ベア・スターンズの破綻は、山一證券とほとんど同じ!?|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/7/30(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第61回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。
メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の一戸です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。
あなたの理想とする資産運用、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

本文タイトル
ベア・スターンズの破綻は、山一證券とほとんど同じ!?

13日、米財務省と米連邦準備理事会(FRB)は、経営が悪化している米住宅金融専門会社、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の支援に向けた緊急声明を発表しました。必要に応じて公的資金による資本増強を検討するほか、FRBが両社の資金繰りを全面的に支援するとのことです。

ファニーメイとフレディマックというのは、ちょうど日本で言うところの住宅金融公庫に近い存在だと言えます。その両社の経営危機への対応ということですが、この背景にあるのは、サブプライムではなく、いわゆる「プライム」部分の優良な住宅ローンだと言う点を理解しておくべきでしょう。

米国では随分前から、住宅ローンを貸し付けるだけでなく、その貸し付けたローンを小口債権化して売りさばくという手法がとられていました。これはサブプライムではなく、優良なプライム部分の債権ですから、米国債に準ずる信頼感を持っていたと言っても過言ではないでしょう。それ故、世界の金融機関が、米国債を買うようなつもりで大量にこの債券を購入するという状況を招いたのです。

実際、日本の農林中金は約5兆円、三菱UFJも約3兆円、みずほFGが約1兆円分の米住宅公社関連債券を保有しています。日本全体で見ると、その保有額は50兆円とも言われていますから、万一、債券がデフォルトしたら、その影響は大きく、決して無視できない金額だと思います。


まだ現在のところ、債券のデフォルト危機までは見えていませんが、米国政府としてもかなりの危機感を感じているのではないかと思います。昨年の夏、サブプライムの住宅問題が取り沙汰された頃から米住宅公社2社の株価は若干懸念されていました。そして、昨年の暮れには一度大きく下落しています。今年になってから小康状態を保ち、3月ごろには一度持ち直す兆しを見せましたが、ここに来て「0」に近づく勢いで急激に下落してきています。



こうした流れの中で、このままでは「破綻」の危機があると感じたからこそ、米国政府は週末の緊急対応という形で今回の発表を行ったのだと思います。株価は落ち込んできていますが、現時点では債券そのものがデフォルトされたわけではありません。しかし、万一、債券がデフォルトされる事態になれば、米国発の世界金融危機に陥ることになります。今、米国政府は、そのパニックを何とか未然に防いでいるという状況でしょう。

この米国政府の慌てた対応には、米住宅公社関連債券を保有している世界の金融機関は震撼したことと思います。おそらく、総額50兆円を抱える日本の金融機関も、大きな危機を感じたのではないかと私は思います。

取り急ぎの対応として「公的資金」の注入が決まったわけですが、今後の救済方針としては「国有化」というのが最も現実的なプランだと私は見ています。国有化して経営を立て直した後、再び株を売り出すことができれば、その利益を還元することが可能です。

国有化せずに資本注入という方法も可能ですが、その場合には資金援助に使われた納税者の税金はそのまま毀損してしまう危険性が高く、それは避けるべき事態だと私は思います。


●米国は、日本のバブル崩壊後15年と殆ど同じプロセスを歩んでいる

今、米国経済が直面している状況は、まさに日本が89年のバブル崩壊からの15年間に渡って経験した状況に酷似していると私は思います。日本の場合には、89年にバブルがピークを迎え、そこから株価は下落に向かいました。


95年頃までは、日本政府はバブルの崩壊を明言せずに取り繕っていましたが、95年12月の住専への公的資金注入から、いよいよバブル崩壊は隠すことができず、大きく展開していきました。三洋証券、拓銀、山一證券が次々と破綻し、98年10月の長銀の特別公的管理、同12月の日債銀の特別公的管理にまで至ります。

その長銀は約7兆円~8兆円の公的資金を注入して何とかバランスシートを健全化した後、リップルウッドにわずか10億円で売却、日債銀はあおぞら銀行として再建されるまで長期間にわたって国有化という状況が続きました。

今の状況を見ていると、この日本が辿った15年の長いプロセスを、若干早送りではありますが、米国は再び同じように歩いているように見えます。住宅関連を契機にしている点も同じですし、先日、流動性危機による破綻に見舞われたベア・スターンズは、日本における山一證券とほとんど同じ状況です。

また、最も米国で深刻な状況に追い込まれているシティバンクについては、長銀や日債銀と同様、公的資金の注入、もしくは国有化は免れないだろうと思います。現在、シティバンクはTier 3の資本約45兆円を処分すると発表しています。この実現のためには20兆円以上資本を増強させる必要がありますが、これを公的資金以外で世界から集めてくるというのは非常に難しいと思います。ファニーメイやフレディマックも、一時国有化に近い形ですから、この点でもやはり日本と同じプロセスだと言えるでしょう。

