米国景気サイクルから読む、ドル売りクライマックス|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/12/10(水)  
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米国景気サイクルから読む、ドル売りクライマックス

借金国通貨のドルは「自国の景気循環にそって動く」パターンがある

『超長期的に見て、日本では少子高齢化が進み、生産性や成長率の趨勢(すうせい)的な伸びが主要国対比で劣るなら、円安が続き、外貨建て資産投資が当たり前』。昨年や一昨年には、世間ではこうしたことがよく言われてきました。

 しかし私の講義では、「たとえ超長期で円相場が下落トレンドをたどるにしても、数年ごとに景気循環にそった円高が起こります。これから円高になるリスクが高まりますよ」と繰り返し申し上げてきました。

 米国は長年、経常赤字を積み上げてきた"借金国"です。借金国通貨のドルは、海外から米国にスムーズにお金が入ってこないと、下落してしまいます。資金繰りに窮して、ドル安になり、割安になった米国の資産を「外国人に買ってください」というわけです。

 借金国にお金が入りやすいのはどのような状況でしょうか。景気がよくなり、金利もある程度高くなり、株も高い・資産価値も上がっている時です。こういう時には、海外投資家も米国に前向きにお金を「投資したり」「貸したり」できます。

逆に景気が悪くなり、金利も下がり、資産価値も下がれば、米国にお金を貸したくないと思うのは当然です。そうするとドル安になってしまう。このパターンが歴史的に何度も繰り返されています。

 為替というと、たいていは内外の格差分析になります。しかし米国のような借金国の場合は、"自国の景気循環にあわせて通貨が動いている"面がありますから、それで整理したほうが面倒は少なく、分かりやすいと思います。

●米国の景気が回復して、金利が上がり始めてから、ドルはさらに売られやすい

いま米国の景気は悪化し、下降局面にあります。景気循環にそった短期金利、長期金利、株式、ドルの動きをそれぞれ見てみましょう。


1)短期金利
政策金利は景気下降局面に低下し、やがて利上げに転じるのは、景気回復が始まってしばらく経って、「景気はもう大丈夫」となってからです。

2)長期金利
長期金利は、カバーする期間が長い分、通常はピークを打つのも底入れするのも、政策金利のような短期金利よりも早くなります。短期金利と長期金利のズレは、景気循環の次の変化を占う重要なシグナルとなります。

3)株式
株式は、景気が悪化し、金利も下がる状況で、しばらく下降していきます。しかし十分に金利が下がると、その利下げを好感して、株式の金融相場が始まります。 幸いそのまま景気が回復して行けば、株価の上昇も続くのかというと、実は違うというのが過去よく起こったパターンです。景気回復を受けて、利上げが始まると、金融相場というテーマが終わり、株式はいったん調整・反落しがちです。ただし景気は上向いているので、いずれ業績相場に移っていきます。

4)ドル
ドルは、景気がピークを過ぎて、利下げも始まる前後から下落局面に入ります。その後、景気はまだ悪化している途中でも、金利が十分下がって株も上がり始めると、ドルも買い戻されて上がる場面があります。 では、そのまま上昇局面に入れるかというと、そうではありません。その後、景気回復と利上げが進む中で、危機的に売られる展開が過去に何度もありました。

 何故そうなるかというと...。 景気の大底近くで株価が上がり、ドルが買い戻されたからといっても、米国の金利は循環上最も低い水準にあり、米国の借金を安定的に賄うことはできません。やがて、金利が上がり始めると、債券は売られていきますし、株もそれまでの金融相場が終わって売られてしまう。借金国なのに株も債券も外国人から買ってもえらえない状況になり、ドルが急落するわけです。

 この見方にそって、今後の展開を考えてみましょう。  今はまだ米景気は悪化の途上にありますから、ドルは(特に円のようなお金を貸す側の国の通貨に対して)安くなりがちです。 2009年の半ば以降、十分な政策が打たれて『もう大丈夫かな?』という状況になると、株が多少上がりやすくなります。その時には、ドルも買い戻される可能性があります。 でも、これからはもうドル高局面だなどと思っていると、危険です。2010年か11年に、そろそろ米国の超金融緩和をやめて、金利も正常な水準に戻したらどうだという話になった時に、株価の反落、そしてドル売りのクライマックスが来る可能性があるのです。

講師紹介
大前研一
野村證券株式会社 金融市場調査部
マネージング・ディレクター 外国為替ストラテジスト
田中 泰輔

11月28日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第73回 『今後の中国人民元の動向は?!?!』

中国人民元は、現状、6.80~6.85人民元/ドルくらいで推移していますが、リーマン・ショック以降、他国の通貨から見て、かなり安定した動きになっています。まぁ、人民元は完全な「変動相場制」ではなく、バスケットした通貨に対して緩やかに変動することが認められているだけであり、しかも、バスケットといっても「ドル」との連動性の強い状態なので、「ドル」に対しては「ほとんど動かない」のは「当然」といえば当然の話です。

