原油問題を解決する特効薬は見つかるか!?|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/6/18(水)  
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原油問題を解決する特効薬は見つかるか!?

世界経済減速の根本的な原因は、サブプライム問題よりも原油高

4日、経済協力開発機構(OECD)は、世界経済見通しを公表しました。日米欧など加盟30カ国の2008年の実質経済成長率を1.8%と、昨年12月時点の前回予測(2.3%)から下方修正。当面は景気減速とインフレが同時進行するとの見方を示しています。

それでは下のグラフをみてください。


2008年主要国・地域のGDP成長率の見通しによると、押し並べて2007年に比べて2008年の見通しは低い水準です。また、OECD全体の成長率も1.8%と低水準になっています。日本、米国はそれをさらに下回るという見通しです。


一方、2008年主要国・地域のインフレ率の見通しでは、トップのロシアは10%を越えるインフレ率が予想されています。日本は、2007年0.1%から2008年は0.9%という見通しになっていますが、これでもデフレ脱却宣言はしないという状況です。

このような世界経済の見通しについて、とりあえずサブプライムの問題を指摘する人が多いのですが、今回の分析を見て私が改めて感じるのは、元凶は「原油高」だということです。物価高、石油高、そこから直接的あるいは間接的に波及した農産物などの高騰という流れを見れば、これは明らかだと思います。

元凶たる原油高への対策として、原子力や太陽エネルギーなどの代替エネルギーの開発によって対応しようという動きが見られます。しかし、TIME誌の記事によると米国の代替エネルギーへの開発費用というのは、わずか3,200億円に過ぎないと指摘されています。3,200億円という金額は、米軍がイラクにおいてたった40時間で費やしてしまう金額と同じだと言うのです。

米国は原油を求めてイラクと争って危機に陥ったわけですが、この事実を知るといかに的外れな戦略であったかということが分かります。このような状況に対してブッシュ大統領は、どのように言い訳できるでしょうか。米国が本当に原油に悩んでいるというなら、もっと真剣に原油問題に対する解決策を考えるべきだと思います。

また、代替エネルギーの可能性を考えるだけでなく、原油問題のネックがどこにあるのか、もう一度見直してみるのも良いと思います。原油問題には、様々なネックがあります。その中でも私が重要だと感じるのは、生産国が思ったように生産できる体制が確立できていないという点です。

代替エネルギーの研究も重要でしょうが、原油を生産してから消費地まで運ぶ流れの中にある1つ1つのネックを解消するためにお金を使った方が、より効率的に今抱えている原油問題を解決できるのではないかと思います。


●原油高問題を考える上で重要となる3つのポイントとは?

TIME誌以外にも、ニューズウィーク誌やビジネスウィーク誌など、最近では米国のあらゆる雑誌で原油高についての分析記事を見ることが多くなりました。私もいくつかの雑誌記事を読んでみましたが、結論として今の原油高の根本的な問題となっているのは、次の3点だと分かります。それは、「実需が伴っていないこと」「資金の行き場がなく投機資金が流れ込んでいること」「今後の展開は専門家でも予想しづらい状況にあること」という3つです。

TIME誌に掲載されていた5人の識者の意見でも、今後の原油価格は「このままの勢いなら1バレル500ドルまで上がる」という人もいれば、逆に「実需から考えれば1バレル70ドルくらいまで下がる」という人までいて、5人がバラバラの展開を予想しています。識者と言われるプロの目で見ても、これだけ意見が別れるというのは珍しいことでしょう。

このような状況になってしまうのは、原油に投機資金が入り込んできているため、実需から離れて、ヘッジファンドやインベストメントバンクの思惑によって価格が推移するためです。そもそも、他に投機資金を流せる場所があれば問題は解決するのですが、そういう意味ではサブプライム問題の影響が大きいと言えます。

サブプライム問題によって、世界の株式市場で値が上がらない状況が続いています。ヘッジファンドやインベストメントバンクにとって見れば、株式市場が「美味しくない」状況なので、コモディティ市場を狙って行くという思考です。

このように投機家の資金の行き場がなくなっていること、そして、世界全体として金余りの状態になっていることが、抜本的な意味における原油高の原因を作っているのです。その結果、供給は下がっているのに原油価格は上昇するという矛盾を生み、かつ原油生産のシステム全体も効率的に機能していないため、いざ生産しなければならない状況になっても、すぐには生産できないといった悪循環に陥ってしまっているのだと思います。

ロシアなども、まだまだ原油を生産できると言いつつもなかなか実現しないのは、根本的にこのような構造の中に組み込まれているために、原油生産体制におけるネック部分を解消できていないからです。

ロシアのメドベーチェフ氏はこの点を理解しているのでしょう。先日行われたメドベーチェフ氏の演説では、国家の威信をかけてこの問題を解決すると述べていました。石油会社に免税を認め、その分の予算を使って生産から消費までの一連の生産体制の見直しを図ってもらいたいとのことでした。