現在の米国経済の状況について「金融危機から脱した」という人は、あまりにも楽観的に過ぎると私は思います。これまで米国政府は企業救済を積極的には行わないという特徴がありましたが、日本が辿ったプロセスと同じように進んでいくとすると、おそらくこれまでに経験がないほどに、企業救済を迫られるタイミングが来るのではないかと思います。日本が味わったバブル後の15年間をこれからの5年間くらいで圧縮して経験することになるというのが、私の見込みです。

日本と同じプロセスとは言っても、大きく異なる点が1つあります。それは、米国の一般投資家は米国経済が傾けば、すぐにでもユーロなどへ資金を移す可能性が高いということです。日本の場合には、その国民性も影響して、事態が悪化してもじっと動かずに待ち続けるという状況になりましたが、米国においてはそうはならないでしょう。この点では、今の米国政府は当時の日本よりも、さらに厳しい状況にあると言えるかも知れません。

ポールソン財務長官もバーナンキFRB議長も、日本と同じ轍を踏まないと発言しています。日本のように15年もの長期間にわたって、のらりくらりと歩き続けるつもりはないと。

私としては、両者の今後の活躍にぜひ期待したいところです。

講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

7月20日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第55回 『モノが上がっても「企業は儲からない」って、どうよ!?!?』

現在、いろいろな商品が値上がりをしています。

「モノが高くなる」というのは、生活にとって負担が大きいことなのですが、中でも生活必需品関係の値上げは、一般消費者に厳しい生活を強いることになります。

「生活必需品」というのは、需要の価格弾力性(価格変化に対する需要変化の割合)が小さいので、例え「値上げ」されたとしても、消費者サイドで買い控えることが少ないのです。

つまり、「高い」からと言って「買わないわけにはいかない」のが「生活必需品」なので、この部分が高くなれば、直接、家計に響くことになります。

他方、現在の値上げは業者としても「原油」等のコスト高に起因するものなので、「値上げした」からといって「利益が増加する」という状態にないのが普通です。

そもそも、メーカー側からいえば、もっと以前に「値上げをしたい」と思っていたはずです。

本来、原材料等の「コストが高くなった」といっても、基本的に「一過性」の可能性が高いので、コストが変動するごとに「価格」を変更するわけにはいきません。価格変更には価格表示や広告の修正を余儀なくされるので、価格変更のたびにそれなりに多大なコストが別途かかることになります(これを「メニュー・コスト」といいます)。

このようなコストの他に、消費者側としても「定価」が頻繁に変化すると、当該商品に対する貨幣の価値尺度機能が働かなくなることから、当該商品の「商品としての価値」が確定せず、購買意欲を減退させてしまうことになってしまいます。

したがって、「原油が上がったから、明日から値を上げまず」というわけにはいかないので、今までは「赤字覚悟」で「据え置き」をしていた業者も多いと思われます。

そういう意味で、業者側は「辛うじて、もとの利益水準になった(または、赤字が解消した)」という程度であり、従業員の給料等を引き上げるような状態にはないといえます。

このように現在の経済では、給料等の所得が上昇しない下でのインフレ状態だけに、景気が浮上する状態にはなく、加えて、「原油」等は輸入に頼っているので、国全体とすれば所得が海外流出していることになることから、景気が下降する、いわゆる「スタグフレーション」になっていると考えられています。

とはいえ、経済活動もこのような「混沌(カオス)」から新しいモノ(この場合、具体的な「物」だけではなく、「考え方」「仕組み」なども含みます)が生まれ、パラダイムシフトが起こると考えられています。そういう意味ではそろそろ「次の何か」を模索して相場を考える時なのかもしれません。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第61号、いかがでしたでしょうか。

最近は特にFPさんをよくテレビで見かけるようになったと思います。

これだけ不況が続いていますし家計も楽ではないので当然と言えば当然なのかもしれませんが、先日、定年退職された男性がある有名なFPさんに対し、「私はもう長期運用という年齢ではないし、かといってギャンブル投資はしたくないので運用する意味はないのではないか」と質問を投げかけていました。

それを聞いたFPさんは「日本の平均寿命が80歳だからそれと比較して十分な運用期間が無いと判断するのは大きな間違いです。65歳で健康な方は平均寿命より長く生きる可能性の方が高く、20年あればギャンブルではない投資運用の期間としては十分です。ぜひ投資信託など身近な金融商品を知り、検討することをおすすめします」とアドバイスされていました。

私も思わず納得して首を縦に振っていると、横で見ていた68歳の父が「俺も今から資産運用考えてみようかなー」とつぶやいていました。

うちも遂に2世帯資産形成が実現しそうです。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
一戸

| 配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み