しかし、長期的にみて「人民元はまだ安いので、もっと高い水準にならないといけない」という話があります。たぶん実際にそうなのだと思いますから、世界経済が大きく動く中、しかも当面は「不況」が続くとしても、人民元は高くなる方向に動くことになると思います(あくまでも「長期見通し」ですが・・・)。

理由としては下記の通りです。

まず、「為替レート」というのは「通貨と通貨の交換比率」のことですから、「通貨価値」というものが関係してきます。ということは、「通貨って何のためにあるか?」を知る必要があります。とすると「通貨」というのは、究極的には「商品を買うために存在している」といえます(究極ではありますが、長期的な為替レートを考える場合には、通常、このように考えます)。

したがって、「おカネとはモノを買うためにある」のだから、モノの価値が上がれば、おカネの価値は下がることになります。つまり、物価上昇は通貨価値を引き下げることになるわけです(物価と通貨価値は反比例します)。

また、モノを作るには労働者が必要であり、労働者は賃金をもらって働くことになります。とすると、賃金が高い国では(賃金の低い国に比べて)物価は高くなるはずです(逆は逆)。ここで先進国と発展途上国の場合、先進国の方が賃金は高いので、モノの値段は、同一のものであれば、発展途上国のモノよりも高いはずです。

本来は「一物一価」が適正と考えるので、同じモノであれば、同じ値段になるように為替レートが決定されるはずです。

ところが、発展途上国と先進国の場合、「一物一価」になるような為替レートにすると、当然に発展途上国で作った商品は先進国で「売れるわけがない」ことになります。また、そもそも資本がない状態の中、技術も乏しいので、先進国と同じような商品自体を生産することができません。

そのため、発展途上国の為替レートは非常に低いレートで固定されることが多いのです。その理由を具体的な数字を使って説明します(数字はフィクションです)。

今、固定レートで「1米ドル=10.00人民元」だったとします。しかし、米国ではコロッケ1個が5ドルであるのに対して、中国では(現実的はありせんが)同品質のコロッケ1個が3人民元だったとします。そうすると、中国で1個コロッケを作って、米国に輸出すれば、その輸出業者は5ドルを手に入れることになり、固定為替レートで人民元に戻せば、50人民元になります。この業者は国内で販売するよりも、輸出したことで47人民元多く売り上げることになります。

このように固定為替レートが発展途上国にやさしい値で決められているので、輸出がしやすい為替レートになっているといえます。これは日本でもブレトンウッズ体制で1ドル=360円に決まった時も同じです。

このことから発展途上国が経済発展をし、賃金が高くなれば、本来、物価上昇から自国通貨安になることが予想されるものの、そもそもの為替レート自体が相当安い値であることから、変動制になった場合でも、初めは理論的な値である「一物一価の値(「購買力平価」といいます)」に向けて通貨高になるのが普通なのです。

日本でも360円/ドルから200円/ドル台、そして、・・・というように急激に円高になっていきました。

ところが、中国人民元は完全な「変動相場制」ではなく、緩やかなドルペッグ制になっていることから、まだまだ、購買力平価からみて「人民元高」の余地があると思われます(実際には計算をしてみないと「どのくらいの乖離が存在するのか」はわかりませんが・・・)。

しかも、中国は「賃金が高くなった」とはいえ、農村部からの潤沢な労働力が潜在的に存在するため、まだまだ賃金は低い状態にあります。そのような中、技術革新(イノベーション)などが起これば経済成長が続くことも期待されます。経済成長によって、緩やかな賃金上昇になったとしても、現状のようにドルペッグを続けている限り、急速に為替レートは動かないので、人民元はドルに対して安い状態が続くことになります。

したがって、常に「人民元高」の圧力がかかることから、中国政府としても「徐々に切り上げる」という戦略を取り続けると思われます。ということで、将来に渡っての人民元高は「当面続く」ものと考えています。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第79号、いかがでしたでしょうか。

私はドキュメンタリー番組好きなので、休日家にいるときはそういうものをよく観るのですが、最近驚くほど目にするのが解雇をテーマとした番組です。

特に派遣社員は数年前、日本の失業率が大きく低下した当時に、正社員と比べた労働自由度の高さなどから「まずは派遣で定職に」と、国もその推進を図ってきました。

しかし、昨今の全世界的な業績・経営不振を前に「まずは目先の契約満了を求めることの出来る派遣社員から」と、企業は容赦無く雇用打ち切りを断行し続けています。

そうしたいつ収束するかわからない大不況を前にして、来年度以降、その影響は正社員にも大きく拡大する様相を呈しています。

日本以上に深刻な状況を抱えるアメリカでは、一昨日オバマ氏がGM他ビッグスリーに対し「厳しいリストラを実施出来ない経営者は辞任すべき」と表明しています。

一方でオバマ氏は、公共事業投資によって新たに数百万人規模の雇用創出を目指す考えも示唆しており、アメリカでも時間的猶予の無い中で雇用政策の抜本的改善実現が急務となっています。

会社が存続のために求める力や自分にしか出来ないこと、そうした+αの価値付けを強く意識する必要があると感じます。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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