100年前の大恐慌が指し示す、100年に一度の世界的大惨事の行方(前編)|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/11/5(水)  
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100年前の大恐慌が指し示す、100年に一度の世界的大惨事の行方(前編)

9月のリーマン・ブラザーズショックから約1か月半が経過しました。その過程で私たちが経験したのは、「大恐慌」。

10月に入ってからの株価暴落は、そのスピード、規模をとってみても、"100年に一度の惨事"とみることができるでしょう。では、その100年前の惨事とは。私たちが思い出すのは、1929年の大恐慌、ということになると思います。

10月の最終週には、売られすぎの反動から大きく反発することとなりましたが、仮に"今回の暴落が大恐慌と同じである"なら、私たちは真っ先に現金化しなければなりません。その答えは、下記2つのチャートが物語っています。


大恐慌と呼ばれるタイミング(29年)から株価は大きく下落、32年には下落後の安値から、なんと5分の1にまで下落してしまっているのです。

このタイミングと同じであれば、これだけの安値になっても、それでも"現金化"しなければならない、ということになります。日経平均株価でいえば、これからまだ半分になってもおかしくはない、ということになってしまうからです。

こうした過去の経験を踏まえて、いま私たちが考えなければならないことは一体何でしょうか。それは「1)なぜ、大恐慌は長引いたのか」「2)33年初に反発した理由は何か」という2点に集約されることになります。

まず、「1)なぜ、大恐慌は長引いたのか」という点に関して、事実を確認する必要があります。その時点のことを経験している投資家はまず皆無であり、どうしても書籍や文献に頼ることになってしまいますが、なかでも秀逸なのが、「バブル論」の大家、ジョン・ケネス・ガルブレイス博士が書かれた「大恐慌1929」(日経BP刊)でしょう。


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P.232 第7章/暴落後の日々より

●こうした事態に立ち至るまでには、景気づけの気休め発言がさんざん行なわれている。大暴落の直後には、フーバー大統領は「個人的な経験によれば、(中略)経済が混乱しているときに言葉はたいして役に立たないものである」と賢い発言をしていたのだが、どうもその後にこの不変の真理を忘れてしまったらしい。29年12月には、政府のとった措置により「景気信頼感は回復した」と議会で述べた。翌30年3月には、政府高官が次々に楽観的な見解を披露したのに続き、大暴落に伴う雇用への悪影響は2ヶ月以内に収まるとの見通しを示している。さらに同年5月には、「いまや最悪の時期は過ぎた。今後の一層の協力により、景気は速やかに回復する」と発言。5月末には、経済活動は秋までに正常化すると断言した。

P.288~289 第9章/原因と結果

●1920年代後半の銀行というものは、その後のアメリカ人の語り草になっている。(中略)こうした次第で、1929年に銀行家が桁外れに無能だったということはない。ただし、銀行システムには欠陥が内在していた。まず、経営基盤が脆弱な銀行が多数存在した。ひとつの銀行が破綻すると、預金者があちこちで不安に駆られて取り付き騒ぎを起こすため、他行の預金も凍結された。それでも破綻が破綻を呼び、ドミノ現象が広がる。好景気のときでさえ、局地的な出来事や小さな銀行の不運が引き金になって、簡単にそうした連鎖反応が起きる危険性があった。(中略)銀行倒産はたちどころに野火のように拡がる。29年以降に起きたのは、これだった。(中略)そして銀行システムが破綻の連鎖を起こすと、当然ながら預金者の消費支出や取引企業の投資は大幅に縮小した。

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つまり、楽観論が蔓延していたため、問題点が放置され、傷が深くなった、という流れだったのです。

では、「2)33年初に反発した理由は何か」という点は何だったのか。

その答えは、"公的資金投入"というキーワードになります。当局の楽観姿勢とは裏腹に、実体経済は大きく悪化、最終的には銀行の連鎖倒産という事態に陥ったのです。その連鎖を止めたのが、当局による公的資金投入の決断。棄損した自己資本を厚くする一方、経済の血流である金融システムを防ぐためにはどうしても避けて通ることができない決断だったのです。

当初は受け入れに消極的だった銀行。それもそのはず。資本を受け入れるということはそれだけ「財務体力がない」ということを内外に知らしめてしまうことになるから。このことも反転を遅らせる一因でした。

