原油価格の下落は本当に良いこと!?|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/8/20(水)  
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原油価格の下落は本当に良いこと!?

この原油価格の下落から何を学び取るか?

先月29日午前のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は大幅反落。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の9月物は一時、前日比4.31ドル安の1バレル120.42ドルと、5月上旬以来の安値を付けました。

今回これほど急激に原油価格の下落を招いたのは、今の原油価格が実需によるものではなく、ヘッジファンドなどによる投機資金によって動かされていることに起因していると私は見ています。

サブプライムの影響もあり、ヘッジファンドなどは他に投資する先が見当たらないため、昨年夏以降こぞって原油への投資へと乗り出しました。結果として、昨年夏には60ドル~70ドル/バレルで高値をつけたと言われていた原油価格は、2008年直近では140ドル/バレルを突破するほどに急激に高騰することになりました。

実需に応じて原油価格が上がるという正当なメカニズムによるものではありませんから、どこかの段階で限界に達して、値段が下落するのは当然のことです。どこが高値になるかは専門家でも意見が別れるところですが、私としては140ドル/バレルを長期間維持するのは難しく、そろそろ下落を始めてもおかしくないと思っていた頃でした。

というのは、1バレル当たりの原油価格が140ドルを超えて、150ドル・160ドルと上がってしまうと、代替燃料への乗り換えが起こる、あるいは原油の使用そのものを控えるようになるからです。

今回の原油価格の急激な下落で大きな損失を計上しているヘッジファンドなどもいるでしょう。今後の手仕舞いの方法やタイミングに頭を悩ませているかも知れません。しかし、ここ数年の原油価格・WTI先物の推移を見ると分かるとおり、20ドルという下落幅は、昨年から今年にかけての急激な上昇幅を考えると、特別に大きな数字ではありません。むしろ、20ドルの下落でもまだ不十分だと言えるくらいです。


昨年から急激な上昇を続ける原油価格は、未来永劫上昇し続けるかのごとく考えていた人は、今回の下落によって目が覚めたかも知れません。500ドル/バレルまで上昇すると主張していた人もいるようですが、その事態がどれほどリスキーかつ非現実的かということが分かったのではないでしょうか。 また、数十年に渡って、石油の代替燃料を阻止してきたOPEC(石油輸出国機構)にとっても、確かな気づきがあったでしょう。それは、さすがにここまで原油価格が高騰してしまうと、一気に代替燃料へとシフトすることにつながり、原油価格の高騰が必ずしも「OPECの利益になるわけではない」ということです。


●原油価格の今後の展開は?

今後、原油価格が「どこまでも上昇していく」と考えるのは、あまりにも能天気に過ぎるというものですが、「いくらの値段が適当なのか」という判断は非常に難しいところです。TIME誌に掲載されていた5人の識者による原油価格の予測を見ても、200ドルから500ドル/バレルに上がるだろうという人もいれば、70ドルから80ドル/バレルで落ち着くという人もいます。識者の予測としては、極めてブレ幅が大きく、とても「予測できている」とは言えない状況です。

代替燃料が大きくクローズアップされてきていますから、原油と代替燃料とのバランス関係によって、腹の探り合いのような状況が続くのではないかと私は思っています。それによっては、現状は空前絶後の高値になっているとは言え、急激には価格は下落せず、徐々に下がっていくような展開を見せることも考えられるでしょう。また、今回の原油価格の下落で大きな損失を被った一部のヘッジファンドなどが、今後、どのような動きを見せるのか、非常に気になるところです。

ただ、より興味深いのは、原油価格が最終的にいくらの値段になったとしても、社会はそれに適合するように変質していくという点です。8月4日号のビジネスウィーク誌の記事に「SHOULD OIL BE CHEAP?(オイルは安くあるべきか?)」というものがありました。この論文では、原油価格が高いことのダメージは当然のことながら大きいが、それでも値段が高いなら高いで、また別の新しいビジネスが出現してくるものなのだと指摘しています。

こうした広い視野を持てるようになると、原油価格の高騰/下落で一喜一憂することもなくなるでしょう。一流のビジネスパーソンとしては、このような大きな視野を持ち、そしてビジネスセンスを磨き続けてもらいたいと感じます。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

8月3日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第57回 『ここにきて「景気拡大政策」って、どうよ!』

次回の臨時国会の焦点として与党(自民党・公明党)が考えているのは、景気刺激策として財政出動も視野に入れた景気拡大政策の実施法案を成立させることにあるようです。

経済学的にも「景気が悪い」という場合には、GDP(GDE)項目である政府支出を増加させれば、その支出が他の主体の所得になり、消費を喚起させることから、当初の政府支出を上回る経済効果を及ぼすことができると考えられています(というか、考えられていました)。

これを「乗数効果」といいますが、果たして、そのようにうまくいくのでしょうか?

