100年前の大恐慌が指し示す、100年に一度の世界的大惨事の行方(後編)|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/11/12(水)  
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100年前の大恐慌が指し示す、100年に一度の世界的大惨事の行方(後編)

前回は、"100年に一度の恐慌"というフレーズで注目を集める、1929年の大恐慌を引き合いに、ジョン・ケネス・ガルブレイス博士が発表した「大恐慌1929」を紹介しました。そして、大恐慌を引き起こしたのは、「1)楽観主義」「2)公的資金投入の遅れ」によるものだった、ということをお伝えしました。

現在は、世界各国が悲観的になる中で、公的資金投入も足並みを揃えて行なうことを決定しています。そう考えると、大恐慌のように株価がどんどん下落していくという事態は「考えにくい」というのが過去の歴史を振り返ることで見えてくる未来図になるのではないか、というのが前回の骨子でした。

■しかし、金融恐慌が過ぎ去ろうとしているにも関わらず、株価は一向に反発する気配がありません。先週こそ週初は大幅な株高でスタートしたものの、終わってみれば日経平均株価は横ばいで推移しています。

では、「やはり金融株が問題なのか?」、いえいえ、とんでもない。実際には、銀行株は大幅に上昇しているのです。


(出所)Google Financeより


それでは、なぜ、日経平均株価は横ばいを余儀なくされてしまったのか。その答えを明確に出したのが「トヨタ自動車の業績大幅下方修正」でしょう。


(出所)Google Financeより


■先週11月6日(木)、トヨタ自動車が業績の大幅下方修正を発表。今期09年3月期営業利益は従来予想を1兆円下回る「前期比7割減の6000億円まで落ち込む見通し」となりました。これを受け「米国株は大幅下落」「トヨタ自動車のADR(米国預託証券)は▲17%もの下落」を演じてしまいました。

ただし、トヨタ自動車の業績悪化に関しては、決して驚きを持って迎えられるという類いのものではないと考えています。

実際私は、11月4日付の直近ピーク株価時点で、「ヤフーニュース 経済記事」に以下のコメントを掲載しています。

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「・・・実際には、消費動向は苦しさを増している。日本の自動車各社が3日発表した10月の米新車販売台数では、トヨタの米新車販売台数は前年同月比23.0%減の15万2101台となっている。自動車は消費動向を反映するうえで一番重要な指標だ。この数値がこれだけ厳しいのであれば、その他消費財もこれから苦しくなっていくと考えたほうが妥当だろう。楽観が支配する中で、痛い目にあったのは、最近の金融恐慌と同じ。消費に対する楽観的見解は、クリスマス商戦が本格化し、さらに、その結果が明らかになる1月には悲観に変わるだろう。そのため、消費関連銘柄、特に、北米消費に影響が深い企業への投資は見送るタイミングだと考える。また、全体相場につられて上昇する局面があれば、そこは短期的には戻り売りのチャンスとなると考えたい」

「ヤフーニュース 経済記事」(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081104-00000009-scn-brf)11月4日付より
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■こうした事実を実は私たちはすでに経験しています。

というのも、90年代から00年代の初め、私たちは「デフレ経済」というものを経験しています。その発生の原理を辿っていくと、デフレ景気のスタートとなったのは、"金融危機"でした。

そう、米国はこれから日本から十数年遅れてデフレ景気がスタートするのです。そのため、トヨタ自動車のように北米に依存し続けてきた企業の業績がこれからも厳しくなる事は、十分予想されたのです。

■12月には、北米クリスマス商戦がスタート、その結果が明らかになる1月には、さらに消費が悪化し、デフレ景気が浸透していく様を見る事になるでしょう。

その動きは、すでに消費に現れています。特に、10月、9月に比べ一段と冷え込んだのは、超高級や高級と位置づけられる百貨店。ニューヨークの著名百貨店「バーグドルフ・グッドマン」などを持つニーマン・マーカスは26.8%減となり、9月(12.9%減)や8月(0.5%減)から加速度的に悪化しているのです。

