低品質でも需要増!?中国政府介入が及ぼすアジアへの影響|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/12/24(水)  
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低品質でも需要増!?中国政府介入が及ぼすアジアへの影響

中国の国営ダンピングは東南アジアにとって脅威になる

12日、中国の李毅中・工業情報化相は北京で会見し、業績が悪化している鉄鋼産業の支援策として、一部鋼材を対象に輸出時の増値税(付加価値税)の還付率引き上げを検討すると述べました。中国の11月の鋼材輸出は前月比36%減の295万トンと2006年4月(輸出量270万トン)以来の低水準にとどまっています。

世界的に不況の嵐が吹き荒れる中、中国ではこれまで一般企業に任せていたことまで、中国政府が直接指導する動きを見せ始めました。米国を筆頭に世界不況に悩む国は様々な手を打っていますが、中国ほど国家が率先して主導的に行っている国はありません。このような「中央集権ぶり」は、さすが「計画経済の申し子」とも言える「中国だからこそ」でしょうが、私も正直驚いています。

今回、中国政府が発表した鉄鋼産業の支援策を聞いた近隣のアジア諸国では、中国によるダンピングを警戒し始めることになると思います。国家が税金の還付という特典をつけてまで鉄鋼の輸出を加速させようとしているわけですから、端的に言えば、今回の施策は「国営ダンピング」と言えるでしょう。

中国は約6億トンにも及ぶ鉄鋼生産キャパシティを確保しています。今11月までの輸出は295万トンに過ぎません。まだこのレベルならば、近隣諸国にとってもそれほど問題はないでしょう。しかし、中国からの鉄鋼輸出の規模が何千トンというレベルになってきて、鉄鋼の値段が半額以下というレベルになってくると、かなり大きな影響を被ることになると思います。

自動車業界などで利用する薄い鉄鋼などには中国産の鉄鋼は使えないなど、全般的に「品質は高くない」ので、それほど心配は要らないという人もいます。しかし、建設関係で利用する鉄鋼ならば殆ど問題なく使えるという説もありますから、やはり中国による鉄鋼の国営ダンピングは、東南アジアの国々にとって驚異となる可能性が高いと私は見ています。

かつて東南アジアにおいて、韓国の製鉄所がホットロールという製造機械のダンピングを行った結果、日本のメーカーが大打撃を受けたことがありました。今回の中国の対応を見ていると当時のことを思い出してしまいます。


●12月の統計はどれほどの落ち込みを見せるのか不安

中国政府の中央集権的な景気対策は、欧米にも大きな影響を与え始めています。中国民用航空局は景気減速による国内航空各社の業績悪化を受け、各社に既に発注済みの航空機の発注取り消しや就航延期を呼びかけ始めています。2009年に導入予定の飛行機を対象としており、中国の航空会社を有力顧客としている欧エアバスや米ボーイングの事業に影響が出る可能性もあるとのことです。就航延期まで求める中国の中央集権ぶりには、ここでも驚いてしまいます。

12月8日号のBusiness Week誌によると、政府が必死に景気対策を始めている中国では、国内の消費も急速に減速し始めていると報じています。閑古鳥が鳴いているネオン街の写真が大きく掲載された記事では、中国の消費者はある種のパニック状態で、お金を使わない思考に陥っていると指摘しています。

実際、中国経済の低迷振りは輸出・輸入の大幅減少にも如実に現れています。10日、中国税関総署が発表した11月の貿易統計によると、輸出は前年同月に比べ2.2%減の1149億9000万ドル(10兆6000億円)。中国の輸出額が前年同月を下回るのは2001年6月以来、実に7年5カ月ぶりのことです。また、輸入も17.9%減の748億9700万ドルと大幅に減少し、輸入の減少は05年2月以来3年9カ月ぶりとのことです。


中国の輸出の状況をみると、昨年までであれば、2月・8月に多少落ち込んでも、9月~12月という年末にかけて盛り返していたことが分かります。それが、今年は9月以降も盛り返すことができず、遂には7年5ヶ月ぶりに前年同月比でマイナスに転じてしまったという状況です。

