金融恐慌を引き起こしたのは金融株ではない!投資家心理が教える真犯人|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/11/26(水)  
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金融恐慌を引き起こしたのは金融株ではない!投資家心理が教える真犯人

この金融恐慌の"戦犯"は、本当に金融株なのか?

現状、確かに「1929年の大恐慌で問題になった」ことは解決されようとしています。 ところが、「成長著しく投資対象となっていたBRICsの株価が、今、非常に大きく下がっている」という、新たな火種が発生しています。

確かに新興国は経済成長も高く、人口も多く、ほんの数カ月前までは、彼らが世界の経済を支えるとまで言われていました。 では何故株価が下がっているのでしょうか?

それはEMBを見ると判ります。 EMBとは、新興国の国債に投資をする「ドル建てのEmerging Markets Bond」のことです。 国債は非常に単純なもので、例えば100という数字が、5年後、10年後などある期間を経て、また100で返ってくるという仕組みです。 例えば、私が日本国だとして「国債を発行する」というのは借金です。投資家から考えれば、お金を渡すことによってクーポン(利回り)がもらえることになります。 国なので、その国の中でいえば、「つぶれる心配が一番少ない」のですから、「国には安心して投資することができる」ということになります。

この新興国の国債も同じです。 新興国が国債を発行し、投資家からお金をもらう。 国としては借金、投資家としては投資です。 しかし、もし国が破綻してしまうと判ったら、お金を出すでしょうか? 出しませんよね。

下のEMBをご覧ください。 ずっと100で推移していたのですが、7月に"わずかに"100を割っています。 私も10月を経験するまで、これに気がつきませんでした。


この「わずかに」というのが、非常に重要なポイントです。 国債は本来、100という数字がある期間を経てまた100で返ってくる。 その間、元本があり、それに対して配当利回りというクーポンがもらえるから安心して投資をするという仕組みです。 しかし、「元本を割った」ということは、新興国の国債の中に「デフォルト(債務不履行)」、つまり「国として破綻するリスクがある」と投資家が判断したということです。

7月にその判断があり、9月、10月10日にとんでもない下がり方をしています。 ちょうど1回目の下落の時が、リーマンブラザーズ・ショックです。 この時点では、まだそれほど落ち込んでいませんでした。 ところがリーマンブラザーズ・ショックの後、10月にはとんでもない下がり方をしています。 この下げは金融株が原因と見られがちですが、実はこの原因は前述した新興国によるもので、金融株は恐慌の戦犯ではありません。


●金融恐慌の犯人は、BRICsのデフォルトであり、投資家の「不安心理」

では「何故、金融株が恐慌の戦犯ではない」のか否かを検証してみましょう。 10月14日に米国が公的資金を投資したことは、1929年の恐慌と同じく反発するものと同じ、もしくは、近い内容です。しかもそれを押し下げていたら、楽観論もなくなっているはずです。 本来なら反発してもおかしくなかったわけです。 しかしそれでも金融株は横ばいでした。

それは何故か? 「新興国が悪さをしている」からです。 それが「新興国のデフォルト」、つまり、投資家が「国がつぶれてしまうのではないか」というように不安を抱くことです。 先ほど見ていただいた数字でも77ですし、いちばん最悪期には65まで落ちています。 本来は100で返ってくるものが77まで落ちてしまう、それくらいリスクが高いということになってしまうでしょう。

では、ブラジルやロシアなどの国々が、実際に「破綻するのか」というと、普通は、そんなに簡単に破綻するものではないと思うでしょう。 ところが、投資家が破綻リスクを懸念してしまうと、今のようなことが起こってしまうわけです。 株というのは本来、平常時には資産です。「いまいくらお金を持っているのか」、それが「どれくらい収益を生むのか」が重要だということです。 しかし、それだけではありません。 やはり「投資家心理」というものがあると思います。 いくら新興国が、いま業績がよくても、「つぶれるのではないか」「収益が悪くなるのではないか」と思ったら何となく投資するのが怖い。  だから株価が一気に下がってしまったということです。


●過去20年間で未曾有の"恐怖"が、投資家の不安心理に大きな影響を与えている!?

 その影響が、米国を中心とした「世界で活躍する企業の社債」にも表れています。  国債が、投資家が国に対してお金を貸すのに対して、社債は投資家が企業に対してお金を貸すものです。

今度はLQD(米ドル建て投資適格社債ファンド)を見てみましょう。


前述のEMB同様、信頼感が高い企業であれば、当然に、その値は100で推移するわけです。

しかし、ある時から突然100を割り、ある時には80台まで下落しています。 新興国ほどではないにせよ、それでもやはりものすごく下がっています。  どうして「そういうことが起こったか」というと、新興国の場合と同じく、投資家の不安心理が資産もしくは収益に影響を及ぼすのではないかと考えてしまったということです。

このファンドに含まれている企業を一部ご紹介すると、花王の約10倍、1兆円規模の利益を上げている「ジョンソン・エンド・ジョンソン」「IBM」「インテルグループ」「ウォルマート」「AT&T」などが並んでいます。  これを日本に当てはめれば、「花王」「松下電器」「東芝」「イトーヨーカドー」「イオン」「NTT」が並んでいるようなものです。

普通は[こんな企業がつぶれるのか!?]と思いますよね。 しかしCredit Ratings でAAA格、AA格の企業でも「つぶれてしまうのではないか」というリスクが株価を結果的に押し下げてしまったのです。  つまり金融株が下げたわけではなくて、事業会社が株価を下げたというわけです。  その事業会社の株価が下がった大本にあるのは、新興国のデフォルト(債務不履行)リスクだと今回は考えなければいけません。

