世界景気悪化がもたらす「新たな3低」とは!?|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/10/1(水)  
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世界景気悪化がもたらす「新たな3低」とは!?

ブラックマンデーよりも深刻な事態だ

米国では金融不安が収まらないなかで、雇用の悪化が鮮明になってきました。日本、欧州の景気も失速、中国やインドの成長率も減速し始めています。世界同時株安と長期金利低下、原油など商品の下落という「新たな3低」は、市場が不況の影に身構えだしたとの指摘もあります。

世界同時株安と聞くと1987年のブラックマンデーを想起される人もいると思いますが、今回の事態は、ブラックマンデー時の状況とはかなり違います。

ブラックマンデーの時は世界同時株安とは言え、見方によっては日本が一人舞い上がっていただけでした。取り立てて不況に陥る「構造的あるいは実需的な」理由があったわけではありません。一人舞い上がりすぎた日本経済の修正を一気に行った結果、あのような世界同時株安という調整になったということだと思います。

しかし、今回の事態は違います。ひと言で言えば、物理的に不況の原因があり、それが世界経済を巻き込んでいるのです。過剰流動性を作り出したバブル経済が行き着くところまで達し、米国経済の住宅需要が生み出したサブプラムという毒が「実需」としての世界経済に影響を及ぼしています。住宅ローンが小口債権化され、それを世界経済が飲み込んでしまったのです。

当初サブプライムとして返済できない金額は数十兆円と言われていましたが、サブプラムはまるでメタミドホスのごとく正常な金融商品を毒漬けにしてしまい、その総額は300兆円規模に膨らんでしまいました。

結局、ファニー・メイ、リーマン・ブラザーズという米大手金融機関を破綻に追い込む事態にまで発展してしまいましたが、サブプライム部分だけの問題ならここまで大事にはならなかったと思います。

サブプライムという毒が、みじん切りのように細かくなって正常な金融商品の中に紛れ込んでしまい、実態経済にまで影響を与えているという構造がブラックマンデーとの違いであり、致命的な事態を引き起こしているのだと私は見ています。


不況反転の鍵は、世界経済に「新しいストーリー」を描くこと

今後はブラックマンデーより深刻な世界同時株安、そして不動産価格の下落といった状況に陥ることは必至です。そしてすでにその予兆は見え始めています。

世界中で最も盛況だった中国・上海市場の株価は今年に入ってから50%以上の下落を記録していて、ドイツ・日本・米国も、20%以上の下落幅になっています。


また実質GDP成長率を見ても、世界中のほとんどの国が大きく落ち込んでおり、成長率1%~2%という低水準になる見込みです。堅調だと言われていた欧州においても、この兆候は見られます。欧州の中でも特に調子が良かったスペインでさえも、ここに来て急激に成長が減速しているのが分かります。もはや欧州も安全圏とは呼べません。そして日本にいたっては「0(ゼロ)成長」に転じてもおかしくない状況になっています。


9月1日号のニューズウィーク誌でエル・イーリアン氏が述べていたように「アフリカ」の国の中には成長の兆しが見え始めている国があるようですが、世界全体としてみれば「総崩れ」だと言えます。米国・日本のみらならず、欧州、そしてBRICs(ブリックス)の国々も軒並み厳しい状況です。

世界経済は株安・金利低下・商品下落という「トリプル安」の状態になっていますが、これからさらに不動産の下落も必至という状況です。今後の展開も目が離せません。

ただ、私はこの状況においても「反転」する可能性はあると考えています。今回の状況を1929年の世界大恐慌と比較して論じている人もいるようですが、あのときのように15年もの長期間にわたって不況が続くことはないと思います。当時は、世界経済全体として健全な部分がなくなってしまい、世界の失業率が2割を超えたという非常事態でした。

確かに今回の経済不況も深刻なものではありますが、まだお金そのものは余っている状態です。また、世界経済全体の中には健全なセグメントも残されています。ここを利用するべく、世界経済の中に「新しいストーリー」を吹き込むことが、この不況を乗り越える突破口になると思います。

例えば、ロシアと欧州で力をあわせて「大ヨーロッパ」というような大きな経済圏の確立に向けて動き出してくれれば、かなり面白いと思います。

不況の源になった米国では大統領選挙の影響もあり、世界経済に大きなインパクトを与えるような「新しいストーリー」を描くエネルギーそのものが不足しているように感じます。この経済不況を乗り切るためには、米国以外の国に期待したいところです。世界経済に新しい風を吹き込むような「新しいストーリー」を描くことできれば、この経済不況を反転させることができると私は思っています。



講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

9月14日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第63回 『現在の日本において「景気対策は物価上昇を招く」って、本当?!?!』

日曜日にTVを見ていて「あれ?」と思ったのですが、野党の幹部が「麻生政権の考えているバラマキの公共投資では、物価上昇を引き起こし、国民の負担が増加する」という主旨の発言をしていました。「このような認識をしている人がいるのだ」と驚いたので、この点について解説いたします。

ここでの問題は、「現在目の前で起こっている物価高」と「公共投資をした結果起こる(かもしれない)物価高」を混同しているということです。これらは基本的に「メカニズムが違う」ので、混同して議論してしまうと全く違った結論になってしまいます。

