日米有名シンクタンクの「日米の2009年実質GDP成長率予想分布」
先頃、日米の有名シンクタンク14社が、『日米の2009年実質GDP成長率予想分析』を発表しました。
このグラフは、縦軸が「日本の実質GDP成長率」、横軸が「米国実質GDP成長率」、それぞれのシンクタンクの発表値がどのように分布しているのかを図示したものです。
もちろんバラつきはありますが、パッと見て判るようにしています。
米国の場合は0.7や0.8%予想、日本は平均すると「マイナス0.3%予想」だと各有名シンクタンクは言っています。
注意していただきたいのは、これは"現時点の情勢"を基にした予想だということです。
もし今後、急激に落ち込んだりすると、さらに下方修正されるでしょう。あるいは上に行く可能性だって無いとは言えません。シンクタンクの予想は修正されるものだからです。
続いてこちらのグラフは、縦軸が「消費者物価の変化率(除く、生鮮食品)」、横軸が「失業率」です。
これを一言でいうならば、「デフレ再来」です。
ある一時期、インフレ、インフレと言われましたが、それが一夜にして変貌してしまったという感がありますね。これが予想されているところです。
そして失業率は、少々バラつきがあるものの、ここで見ていただきたいのは「このグラフそのものが失業率4.2%から始まっている」ということです。
グラフの書き方で幅があるように見えますが、そもそも"失業率が高い"ということが前提になっています。
平均すると失業率予想は「4.6%」くらいになるでしょう。
ちなみに2003年には、失業率が5.5%まで上昇したことがあります。その当時と今は、それほど変わらない状況になっているのではないでしょうか。
特に失業率悪化は、「日本企業の雇用削減」という形で、その端緒がかなり見え始めています。
この「日本企業の雇用削減」は、大問題だと認識して下さい!
例えば日産自動車は、派遣社員の削減数を10月末発表の1,000人から1,500人に増加。もともと1,000人減らすと言っていたものを、さらに5割増やしました。
そして、いすゞ自動車は、国内基幹二工場の期間従業員、派遣社員の計1,400人の契約を年内打ち切りと発表。そしてトヨタ自動車は、4~6月期には、平均約8,800人いた期間従業員を7~9月期の平均約7,000人に削減。
これだけでも4,500~4,600人程度、これはすごいことです。
そして問題は、期間従業員や派遣社員だけではありません。
例えば「大京」では、40歳以上の正社員を対象に450人の希望退職者を募集。SUMCOも、減産規模に応じて派遣社員約2,400人の削減を検討しています。
こうした動きは、どんどん加速していくでしょう。
ここでは日産やトヨタなど大きなメーカーの名前だけを出していますが、その先には自動車部品メーカーが、さらにその先にはたくさんの企業が繋がっているわけです。
これは大変なことになるのではないでしょうか。
過去にも当然、景気が悪かったことはありましたが、これほど短期間にここまでの人員削減が一気に出てきたというのは私の記憶にはありません。
他にも、例えば自動車販売の前年同期比との落ち込みも平気で20~30%出てくる。今までも5~8%とかはありましたが、これも記憶がありません。
言い古された言葉ではありますが、「100年に一度の危機とはこういうことか!」と実感せざるをえない状況です。本当に怖いことだと思います。
●もしかするとあるかもしれない「次のパニックへの備え」とは何か?
ここで株に話を移します。
今年10月末にパニックが起こりましたが、この後はもう同じことは起こらないのでしょうか。
もちろんパニックというのは、いまある株価の数字の下だけで起こるとは限りません。さらに株価が戻った後でも起こらないとは、誰にも言えないでしょう。
パニック的なものはこれで終わりではない。私はそう考えています。
だからこそ投資家としては、次のパニックに備えておくべきだ、少なくとも頭の中にそれを想定しておくべきだと思います。
ここで経済パニックや大恐慌の研究家として有名な、米経済学者、故チャールズ・キンドルバーガーが提唱した「パニックが終わる3つの条件」をご紹介したいと思います。
(1)資産の値段が十分下がり、著名投資家が買い手として登場する
まず(1)が面白いのは、著名投資家は資産の値段が十分下がったところで登場するのだと言っている点です。
今回も、米国の著名な株式投資家ウォーレン・バフェット氏が株を買っているという情報が出ましたね。その後、ほどなく株価のパニックは一旦終息したと言えるのではないでしょうか。
(2)証券取引所が閉鎖される(=市場価格が無視される)
これは客観的に証券取引所が閉鎖されるというよりは、市場価格が無視されるということです。
例えば、10月末のパニックの時は、ロシアやインドネシアの証券取引所が閉鎖されました。しかしそれだけを言っているのではなく、例えばクレジット・デフォルト・スワップのように、その市場の中で「本来は値段がついているモノ」を、市場外にいる存在(国や中央銀行など)が買い取ったりすることなどを言っています。
(3)中央銀行があらゆるものの買い手として登場する
米FRBの動きなど、確かにキンドルバーガー氏の言っていることは当たっています!
そして「中央銀行があらゆるものの買い手として登場する」ということは、すなわち前述(2)の「市場価格が無視される」ことでもあります。
ただし、勘違いしないで頂きたいのは、「そうなると株価が上昇する」と言っているわけではないということです。
そうではなくて、ここで言いたいことは、もし次にパニック的な動きがあった時は、キンドルバーガー氏が指摘する状況になれば、パニックが「一旦終息するだろう」ということです。
ぜひ覚えておいて下さい。それが次のパニックに対する備えです。
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