2008年の原油、金市場から読み解く2009年の商品市場動向|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/1/7(水)  
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2008年の原油、金市場から読み解く2009年の商品市場動向

一般的に商品価格は、ドル安と共に上昇基調。しかし、日本円ベースでは円高により下落基調。あわせて横ばい。

2008年12月16日の米国連邦公開市場委員会(FOMC)で米国市場初めてのゼロ金利政策が採られました。それほど米国の金融界はダメージが大きく、実体経済への影響もかつて無いほどの事態だということでしょう。そうなればガソリンを始めとした石油製品需要は減退し、自動車の生産減からアルミ・ゴム・プラチナ等の工業用資材の需要は減少したままであろうと思います。

08年11月の米国の住宅着工件数は1959年1月の統計開始以来最低の水準となりました。これも家電製品や建材の売り上げを減らし、アルミや石油製品素材等の需要を抑えます。

これらの需要はいずれ回復するでしょうが、6.7%に急上昇した米国失業率は今後も増加の兆しであり、回復までには数年かかると思われます。こうした需要の減少から、原油を始めとする工業用素材の価格が上昇することは考えにくく、これは少々の生産問題をも凌駕してしまうことでしょう。

OPECは10月の150万バレルの減産に引き続いて、12月は220万バレルの大幅な減産を決定しました。10月分も未だ消化されていない状況下で、そうした減産が需給をタイトにさせるほどの効果があるとは、市場は期待していません。

IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)の発表では、世界の原油需要の前年比増減は毎月発表されるごとに減少し、12月の発表ではついに2008年の需要は前年比マイナス20万バレルとなってしまいました。




一方、金価格において、少なくともドルベースでは上昇基調にあると思われます。米国株価はGMに対する米上院の救済法案廃案により混迷の度合いを深め、金利の低下により預金も魅力がありません。ファンドは軒並み赤字を連ね解約の嵐に遭遇しています。

こうした中で、運用資金は当面の逃避先として金投資に向かうことでしょう。世界的にも、株安や他投資商品の魅力減退リスク増大から、安全な金実物投資が盛んとなるのではないでしょうか。7月からドル高・他通貨安であった流れは12月から反転しつつあります。ドル安は今後の潮流となるでしょうし、これも金価格にとってはFAVOR(好ましい)な動きといえます。

しかし、日本の金価格は円高のために下落するかもしれません。一時80円台に突入した円は円キャリートレードの巻き戻しによるものですが、円キャリートレードは1993年から始まっており、15年も続いています。その解約が未だ終わっていない中で、ファンドが投資した流動資産の解約から固定資産の巻き戻しが始まっており、未だデレバレッジが出尽くすには時間がかかるでしょう。円は60円台まで高くなる可能性があるのです。 これらのことから、今後日本円ベースの商品価格は、下げが基調になると予測できるわけです。




講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学 株式・資産形成講座講師
株式会社フィスコ コモディティー代表取締役社長
近藤 雅世

12月10日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、構成したものです
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第76回 『「株価暴落で200兆円消失」って、そのおカネはどこへ?!?!』

年始に際し、まずは「昨年の株価」についてお話します。

昨年は、リーマンショック以降、世界各国の株価が急激に下落したことから、年始に比べ年末は大きく下がり、上海総合指数▲65%をはじめ、ロンドンFTSE指数▲31%、NYダウ平均▲34%、日経平均▲42%と世界大恐慌(1931年)に次ぐ下落率になりました。そのため、日本でも「200兆円消失した」とのことです。

では、その「200兆円」はどこへ行ったのでしょうか?

この問いの答えは「どこにも行っていません」ということになります。つまり、そもそもその「200兆円なるもの」は「錯覚」であり、「実現しているもの」ではなかったのです。したがって、まさしく「消失」したことになります。。。


この点について簡単なモデルで説明します。

10人しか存在しない国において、それぞれ20単位の貨幣を持っていたとします(中央銀行はなく、銀行もないものとします)。ここである会社が新規に株式を発行して、資金調達をするため、5枚の株券を発行したとします。

10人のうち5人が10単位ずつの貨幣を出してこの株券を購入したとすると、この会社は「50単位の貨幣(5枚×10単位)」を調達したことになります。したがって、この会社の株価は貨幣10単位ということになり、それが5枚あるので株式時価総額は貨幣50単位ということになります(*)。