決して「バラマキが良い」とは言いませんが、現状の経済において「バラマキが物価上昇を引き起こすのでダメ」というのはナンセンスであり、そのようなことを幹部がいう政党に政権を託すのは「???」と思います。

確かに「物価変動」は「需要(「買いたい」側の量)」と「供給(「売りたい」側の量)」のギャップにより起こる現象なので、需要が供給を上回る状態になるのであれば、物価高になる可能性はあります。したがって、「可能性」という意味では、公共投資を行うことにより、「物価高になる」ということも考えられます。しかしこの場合、もし、「バラマキの公共投資」によって「物価が上昇した」のであれば、「需要が喚起された」ことを意味するのであり、「喜ぶべきことだ」といえます。

そもそも現段階で「公共投資を行う」のは景気を良くして有効需要を高めることが目的なのであり、「物価が上昇する」というほどの(景気回復による)有効需要が高まったのであれば、それは経済政策の効果があったということであり、「成功」といえるのです。

つまり、「バラマキの公共投資で物価が上昇する」のは、その政策が「成功だ」ということであり、「ダメ」というのは「???」ということになります。

とはいえ、現状、「バラマキの公共投資」を行っても、それによって景気が良くなることも、有効需要が高まることも期待できないので、「成功(物価高)」になることはないと思っています。そういう意味で、今回、野党幹部が「今回考えているバラマキの公共投資で(景気回復による)物価高になる可能性は薄いので、やっても無駄だ」と言っているのであれば、ある程度、納得ができます。

他方、目の前で起こっている物価高は、紛れもなく「原油価格の高騰」がその原因であり、しかもその「原油価格の高騰」は、景気動向とは関係なく(または、むしろ「景気が悪い」ことによって)起こっています。

景気動向と関係のない(または、景気が悪いことによる)原油価格高騰は、サブプライムローン問題に端を発した金融危機によって投資先を失ってしまった大量の資金が、「コモディティ(商品相場)」といわれる小さな市場に一気に流れ込んだことが根本的な原因であり、そのコモディティの一つである「原油」に集中投資されたことが問題なのです。

原油に集中投資されたおカネは、「原油」そのものを買うために投資されたものではなく、原油価格が上がるから「買う」、そして、その種の「買い」が多いことによって価格が上昇するので、その後の価格上昇を求めて、さらに「買い」が入ることになるのです。要するに「マネーゲーム」といえます。

マネーゲームが「マネー(おカネ)」だけの世界で起こっているのであれば、問題はそれほど大きいものにはなりませんが、こと「原油価格」となると、これは実体経済に多大な影響を及ぼすことになります。

「原油」というものは、現代社会においては多くの財の原料やエネルギーなので、この(原油)価格が上がれば、生産コストが上昇することによって、最終(消費)財の値段を上げざるを得ないことになるのです。

これが「現状起こっている目先の物価高」であり、「景気を良くする」ために行う公共投資によって起こる種のものではないのです。むしろ逆に、「景気が良くなる」のであれば、このようなマネーゲームが少なくなるかもしれないのです。

なぜなら、「景気が悪い」という状況においては多くの人々が「不安」を感じるため、必要なモノでもできるだけ消費を手控え、「おカネ」として保有しようとします。その「おカネ」は銀行預金として保有することが多いため、銀行などに資金が滞留することになります。しかし、銀行は「低い」とはいえ、預金金利がかかるため、出来るだけ運用しようとします。

ところが、景気状態が悪ければ事業会社への貸し出しを増やすことができず、「おカネ」を「おカネ」のまま運用することが多くなります。すなわちファンド会社などに資金を流すことも多くなるため、マネーゲームが加速することになってしまいます。

以上から「景気が悪い」ということが資金を金融市場に滞留させ、滞留する資金は、「おカネ」の本来の性格である効率性を求めて「利のあるところ」「利のあるところ」へと流れることから、社会のマネーゲーム化が進むことになるのです。そのマネーゲームが「原油価格」に及んだことが、今回のような「不況下の物価高(この場合の物価高は「コスト・プッシュ・インフレ」です)」(=これのような経済状態を「スタグフレーション」といいます)を引き起こしたといえます。

このように現在は「景気を良くする」ということが喫緊の課題であり、そのために「知恵」を絞っていかなければならない時なのです。「景気が良くなることによる物価高」を心配しているような余裕は、今の日本にはないのです。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第69号、いかがでしたでしょうか。

おとといまでの数日間、分散投資の勉強と旅行を兼ねて香港に行ってきました。

まず目に付いたのはそのきらびやかな高層ビル群!

香港は地震が無いので高いビルが立て放題な上、その色も一面金色の派手なものばかりで、そのインパクトには圧倒されるばかりでした。

世界中が株安に見舞われている現在ですが、香港は昨年度税収が過去最高を記録しており、一見する限りでは不景気などどこ吹く風といった具合です。

しかし一方で、これは世界のお金持ちが香港に集まってきた結果とも言えます。

香港は社会保障が手薄い上に少子高齢化も進みつつあり、今後更に貧富の差が二極化する事態は否めない、そう感じました。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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