中国はかなり深刻な事態だと言わざるを得ませんが、さらに残念なことに、これは中国に限らず世界的な現象だということです。殆どの統計が今年の9月までは何とか踏ん張っていたものの、10月になって30%ダウン、11月には70%ダウンなどという驚異的な落ち込みを見せています。

マクドナルドやユニクロと言った一部の不況に強い企業だけは笑っていられるかも知れませんが、このままの調子では12月の統計で「どんな数字が出てくるのか」と戦々恐々としてしまうのは私だけではないでしょう。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

12月14日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第75回 『「ゼロ金利政策」によって景気が回復するの?』

12/16に米FOMCは米国の政策目標金利であるFFレートを「0.0%-0.25%」に誘導することを決め、米国も、とうとう「ゼロ金利政策」になりました、これを受け、日本でも政策目標金利を0.2%引き下げ、無担保コール翌日物金利を0.1%に誘導することになり、実質的には日米とも「ゼロ金利政策」になりました。

「ゼロ金利政策になった」ことによって、景気が良くなるのでしょうか?

答えとしては「すぐには難しいでしょうね」ということになります。いわゆる「アナウンスメント効果」はあるのですが、「すぐの景気押上げ効果」は「限定的(または、「ない」)」と考えています。

一般に「金利が下がる」というのは、経済活動にとって、特に企業活動においては「悪くない」のですが、「だから・・・」といって「経済活動を積極的に行うようになる」というものではありません。特に「景気後退が確実になった」という経済状態の場合、資金が「低金利で借りられるから・・・」といっても、それだけでは「資金を借りたい」ということにはなりません。つまり、経済状態が悪く、先行きに対す不安要素が払しょくされていない状態では、リスク=リターンの観点から、資金を借りてまで「事業を行おう」とする主体は「あまりない」はずであり、逆に、借りている資金でさえ「早期に返済したい」と思う主体が発生する可能性があります。

要するに事業会社側から見た場合、「金融緩和政策」で景気が良くなることは「少ない」ということになります。特に、景気後退局面で底上げを行う場合には、一般に「財政拡大政策」の方が効果は高いと考えられています(財源等の関係で難しい問題はありますが・・・)。

とはいえ、企業にとっての命綱ともいえる「決済性資金」の潤沢な供給は必要ですから、特に不況期においては、そのような資金が積極的に供給されるのであれば、「金利」云々ではなく、借りたい企業はたくさん存在することになるでしょう(このような「決済性資金」「流動性資金」の供給が受けられなければ、多くの企業が倒産することになります)。

ところが、銀行等の金融機関(以下、銀行等)からすれば、不景気が続いている現状において、事業会社等への貸出の増加は、たとえ短期間であっても「不良債権になってしまうリスクを高める可能性がある」ので、リスク=リターンの観点から、事業会社等への貸出を手控える(貸し渋り)、または、貸出資金の早期回収(貸し剥がし)といった行動が合理的となってしまいます(理論的には、本業である「貸出」を減少させ、余資運用である「有価証券運用」を増加させることが合理的になります)。

また、中央銀行による金融政策といえども金利を下げ続ければ、貸出金利が「ゼロ」を下回ることはないので、結局は「ゼロ金利政策」になってしまいます。金利が「ゼロになったから・・・」といっても「景気が回復する」という保障はありません。そのため、さらに景気状態が芳しくない場合には「量的緩和政策」に踏み入ることになります(すでに米国ではこの領域に入り込んでいると考えることができます)。

しかし、「ゼロ金利政策」「量的緩和政策」のいずれにしても中央銀行ができるのは「インターバンク市場(銀行等相互の市場)へ資金を潤沢に供給する」ということだけ(*)であり、インターバンク市場以降の資金の波及経路において、事業会社等への資金供給につながるか否かは、事業会社等への「貸し手である銀行等」の個々の行動に依存することになります。つまり、金融政策を行っても、結局は「銀行等自身が積極的に貸出を行う」という行動にならない限り、事業会社等へ(決済性資金も含めた)資金が潤沢に供給されることはないのです。

