シンクタンク調査から見る金融パニック、そして次なるパニックへの備えとは|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/12/17(水)  
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シンクタンク調査から見る金融パニック、そして次なるパニックへの備えとは

日米有名シンクタンクの「日米の2009年実質GDP成長率予想分布」

先頃、日米の有名シンクタンク14社が、『日米の2009年実質GDP成長率予想分析』を発表しました。


このグラフは、縦軸が「日本の実質GDP成長率」、横軸が「米国実質GDP成長率」、それぞれのシンクタンクの発表値がどのように分布しているのかを図示したものです。 もちろんバラつきはありますが、パッと見て判るようにしています。 米国の場合は0.7や0.8%予想、日本は平均すると「マイナス0.3%予想」だと各有名シンクタンクは言っています。

注意していただきたいのは、これは"現時点の情勢"を基にした予想だということです。 もし今後、急激に落ち込んだりすると、さらに下方修正されるでしょう。あるいは上に行く可能性だって無いとは言えません。シンクタンクの予想は修正されるものだからです。

続いてこちらのグラフは、縦軸が「消費者物価の変化率(除く、生鮮食品)」、横軸が「失業率」です。


これを一言でいうならば、「デフレ再来」です。 ある一時期、インフレ、インフレと言われましたが、それが一夜にして変貌してしまったという感がありますね。これが予想されているところです。

そして失業率は、少々バラつきがあるものの、ここで見ていただきたいのは「このグラフそのものが失業率4.2%から始まっている」ということです。 グラフの書き方で幅があるように見えますが、そもそも"失業率が高い"ということが前提になっています。 平均すると失業率予想は「4.6%」くらいになるでしょう。 ちなみに2003年には、失業率が5.5%まで上昇したことがあります。その当時と今は、それほど変わらない状況になっているのではないでしょうか。

特に失業率悪化は、「日本企業の雇用削減」という形で、その端緒がかなり見え始めています。 この「日本企業の雇用削減」は、大問題だと認識して下さい!

例えば日産自動車は、派遣社員の削減数を10月末発表の1,000人から1,500人に増加。もともと1,000人減らすと言っていたものを、さらに5割増やしました。 そして、いすゞ自動車は、国内基幹二工場の期間従業員、派遣社員の計1,400人の契約を年内打ち切りと発表。そしてトヨタ自動車は、4~6月期には、平均約8,800人いた期間従業員を7~9月期の平均約7,000人に削減。 これだけでも4,500~4,600人程度、これはすごいことです。

そして問題は、期間従業員や派遣社員だけではありません。 例えば「大京」では、40歳以上の正社員を対象に450人の希望退職者を募集。SUMCOも、減産規模に応じて派遣社員約2,400人の削減を検討しています。

こうした動きは、どんどん加速していくでしょう。 ここでは日産やトヨタなど大きなメーカーの名前だけを出していますが、その先には自動車部品メーカーが、さらにその先にはたくさんの企業が繋がっているわけです。 これは大変なことになるのではないでしょうか。 過去にも当然、景気が悪かったことはありましたが、これほど短期間にここまでの人員削減が一気に出てきたというのは私の記憶にはありません。

  他にも、例えば自動車販売の前年同期比との落ち込みも平気で20~30%出てくる。今までも5~8%とかはありましたが、これも記憶がありません。 言い古された言葉ではありますが、「100年に一度の危機とはこういうことか!」と実感せざるをえない状況です。本当に怖いことだと思います。


●もしかするとあるかもしれない「次のパニックへの備え」とは何か?

ここで株に話を移します。 今年10月末にパニックが起こりましたが、この後はもう同じことは起こらないのでしょうか。 もちろんパニックというのは、いまある株価の数字の下だけで起こるとは限りません。さらに株価が戻った後でも起こらないとは、誰にも言えないでしょう。 パニック的なものはこれで終わりではない。私はそう考えています。 だからこそ投資家としては、次のパニックに備えておくべきだ、少なくとも頭の中にそれを想定しておくべきだと思います。

ここで経済パニックや大恐慌の研究家として有名な、米経済学者、故チャールズ・キンドルバーガーが提唱した「パニックが終わる3つの条件」をご紹介したいと思います。


(1)資産の値段が十分下がり、著名投資家が買い手として登場する

まず(1)が面白いのは、著名投資家は資産の値段が十分下がったところで登場するのだと言っている点です。 今回も、米国の著名な株式投資家ウォーレン・バフェット氏が株を買っているという情報が出ましたね。その後、ほどなく株価のパニックは一旦終息したと言えるのではないでしょうか。

(2)証券取引所が閉鎖される(=市場価格が無視される)

これは客観的に証券取引所が閉鎖されるというよりは、市場価格が無視されるということです。 例えば、10月末のパニックの時は、ロシアやインドネシアの証券取引所が閉鎖されました。しかしそれだけを言っているのではなく、例えばクレジット・デフォルト・スワップのように、その市場の中で「本来は値段がついているモノ」を、市場外にいる存在(国や中央銀行など)が買い取ったりすることなどを言っています。

(3)中央銀行があらゆるものの買い手として登場する

米FRBの動きなど、確かにキンドルバーガー氏の言っていることは当たっています! そして「中央銀行があらゆるものの買い手として登場する」ということは、すなわち前述(2)の「市場価格が無視される」ことでもあります。 ただし、勘違いしないで頂きたいのは、「そうなると株価が上昇する」と言っているわけではないということです。 そうではなくて、ここで言いたいことは、もし次にパニック的な動きがあった時は、キンドルバーガー氏が指摘する状況になれば、パニックが「一旦終息するだろう」ということです。