■また、財布のひもを握る"雇用状況"も芳しくありません。

米サプライマネジメント協会(ISM)が5日発表した10月の非製造業景況感指数は総合指数が前月比5.8ポイント低下し、44.4となっています。好不況の分かれ目である50を3カ月ぶりに割り込み、市場予想の平均(約47.5)も下回っています。

なかでも、注目しなければならないのが、ISM非製造業景況感指数の個別項目「雇用」指数が前月より2.7ポイント低い41.5となり、データが公表されている1997年以降で最低となったこと。

また、米調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが5日発表した10月の人員削減数は11万2884人。金融機関や自動車関連の雇用減が響き、前月から2割弱増えたといいいます。先週発表の10月の消費者信頼感指数では「雇用が得にくい」との回答比率が前月から5ポイント高い37.2%に上昇していることを考えると、雇用環境は急速に悪化していると言えるでしょう。

■このように考えていくと、まず、トヨタ自動車のように北米を主体とした外需企業は苦しい展開が予想されます。他に、家電、機械、精密機器など、日本を代表する企業群は、現時点では「投資対象外」ということになるでしょう。その結果、需要が落ち込む事で、資源価格も早晩の回復は見込みづらいということになり、そのため、商社や海運なども同様に苦しい展開が予想されます。

一方、内需はどうか。為替が円高に振れていることが嫌気されていますが、よく考えてみれば、それだけ日本が評価されているということにもなります。金融やネット関連、消費材など投資できる対象はまだまだあります。

■年末から年始にかけて、ここ数年、投資の柱であった外需、資源から、内需に投資対象が移ろうとしています。11月は、10月という未曾有の恐慌を経験したからこそ見えたことを糧に、冷静に次の状況を見据える大事なタイミングではないでしょうか。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「儲かる会社はこうして作れ! 1000社徹底取材でわかった「企業を強くする4つの条件」」 講談社 (2008/9/2)

株式・資産形成講座 「金融リアルタイムライブ」講師
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第69回 『銀行の自己資本比率規制の緩和って、どう?』

11/7に金融庁は「銀行の国内基準における自己資本比率規制を緩和する」ことを決めました。この緩和の中心は「銀行が保有している有価証券の含み損益(特に、今回の場合は「損失」)を、一部、自己資本に参入しなくて済むようにルール変更した」というものです。これによって国内を営業の基盤としている地域金融機関(特に、信金、信組など)は「含み損をあまり気にする必要がない」ので、「地域の中小企業に貸し出しを行うだろう」と金融当局は期待しているようです(少なくとも政治家からのコメントでは、そのように受け止められる発言が流れています)。

・・・でもね。。。

これはかなり"テクニカル"的なものであり、実体経済を考えれば"本当に意味あるもの"なのか否かについて非常に疑問です。

確かに銀行は自己資本比率によって規制されているのであり、自己資本の毀損が多い、または、毀損する可能性が高い場合には、リスクアセットを減らす必要があることから「中小企業への貸出を抑える(貸し渋り)」「中小企業への貸出の早期回収(貸し剥がし)」を行う可能性は否めないとは思います。でも、有価証券の(含み)損失額を自己資本に算入しなかった場合、その部分を「中小企業への貸出に回す」という行動につながるのでしょうか?

