日米企業リストラ、二極化する企業収益|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/2/18(水)  
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本文タイトル
日米企業リストラ、二極化する企業収益

不況に苦しむ企業のリストラが本格化

建設機械最大手の米キャタピラーが従業員約2万人をレイオフする計画を発表。また光ファイバー・液晶用ガラス基板大手の米コーニングも、液晶表示装置(LCD)向けガラスの需要減少に備え、全従業員の13%に相当する3500人と、派遣労働者1400人を削減すると明らかにしました。日本においても、日本板硝子が世界景気の悪化で主力の建築用と自動車用ガラスの市場が縮小しているため、2010年3月までに全世界の社員の15%に当たる約5800人を削減すると発表しています。



ガラス業界の不況が鮮明になっています。大手ガラスメーカーの売上高推移を見ると、旭硝子、日本ガラス、米コーニングのいずれも売上が伸び悩んでいるのが見て取れます。

そして、過去にないほどの大打撃を受けている米自動車業界でも、更に見通しの暗いニュースが報じられています。米自動車大手フォード・モーターが先月29日発表した08年12月期決算は、年間の純損失が約145億7100万ドル(1兆3千億円)に達し、前年の純損失27億ドルを大幅に上回り、過去最大だった06年の136億ドルも超えたとのことです。



フォードの手元資金の推移を見ると、2007年には350億ドルを超えていたものが、2008年の第3四半期~第4四半期にかけて急激に落ち込み、150億ドルを下回る水準にまで達しています。このような状況になってくると、一度は手元流動性が確保できていたために断った米政府による公的資金の注入も再び検討されることになるでしょう。今のペースで手元資金が失われていくと、数四半期の内に資金ショートしてしまいます。

さらに先月オバマ米大統領が発表した温室効果ガスの排出規制強化策は、瀕死の米自動車業界に追い討ちをかけることになると思います。オバマ米大統領は、運輸省に対して2020年までに乗用車の燃費基準を1リットル当り約15キロに向上させるという目標達成のため、指針の作成を指示したとのことです。そもそも1リットル当り4キロ~5キロという燃費が悪い米自動車にとってはかなり厳しい条件だと思います。

他方、一時期は飛ぶ鳥を落とす勢いを見せていた米コーヒーチェーン大手スターバックスですが、店舗網を広げすぎたことが裏目となり、景気後退による売り上げ急減に苦しんでいます。先月28日には、300店を追加閉鎖し、従業員7,000人近くを削減する計画を発表しています。

日米を問わず、不況の影響を受けた大手各社がいよいよ大幅なリストラに乗り出し始めたという状況です。


●落ち込むスターバックス、伸びるマクドナルド

スターバックスが落ち込む一方で、まるで絵に描いたように反比例しているのがマクドナルドです。米スターバックスとマクドナルドの株価推移を見ると、2007年の年初には殆ど同レベルだったものが、その後、見事にマクドナルドの上昇とスターバックスの下落という構図を描いています。



株価だけでなく、米国のアンケート調査によると「美味しいコーヒーランキング」の1位の座もマクドナルドに譲り、値段も加味して考えると、もはやマクドナルドの圧勝という形になっています。これまでは「雰囲気」を売っていたスターバックスですが、それが受け入れられなくなったということだと思います。アメリカ人の嗜好そのものが変わり、消費者として違う人種が形成されつつあるということですから、これはスターバックスにとっては深刻な事態です。

マクドナルドと同様、この不況下で「独り勝ち」の様子を見せ始めているのが、アマゾン・ドット・コムです。米アマゾン・ドット・コムが先月29日発表した2008年10-12月期決算は、売上高が前年同期比18%増の67億400万ドル(約6,000億円)、純利益が9%増の2億2500万ドル。景気悪化で個人消費が冷え込む中でも、増収増益を確保しています。

当初は本の販売のみでスタートしたアマゾンですが、そのプラットフォームを活用することで、店舗や従業員のコストを殆どかけることなく、あらゆるジャンルの安売り店を展開しつつあります。例えば、日本では再販売価格維持の制度があるために、本を値引きして販売することはできませんが、米アマゾンでは本も3割~4割値引きして販売されています。

一度作り上げたプラットフォームによる低コストを背景に、圧倒的な安さを実現しているため、まさに独り勝ち状態になってきています。

GM、フォード、スターバックスなどが、不況に苦しみリストラを実施し始めた一方で、 マクドナルドやアマゾンは過去最高に近い好調を見せており、完全に二極化の様相を呈してきたと言えるでしょう。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

2月1日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第82回 『政府紙幣って、どうよ?!?!』

最近、「政府紙幣」なるものが話題になっています。「良い考えだ」「邪道だ」などいろいろな意見があるものの、「そもそも何なのか?」「よくわからない!」という方も多いと思います。

とはいえ、政府はすでにおカネを発行し、皆さんもそれを使用しているのです。そうなのです!500円玉、100円玉などの硬貨(コイン)。これは政府が発行しているのです。つまり、全ての「おカネ」を日本銀行が造っているわけではなく、日本銀行が造っているのは「紙幣」だけであり、すでに政府もおカネを作っているのです(日本銀行は「発"券"銀行」と言われています)。

そうであるなら、政府が紙幣を造っても「然したる問題などない」といえます。ということで「何が問題」なのでしょうか?

それは「金額」です。そもそも造っているのがコインですから、発行金額が紙幣発行に比べて、非常に少ないのです(コインは約4兆円で紙幣は70兆円くらいです)。だから、"紙幣"であれば、多額のおカネを発行できるので「政府紙幣を造りたい」ということになるわけです。

政府がおカネを大量に造って、どうするの???