世界経済の見通しとして、とりあえずサブプライム問題という発想ではなく、より抜本的な問題は何かという点を見落とさず、原油問題の解決に努めることが大切だと思います。色々な分析や見方はありますが、結局、問題の本質はシンプルです。本質的問題の発見は、あらゆる問題解決の第1歩であり、その重要性を改めて理解していただきたいと思います。

講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

6月8日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第49回 『何故、米国は「強いドルは国益」なのか?』

最近の円/ドルレートは、一頃に比べて若干円安方向に振れています。つい先日までは「90円/ドルを突破するのでは・・・」とみられていましたが、現在108円/ドル台になっています(6/13のNY市場)。

「円安」というか「ドル高」に振れた要因としては、このところの米国高官の発言が大きいと思われます。特に「強いドルは米国の国益」というお馴染みのフレーズが、ここ最近よく聞かれます。

今回の主要8カ国(G8)財務相中央銀行総裁会議でも、為替安定ということで一致した模様であり、投機的な動きがある場合には、「為替介入も辞さない」という構えであることから、ドル安になりづらい展開になっています。

とはいえ、米国経済をみた場合、サブプライム問題が完全に片付いたわけでもなく、景気状態も芳しくない中、金利引き下げを打ち止める状態ではありません。したがって、経済のファンダメンタルズでいえば、「ドル安、やむなし」ということになるかもしれません。

つまり、経済の流れに任せれば、ドル安になるはずの動きを、人為的に「ドル高」になるように操作している可能性があります。このため、場合によっては、一気にドル安に傾くことも考えられるくらい、「非常に不安定な相場である」といえます。

まぁ、相場観については、いろいろあると思いますので、ここでは「何故、米国はドル高を望むのか?」について考えてみましょう。

一般に経済学の教えるところに従えば、当該国通貨が高くなると、輸出企業の売上が自国通貨ベースで小さくなることから、自国通貨で計ったGDPが減少し、景気を悪化させることになります(円高に振れた分をカバーするために、相手国での販売価格を引き上げると、数量が減少するので、やはり、輸出が減少することになります)。

逆に、自国通貨安は、輸出企業にとって自国通貨ベースで売り上げが増加することになり、景気の押し上げ効果があると考えられています。

つまり、自国の通貨価値は、当該国政府(というか、自国通貨ベースの景気)にとって、低い方が良いはずなのです。実際、日本でも「円高は困る」という報道が多く、逆に「円安」に対しては歓迎ムードがあります。

にもかかわらず、米国では「ドル高」を政府挙げて推し進めています。

これは「ドル」が世界通貨であることに起因していると思われます。つまり、米国にとって「ドル」は国内だけの通貨ではなく、世界に通用するものなので、「ドル」を刷れば、世界中でモノを買うことができるのです。それゆえ、ドルの「購買力」は「高い方が良い」ということになるのです。

当然、米国でも輸出産業はドル安の方が経済的には有利になるはずですが、この国は大幅な経常収支赤字国であり、輸入側の有利さの方がメリットは大きいことになります。

また、「経常収支赤字である」ということは、「資本収支黒字である」ということなので、多くの国から資金を借りていることになります。

したがって、ドルの通貨価値が維持できないとすれば、資金流出を招き、急激な通貨安になる恐れがあります。そうすると他国から資金を借りることができず、さらに、通貨安を招き、世界通貨として地位が危うくなります。

このように米国では「ドルが世界通貨である」ということを活かして、世界戦略を立てているので、「強いドル」は、まさしく「米国の国益」なのです。

とはいえ、各国ともに「強い通貨」は、他の国のモノを買う力が強いことを意味するので、中長期的にはメリットになるはずです。すでに経済はグローバル化しているのであり、自国通貨ベースのGDPだけ、または、自国通貨ベースの企業決算書だけで判断をする時代ではなくなってきていると考えるべきです。

つまり、売上数量が同じでも、為替レートが円安だから「営業成績が良くなった」というのは、当該企業の実力と考えるべきか否かは明らかです。これは国全体でも同じです。

「自国通貨が高い」ということは、他の国に比べて自国の通貨の「購買力が高い」ということを意味するので、本来「強い通貨」は、どの国にとっても「国益」と考えるべきなのです。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第55号、いかがでしたでしょうか。

日本に住む友人がCNN(アメリカのニュース専門局)を絶賛していました。

理由を聞くと、彼の中ではCNNに3つの活用法があるそうです。

1.海外のニュースにも広く目を向け、アンテナをはっておく
2.CNNのキャスターが話す言葉は非常にきれいで、英語のよい勉強になる
3.ニュースを投資情報の一環として聞き、資産運用に活かしている


日本の市場がアメリカ連動型だからなのか、3.を実践している友人は他にもおり、聞いたニュースを受けて次なる投資先はどこなのかと知恵をめぐらせていました。

どの活用法も今の私に必要なことばかりなので、近々私も実践してみようかと思っています。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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