EU圏16カ国の半分がEU失格!?止まらない財政悪化|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/2/11(水)  
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EU圏16カ国の半分がEU失格!?止まらない財政悪化

マースリヒト条約の「3%条件」を守るのは厳しい状況

19日、欧州連合(EU)の欧州委員会は今年中にユーロ圏16カ国中7カ国が財政規律を定めた安定・成長協定(財政協定)違反になるとの判断を明らかにしました。景気対策に伴う財政出動や減税のためで、ユーロ圏各国は同日の財務相会合で過度の赤字拡大を避ける方針を確認しました。財政基盤の弱い加盟国は長期国債の格下げに直面しており、財政悪化がユーロ圏の新たなリスクとなる恐れがあるようです。

欧州では今様々なことが同時進行で動いています。ユーロ圏の経済状況の概要としては、ユーロ圏と英国の対GDP比財政赤字予想を見るとよく分かります。マーストリヒト条約(欧州連合条約)では、単年度の財政赤字幅の対名目GDP比率が3%以下という条件が定められていますが、今年は軒並みこの条件を割り込む勢いを見せています。


先日IMFからの支援は必要ないと発表したアイルランドではありますが、財政赤字予想は対GDP比でマイナス11.0%となっていて「論外」の部類に属する数値と言わざるを得ないでしょう。

また、英国はマイナス8.8%と大きく条件を下回っています。英国の場合には、通貨としてユーロを使っていませんが、そのため「ポンド」が大暴落をしています。英国に続いてマイナス6.2%となっているスペインも、かなり経済が傷ついている状態になっています。

国家破綻してしまったアイスランド、そして、アイルランド、英国、スペインといった国はいずれも外部経済に依存していたという特徴があります。そのため外部経済に逃げられてしまう、あるいは、それに対する信頼が失われる事態になると、自国の経済が大きな打撃を受けてしまうというパターンです。

英国やスペインほどでないにしても、軒並み欧州の国々の経済は傷ついています。今後、EUの国々がマースリヒト条約で定められた、「財政赤字幅GDP比3%以内」という条件を維持するのは非常に厳しくなっていくと思います。


●EU・ユーロ経済内には、複雑な潮流がうごめいている

今回の財政赤字幅の予想で上位を占めたフィンランド(2.0%)、ルクセンブルグ(0.4%)、オランダ(マイナス1.4%)などは比較的堅調な状態を保っているので、今後の見通しもそれほど暗いものではないと思います。また、2009年からユーロを導入したスロバキアはマイナス2.8%と何とか踏みとどまり、小国ながらも善戦していると見て良いでしょう。

一方、ドイツはマイナス2.9%とギリギリのラインを保持していますが、メルケル首相が言うように「預金を全額保護する」などという政策を打ち出したら、今年は3%のデッドラインを超えてしまうと私は見ています。

フィンランドやルクセンブルグなど一部堅調な国はありますが、ドイツ、スペイン、英国という3つの国が常識を超えた「破綻」を見せ始めています。今後EU全体の大きな流れとしては、この波に飲み込まれる形になるのは間違いないと思います。

ドイツ、スペイン、英国のそれぞれ国内にある銀行が機能しなくなるような「おかしな状態」に陥った時に、果たしてEU全体としてまとまりがつくのか、私は甚だ疑問を感じてしまいます。

ただし、一方では北欧諸国や英国は通貨としての「ユーロ」に加盟した方が得策なのではないかと考えている節があります。EUという経済共同体の中で、様々な潮流が複雑に動いているというのが現在の状況だと思います。

今後EUがまとまっていけるのかどうか、それともEUは機能しなくなってしまうのか、しばらくの間は目が離せない状況です。注目していきたいと思います。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

1月25日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第81回 『銀行の保有株買い取りで何が変わるのか?』

日銀は市中銀行が保有する株式を買い取ることを決めました。これによって、今後、株式の下落に伴う銀行の評価損拡大を防ぐことが出来ることになります。また、各銀行が個別に市場で売却をすれば、株式市場において売り圧力が増加するので、日銀が時価で買い上げることにより、市場に売り圧力がかからないようにするという効果も期待されています(買い取った株式は2012年3月末まで売却しないことになっています)。

さらに、銀行は株式の売却にともない流動性、つまり、資産の中の安全性資産の割合が拡大することになるので、ポートフォリオ・リバランス効果によって、リスクの高い資産、たとえば「企業向け貸出」などを増加させることも期待されています。

ここで「ポートフォリオ・リバランス効果」とは、以下のように考えられています。

そもそも銀行は資産の内、ある一定割合をより安全な資産にしておく一方、他方でよりリスクの高い資産を保有することでバランスのとれたポートフォリオにしていると考えられています。そのため、一時的にリスク資産が減少し、その代わりとして流動性の高い安全資産の割合が高くなった場合、そのようなポートフォリオでは"落ち着き"が悪いので、時間軸とともにポートフォリオが「元のバランス」に戻っていくと考えられています。このように「時間軸とともにポートフォリオが元のバランスに戻っていく」ことを「ポートフォリオ・リバランス効果」と経済学では呼んでいます。

このように今回の日銀の政策は、日銀が株式というリスク資産を購入することによって銀行のリスク資産を減少させれば、「今すぐ」ということではないものの、"そのうち"企業への貸出という形で「リスク資産を増加させるであろう」ということから、意味のある政策であると考えられています。