造るのが「おカネ」であり、負債ではないので、政府は「財源」や「債務残高」などを気にせず、景気対策を行うことができることになります。つまり、政府が"打ち出の小槌"を手に入れることになるわけであり、「この上なく良いこと」のように感じます。

しかし・・・


◆日本銀行券と同じ券種の政府紙幣を発行する場合

この場合だと、例えば、紙幣(1万円や1,000円)の中に日本銀行券と政府紙幣が存在することになります。これってやりにくいですよね。当然、「価値は同じ」ということですが、政府紙幣よりも日本銀行券を好む人が出たりすると、ヤミで違った価値(例えば、日本銀行券1万円分が政府紙幣1万1,000円というように、日本銀行券にプレミアムが付くなど)で流通する可能性があります。なぜなら、日本銀行券の方が切符の券売機などで使用できるので、同じ価値なら日本銀行券の方が好まれる可能性があるからです。

そうすると市場流通過程で混乱が生じる可能性があり、経済活動に支障が出ることが懸念されます。そういう意味では政府紙幣を市中に流通"させない"方が良いことになります。ところが、市中に流通しないのであれば、政府紙幣を発行する意味がありません。

そこで・・・


◆政府紙幣を全て日銀に引き受けてもらう

この方法であれば、政府紙幣自体が市中に出回らないことから、経済的に混乱を引き起こすことはなく、政府の当座預金に資金が振り込まれることになり、政府にとっての"打ち出の小槌"としての機能も損なわれなくて済みます。

実際、実務上はこの方式によって政府紙幣が発行される可能性が最も高いと考えられています。また、「市中に政府紙幣が出回らない」ということなので、実際には当該新たな紙幣を印刷する必要がなく、政府と日本銀行の間での帳簿上のやり取りで事が済むという利点もあります(発行時の経費がかからないので、発行差金が多くなります)。

実務的にも問題はなく、また、経済に混乱をもたらさない上に、政府は資金繰りを気にせずに財政政策が行えるという"打ち出の小槌"を手に入れられるのであれば、全く持って、非常に都合のよいことになりそうです。

しかも、この政府紙幣を提案している識者たちの多くは「世界大恐慌とも言えるような、100年に1度の経済状態なのだから、それに見合った緊急の対策を取るべきであり、それによって効果が上がり、通常の経済になれば、政府紙幣を回収すればよい」という考えです。

つまり、"一時避難的な対策"であり、恒久化させるつもりもないわけだから、「然したる問題はない」という考え方のようです。

とはいうものの、この政府紙幣は、少なくとも以下のような問題があると、私は思っています。


◆財政規律が乱れ、歯止めが利かなくなる。

このような便利なものがあれば、平時でも使いたくなるわけであり、現時点で、たとえ、これによって経済が回復したとしても、おそらく政府紙幣の回収は行えないでしょう。むしろ、バブル経済に達するようになるまで使い続ける可能性があり、未来において大きな社会的な問題を引き起こすと考えられます。


◆そもそも「有効なのか?」という疑問

発行方法は、政府が直接であろうが、日本銀行が引き受けようが、結局は市中におカネが増加することになります。けれども、物価安定の観点からすれば、政府紙幣の発行分だけ、日本銀行は金融政策によって日本銀行券を吸収することになるので、おカネの量自体は変化しないことになるはずです。

とすれば、政府紙幣で得た資金を利用して行った財政政策が、どれだけの乗数効果を生むかにかかってくるのであり、それは財源が国債であっても同じということになります。

つまり、「借金でないから」という部分以外には特に目新しいことはないことになります。


◆結局は「無利子永久国債」の日銀引き受けと同じこと

しかし、発行方法によって多少の違いはありますが、詰まるところ、政府が使う資金を政府紙幣という紙切れとの交換で日本銀行が資金提供するのと同じ構図であり、日本銀行による国債引き受けと全く同じ形になるのです。そして、日本銀行が金融政策のために資金を市中に供給しようとしても、政府紙幣を放出することができず、日銀の資産の中で永久に埋もれてしまうことになります。しかも、その"紙切れ"は利子も生みません。

つまり、昔、ハイパーインフレを起こしてしまった原因である「中央銀行の政府債務(国債)の直接引き受け」を"言葉を換えて"行うようなものといえます。

これって、どうなのしょうか?

また、各国政府としても中央銀行制度を持っている国である日本が「政府紙幣を発行する」といえば、「日本は何を考えているのか」と思うでしょう。その時、「円」の信頼は「どうなるのか」も考慮しておく必要があることから、敢えて「実行する」だけの構想なのか否かについて、私は疑問を感じています。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第88号、いかがでしたでしょうか。

2月も中旬を迎え、受験シーズン真っ只中となりましたね。

書店に行くと、合格までの道のりを綴った体験談「合格体験記」を目にしますが、一方で「不合格体験記」なるものを先日目にしました。

こちらはタイトルの通り不合格までの道のりを綴ったものですが、平積みされているところを見る限り、こちらもなかなか良く売れている感じでした。

楽天の野村監督も「負けたのには必ず理由がある」と言っていましたが、「何が敗因だったのか」を分析することは、分野に関係なく(投資にも)重要なことだと思います。

結果が覆ることはありませんが、似た失敗というのも割とよくあること。

失敗から学ぶことは成功と同じか、場合によってはそれ以上価値のあることではないでしょうか。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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