今後の株価先行指標は「FXeトレード」と「EMB」に注目|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/2/25(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第89回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。
メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の一戸です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。
あなたの理想とする資産運用、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

本文タイトル
今後の株価先行指標は「FXeトレード」と「EMB」に注目

年明けに、欧州通貨や各国の国債に「売り」が集中した原因は何か

 マクロ景気全体の状況を見ると、昨年末から年明けにかけての株価は「弱い」と考えられており、注目すべきは「米国個人消費」だとお伝えしてきました。その「年末商戦の結果」がはっきり出たのが年明けであり、その結果を受けて、大変な暴落となりました。

 統計の内容として、たとえば「全米小売業協会の統計」は、1995年の統計開始以来、初めて前年を割り込みました。また自動車もよくありません。日本国内の新車販売台数は、1990年の777万台をピークに、いま500万台まで落ち込んでいます。これは日本固有の問題かと思いきや、米国の新車販売台数も2005年の1700万台をピークに、「2009年は下手をすると1000万台を割る」という驚くべき状況になるかもしれません。

 さらに株価を冷やした要因として挙げられるのが「金融恐慌」です。特に「欧州が火種になった」というのが、今回の特徴でしょう。かつては「米国が悪くても、欧州は大丈夫」と言われていました。2007年に米国が利下げに踏み切るなかで、欧州は利上げに踏み切っていたように、「欧州は大丈夫」という意見を、欧州側から発表していました。

 しかし現在、欧州も大変なことになっています。

 その一例としてRBS(ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)の2008年通期の赤字額は、280億ポンド(およそ4兆円程度)。これは英国内の銀行の損失額としては過去最大です。「4兆円」がどれほどの規模かと申しますと、2003年の3月期に日本の六大金融機関が大変な状況だった時、その六大金融機関をすべて合わせても赤字額は5兆円でした。これとほとんど同じ規模の損失を、英国の一銀行がこうむってしまったというわけです。


●銀行がつぶれる!? 疑心暗鬼になり、株を暴力的に売ってきた投資家たち

 こうした状況は、RBSの株価下落にも鮮明に表れています。


 では何故、株価が下がるのでしょうか。

一般的な答えとしては、「赤字になると株価が下がる」。しかし赤字があまりにも大きいと、どういうことになるかというと...。

 その銀行が、つぶれてしまうかもしれない。もし、つぶれてしまうと、以下の2つの可能性が出てきます。

1)銀行が英国の公的管理下に置かれる。そうなると株券が、紙くずになってしまうかもしれないから売る、そのため株価が急激に下がる。
2)公的資金を注入して生きながらえる。しかし資本注入した分だけ株数が増えるため、一株あたりの株価が下がる。

 この2つの可能性を投資家が連想し、結果的に株価が大きく下がってしまったのです。

 同様に、バークレーズの株価も英国市場では、200から一時は50まで落ち、あっという間に4分の1になってしまった。そこにバークレーズ側から「資金繰りに問題はなく、利益も出ている」という異例の声明が発表されました。これによって「追加資金出資の可能性が小さい」ということから、株価がもとに戻りました。実際にバークレーズはその後、底の安値から2倍になっています。業績も赤字に陥っていませんから、けっして悪い会社ではありません。それくらいパニックになってしまったということです。

 2008年秋にわたしたちが経験したように、破綻したリーマンブラザーズから実際に破綻した銀行や金融機関でも"大手"と呼ばれるところはありません。しかし投資家が「つぶれてしまうのではないか」と疑心暗鬼になり、株を暴力的に売ってきました。これが英国を中心に欧州に伝播したというわけです。

 この結果、投資銀行部門を持つ金融機関の中でも、メリルリンチを買収して全米でもベスト3に入る「バンク・オブ・アメリカ」が、ほぼ時期を同じくして株価が急落しています。

 このように事態は、米国にも波及しています。


●FXeトレードから判る、「ドルは、円以外のすべての通貨に対して強くなった」

 こうした動きは株式市場だけではなくて、外国為替市場や債券市場にも影響があります。わたしたちが株式市場を見る時は、どうしても株価を見てしまいますが、まずは「為替を見なければいけない」。これが今回の動きから判る、重要なポイントです。

 誰でもアクセス可能な『グーグルファイナンス』で、「FXe」と入力していただくと、対ドルでユーロがどういう推移をしているのかを見ることができます。


 このグラフでは、価格が下に行けば行くほど、ユーロが対ドルで弱くなっているということを示します。

 今まで「ユーロは、ドルに匹敵するような基軸通貨になりうる」と言われていましたが、この金融恐慌のなかでは、ユーロは対ドルでどんどん弱くなっていきました。この金融恐慌では、「ドルの一極集中の崩壊」「資本主義の崩壊」とよく言われますが、そこで明らかになったのがドルは、「円」以外のすべての通貨に対して強くなったということです。ドルは、きわめて信任が強い通貨ですが、逆にユーロはドルに対して弱くなっています。

 これを投資家や投機家の視点から見ると、「ユーロは、ドルに比べて不安」ということになります。例えば、借金を返して欲しい時に、今まではユーロで返してもらってもOKだったものが、「ユーロはダメ、ドルで返せ」。するとユーロを売ってドルを買わなければいけないので、ユーロが下がってドルが上がる。こういうことが急速に起こりました。

 しかし11月から12月にかけては、ユーロが対ドルで強くなっています。このことから「世界の緊張が少し緩和した」と見ていいでしょう。先ほどの事例で言えば、「ユーロで返してくれてもOK」ということになります。


●「FXeトレード」と「EMB」を先行指標に、今後の株価の動きを読み解く!

