危ぶまれる原油枯渇と、原油需要の未来|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/10/15(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第71回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。
メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の一戸です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。
あなたの理想とする資産運用、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

本文タイトル
危ぶまれる原油枯渇と、原油需要の未来

あと37.6年、長く見積もっても68年で、世界中の石油は枯渇するかもしれない!?

原油価格高騰の長期的な価格動向の理由の一つとして「根底にあるのは石油資源枯渇の恐れ」が挙げられます。  レスター・ブラウン著『プランB3.0 人類文明を救うために』(ワールドウォッチジャパン)という資源に関する有名な書籍があります。ここにも「これから石油の使用量はどんどん増えていくだろう。供給はだんだんタイトになっていくのではないか」という記述があります。

 大きな国で油田の新規の発見がなければ、米国、北海油田、メキシコ、などの確認埋蔵量はだんだん減っていく傾向にあるでしょう。

世界一のサウジアラビアのガワール油田でも、だんだん採掘が深くなっており、自噴しなくなっているため、大量の海水を入れないと石油が出てこないなど老朽化が進んでいます。 石油が化石燃料である限り(化石燃料ではないという説もありますが)長期的には、いずれいつか石油が枯渇するのは間違いありません。

石油の確認埋蔵量は毎年増えています。これは新規の油田が発見されているからです。2005年末時点の確認埋蔵量を世界の消費量で割ると37.6年分しか石油は無いことになります。しかし、今後発見されるであろう埋蔵量と、現在の油田が更に深く掘られて出てくるであろう供給の合計を将来増加していく推定消費量で割った枯渇年数は68年です。いずれにせよいつか石油は無くなる運命です。



では原油価格高騰は、どこで止まるのでしょうか。 7月11日には、市場最高価格の147.27ドル、この石油価格高騰の起点となっているとチャート上で判断される2007年の1月17日の原油価格は51.03ドルでした。その中間点は99.15ドルということになります。9月16日に90.51ドルになったのは下げ過ぎであり、その反動で9月22日には130ドルまで急騰したのだと思います。その後90ドルを割って下落していますが、短期的には反騰もあると思っています。


不況で石油の需要が減り、生産が横ばい乃至は若干上昇であれば「原油価格は下がる」!?  90ドルまでいきましたから、石油は下がるところまでは一応は下げたと思います。今後どこまで下がるかはよくわかりません。

ただ、サブプライムローン問題に端を発する世界的な経済概況を見るに、これからも、今までのようの石油を使うでしょうか。一度高値を経験しているので、ガソリン価格が安くなっても以前のように気にもせずに使う気持ちにはなれないのではないでしょうか。

この消費の沈滞のせいか、世界的に自動車が売れていません。 インドでは昨年より自動車の生産台数が減少し、中国の販売も以前の勢いは無くなっています。 石油の46%は自動車向けですから、自動車のガソリン需要が悪くなれば、おそらく昨年のような暴騰はもうないのではないでしょうか。

太陽や風力などのクリーンエネルギーのほかに原子力や石炭発電が見直されており、電気自動車、燃料電池なども作られています。石炭は、石油以上にC02を出すのがネックですが、豪州の石炭メーカーがC02を出さない燃やし方を開発したという発表を行っています。将来枯渇する石油に代わって、さまざまなエネルギー源が今後も開発されるでしょう。

OPECが生産削減をして価格を維持するという話しがありますが、私は懐疑的です。原油価格が上昇を続け、産油国は毎年収入が増えてきました。ここに来て急速な価格下落に直面し、石油収入が減少すると、価格の維持のためとはいえ販売量まで減少させて収入を減らすことはできないのではないでしょうか。 中期的には、需要が減り、生産が横ばい乃至は若干上昇であれば、原油価格は下がるだろうというのが私の予測です。

ただしハリケーンなどの天災やグルジアやナイジェリア、イランなどで地政学的リスクが発生すれば別です。以上から原油価格は短期的には反発、中期的には需要減で下落、長期的には供給減で上昇というシナリオが私の予想です。

エクスキューズを残しておかないと間違った時に困りますからね(笑)。

というのは冗談にしても、一方的な上げ相場は終わり、今後は、上がったり下がったりのくり返しになると考えられることから、以前より見極めにくくなると思います。中期的には、ダラダラとした横ばい、ないしは、斜め下に向かって下降気味になっていくのではないでしょうか。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学 株式・資産形成講座講師
株式会社フィスコ コモディティー代表取締役社長
近藤 雅世

9月25日放送
「金融リアルタイムライブ」よりトピックを抜粋し、構成したものです
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第65回 『「円高」&「ドル高」ってどういうこと』

現在、世界の金融市場がパニック状態になっていることから、世界同時株安になっています。そして、その震源地である米国の通貨である「ドル」は、対円で大きく減価しています(円高・ドル安)。しかし、この「ドル」は円以外の通貨には強く、世界的には「ドル高」傾向なっています。このことから現在の主要通貨の価値は「円>ドル>ユーロ」の順になっています。

震源地はあくまでも米国であり、現状の経済を考えれば、「ドルが安くなる」なら何となく理解できますが、「ドルが高い」というのは「どういうこと?」と思う方も多いのではないでしょうか。

これは、経済がグローバル化する中で「通貨の管理」は「各国金融システムが担っている」というところに問題があるといえます(つまり、グローバル経済に「金融制度」が追いついていないことが原因といえます)。

現在、各国とも「中央銀行」が存在し、当該国の中にある「預金取扱金融機関(これがいわゆる「銀行」であり、以下「銀行」といいます)」には、いつでも流動性(当該国通貨)を供与する制度が完備されています。したがって、銀行が、たとえインターバンク市場において資金を調達できない場合でも、市場金利(例えば、日本では「無担保コールレート」)よりも高い金利で、中央銀行から(適格担保の範囲であれば)無制限に貸し付けを受けることができることになっています(現在、「適格担保」の範囲がかなり広くなっているので、銀行資産の多くのものが認められていることから、いつでもほぼ無制限に流動性を受けることができることになっています)。

