下げ続ける米国金利と「緊急権限」発動|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/7/16(水)  
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下げ続ける米国金利と「緊急権限」発動

緊急権限を求めるほどに、米国経済はシリアスな状況だと見るべき

米国のポールソン財務長官が欧州やロシアを歴訪し、各国当局者と政策調整を急いでいるとのことです。これは、米国と欧州の(政策)金利差が広がりつつある現状に対する危機感が背景にあるものと思われます。また、同財務長官は金融システム不安に対処するため当局に「緊急権限」を与える意向も表明しました。

「緊急権限」という特別な権限を与えることに対する危険性を指摘する人もいるかもしれませんが、ポールソン財務長官であれば、おそらく他の誰よりも「適切に判断する能力がある」と私はみています。

ただ、今回、私が注目したいのは、「緊急権限」発動の是非ではなく、米金融業界の大ベテランであるポールソン財務長官ほどの人物が「緊急権限」を言い出さなければならない状況に「米国経済が追い込まれている」という事実です。このポールソン財務長官の対応から、今の米国経済の置かれている状況が相当シリアスな局面を迎えているのだと感じます。

先日もFRBや連銀が議会の承認を得ることなく、サブプライム問題によって窮地に追い込まれた米大手証券ベア・スターンズ の救済に乗り出すという緊急対応を行いました。おそらく、このケースと同様、議会を通じて制度を作るという通常の手順を踏んでいては間に合わないような事態が、さらに起こりつつあるのか、あるいは、今後もそういう局面が起こる可能性が高いのだと思います。

そして万一、米国経済が、今よりもさらに深刻な局面を迎えた時には、いち早く対応手段を講じることができるように、誰に相談することもなく、一昼夜で政策決定が出来るという自由度をもった権限が必要だというのが、今回のポールソン財務長官による「緊急権限」が意味するところだと思います。私が知る限り、近年、米経済界がここまで追い込まれている状況は記憶にありません。


●米ポールソン財務長官が恐れているのは、欧州への資金流出

先進各国の政策金利の推移を見てみると、07年~08年にかけて、FRBの金利が5%から2%へと下がっている中、ECBが2%から4.25%へと引き上げられ、またBOEが5%をキープし、欧州が堅調な推移をしているのが分かります。


この状況において、ポールソン財務長官が危機感を感じているのは、米国金利が急落しているという事実そのものよりも、米国と欧州の金利差が拡大することで、米国内の資金が欧州に流れてしまう可能性だと思います。つまり、このまま金利差が拡大してしまうと、これまでに例がないほどのドル安ユーロ高になる可能性があります。そして、その結果としてドル安で低金利の米国からユーロ高で高金利の欧州へと多額の資金が流出してしまうというわけです。

確かに、今回の米国政策金利の急落ぶりには目をみはるものがありますが、同程度に米国金利が急落するという経験は過去にも体験しています。2001年に6%を超えて上昇していた米国金利は、2001年のITバブルの崩壊を契機に2004年には1%台まで下落したことがあります。ですから、今回米国金利が2%まで下がったとは言っても、未曾有の低水準というわけではありません。

今回のポールソン財務長官による「緊急権限」発動という背景には、こうした欧州と米国経済との関係性があるという点を理解するべきです。単に、米国金利が急落したという表面的な事象だけを見ていても本当に意味するところが分かりません。

深刻な局面を迎えている米国経済ですが、私に言わせれば、それでも完全に世界経済から孤立し、一人蚊帳の外状態になっている日本経済に比べれば「マシ」だと感じます。米国金利どころではなく、日本の金利は最近上昇したといっても0.5%という低水準で、この10年間一貫して地をはいつくばったままです。完全に世界経済から取り残されている感が拭えません。

とはいえ、米国経済は厳しい状態になってきていると考えられ、しかも、段々と深刻な状況になってきたという段階だと私は見ています。

講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

7月6日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第53回 『原油高騰って、何が原因なの?!?!』

モノの価格は「需要」と「供給」によって決定されると考えられています。つまり、ある価格により均衡している状態で、供給が一定なのに需要が増加すれば、価格が上昇することになります。

現在の原油価格も同様であり、供給(つまり「売り」)よりも需要(つまり「買い」)の方が多いため、原油価格が高騰しています。

また、この原油価格の高騰は、主に先物相場で起こっています。先物市場で原油価格が高騰する理由として、「今後、発展途上国が、なお一層進展し、石油等の燃料を大量に使うから・・・」というものがあります。

実際、途上国が発展するためには原油が必要だと思いますが、「だから」といって。これほど急速に原油価格が上昇する必要はないように感じます。

また、本当にこれほどの需要が将来的に「ある」とすれば、もっと急速に代替エネルギーの話題が盛り上がるはずではないでしょうか。したがって、「途上国・・・」云々は、ある種、「ひとつの理由」としては「あり得る」とは思いますが、現状の高騰を説明するには弱いように思います。

とすれば、何が高騰の原因なのでしょうか?

