リーマン破綻がもたらす最大損失380億円の危機|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/10/8(水)  
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リーマン破綻がもたらす最大損失380億円の危機

リーマン破綻を受けて、あおぞら銀行と新生銀行が危険

金融庁から7月に業務改善命令を受けていたあおぞら銀行の経営健全化計画の策定が遅れています。同時に改善命令を受けた琉球、岐阜の2行は16日に計画を提出・公表しましたが、あおぞら銀行は公表しませんでした。同行はリーマン・ブラザーズの関連債権を大量に保有しており、破綻の影響を織り込んで計画を見直している可能性もあるとのこと。 また、リーマン・ブラザーズの破綻に伴い、16日、国内金融機関各社はリーマンへの融資残高や損失見込み額を相次ぎ開示しています。

リーマン・ブラザーズの破綻を受けて、にわかに日本の国内の銀行も慌しくなってきました。国内主要行のリーマン・ブラザーズ向け債権額を見ると、三井住友FG:1034億円、あおぞら銀行:693億円、みずほFG:400億円、新生銀行:380億円と続いています。また、この債権額のうち損失を被る可能性がある額(非保全分)になると、新生銀行が380億円でトップになります。


ただ、ここに示されているリーマン・ブラザーズ向け債権の保全・非保全という基準も、絶対的なものではなく、保全されているという債権にしても安心できるものではないと思います。リーマン・ブラザーズの破綻によって、各銀行の資産がどのくらい痛んでいるのか、実際のところは推定できていないというのが実情ではないでしょうか。

このような状況から私が特に懸念を抱いているのは、あおぞら銀行と新生銀行です。

万一、リーマン・ブラザーズへの債権が保全されない事態になってしまうと、あおぞら銀行は最大で債権総額693億円を抱えることになります。この金額は、あおぞら銀行の資本からすると甚大なインパクトだと言えます。

新生銀行の場合には、非保全分の債権額だけを対象に見ても、リーマン・ブラザーズへの債権によって損失額が資本の約4%に相当する事態になってしまいます。これは深刻な状況だと思います。


あおぞら銀行も新生銀行も、国民の税金を使って立て直した銀行ですが、非常に厳しい状況になりつつあると思います。


13兆円もの国民の税金で救済したことが無駄にならないことを願うばかり

あおぞら銀行や新生銀行が危うい状況に陥るとなると、再び日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の悪夢がやってきて、前轍を踏む結果になってしまいます。何とも「いい加減にしてください」と言いたい気持ちです。

そもそもこれらの銀行は13兆円もの国民の税金で救済された身で、一体どんな経営をしてきたのでしょうか?

例えば、新生銀行の場合には、旧長銀の売却時に定められた瑕疵担保条項のお陰で、日本国内のお客の獲得が厳しい状況になっていました。そこで目を付けたのが、一見美味しそうに見える海外の金融商品です。

経営者が外国人ということもあり、海外の金融商品に目を向けるのは自然なことだったかも知れません。しかし、1%という高金利を維持するために、結果としてリーマン・ブラザーズやファニー・メイといった高リスク債権の割合をここまで大きくしてしまったのは、安直だったと指摘されても致し方ないでしょう。

あおぞら銀行にしても、経営健全化計画の提出が遅れているのも論外ですが、このまま経営健全化計画をないがしろにして、また破綻して再生などとなったら目も当てられません。

せっかく国民の税金を13兆円もつぎ込んで救済し、ようやく立ち直ったと思っていたら、また破綻などという事態は許されないと思います。もう少し自分たちの置かれている立場について高い意識を持つべきだと感じます。とにかく今は、両行が再び破綻することがないように願うばかりです。



講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

9月21日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第64回 『米国版RTC法案通過、ところでこのRTCって何?』

9/29に米国下院議会で、政府から出されていた米国版RTC法案が否決され、先週は世界的に株価が大きく下げました。その後、一部修正が加えられ、上院で法案が通過し、政府の懸命な調整交渉により、何とか下院でも可決に漕ぎつけました。

「やれやれ漸く法案が通った」ということですが、株価は下落に転じ、金融危機自体は全く解消されていないような状態です。

もっともこの法案が「通過した」からと言って、経済が飛躍的に良くなると思っていた人も少ないはずですが、投資家の中には「期待」をしていた向きも多いのではないでしょうか。

しかし、この法案は実際のところ「金融危機を終息させるための第1幕」に過ぎないのであり、いわば「スタート」にあたるものです。ここから「エンド」までは長い道のりがあると思います(考えによっては「スタートにもなっていない」ともいえます)。