 1929年の大恐慌と近い部分で経験し成長したことへの対策は、当局は行いました。しかし株価は下がってしまい、下げ止まらなかった。 それは、「新興国のデフォルト」という初めての恐怖に直面したからですね。

私たちは、過去20年の中で未曾有の恐慌を"恐怖"として感じてしまいました。 新興国がこれほどまでに成長し、そして、これほどまでにデフォルトするリスクというものを、私たちが考えたことが無かった、その結末が今の状況となっているわけです。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「儲かる会社はこうして作れ! 1000社徹底取材でわかった「企業を強くする4つの条件」」 講談社 (2008/9/2)

11月13日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第71回 『「定額給付金」はどこへ?!?!』

麻生首相は「政局よりも政策」といって、「定額給付金」を含む、経済政策を打ち出しました。しかし、その「定額給付金」に対して国民から総スカンにあったため、「体制を立て直す」ために、この一連の政策の裏付けとなる「第2次補正」の提出を、年越えの通常国会まで「先延ばし」にしようと考えています。

そもそも今回の経済政策は、「景気刺激策」というよりも「生活支援策」だった"らしい"ので、景気刺激効果は「あまりない」のは初めからわかっていることであり、国民もその点については、今さら、期待はしていません。

しかし、政府側から「定額給付金を出す」といった限り、それはその時点で「織り込み済み」になってしまうため、「批判が多いようですからやめます」ということはできないのです。もし、「やめます」といった場合、これは「消費減退効果」によって、さらにマインドを冷やすことになり、一直線に「恐慌」まで落ち込む可能性もあるからです(「定額給付金」という政策は、景気に対して"プラスの効果はない"ものの、一度「やる」と言った後、「やらない」ことになれば、景気に対して"マイナスの効果"は非常に強くなります)。

このような中にあって、先週17日(月)に発表された7-9月期GDPは、事前のコンセンサスが「前期比0.0%」であったものが、実際には「マイナス0.1%(年率換算でマイナス0.4%)」となり、景気減速が確認されました(二期連続でGDP成長率がマイナスになった場合に「リセッション(景気減退)」と定義されています)。

「7-9月期」ということなので、リーマン・ショック以降の世界的な金融危機の影響は、ほんの「半月」しかなかったはずですが、コンセンサス以上の景気減退になっていることになります。したがって、ここでは早急に"景気刺激策"を実行しなければならない時期であり、「年明け・・・」云々などいっている状態ではありません。

「定額給付金」自体は「来年3月まで」に何とか支給すれば良いのでしょうが(そもそも「生活支援」ですから・・・)、同時に景気対策に組み込まれている「中小企業に対する信用保証枠の拡大」などについては何をおいても実行しなければならないでしょう(実際、麻生首相は、当初、「年内」という言葉を使っています)。他の対策は「年度内」でも良いとは思いますが、この部分については「年内」でなければ「効果もない」し、今回のGDP統計からみて、10-12月期の経済は壊滅的な状態になることが危惧されます。

麻生首相は「(国会審議の協力姿勢に対して)小沢氏は信用できない」といったという報道がありますが、真偽は別にしても、国民的には「やはり、その程度の危機意識しか持っていなかったのだなぁ~」と思ってしまいます。この難局を乗り切るには、「出来ることは何でもやる」という姿勢がないと大変なことになってしまうわけであり、「自民だ」「民主だ」といっている場合ではありません。ましてや、「この法案に、野党は反対するだろうから、先延ばしにして体制を立て直す」というのは如何なものでしょうか???

「先延ばし」にすれば、時間がなくなるから「野党が賛成する」と思っているのでしょうか?

それとも、新たに「国民受けする対策」を考えようとしているのでしょうか?

ここは今国会で与野党関係なく、審議を尽くして、早急に実行するべきだと思います(今"やらなくてよい"というものは「先延ばし」でも良いものの、やるべきことは、早急にやれるように"予算措置"だけは施すべきでしょう)。

特に、「信用保証枠拡大」については、銀行等の資産内容が危機的状態にある中で、経済における内外の状況も日に日に悪化している以上、民間事業会社(特に、法人の99%にあたる中小企業)にとってセーフティネットになるものです。当然、「情報の非対称性」問題が発生する危険性もあるでしょう。しかし、現在の金融システムを所与とすれば、経済を底支えするには「信用保証枠の拡大」しかないわけであり、できることは「やる」という姿勢で施策を打つべき時期だと思います。

今回の"麻生首相"による経済対策は、"生活支援策"だったかもしれませんが、世間では「景気刺激策」と思って、「政局よりも政策」という首相の言葉を受け止めていたわけであり、それを「先延ばし」すれば、経済に深刻なダメージを与えることになるでしょう。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第77号、いかがでしたでしょうか。

今日は夢のあるような無いような、そんなお話を一つしたいと思います。

私には、海外のサンタクロースからクリスマスカードが送られてくるサービスを使って、毎年間接的にメッセージカードを送ってくれる友人がいます。

今年も送ってくれるのかなと思っていた矢先、その友人から電話がかかってきました。


友人曰く、「今年はあのカード送れそうにない」とのこと。

理由を聞いたところ、なんでもそのサンタさん(業者さん)からひと月早いクリスマスカードが届いたらしく、中を開けると「今年は不景気による人員不足で日本への発送サービスができません」とのメッセージだったようです。。

厳しい現実はこんなところにも・・・そう感じた一日でした。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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