たとえば、急速な高騰に加えて、夏に向けて北半球が冷房等のために原油の需要が高まることを見込んで、電力会社などを中心として(加えて「国家的」にも)「備蓄」を増加させているということも考えられます。

通常の経済状態(原油の需要状態)であれば、増加させることのない「備蓄」のための購入が、各国で急速に高まれば多大な需要になることから、価格を押し上げている可能性があります。

おそらく、このような需要は相当あると思われ、現在に価格高騰に寄与していると思われます。

しかし、「途上国」にしても「備蓄」にしても、いずれにしても「実需」に関係することになりますが、「実需に関係して上昇している」にしては、現在の高騰は異常過ぎると思います。また、この高騰が早まったのは、米国のサブプライム問題の表面化、および、それに伴うFRBの金融緩和政策がとられてからであることを考えれば、「実需」ではない部分での高騰を考えた方が良いように思います。

本来、金融緩和によって「おカネ」が増加したとしても、すぐにインフレが起こるわけでもありませんし、ましてや不況下、原油価格が高くなる理由もありません。金融緩和は、時の経過とともにじわじわと効いてくるのであり、一足飛びに「インフレ」「原油高騰」という事態になることには少し疑問です。

つまり、「金融緩和⇒銀行貸出の増加⇒企業活動の活性化⇒設備資本関係の需要の増加⇒生産活動の本格化」のような感じで需要が増加する(景気が回復傾向になる)のに従い、エネルギー価格も徐々に高くなってくるのがセオリーのはずです。

しかし現状、原油が高騰し、世界各国で「インフレ」の脅威にさらされています。これは、やはり、グローバル経済に伴うホームレスマネーが原因であると考えた方が理解しやすいと思います。

今、米国を中心に世界的に不況感が漂う中であり、金融緩和が行われたからといって、容易に銀行等が貸出を増加させることもないので、金融機関サイドにおカネが滞留します。しかも、国民も不況なので消費を減少させることから、貯蓄が増加することになります。特に、将来不安がある場合には、必要以上に流動性(おカネ)を手元に置こうとするので、現状、消費大国アメリカといえども、手元流動性は高まっているように思います。

そのような資金は、実需としての(設備)投資や株式投資のようなリスキーな部分へは流れず、まずます銀行等の金融機関に滞留することになります。そうはいっても、銀行などの金融機関も資金を滞留させ続けることはできず、不況下においても運用をせざるを得ないので、専門のファンドなどに資金を流すことになります。

また、このようなファンドも「利」を出さないと意味がないので、「利」を求めて動き回ることになります(ホームレスマネー)。そのような資金が注目するのは「世間で最も注目されているモノ」であり、それが「原油だった」ということでしょう(「ゴールド」もその一つと考えられます)。

つまり、原油は、単に「投機対象」として選ばれただけであり、「上がる」というコンセンサスさえあれば、「チューリップの球根」でも良かったわけです(「上がる」ことに対する理由はいろいろ後付けで考えられます)。

しかし、「原油」であるだけにコストプッシュ・インフレをもたらし、世界中が迷惑な状態になっているのです。したがって、対象物が「原油」でなかったとすれば、今のようなスタグフレーションにはならず、問題が顕著することもなかったかもしれません。

とはいえ、現状の「原油高騰」は、その高騰が「止まらない」ということが原因となって上昇をしているのであり、そこでは「如何様にも」理由をつけることができるのです。

つまり、「上がる」から「備蓄を増やす」のでまた上がる、だから、投機家たちもさらに「上」を買いにくるという、ある意味「合理的なバブル形成」になっていると考えられます。

したがって、それを止めるには、現状、ファニーメイやフレディマックなどの問題が浮上する中、米国内的には困難ではありますが、世界経済を考えれば「資金供給(米国の金融緩和政策)を断つ」しかないと思っています(でも現実は、今回のファニーメイ等の関係で、さらに資金供給は増加する可能性がありますが・・・)。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第59号、いかがでしたでしょうか。

日曜日に近くの複合商業施設に行きました。

目的は家電や生活用品の購入だったのですが、その並びに「医療保険ショップ」なるお店が入っていました。

どこかの保険屋さんのアンテナショップかと思いきや、話を聞いてみるとそこは国内外20社以上の保険業者と繋がりを持つ代理店だそうで、顧客の家族構成や経済状況に合わせ、必要な保障だけを無駄無く賢く組むためのアドバイスと販売を行っているそうです。

特定の業者の商品枠にとらわれないので、第三者的な立場から総合的に保険というサービスを比較検討することが出来ますし、ショッピングモールという場所柄、自分の家族とその場で一緒に相談しながら一家の保障を考えられるのはとても意味のあることだと思いました。

お店の方曰く、こうしたショップは3年ほど前からジワジワ増えてきているとの事でしたが、日本中至る所でこうした販売側一辺倒でない検討機会が増えれば、保険需要はまだまだ伸びるのではないか、そう感じました。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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