低くとどめようとします。 景気は過熱気味なのに、通貨は安く、金利は低いとなると、インフレ圧力が高まります。インフレ抑制のためには、通貨の上昇ペースの加速を多少許容せざるをえなくなった、といわけです。

香港とか中東などドルに完全に通貨をペッグさせていると、通貨安、低金利が一層極端になり、インフレのコントロールが更に難しくなります。

ただし中国は、今後世界経済が減速し、輸出が鈍化することで、国内景気が鈍化すると見られます。それとともに為替コントロールの軸足をインフレから成長重視へシフトさせるでしょう。おそらく今年の後半以降、中国当局は、人民元の上昇ペースを過去1年の8~9%から5%程度へ落とすと見ています。

相対的に強かったユーロや豪ドルが反落し、割安な人民元はペースを落としつつもじり高に推移するというのが、来年にかけての見通しです。この図が示すような、ここ数年の通貨間のアンバランスが、多少なりとも是正されるイメージです。

講師紹介
大前研一
リーマン・ブラザーズ証券株式会社
チーフ為替ストラテジスト マネージング・ディレクター
田中 泰輔

5月29日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第48回 『みんな努力しているはずなのに、何故か減らないCO2?!?!』

今年は日本でサミットが行われますが、最大のテーマは「環境」です。NHKでも頻繁に「エコ」についての番組を流し、国民的な意識改善を促しています。

人間の排出する地球温暖化ガス*が、地球温暖化の本当の原因なのか否かについては、いろいろな見解があるのでしょう。しかし、「温暖化ガスの排出をできる限り抑える」というのは、先進国の常識になってきているのは間違えない事実であり、その方向で物事を考えないわけにはいきません。

* 一般にCO2ですが、実施にはさまざまなガスが存在しています。ただ、それぞれのガスをそれぞれに基準をつくっても、煩雑になるだけなので、CO2以外の温暖化ガスはCO2を基準に一定の係数を掛けて算出することになっているので、すべてのガスをCO2に換算して表示できるようになっています。

ただ、AXAの調査によれば、国民サイドにおける「エコ」意識は、日本が非常に高い状態のようです。各国比較でみても、「自分たちが何とかしなければいけない」と考えている割合が高くなっています。

<アクサ ジャパンホールディング株式会社> http://www.axa.co.jp/holding/release/2008/080128release_2_j.pdf

これは、ある意味、非常に頼もしいのですが、残念なことに日本のCO2排出量は、京都議定書で約束した状態を上回っているため、このままでは他の国から排出権を購入しなければならないことになっています。その代金は当然ですが、税金によって支払われます。

多くの国民がエコに関心があり、その努力をしているはずなのに、実際には他の国から排出権を購入しなくてはいけないくらい地球温暖化ガスを排出しているということになります。

これにはいろいろな要因があるのですが、ここでは「京都議定書」というものから考えてみたいと思います。つまり、まず「京都議定書の削減目標」そのものに問題があるということです。

京都議定書における削減目標は、各国の1990年におけるCO2排出量を100%として、そこから「どれくらい削減をするか」というように決められています(日本の場合はマイナス6%です)。

したがって、1990年当時に温暖化ガスの排出が多かった国ほど、実質排出量ベースでの値が増加することになります。

ここで、1990年といえば、日本はバブル経済の真っただ中であり、景気が最高潮であっただけに温暖化ガスはMaxに近いぐらいの量を排出していたはずです。

他方、「欧州は・・・」といえば、例えばドイツについて、1989年にベルリンの壁が崩壊し、東ドイツと統合したばかりであり、ほとんど何の産業もない東ドイツは温暖化ガスをそれほど排出しているわけはありません。

他の欧州諸国も総合的にみて、景気が「非常に良い」という状態にはなかったので、排出量は少ないと考えられます。

また、京都議定書には参加していないものの、米国にしても日本企業に席巻されるくらいの経済情勢であったのであり、現在から比べれば。景気動向は芳しくなかったと思われます。

以上からわかるように、1990年を基準にしたことによって、日本は他の国に比べて非常に不利な状態になったということなのです。つまり、「欧州の戦略」であったわけであり、現在までの流れを考えれば、完全に日本はこの「戦いに敗れている」ということになります。

とはいえ、現時点で日本の排出量は「プラス6.4%」ですから、「議定書」云々に関係なく何とかしないといけない状態といえます(つまり、「減っていない」どころか、増加しているのですから・・・)。この要因として考えられるのは、政府が「企業に排出削減の義務を課していない」ということに尽きると思います。

現在、産業界には「自主目標」というものがあり、かなり「強制的」なニュアンスがあるのですが、「自主」でしかありません。また、排出のベースとなる「基準」が統一されていないので、この「自主目標」自体に実効性があまりない可能性があります。

本来、「この水準よりも排出してはいけない」という基準を作るべきなのに、「そのようなことをすると、日本の産業界の競争力が衰える」という理由で、その基準が作られていないようです。

でも、「企業競争力が鈍るから、基準を設けない」ということは、「トータルとしての削減努力はしない」といっているに等しく、そのために排出してしまったツケは、国民が税金負担をして他の国から排出権を購入することになるのです。

したがって、日本全体として排出量を削減するには、エコ商品を購入するのは当然としても、そのエコ商品を製造する際に排出される温暖化ガスも含めて、どのくらいの排出量になっているのかを消費者が監視し、企業にその努力を促す必要があるのです。

当然、この動きは後戻りしないわけですから、投資家としても、その点をしっかりと見極め、「トータルとしてのエコ」に取り組む企業に注目する必要があるでしょう。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第54号、いかがでしたでしょうか。

一番身近な金融商品は何かと問われたら、多くの方がまず生命保険と答えるのではないでしょうか。

でも、私の周囲で聞く限り、その使われ方はあくまで「保険」としてが大半で、投資商品として保険を活用している人は一部に過ぎません。

主要保険会社の財務健全性はA、AAと、日本国債を発行する日本国そのものよりよっぽど優良ですし、外貨建て保険には4%前後以上の利回りを保証するものもあり、例えば自分があと20年、30年以上生きる前提で死亡保障の付いた外貨建て保険商品を解約返戻金目的で購入することは、立派な海外投資です。

保険の仕組みを理解し、投資商品として活用することは一番手軽な国際分散投資と言えるのではないでしょうか。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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