ぜひ覚えておいて下さい。それが次のパニックに対する備えです。

講師紹介
天海 源一郎
ビジネス・ブレークスルー大学院大学 株式・資産形成講座講師
株式ジャーナリスト/個人投資家/フリープロデューサー
天海 源一郎

12月4日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第74回 『こんなに円高が進むほど、日本経済って、「良い」の?!?!』

ここにきてまた「円高」になってきています。とはいえ、日本のあちこちで「派遣切り」「内定取消し」などがあり、景気後退を示す経済指標がどんどんと発表される中、株式市場もパッとせず、その上、麻生政権は「言うばかり」で何もしない状態が続いているのだから、どう見ても「円高」という感じには思えませんよね。

で、「何故、円高???」と思っている人も多いのではないでしょうか。。。

通貨価値は当該国の「経済の強さ」を示すものであり、経済が「弱い」ということであれば、当然、当該通貨は安くなるはずです。つまり、今の日本経済を客観的にみれば「円安が妥当」ということになります。

しかし、そもそも「為替レート」というのは「通貨と通貨の交換比率」なので、日本経済だけを見ていても為替レートはわかりません。つまり、円/ドルレートの場合には、「日本と米国との経済力格差を見る必要がある」ということになります。

そこで現状の米国経済をみると、そもそも今回の金融危機は"米国発"なのであり、その影響が強く働いているといえます。また、オバマ氏は11月の大統領選挙に勝ったものの、来年の1月に行われる就任式までは「大統領候補のまま」であり、そういう意味では「リーダー不在」ということになります。このような状態だけにドルは通貨価値としての魅力に欠けるわけで、本来的には「どの通貨に対しても安くなる」という可能性があるといえます。

しかし「ドル」は基軸通貨であり、貿易決済のために必要とされたことから、「円」以外の通貨に対して強含みで"つい最近まで"推移していました。

ここで日本でも「決済通貨としてのドル」は必要になるはずですが、日本は経常黒字国であり、対外資産も多く保有していることから、差っ引きで「(ドルに対して)円の勝ち」という状態になったことから、円はドルに対して強含みで推移したと考えられます(ドルが他の通貨に対して強く、そのドルが円に対してだけ弱かったので、円が多くの通貨に対して強含みで推移していたのです)。

このような「一過性」ともいえる「ドル高」は、各国が貿易決済通貨を「ドルから別の通貨にする(例えば、「ユーロ建てで貿易を行う」など)」という行動をとることによって、徐々に「決済通貨としてのドル」の必要性が低下するのに従い、逆に、潜在的な「ドル安圧力」が高まることになるでしょう。

そのような折に「ビッグ3への"支援"法案」が上院によって否決され、これまでの潜在的なドル売り圧力が一気に顕在化し、今回の「ドル安」に至ったものと考えられます。実際、今回のドル安は「円に対する」だけでなく、ユーロに対してもドルは安くなっています。

以上から、「円が高くなった」わけではなく、あくまでも「ドルが安くなった」というだけであり、日本経済云々はほとんど関係ないといえます。

日本にいれば「どうしても円を中心に考えがち」ですが、特に「為替相場」という場合には「円」というのは「単なる(ドルとの)相手通貨」に過ぎず、グローバル的には「日本経済」という要因で云々することは"稀である"と考えた方がいいと思います。

つまり、今までもそうですが、「米国経済が悪い」から「ドル安」なので「円高」になり、その時は「米国経済に影響され、日本経済は悪くなる」ことから、「円高」と「日本経済の不況」が一緒に起こることになるのです(逆に、「米国経済が良い」時は「ドル高」なので「円安」になり、その時は「米国経済にけん引されて、日本経済が良くなる」ことから、「円安」と「日本経済の好調」が一緒に起こっていることになります)。

このような「円高」「日本経済悪化」は何度も経験していることなので、投資家も「円高(=ドル安⇔米国経済悪化⇒日本経済悪化)=株安」と考え、株式相場を冷やすことになるのです。

当面、米国経済に明るさが見えてこない可能性が高いことから、ドル安(つまり、円高)傾向が続くことになると思います。しかも、各国とも低金利政策(というよりも、すでに「ゼロ金利政策」)になっているので、「そもそもこれ以上下げ余地のない日本の金利」との比較でいえば、円金利との金利差が縮まることを意味するので、円が強含むことになることが考えられます。

今後の展開としては、他力本願的ではありますが、やはりオバマ新政権が「どこまで米国経済を立て直せるのか」にかかっているといえるので、米国経済に何らかの「光」が見えない限り、現状の「ドル安(円高)は続くことになる」と思います。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第80号、いかがでしたでしょうか。

この日曜日に、とあるオフショア投資の盛んな国でポートフォリオマネージャーをしているアジア人の方から分散投資の話を聞く機会がありました。

自身も30~40%はヘッジファンドを組み込んでいるというお話だったので、ヘッジファンドの選び方として、パフォーマンス以外にどんな点に着目されているか質問してみました。

すると、
1.ファンドの規模、総資産額
2.10年単位で見た時、年平均パフォーマンスのボラティリティ(上下幅)が比較的小さいこと
3.ファンドが過剰なリスクを取っていないこと
といった答えが返ってきました。

特に3.については、日本に存在している代表的なヘッジファンドでさえも、「10年で数百パーセント」といったパフォーマンスの高さを売りにしていますが、それはあくまでインパクトの大きさを示したに過ぎず、基幹部分の投資にはヘッジファンドであってもローリスクローリターンの金融商品を組み入れることがやはり大切なようです。

この市況下に大きなダメージを負い、「この負債を短期的に補うために高いリスク商品を」と考えていらっしゃる方もおられるかもしれませんが、こんなときこそ冷静に、過剰なリスクは避けるよう心がけていただきたいと思います。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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