しかも、日銀は買った株券をすぐには売らないわけだから、株式市場の下落圧力も減少するので株価の下支えにもつながることが考えられます。この場合、株価の上昇への起爆剤にはならないとしても、経済的な効果は高いと考えられています(ある程度下値がわかっていれば、投資家も株式の購入を行うようになります)。

実際、日銀は02年11月~04年9月に約2兆円分の銀行保有株を買い取ったことがありますが、その時には、その後、世界経済が好調になり、国内の企業業績も徐々に上向き出したことに加え、外資による株式投資が増加したことによって、株価は大幅に上昇し、この時の日銀のファンドは利益を出したと記憶しております。

「二匹目のドジョウになるか否か」というところですが、今回はなかなか難しいように思います。

世界経済ということでいえば、まだまだリーマンショック以降の金融危機が収まっていない状態であり、オバマ大統領の政策も現状のNY株式相場を見る限り、市場は好感しているようには思えません。このような中にあって、日本が独自に景気回復に向かう可能性も極めて低いでしょうし、実際、次期テーマと言えば、世界的にも"グリーン"以外に見当たらないにもかかわらず、具体的な「何か」が全く打ち出せていないことから、市場においてもいら立ちが高まってきているように思います。

このような状態だけに、日銀の今回の政策は、さすがに株式市場において「下値」に対するサポートにはなるとは思いますが、積極的に「上昇気流に転じる」ということにはならないと感じます。

また、銀行においてもポートフォリオ・リバランス効果によって「企業貸出が増加する」というのは、あくまでも「理論」に基づくものであり、確かに長い時間をかければ、そのような効果があるかもしれませんが、目先の効果としては「ほとんどない」でしょうね。

つまり、株価の下落による銀行の評価損の拡大を抑える効果はあるものの、「だから」と言って、企業貸出、ましてや、中小企業貸出が増加する可能性は皆無であると考える方が妥当だということになります。

そもそも日本銀行の行う金融政策は、不況期、特に恐慌に近いような時期においては、「底支え」以外に効果と呼べるものはなく、景気を牽引することはあり得ないのです。しかも日銀は、市中の銀行を通じて行う以外に主要な政策手段を持っていないので、営利を追求しないといけない株式会社組織の銀行が、"火中のクリ"を拾うような融資行動を取るはずはないので、それを期待するのは間違えであると思います。

そういう意味では、賛否いろいろな議論があるにせよ、中小企業等への貸出に対する公的保証の拡大を行い、それをもって銀行から資金を市場に流れ込ませる政策をもっと積極的に打つ必要があると思います。

この場合、借換資金における「貸し渋り」「貸し剥がし」を防ぐ必要もあり、特に3月の年度越え資金は重要であるのは言うまでもありませんが、経済成長を促すという意味であれば、イノベーションなどの担い手である創業企業への資金供給ルートについても考えていく必要性があると思っています。

創業企業のような事業経歴のない主体に(預金を取り扱っている)銀行などが貸し付けるべきか否かという点は、いろいろな議論が必要でしょう。しかし、現状を考えれば、既存の業種・業態が「これからの経済成長を牽引していく」という可能性は低いのであり、新しい「何か」を模索し、発展させていくのであれば、国の公的保証を活かして、イノベーションの芽を育てていくべきではないでしょうか。そのためにこそ国の政策としておカネをつぎ込むことが必要になると考えています。

以上のように、日銀に保有株式を買い取ってもらった市中銀行は、"無意味"に流動性だけを高める形になる可能性が高いのに対して、「流動性が潤沢だから」と言ってもリスクを考慮すれば、企業向け貸出を増加させることはないはずです。具体的な仕組みについては議論をすべきでしょうが、(日銀だけに政策を任せておいて)政府として「政府保証のさらなる拡大」などの政策を打ち出さなければ、そもそも意味がないのであり、銀行が「そのうち貸出を増加させるだろう」などということを夢見ても、それが実現する可能性は極めて少ないと考えるべきでしょう。にもかかわらず、そのような夢物語を信じて「景気はそのうち上向く(たとえば、3年後に景気が回復するなど)」と考えるのであれば、それこぞ「政府の怠慢」と言わざるを得ないでしょうね。

とはいえ、このような無策でも(以前のように)世界経済が良くなれば、それはそれなりに良くなるのでしょうが、今回は世界経済を頼りにはできる状態ではないと考えています。

日銀が自身で「リスクを取る」という決意自体は評価できますが、それを活かすも殺すも、政府の「次の一手」にかかっています。借換資金の対策だけでなく、将来の日本を見据えたビジョンを打ち出し、それを実現する主体に資金が流れるように供給ルートの整備をすることは政府の仕事であり、早急に議論し、政策につなげていただきたいと思っています。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第87号、いかがでしたでしょうか。

私は一時期車をかなりの趣味にしていたことがあり、展示会や近所の大通り沿いにあるショップに今でもよく足を運びます。

自動車業界といえば、販売不振、経営悪化、リストラといったニュースが毎日のように飛び交う業界の一つですが、ことエコカーについては顧客の興味を集めているように感じます。

トヨタがハイブリッド車プリウスをメインに据えれば、ホンダは価格面でもこれを意識したハイブリッド車インサイトを発表するなど、世界中で競争が激化しそうです。

このまま円高が続けば続くほど日本の自動車業界は体力を削られていくわけですが、株式投資よろしく「割安で良質なもの」には、少なくとも日本ではまだ多くの買い手がいるように思います。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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