しかし、経済の悪化をなんとしてでも食い止めなければならない当局としては、当時財務体力が最も堅固であったモルガン銀行に、半ば強引に資本を注入し打開を図ったのです。最も"倒産しそうにない銀行"が資本を受け入れるのであれば、下位行が受け入れるとしても「大丈夫ではないか」ということです。

その結果、株式市場は反発に転じたのです。

そう考えていくと、現在は、「1)状況に対して悲観的」であり、「2)公的資金投入による枠組みも決定」していることから、大恐慌のように株価がどんどん下落していくという事態は「考えにくい」というのが過去の歴史を振り返ることで見えてくる未来図になるのではないでしょうか。

次回後編は、この問題を掘り下げ、より確固とした未来予想図を組み立てていきたいと考えています。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「儲かる会社はこうして作れ! 1000社徹底取材でわかった「企業を強くする4つの条件」」 講談社 (2008/9/2)

株式・資産形成講座 「金融リアルタイムライブ」講師
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第68回 『今回の景気刺激策(案)は景気を浮上させるか???』

麻生政権は現在の金融危機に伴う景気失速に対して(というか、以前から日本経済は悪かったので、ここで「ダメ押し」みたいに米国から「暴風雨が来た」という感じではありますが・・・)、10/30に事業規模最大27兆円(真水5兆円)に及ぶ経済対策を打ち出しました。時期としてはタイムリーであり、題目を見る限り、「思い切ったことをしなければ・・・」という意気込みが十分に感じられるものなので、そういう意味では評価できます。

しかし、いくつか決定的な問題があります。

最も大きいのは「3年後に消費税を引き上げる」という文言です。麻生総理も「景気が良くなることが前提」とは述べていますが、「3年」にはこだわっているように思えます。「景気」とは生き物ですから、期限を切ってできるものではありません(財務省としては「期限」が大切なのでしょうが・・・)。そもそも経済政策とは「景気刺激策」であり、何かの「刺激」をすることによって「どのように反応するのか」は、実際には、極めて不透明なのです。にもかかわらず、「3年後には増税」と言ってしまえば、消費は引っ込んでしまい、貯蓄に回す(消費を節約する)可能性が極めて高くなります。

したがって、「アナウンスメント効果」という点で、今回のやり方は「失敗」と言わざるを得ないでしょう。もし、数値目標が必要であるならば、「期限」ではなく、「GDPが云々」などで良いのであり、むしろ「景気が持続的に上昇すると思われる時まで」という曖昧な表現にして「それまでは増税を考えない」と"アナウンス"する方が効果は高いと思います(結果として3年度に消費税の引き上げを実施できれば良いわけです)。

また、高速道路料金を「1000円(都心・大阪圏を除く高速道路で、土日休日に限り、乗用車のみ)にする」というものですが、一般の利用者にとって非常に「ありがたい」ものの、「経済政策」という観点では波及効果が「どこまであるのか」について疑問があります。

現在のような不況下において「高速道路料金が1000円」としても「だから旅行に行く」という世帯が「どれほどいるのか」という点で疑問があります。つまり、この対策によって(何もしない時に比べて)追加的に「旅行にいく」という人の数が飛躍的に増加するだろうかいう疑問が残ります。

そもそも「旅行に行こう」と思っていた世帯が、高速料金が1000円だから、特急や新幹線よりも安いという理由で高速道路を利用するということは「ある」と思います。しかし、それは「追加的な経済効果」にはつながりません。むしろ、特急や新幹線で消費したであろうおカネを節約したことになり、マクロ経済的な経済効果は減退する可能性があります(つまり、そもそも旅行を計画している人の場合、交通費が安くなった分、豪華な旅行にするとしても、交通費が高かった時と比較して、追加的に豪華にする可能性は少ないと思うのです)。

しかも、現状、ETCはかなり高い率で乗用車に搭載されているので、既存の車においてETC装着における追加的な効果も限定的になると思われます(もし、「乗用車」自体の売り上げが「伸びる」という試算があるのであれば、それは「効果が非常に高い政策」といえます、が、その点はかなり「微妙」でしょうね)。