現在考えられている景気刺激策としては、大きく2つが報道されています。

・住宅減税

・証券税制の見直し

ここで「住宅減税」というのは、景気刺激策でよく登場し、一般に「非常に効果的である」と考えられています。

なぜならば、「住宅」というのはいろいろな部材によって出来上がっている上に、そのパーツを組み立てるために多くの業者が入ることになるからです。さらに、新しい住居に移転すれば、それなりに「新しいものも欲しくなる」ので、生活用品(家具や電化製品など)の需要も期待されます。

そのようなことから、減税規模に比べて景気に与える効果が高く、不況期には良く使われる政策の一つになっています。

しかし現在、家計部門が消費を伸ばさないのは、①所得が伸びていない(給与水準が変わらない状態にある)ということに加え、②年金問題などによって将来不安が高まっていることが要因なのです。

上記の要因のうち①は、通常の不況時にも起こることであり、むしろ、これを改善するために景気刺激策を行うわけだから、「当然」といえば当然です。

しかし、今回の不況の特徴は②の「将来不安が非常に高い」ということにあり、これが家計の消費にかなり大きく影響を与えているところにあります。したがって、現時点で家計貯蓄がある程度あっても、その資金を「使いたくない」、または、「使えない」という気持ちにさせているのです(この気持ちは①だけが要因ではなく、社会システム全体に問題があることが多いので、その点の対策が必要と考えられています)

この部分の対策がない中で、住宅減税を行っても、住宅そのものに対する需要も「それほど期待できない」と思われる上に、たとえ住宅を購入したとしても、それに波及した消費需要があまり期待できないので、乗数効果が薄いように感じます。

また、減税規模にもよりますが、この景気拡大策によって新たな資金調達が必要になった場合、国債発行で賄うのであれば、効果は「極めて限定的」、または、「マイナスの経済効果」を生じさせる可能性があります。

というのは、現在国債だけで900兆円にも及ぶ公的債務残高を抱えているのであり、これに対して今までは「改革路線」ということで、曲がりなりにも国民(および、海外投資家)に安心感を与えていたものが、ここにきて「国債を新規発行する」となれば、その信頼感さえ失われてしまいます。

「国債」はいずれ国民が税金によって将来返済しないといけないものであり、これを「増やす」ということは、将来不安をさらに深刻にさせることになります。

また、そのような事態になれば「日本国債の格下げリスク」を高めることになるので、海外投資家は資金を回収する可能性さえあります。

現在大切なことは、「目先のこと(選挙対策など)」ではなく、如何にして「将来不安をなくすか(または、減らすか)」という対策が重要と思われます(したがって、景気拡大策をとるのであれば、むしろ「社会保障関係を増やす方向に考える必要があるのでは?」と私見では思っています)。

実際、「そのためには多少の痛みは仕方ない」と国民は「腹をくくりだしていた(消費税もやむなしと考え出してきた)」ところだけに、今回の「景気刺激策」は「見え見え(つまり、「選挙しか考えていない」)」としか映らないのですが、如何なものでしょうか?

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第63号、いかがでしたでしょうか。

日曜に父親とテレビを観ていた時のこと。

投資素人(というか、投資未経験者)の父は、テレビに映っていた某企業の投資研究員を指差し、「この人は世界中の投資情勢に詳しいのだから、お前の言っている資産運用だけで十分生計立てていけるんじゃないのか?テレビ出演とはいえ、仕事なんて不要だろう」と言っていました。

思わず「ごもっとも」と思ってしまった私ですが、プロでも勝てるかどうかわからないのが短期投資だと説明すると、「そうか、ならその逆に、時間を味方につけて長期投資するんだったら、素人でも勉強次第で出来るんだよな」と真剣な面持ちで聞き返してきました。

皆さんの中にも「親の財産を長期運用してあげたいけど、なかなかその気になって貰えないんだよなー」という方がいらっしゃると思います。

さりげなくこんな状況を作ってみてはどうでしょうか(笑)

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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