RTCが行おうとしていることは、「銀行を救済する」ことではなく、銀行に"損切り"をさせるものなのです。つまり、不良化した債権については「現時点の価格(この価格が問題ですが・・・)でRTCが買い取る」ということであり、銀行の損失を埋めたりするものではありません。

「現時点の(大損している)価格で売却させる」ということが、何故、「金融健全化につながるのか」というと、"不良債権"なるものは、実際のところ将来時点でないと「不良化する」か否かはわからないからです。

「不良化しなかった」という場合、貸付けた金額が「戻ってくる」ということであり、貸倒しなくて済むことになります。他方、「不良化した」ということは、少なくとも期日までには資金が回収できなかったことを意味します。

つまり、現時点で銀行の経営者が「不良化しない」と考えれば「全く損失がない」ことになり、バランスシート等の財務情報においても、実際の経営状態が「どうなっているのか」を見抜くことは非常に難しいことになります。

このように銀行の経営状態を正確に把握することが難しいので、一度、「危ない銀行」というレッテルを貼られてしまうと、どうあがいても「信用」を回復させることは難しくなります。そのため、「危ない」というレッテルを貼られた銀行が、一時的な資金不足に陥った場合(通常は「インターバンク市場」という銀行相互の市場で借りることが可能ですが)、どの銀行も資金を貸してくれなくなってしまいます。こうなると資金ショートを起こしかなくなり、当該銀行は破たんに追い込まれてしまいます。

このように銀行が破たんすると、当該銀行から資金を借りている企業は、貸付条件の変更を余儀なくされたり、場合によっては早期の返済を求められる可能性も出てきます。このような事態が発生すれば、企業もまた資金ショートにより、倒産が相次ぐことになります。

銀行の破たんというのは、当該銀行だけに「留まらない」ということが問題であり、このような事態に陥らないように対処する必要があるのです。

その対策の一つがRTCなのです。

上記のような問題が起こるのは、「危ない」か否かが「わからない」ということに起因しています。「不良債権」という状態のまま保有している以上、損失額が確定しないわけであり、ちょっとした景気失速によって、損失額の見込みが「膨らみかねない」という部分が問題なのです。

そこで「損失は現時点で確定させましょう」ということで銀行の資産を買い取るのが、このRTCなのです。買い取ることによって銀行部門における損失が確定するので「将来的に損失額が増加する」という不安を払しょくさせることができることになります。

つまり、RTCによって「将来的な不安」は払しょくできるものの、確実に「損失」が出るのであり、現実に「資本不足」に陥る銀行も出てくることになります。

したがって、RTC法案が可決された瞬間に「どこの銀行が生き残り」「どこの銀行がなくなるのか」というような下馬評があちこちで起こることになります。当然のこととして「なくなる銀行」というレッテルが貼られれば、取引も減少し、預金者からの信用も減退するため、急速に経営が難しくなることになります。

以上から、RTCによって金融的混乱が「納まる」のではなく、一層混とんとすることになり、混迷の度合いは深まるといえます。しかも、RTCにより破たん銀行が現実にあちらこちらに出現するわけであり。"預金"といわれる通貨の信用はますます悪化することになります。

つまり、「流動性」に対する不安が一層高まる可能性が高いわけであり、そのための対策を早急に打ち出す必要があることになります。

「次の一手」についての対応(現実問題としての資本注入関係の対策)は、タイミングを逸すると「底なしの金融危機」を現実化させることになるため、重要な時期を迎えていると考えられます。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第70号、いかがでしたでしょうか。

先週のメルマガで香港の高層ビル群の話をしたところ、読者の方からこんなコメントをいただきました。

「私も数ヶ月前、香港のcentral(金融中心街)に行きましたが、建物のユニークさと大きさには圧倒されました、あれだけ大きければ、相当多くの銀行関係者が働いているのでしょうね」

私も一目見てそう思ったのですが、案内してもらった現地の友人に聞いてみるとそれは大きな間違いだと教えてくれました。

香港の土地は高額であり、とても一つの会社が負担できる費用ではなく、それゆえ各金融機関とも上層階の幾つかを除いては、現地の企業にテナント貸しをしているのだそうです。

また上層階に勤める自社の社員数も必要最小限に止めているようで、彼らは皆商売上手で個性的だと言っていました。

個性的と言えば確かにビルの形も皆個性的で、例えばcitibankは湾曲したガラス張りの壁面を鏡に見立て、そこに邪気を払う意味を込めているそうです。

サブプライムの邪気も早く払拭されて欲しいものです。。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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