ホームレスマネーの動向と株式時価総額の下落
08年の株式市場は金融危機の影響で歴史的な大幅安を記録しました。ニューヨーク市場を始め、ロンドン、フランクフルト、日本国内での株価指数は軒並み30~40%の下落を記録。株式の時価総額も1年でほぼ半減という結果になりました。
2008年を通じて、世界の株式時価総額の下落幅は約31兆ドル(約3000兆円)になりました。私はかねてから金融危機に際して、いわゆる「ホームレスマネー」の動向について注目するべきだと述べてきましたが、今回株式市場から抜けた約3000兆円は、ホームレスマネーの一部として株式市場に割り当てられていたものです。
私が言うところのホームレスマネーは、「過剰流動性から生まれる資金」のことで、全世界で総額約6000兆円に上ります。これらは、主にOECDの古い国、すなわちスウェーデンやカナダ、オーストラリア、アメリカ、ドイツ、イギリスなどの年金、貯金、保険などの資金なのですが、そのほとんどが当該国内では投資リターンを見つけられずにいます。さらに、これらにオイルマネーを加えて約6000兆円の金額に膨れ上がり、不要不急かつ無責任極まりない資金として世界中で徘徊しているのです。
このホームレスマネーが株式市場に入り込むと、かつてのペルーやインドなどのように一気に株式市場が上昇することになります。一方でこの流れが逆になると、今回世界のあらゆる株式市場で起きたように株価の下落を招くことになります。
主要市場の08年年初から年末での株価下落率を見ると、下落幅が70%に達したロシアを筆頭に、上海、インド、そして日本や米国といったあらゆる国の株式市場が下落しているのが見て取れます。唯一、チュニジアだけが十数パーセントの上昇を記録していますが、チュニジアにしてもエネルギー関連が好調だったことを受けて上半期に稼いだ貯金があったお陰であり、さすがに、下半期は好調を維持できていません。
●07年までの株式市場が上がり過ぎだったツケが回ってきた
00年~08年の世界の株式市場の合計時価総額の推移を見てみると、07年から08年にかけて株式市場の時価総額は約6000兆円から約3000兆円へと半減しています。たった1年の間に3000兆円もの時価総額が失われたという点だけを見ると驚くべきことですが、逆に言うと07年までの株式市場が異常に上昇していたとも言えると思います。
02年にITバブルがはじけて株式市場が下落してから07年までの上昇率はすさまじいものがありますし、1929年に起きた世界恐慌と比肩されるほどの不況と言われる08年の株式市場の時価総額も02年に比べればまだ高い水準にあります。
実は1929年の世界大恐慌のときにも、同じようなことが起こっていました。世界恐慌に陥る直前10年くらいの間は、この世の春を謳歌するように浮かれた夢のような時代があり、その後一気に市場が崩壊し、世界恐慌に突入しました。結局のところ、浮かれすぎていて「上がり過ぎている」という状況を客観的に捉えられず、そのツケを払うことになった結果として「金融危機」「世界恐慌」を招いてしまったということです。
また、2008年の日米主要株式市場の株価の推移を見ると、少し意外な印象を持つ人もいるでしょうが、金融危機を引き起こした米国のダウ平均よりも、日経平均の下落幅の方が大きくなっています。ダウ平均が年初に比べて30%~35%の下落に留まっているのに対して、日経平均は約40%の下落を記録しています。ただ、円高という為替要因もあるので、一概に「日本経済の方が悪い状況だ」とも言えません。
今後日本の株式市場がどのように動いてくるのかは注目したいところです。
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