(*)本来中央銀行(日銀など)は、事業会社へ"直接"に資金供給を行わないのですが、今回の日銀の決定では「CPを買い切る」ということを言及しています。そういう意味で白川総裁も「異例中の異例」といっています。この「CPの買い取り」などによる日銀のリスクにおける対策は、現在、政府と協議中とのことであり、そのまま「リスクを日銀が引き受ける」のか否かが見えないので、この点に関してのコメントはここでは致しません。したがって、「異例中の異例」の対策は無視して、以下では通常の「ゼロ金利政策」および「量的緩和政策」について記述をいたします。

このように銀行等のサイドから見ても、「ゼロ金利政策」「量的緩和政策」のいずれもが「景気に対して決定的な効果がある」とはいえないのです。

では、「何故、『ゼロ金利政策(または『量的緩和政策』)』を行う必要があるのか?」ということですが、これの「最大の効果」は「時間軸効果」と考えられています。

「時間軸効果」といっても聞きなれない言葉ですが、「つまり・・・」は以下のようなものです。

「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」を続けていると、"そのうち"、多くの銀行が「現状のような悪い状態が続くのであれば、その間、今行っている『ゼロ金利政策(または、量的緩和政策)』はこのまま続けるであろう」と「信じる」ようになります(場合によっては、中央銀行が「いつまで続けるのか」を約束[コミット]する場合があります)。

ここで"そのうち"という点がポイントであり、「時間軸に沿って"そのうち"効果が表れる」という考えが「時間軸効果」といわれるものです。

このような「時間軸効果」によって、多くの銀行等は「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」を続ける間、当該銀行の「流動性資産が増加する」と考えるようになると思われます。

そもそも銀行等は、いろいろな金融商品をバランスよく、分散投資をして保有していると考えられます(このような「分散された資産」のことを「ポートフォリオ」といいます)。この場合、流動性資産などの低リスク資産や貸出等の高リスク資産を、独自のリスク=リターンの基準に従って、ポートフォリオに組み込んでいるはずです。

したがって、時間軸効果によって流動性資産などの低リスク資産が「今後も増加する」と考えるようになると自己のポートフォリオの「リスク資産の割合が相対的に減少する」と認識するようになり、それを補正するためにリスク資産(つまり、「貸出」など)を増やすことになると考えられています(このような効果を「ポートフォリオ・リバランス効果」といいます)。

このようなポートフォリオ・リバランス効果は、「時間軸に沿って現れる」ものなので、"すぐ"の効果は見込めませんが、中央銀行が徹底してインターバンク市場に資金を潤沢に供給することによって、経済全体の底支えとなり、効果自体が浸透していくと信じられています。

また、そのように「信じられている」ので、「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」を行うということ自体が、アナウンスメント効果となり、早期の経済回復を促すものと期待されるのです。

以上のように、「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」自体が即効性のある政策とは言えないものの、人々の期待に訴えかける効果は大きく、財政政策等との連携によって、ある程度の効果が「時間軸に沿って(つまり、「時間をかければ」)」現れるものと考えられているのです。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第81号、いかがでしたでしょうか。

今年も残すところあと1週間、そして今日はクリスマスイブですね。

今年は昨日が祝日だったので、ご家族やご友人と早々お祝いをされた方も多いのではないかと思います。

このメルマガも本号が今年最後となりますが、お蔭様で現在、開始一年半で約16,000名ものご登録をいただいており、私としてはこの場を通じた皆さんとのご縁を、これからも大切にしていきたいと感じています。

私は私の運営する講座の受講生さんと半年に一度お会いする機会を東京で設けていますが、初対面ゆえに互いの顔がわからない中、私の似顔絵を手がかりに皆さんからお声かけいただけることも多く、またそうした場や、時折り読者の方からいただくメールで頂戴する「いつも楽しく読ませていただいていますよ」という一言がとても嬉しく、ご縁を感じる瞬間でもあります。

毎週興味を持ってくださるたくさんの方に、これからもより有益な情報や資産運用・形成の大切さをお伝えしていきたいと思っていますので、来年度も引き続きご愛読の程お願いいたします。

次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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