10月の景気動向指数から長期投資のタイミングを読み解くには?
10月の景気動向指数をみると、バブル崩壊直後の90年の水準を遅行指数・一致指数ともほぼ上回っています。
そう考えると、数値的にはやはり「景気は良かったのだ」と思います。
先行指数は、ほぼ頂点に近づくところまで行って、そこから落ちてきています。バブル崩壊の時よりも「遅い」と言えるでしょう。これは本当にギリギリのところまで「まだ景気は良いのだ」と思われていたということです。バブル崩壊の時は、比較的早いうちから、先行指数が落ち始めていたものの、実際にはその後更に伸びを見せました。
しかし、今回はそうした状況とは違っていたわけです。
(バブル崩壊後は)先行指数と他2指数との間にあった大きな乖離が収れんした後に、そこから先行指数が上がり始め、一致指数と遅行指数が上がっていくという状況でした。ところが今回は、まだかなりの乖離があります。そこが今後の景気動向指数を見る上での、重要な投資判断になるかもしれません。
長期投資で見た時に、先行指数が上がり、実態ベースも下げ止まって上昇。そのあたりから株価は、波打っているところもありますが、そことほぼ同じですね。
そして2003年以降も、遅行指数が底を打ってから株価が上昇を始めています。
遅行指数が、割合に実際の株価の動きに近く、そして、先行指数のほうは、その名のとおり先行して動いているということになるかと思います。
ですから、その縮まってくるところを毎月見ていかなければいけないということです。
そこで長期投資という流れになるのではないでしょうか。
また機械受注額も、右肩下がりになっています。
図は、10月までの数字ですが、既に11月の数字も発表になっています。
それによると、パーセンテージで見た場合、前月比では「マイナス8%予想」だったものが、実際には「マイナス16.2%」でした。ほぼ倍の数値です。
そして前年比で見ると、「マイナス20%予想」だったものが、実際には「マイナス27.7%」。いずれも予想を大幅に下回った数値が発表されました。
「まだロシアなどに需要があるんじゃないか」と考えて機械株を購入しようという方は、おそらく大勢いらっしゃると思いますが、実際の受注額は減っているということですので注意が必要と言えるでしょう。
●鉱工業指数から、日本の企業経営・雇用形態の大きく変化していることが判る!?
さて次に、「鉱工業指数」を見てみましょう。
これは、ちょっとビックリする図です。
この図は、生産と在庫の関係を表すものですが...。
生産は、なだらかな山から一気に低下。そして在庫のほうは、上がってはいるものの、10月、11月を見ると非常に緩やかです。
生産をフレキシブルに「止めている」という状態であることが明らかです。
急な生産低下を、「企業の活動」という風に見た時にどう判断すればよいのでしょうか。
雇用という面で見た時には、これは雇用者の生活が確保できないということで、非常に悪い状況になっていくと思われます。
一方で、いざ人を集めようとしたら集まらないという状況も考えられ、そういう意味では、生産を止めるというのは非常にリスキーなことです。ただし生産をそれだけ抑えたということは、逆に言うと「不必要なコストが掛からなくてすむ」ということになります。
それだけ過去の日本の終身雇用や、これまでの生産活動を頑として守るという姿勢からすると、企業の考え方が少し変わってきているように思えます。
"企業の努力の結果"と言っていいのかどうなのか判りませんが、「フレキシブルに対応ができるようになってきている」「雇用形態も変わってきている」ということは言えるのではないでしょうか。
その証拠に、生産が低下しても、在庫があまり積み上がっていません。
直近2~3カ月を見ると大きく見えますが、直近1カ月分だけを見ると、生産の落ち込み幅に比べると、在庫の伸びはほんの少しになっています。
ですから本当に急激に「生産を落としているのだ」と言うことができるでしょう。
景気が回復してきた時には、おそらくそれなりに生産を戻すと思います。そして在庫がほとんど無いということになれば、「正常な生産活動に戻る可能性がありますよ」ということなんだろうと私は思います。
こういう大きな変化は両面で見て下さい。
まずは、「生産の急低下により、基本的には業績は悪くなるんだ」という見方。
そして一方では、「企業経営や株主から見れば、フレキシビリティがあることは悪い面ばかりではない」。
投資や資産形成をする上では、こうした両面で見ていただきたいと思います。
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