通年株式時価総額から振り返る2008年の世界株式市場|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/1/14(水)  
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通年株式時価総額から振り返る2008年の世界株式市場

ホームレスマネーの動向と株式時価総額の下落

08年の株式市場は金融危機の影響で歴史的な大幅安を記録しました。ニューヨーク市場を始め、ロンドン、フランクフルト、日本国内での株価指数は軒並み30~40%の下落を記録。株式の時価総額も1年でほぼ半減という結果になりました。

2008年を通じて、世界の株式時価総額の下落幅は約31兆ドル(約3000兆円)になりました。私はかねてから金融危機に際して、いわゆる「ホームレスマネー」の動向について注目するべきだと述べてきましたが、今回株式市場から抜けた約3000兆円は、ホームレスマネーの一部として株式市場に割り当てられていたものです。

私が言うところのホームレスマネーは、「過剰流動性から生まれる資金」のことで、全世界で総額約6000兆円に上ります。これらは、主にOECDの古い国、すなわちスウェーデンやカナダ、オーストラリア、アメリカ、ドイツ、イギリスなどの年金、貯金、保険などの資金なのですが、そのほとんどが当該国内では投資リターンを見つけられずにいます。さらに、これらにオイルマネーを加えて約6000兆円の金額に膨れ上がり、不要不急かつ無責任極まりない資金として世界中で徘徊しているのです。

このホームレスマネーが株式市場に入り込むと、かつてのペルーやインドなどのように一気に株式市場が上昇することになります。一方でこの流れが逆になると、今回世界のあらゆる株式市場で起きたように株価の下落を招くことになります。


主要市場の08年年初から年末での株価下落率を見ると、下落幅が70%に達したロシアを筆頭に、上海、インド、そして日本や米国といったあらゆる国の株式市場が下落しているのが見て取れます。唯一、チュニジアだけが十数パーセントの上昇を記録していますが、チュニジアにしてもエネルギー関連が好調だったことを受けて上半期に稼いだ貯金があったお陰であり、さすがに、下半期は好調を維持できていません。


●07年までの株式市場が上がり過ぎだったツケが回ってきた


00年~08年の世界の株式市場の合計時価総額の推移を見てみると、07年から08年にかけて株式市場の時価総額は約6000兆円から約3000兆円へと半減しています。たった1年の間に3000兆円もの時価総額が失われたという点だけを見ると驚くべきことですが、逆に言うと07年までの株式市場が異常に上昇していたとも言えると思います。 02年にITバブルがはじけて株式市場が下落してから07年までの上昇率はすさまじいものがありますし、1929年に起きた世界恐慌と比肩されるほどの不況と言われる08年の株式市場の時価総額も02年に比べればまだ高い水準にあります。

実は1929年の世界大恐慌のときにも、同じようなことが起こっていました。世界恐慌に陥る直前10年くらいの間は、この世の春を謳歌するように浮かれた夢のような時代があり、その後一気に市場が崩壊し、世界恐慌に突入しました。結局のところ、浮かれすぎていて「上がり過ぎている」という状況を客観的に捉えられず、そのツケを払うことになった結果として「金融危機」「世界恐慌」を招いてしまったということです。


また、2008年の日米主要株式市場の株価の推移を見ると、少し意外な印象を持つ人もいるでしょうが、金融危機を引き起こした米国のダウ平均よりも、日経平均の下落幅の方が大きくなっています。ダウ平均が年初に比べて30%~35%の下落に留まっているのに対して、日経平均は約40%の下落を記録しています。ただ、円高という為替要因もあるので、一概に「日本経済の方が悪い状況だ」とも言えません。

今後日本の株式市場がどのように動いてくるのかは注目したいところです。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

1月4日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第77回 『今までため込んだ内部留保を「雇用に使え!」と言っても...』

新年5日から通常国会が召集され、連日、与野党の攻防が報道されています。焦点は「定額給付金」をセパレートにするか否かになっています。この「定額給付金」については、以前、このコーナーでも話題にしたので、内容については差し控えます。しかし、ここは「急を要する」のであり、とりあえず、セパレートにして当面の問題をクリアにすべきでしょうね(これだけいろいろな"意見"が出ているということは、この問題において「議論が尽くせてない」ということなのでしょうから・・・)。

米国のオバマさんも「機を逸すれば大変なことになる」ということを言っています。現状、一歩間違えば、世界的にみて比較的良好な日本経済も「取り返しのつかない事態」になる可能性があるのです。与党もその辺りを考え、(野党と)協調できるところは「見栄」や「意地」を捨てて、国民のために動いてほしいと思います(これは「野党」も同じですが・・・)。