(*)この会社は「今回初めて株式を発行している」と仮定していますから、株式発行によって資金調達をした当初、「資金調達総額=株式時価総額」になるのは「当然」といえます。


この会社は、本来、調達した資金を設備投資等に使うはずですが、ここではそのまま保有しているとします(つまり、会社が「50単位の貨幣」を持っていることになります)。

他方、人々は「どうか」というと、5人が「貨幣10単位と株券(各1枚づつ)」、その他の5人は「20単位の貨幣」を保有していることになります。

したがって、社会的な貨幣量は200単位であり、当初と変化はありません(株券は5枚です)。

このような状態において、貨幣しか持たない人のうち1人が、新たに「株券がほしい」と言い出しました。ただ、会社は「もう資金調達をしない」ので、現在株式を保有している人から譲り受けるしかありません。ということで、ここで「誰でもいいから株券を貨幣15単位で譲ってくれ」と株式保有者に伝えたとします。

この時、初めは誰も交換をしない可能性があります。なぜなら、「このような申し込みがある」とすれば「さらに上昇する」と人々は思うようになるからです(ここで注意すべきことは、保有者の全員に等しく「貨幣10単位の株式を貨幣15単位で売る機会があり、株式投資によって貨幣5単位分を儲けるチャンスは平等にあった」ということです)。

とはいえ、株券保有者の一人が、「では貨幣15単位で譲りましょう」ということで申し出を受けたとします。

ここで貨幣バランスはどうなったでしょうか?


・4人が株券と貨幣10単位(この4人はそれぞれ貨幣5単位の「含み益」があります)
・1人が株券と貨幣5単位(この人が新規に株式を購入した人です)
・1人が貨幣25単位(この人が株式を売却したので、「貨幣5単位の儲け」があります)
・4人が貨幣20単位(会社は貨幣50単位)


つまり、貨幣は200単位で株券は5枚です。 ところで株価はいくらですか?

先ほど「貨幣15単位で売れた」のですよね。そうです。株価は貨幣15単位であり、時価総額は貨幣75単位なのです。

おわかりのように株式の時価総額は貨幣50単位から貨幣75単位に上昇しているのです。これが「金融資産の価値」なのです(儲かったのは「売った人」だけであり、その他の人たちは「含み益」があるだけなのに、この「含み益」を「儲け」と錯覚しているのです)。

次に、今保有している人の中で「どうしても売りたいから貨幣5単位で、誰か、買ってくれないか」と申し出た場合、どうなるでしょうか?

そうです、誰かが「貨幣5単位でこの株券を買う」と、株価は貨幣5単位になり、時価総額は貨幣25単位になってしまうのです。ここでも貨幣数量は同じです。

以上より、「金融資産の時価総額」という考え方が、そもそも「架空」なので、「時価総額」といわれるものが「倍」になろうが、「半額」になろうが、そこで計算された価額は「どこにも行かない」ということがわかります。


「金融資産の時価総額」とは、「実際に売買された金融資産の単価」に「(その価格で売買されていないものも含めた)すべての数量」をかけて算出しているので、バーチャルな「利益」「損失」が生じることになるのです(これが「含み益」「含み損」です)。したがって、その部分が「増加」「減少」したとしても、現実には「何も変化していない」ということになります。

このように「下げた株価」は「どこにも行っていない」ことがわかります。

しかし、実際に株価が下がれば、現時点で「売ることができる株価」は、今ある株価(買い手が提示する値段)しかないのであり、実際に売れば「実現損」が発生します(当然、上昇しているところで売れば、「実現益」が発生します)。つまり、その時の「時価」はその時の株価であり、今の株価は「現実」ということになります。

したがって、株式投資では「含み益」「含み損」を考えるのではなく、「自分の考える理論株価」と「今の株価」との間で「売り」「買い」(または、保有)を考えることが重要になるのです。「含み益」「含み損」はあくまでもバーチャルであり、それに惑わされないようにしなくてはいけません。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第82号、いかがでしたでしょうか。

多くの投資家が注目していたであろうアメリカの年始市況ですが、シティグループへの救済プランが出たことやGMへの融資が具体的に始まったことなどから好調となり、東証の大発会(年初取引)も順調な滑り出しを見せました。

とは言え、この年末年始目にしたニュースといえば雇用や財政に関する問題ばかり。

底の見えない景気不安に変わりはありませんが、為替バランスが大きく変化しているこのタイミングですし、今年は様子を見ながら外貨預金等の分散投資を少しずつ増やしていくことを計画しています。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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