つまり、「安い旅行を提供する」という意味では「生活者サイドの政策」といえますが、これは景気刺激策にはならないのです(選挙対策にはなりますが・・・)。景気刺激策の場合、「可処分所得=消費-貯蓄」の式からトータルとしての「消費」を増やすことが最も重要なのであり、「消費支出額を抑えることのできる政策」では意味がないのです(消費が増加することで、いろいろと波及し、結果として「可処分所得が増加する」というのが理想なのです)。

家計が消費をしない分を政府が支出し、国全体としての支出を増加させたとしても、それは一過性であり、持続的に経済が良くなることにはつながりません。高速道路料金を引き下げるのであれば、「乗用車」ではなく、産業関係の車の方が政策効果は高いと思いますし、都市部ではなく地方で「料金が高くて使用していない」という道路の活性化を施す方が「より効果的だ」と思います。それによって「新たな産業」が生まれるかもしれません。

「土日祝日、乗用車のみ」となれば、高速道路が渋滞するだけであり、それに関係する鉄道会社の収益が激減すれば、その方が問題になるように思います。

さらに2兆円の「給付金」についても同様であり、ほとんど効果は見込めないと思います。

なぜなら、大半の世帯では「生活関係費(食費や日用雑貨品の購入)」に使われると思うからです。これも「消費ではないか」と思われるでしょうが、それは違います。生活関係費は「絶対に消費するもの」であり、給付金がなくても消費をするものです(多少「豪華なもの」を買うかもしれないものの、その部分はそれほど大きいとは思えません)。

したがって、「必ず消費をする」というものに給付金が充てられると、本来ならば自分の可処分所得から支払うべきおカネを給付金で支払ったことによって「節約」できるだけなのです。その「節約分」は「追加的な消費」には回らないことが多いものです。つまり、「結果としての貯蓄」になってしまうのです。

消費税が「3年後に上がるから」ということで、積極的に貯蓄をする世帯は多くないかもしれませんが、消費を節約する世帯が多くなるとすれば、それは「貯蓄の増加」を誘発するだけの政策であり、景気は浮上しないことになります。景気刺激策においては「貯蓄」になっている資金を「消費」させることが大切なのであり、そのためには、現状、「社会保障の充実」が欠かせません(将来安心なら「貯蓄」せず、「消費」を増やす可能性が高くなります)。

また、家計が「消費」を伸ばさないのであれば、産業界に設備投資が容易に行えるような仕組みを作る必要があります。その意味で「中小企業における信用保証枠の拡大」は良い政策だと思います(その意味で今回増額された住宅減税も「良い政策」です)。

しかし、いわゆる「情報の非対称性」が強くなる不況期に中小企業等を対象とした信用保証枠を拡大すれば、「モラルハザードの問題」が解消できず、保証協会の負担が増大するだけになる可能性があります。この問題は簡単には解消しませんが、安易に「信用保証を増やす」というだけの対策では、いつまで経ってもこの種の問題は解消されません。したがって、中小企業などのリテール部門への資金供給の仕組みを、この際、きっちりと作り上げることを考える必要があると思います。

以上から、今回の政策は「バラマキ」と言わざるを得ず、「生活者の安心」という名の「選挙対策」にしか思えません(生活者に安価な消費を提供しているだけ・・・)。良い点は「国債の増発」を抑え、「埋蔵金」を多用したという部分だけであり、「3年後に消費税引き上げ」という文言も含めて、政策効果はあまり見込めないと思っています。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第74号、いかがでしたでしょうか。

安定期には300円程度動けばビッグニュースになった日経平均ですが、最近はその倍動いても驚きすらしなくなりました。

ここ数日は戻し基調にあるものの、相変わらず多くの企業が減収減益を発表し続け、常識的に考えて割安な企業が連日のように買収のターゲットとなっている現状を見るに、市場の収まりはまだまだといった感じです。

以前「ネット証券の月次口座開設数が倍増している」という話をしましたが、それでも私の友人には「まだ様子見」とばかりに静観を貫く投資未経験者が沢山います。

これが投資教育の機会を持たずに育った日本人なんだなあと思う一方で、連日のニュース報道が「投資とはどういうものなのか」を学ぶのに、今が良いきっかけだと教えてくれているのではないかとも思います。

たまに「今どんなことをしたらいいのか」を聞いてくる友人には「個別株はリスクが高いので、いずれ市況が回復することを見越して、ある程度日経平均が下がる毎にETF(上場投資信託)を買い増すことくらいから始めたらどうか」と言っています。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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