とはいえ、野党の突っ込みも「イマイチ」という感じですね。「意地の張り合い」だから仕方ないのでしょうが、定額給付金の「何が問題なのか」、定額給付金に2兆円を使わない場合、「何に使えば、どれだけの効果があるのか」、また、この定額給付金の「どこに根本的な問題があるのか」など、野党の方で一致した意見を出して欲しいものです(個別にいろいろと言っても議論にならないのだから・・・)。

単に「みんなが良くないというから」というのでは「では、『みんな』って誰」という疑問もあり、与党の方に「支援者の"みんな"は欲しいと言っている」と切り返されてしまいます。

このように焦点になっている「定額給付金」に関しても「突っ込みが甘い」ように思うのですが、最近、大きな問題になっている「雇用の問題」においても、「大企業は内部留保を沢山ため込んでいるので、それを雇用の促進に活用すべき!!」という議論があります。この点も少し考える必要があると思います。

確かに日本企業は、労働分配率は低く、また、配当率も低いので、大企業の利益は内部留保されていることになり、これは経済統計にも表れています。とはいえ、この「内部留保」をどのように「雇用に活用せよ」というのでしょうか?

感情的には「労働者の稼いだものをピンハネしたものなのだから、労働者に還元すべきである」というのは"情"においては理解できますが、「だから」といって、一旦「内部留保」になっているものを「どのように」また「何に使う」というのでしょうか?

確かに「"これからは"労働分配率を引き上げて、"これからは"内部留保を減少させましょう」(*)というのならば、ワークシェアリングなどとの関係も含めて、「そうかもしれない」と思いますが、現状ある「内部留保」を「如何に使うというのか」という点について大いに疑問があるところです。。。

(*)とはいえ、そもそも「内部留保」できるくらいに利益が出るか否かが、今後の経済状態から見て問題だと思います。


会計的に「内部留保」とは、利益を配当として社外流出させるのではなく、利益剰余金などの名目で社内にため置いたモノということになります。したがって、この「内部留保」は資金調達サイドの考え方であり、現実に資金運用サイドである会社の資産の中で「現預金などで積み立てている」という種のモノではないのです。そもそも調達した資金の全ては、運用サイドである「会社の資産」の中に溶け込んでしまっているのです。

つまり、会社の資産の中の「この部分が内部留保です」というモノではないので、労働者のために資金提供をするのであれば、当然(資産が減少するので)、会社の体力は現時点よりも減退させる結果になります。現状、そうでなくても厳しい経営であり、「労働者を切らなければならない」くらいに追い込まれている企業に対して、このような行動が「現実的な話」といえるのでしょうか。もし、そのような余裕があるのであれば、「労働者を切る」という荒技に取り組む必要はないのです(ここでは「非正規労働者等の雇用関係の問題」を云々しているわけではなく、あくまでも「内部留保と雇用の関係に絞って議論をしている」ので、その点は予めご了承ください)。

ここでの誤解は「内部留保が多い」と「キャッシュが多い」が「等式になっている」と考えているからではないでしょうか。つまり、「国の埋蔵金」のような発想がそこにあるのかもしれません。しかし、これは必ずしも等式が成り立つわけではありませんし、仮に内部留保が厚く、しかも、「キャッシュを沢山持っている」としても、「だから」といって「労働者を切るな」「労働者の支援に使うべきだ」という議論に、直接的に、つながる話でもありません。

「内部留保を潤沢にする」のは、企業が債権者に対して安心感を持たせることができ、長期的に安定的な経営基盤を構築することができるからです。例えば、企業が事業に失敗し、それによって欠損が生じても、内部留保の厚い企業であれば、(内部留保を含めた)資本項目によってカバーでき、債権者に迷惑をかけなくて済むことから、債権者の安心感につながるのです(債務超過になる危険性が少ないことになります)。

債権者の信頼を失えば、どのような企業でも存続さえ危ぶまれる結果になってしまい、「雇用云々」というレベルの問題では、もはや、なくなってしまいます。

このように「内部留保を活用して労働者救済へ・・・」という文脈は、会計的には全くつながらない内容なのです(「内部留保を如何にするか」というのは、資産サイドの問題ではなく、負債・資本サイドの話だからです)。内部留保の積み立てが多いのは、現状のように厳しい景気状態を想定して、当該企業が過去に利益を積み上げてきた結果なのです。現下の経済状態で内部留保が少なければ、当該企業は債務超過になる可能性が高まり、企業自体が倒産することもあります。

国会は「国家の最高決定機関」なのだから、それに「相応しい議論」の展開を期待したいものです。。。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第83号、いかがでしたでしょうか。

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来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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