ここで、中央銀行が銀行貸出に応じる際の「市場よりも高い金利」として、日本では「基準貸出金利(以前の「公定歩合」に当たるもの)」といい、米国では「プライマリー・クレジット金利(一般に「公定歩合」という)」といい、ECBでは「限界貸出ファシリティー」といいます(米国だけは少し制度が異なりますが、日本の現在の金融制度(2001年以降)はドイツのロンバート型貸出制度を真似て作ったので、ユーロ圏とほぼ同じ形なっています)。

これらの金利を中央銀行に支払えば、銀行はいつでも当該国の流動性(つまり、通貨)を得ることができます。したがって、国内的には銀行が「流動性不足に陥ることはない」ということになります。

しかし、貿易決済や世界的な資金移動の際に起こる決済においては「ドル」が中心であり、世界的な意味における「流動性」は基軸通貨としての「ドル」ということになります。

そうすると、ユーロ圏で「ドル建て」の決済を行おうとした場合、通貨としてのユーロはECBから調達することができるものの、「ドル」は調達できないことになります。その場合、インターナショナルな金融市場で「ドル」を調達せざるを得ないことになります。

しかし、このような「インターナショナルな金融市場」には国内のような「中央銀行」が存在しないため、「ドル」を借り入れるためには各銀行そのものの信用によって独自で調達しなければなりません。

ここで「インターナショナルな金融市場」といっても、国内のインターバンク市場と同様に「プロばかりで行う市場」であるため、また当然、規制当局などもないことから、「貸した相手が破たんした」という場合には、全く保証されず、貸し手が全額損失を被ることになります。

注意が必要なのは、各国の中央銀行は「流動性の供与」は行いますが、あくまでも「貸出」であり、「救済」はしないということです。中央銀行は適格担保に基づいて貸出をするのであり、「資本注入」のように「棄損」する可能性があるようなことは、中央銀行の仕事とは考えられていません(そのような意味で政府の「公的資金投入」が必要であると考えられています)。

しかも、銀行は「債務超過」という状態が許されていない業態であり、そのためにBIS基準(国際業務を行う場合には自己資本規制比率8%以上が必要)が設けられています。したがって、もし仮に、ある銀行が破たんした(つまり、業務中に債務超過に陥った)場合には、中央銀行はそのような銀行に対しては救済できないので、当該銀行は破たんすることになり、そのような銀行に貸出を行っている相手銀行は損失を被ることになります。

そのため、「ドル資金」を調達しなければならないような欧州の銀行は、「ドルを提供する銀行」から高い金利を提示されることになり、事実上、借入が困難になってしまいます。そこで欧州の銀行はECBからユーロ通貨を借り入れ、それを外国為替市場で売却し「ドル資金」を得ることになります。

これはユーロ圏に限ったことではなく、各国とも世界的な通貨決済のために「ドル資金」を取ろうとすることから、世界的に「ドル」が高くなっているのです。

では「日本は?」ということですが、日本の銀行はインターナショナルな決済を行う場合、「ドル決済」が普通であり、ある程度、常に「ドル準備」を持っています。また、日本の銀行自身が他の国の銀行に比べて「経営が健全」と考えられているため、もし、インターナショナルな金融市場で「ドル資金」を借り入れに行っても、欧州等の銀行ほど高い金利を提示されることがなく借り入れることができることから、円を売る必要がなく、ドルに対して「円が安くなる」ということがないのです。

つまり、日本の銀行は、欧州の銀行のように「自国通貨を売って、ドル資金を得る」という必要がないことから、「円売り圧力」が生じないのです。

さらに、現時点の米国、ユーロ圏、日本を比較した場合、相対的に経済が安定していて、しかも、(金利がそもそも低すぎたため)金利を下げなかったことから、「円高」に振れていると考えられています。

以上にように、日本以外の国における世界的な「ドル資金不足」は、インターナショナルな資金決済に起因するものと考えられることから、それを解消するには、世界的な「中央銀行(インターナショナルな資金決済のための資金提供者)」の存在が必要なのかもしれません。実際、現時点の世界的な資金収縮を防ぐためには、そのような世界的な「中央銀行」の早急な創設が大切だとも考えられます。

とはいえ、「決済」という意味では、今後も、ドル資金が調達しにくく「ドル」そのものに魅力がない状態が続くだろうと思われることから、決済通貨として「ドル」を選択する主体が少なくなり、ドル自身が徐々に使用されなくなると、ドルは「基軸通貨」としての地位を失う可能性があります。

このようになってくれば、将来的には「ドル」は急速に価値を低下していく可能性があり、その場合には代わって、現在決済通貨として第二位の地位にある「ユーロ」が台頭する可能性が高いと思われます。

そういう意味では現在の「円高(対ユーロ)」「ドル高」は一過性であり、将来的には各国の"実力"にあった価値に収束していくものと考えています。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第71号、いかがでしたでしょうか。

ここ数日、株価の歴史的乱高下が続いています。

市場の混乱がおさまるのは、まだまだ先のようですが、日本の優良企業株はこれからが本当の買いチャンスと思っています。

そのためには「今を乗り切るためにどんな取り組みをしているのか」や「海外進出を含めた将来性がどの程度見て取れるか」などをしっかり目利きする必要があります。

そうした練磨を通じて今を投資知識の蓄え時期とばかりに勉強し、次なる投資機会に備えることが、5年後10年後に実績を出す秘訣ではないでしょうか。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
一戸

| 配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み