そもそも銀行の「有価証券運用」というのは、「貸し出しに回さなかった資金」の運用であり、言わば、銀行にとっての"余資運用"とも考えられるものです。しかも、今回の緩和の対象になっている有価証券は主に「株式」であり、株式運用というのは「中小企業貸出よりも実質的にはリスクが低い運用」と考えて行っているはずです。

とすると・・・

現状、経済実態は極めて不透明であり、「円高」「米国経済悪化」ということから、上場会社において"も"経営が困難になっている中で、中小企業の経営リスクは、まずます「高まっている」と考えられます。いくら「地域金融機関は中小企業とのリレーションシップが保たれている」といっても、外部要因における将来の経営リスクが高まりつつある現状では、この規制緩和によって「貸出余力が発生した」からといって、「では貸出を増加させましょう」とはいかないと思います。

つまり、本来、この規制緩和の対象になっている有価証券(株式)運用に充てていた資金とは、「中小企業貸出へ振り向けるのは危険」と考えて、敢えて「株式運用等に回していた」わけだから、有価証券"でも"失敗した分を「自己資本へ算入しなくてもよい」ということになったからといって、もっとリスクの高い(と考えられる)「貸出」へ回す可能性は「ない」と考えるのが「普通」ではないでしょうか。

したがって、今回の規制緩和では、確かに「銀行(特に地域金融機関等)は破たんの危機からは遠ざかる」ことになるので、その意味では「金融システムの健全性」を"表面的には"維持できるとは思いますが、"だから"といって、中小企業貸出の増加を期待するのは「無理だ」と思います(そもそも「数字を弄っただけ」に過ぎず、「金融機関が健全になった」わけではありません)。

また、今回の規制緩和の内容として「中小企業向け債権査定条件の緩和」というものもありますが、現在のような"リスクの高まった"しかも、"不安定な時期"に、貸出条件を緩和するというのは、「将来的なデフォルト率を高める」可能性があることであり、むしろ、逆に「問題だ」と考えます。

市場には「ルール」が必要であり、「ルール」は「困ったから変更して良い」というものではありません。といって、「全く変更してはいけない」とも言えませんが、中小企業等への貸出が「既存の金融システムの中で問題になっている」のは「今に始まった」ことではなく、以前からそうである以上、このように外部要因が厳しい折に「ルール変更をする」というのは逆効果の何者でもありません。

もし、それでも「現状あるルールを変更する」というのであれば、そもそも「現状のルール」そのものが「機能不全であった」ということに他なりません。「現在、世界的な不況」だから、"とりあえず"ということで「ちょこっと手当て」して「何とかなる」というものではないのであり、まして、小手先だけで「うまくいく」という種の問題ではありません。

そういう意味で、現在求められているのは「ルールの変更」などではなく、「ゲーム(つまり、「金融システム」)ぞのもの」を考え直す必要があると思っています。しかもその作業は、将に「今」が「やるべき時期」なのではないでしょうか。

当然そのためには「ビジョン」が必要です。

つまり、「今、どのような社会にしたいのか」を掲げた上で、それに向けて動かなければならないと思うのです。このような時期に、単に、「既存のシステムの修正・訂正」だけをやってみても、「また来た道」を歩むだけであり、これまでの「厳しい道のり(失われた10年 OR 15年)」は、やはり、「失われた」だけになってしまいます。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第75号、いかがでしたでしょうか。

先日、ちょっとした運用有識者の集いに参加してきました。

会場では経済学に精通されている方やファイナンシャルプランナーの方、アナリストのお仕事をなさっている方などが多数集まり、皆さんこの市況に対する思い思いの見解を意見交換していました。

「この不況はいつが底だ」「今こそこの金融商品に着目すべき」といった話が、それぞれのロジックに基づいてなされていましたが、共通していたことは以下の2点でした。

●仮にこれ以上株価が下がるとしても、今が既に投資のタイミングだということ(とは言え、更なる下落リスクを考慮し、一度の全額投資は避ける)

●これだけの暴騰暴落局面にあってもアメリカとの株価同調だけは続いているので、今後もその影響は強く日本市場に及ぶであろうということ

未来は神のみぞ知るのでしょうが、こうした催しは一個人投資家として大変参考になりますし、数千円程度の参加費で割と頻繁に開催されているので、投資学習の一環として著名な方の講演を聞いたり、投資仲間を作りたい方にはオススメです!

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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