 実は、為替は12月の中旬をピークに下がっています。そして、金融機関の株価は1月をピークに下がっている。そうすると「為替のほうが早く動いている」ということになります。

 つまり私たち投資家は、以下の2点について注目しておく必要がある、ということです。

1)為替が少し不穏な動きをしたのであれば、海外金融機関の株に影響を及ぼすのではないか。 2)金融株が下がれば全体が下がるということもありうるから、ユーロが対ドルでどう推移するのか。

 そして、もう一つ注目すべきなのが「債券市場」であり、新興国の国債に対する価格「EMB(エマージング・マーケット・ボンド)」です。


 国債は、ほとんど一般的に「100」という数字が基準で、その100に対して利息がつくという仕組みです。9月にリーマンブラザーズ・ショックで落ち、その後10月にかけて更に大きく下落、信用不安が起こりました。

 最大で65ドルまで落ちましたが、100ドルが65ドルになるということは...。

 仮にこの新興国の国債に100カ国入っているとするならば、「そのうちの35カ国がデフォルトする」と投資家が信じてしまったということです。

 しかし実際には、そんなことはありません。BRICsの 1位はブラジル、2位はロシアです。こうした非常に大きな国が入っているから、そこまでひどくはないだろうということで、10月を底にゆるゆると戻っていきました。

 さて、ここまでの流れを整理すると...。

 まず為替が12月中旬にピーク、そして債券は1月初旬にピーク、その後に金融株などが来ています。つまり、最初に、為替にお金が動いていく、それが債券にも流れていき、その後で株に来るという流れになっています。ですから先行指標としては、「FXeトレード」と「EMB」に注目して下さい。ユーロやそれ以外の新興国の信任は、ドルに対しては、やはり「弱い」と見るべきだからというのが、「FXeトレード」と「EMB」に注目すべき理由です。

 こうした年末から年始にかけての動きから判ること。それは、「いまマクロ環境としては、けっして安穏としていられない状況であること、そしてその認識を大前提として持っている必要がある」ということです。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「儲かる会社はこうして作れ! 1000社徹底取材でわかった「企業を強くする4つの条件」」 講談社 (2008/9/2)

2月13日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第83回 『GDPでみる日本経済の現状』

2/16に10-12月期のGDP(国内総生産)の速報値が発表されました。内容は前期比年率換算マイナス12.7%(前期比マイナス3.3%)となり、石油危機以来、34年9か月ぶりの悪い数字でした。これはリーマンショック以降の深刻な経済状況を如実に裏付けたものといえます。

しかも、同期間のGDP成長率(季節調節済み前期比年率)を国際比較してみると、米国はマイナス3.8%、ユーロ圏はマイナス5.7%、英国はマイナス5.9%であり、日本が飛び抜けて悪い状態になっています(ドイツも年率換算前の値がマイナス2.1%であり、かなり悪い状態になっています)。

つまり、震源地の米国よりも、また、最近「悪い」ということで通貨も大きく下落している欧州、英国よりも、日本の経済が悪かったわけであり、「ハチに刺された程度(9月の予算委員会での与謝野大臣の談話)」という政府の認識が「完全に甘かった」ということが確認されたということでもあります。

さて、日本がこれほど「悪い」のは何故なのでしょうか?

この点に関しては多くのエコノミストがいろいろと詳しく分析しているので、細かな点は新聞等で確認していただきたいのですが、ここでは一般に言われている「日本の産業構造(外需依存体質)」を中心に、簡単に、以下で分析してみたいと思います。

まず、今回の日本のGDP統計をみると、全体でマイナス12.7%ですが、このうち内需の寄与度がマイナス1.4%で、外需の寄与度はマイナス10.0%になっています。つまり、大きなマイナスの要因は外需にあることがわかります(ここで内需寄与度プラス外需寄与度が全体の成長率にならないのは、これらの値が季節調整をしているため、統計上、「開差」が存在するためです)。

※GDP成長率=内需寄与度+外需寄与度

ここで「外需」とは「輸出マイナス輸入」のことであり、一般に「純輸出」ともいわれるものですが、要するに「貿易収支」のことです。

また、内需も外需も、ともに「需要のサイドからみた統計」を意味しています。つまり、国内の需要のことが「内需」といい、国内でどれだけモノ等が消費されたかを示すものであるのに対して、外需のうち輸出は「海外の国内財等に対する需要」を、輸入は「国内の海外財に対する需要」を示していることになります。

以上が用語説明です(汗) これを踏まえて・・・

理論的に「国内景気が悪い」と言う状況では、国内の需要が少ないので、「国内需要」および「輸入」が低下すると考えられています。そのため企業は需要を求めて「海外に出稼ぎに行こう」と考えるはずであり、「輸出は増加する」のが一般的です。

したがって、内需および輸入の減少を、輸出が賄う形になるため、貿易収支(輸出マイナス輸入)がプラス化するわけです。それゆえ、世界的に競争力がある企業が多いような国では、国内経済が悪くなると貿易黒字になるわけです。

ご存知の通り、日本では内需が歴史的に弱く、それを外需、つまり輸出でカバーし続けてきました。

ところが今回の「不況」は、国内だけではなく、世界中が不況に陥っています。そうなるとカバーするはずの輸出が振るわなくなります。なぜなら、世界中が不況と言うことは、国内からみて海外全体の需要が減少しているのであり、モノを買ってくれる相手がいなくなることを意味するからです。

そのため、そもそも内需が弱い日本は、世界と同じくらい内需がマイナスである上に、今まで底支えになってきた輸出が大幅に減退することから、貿易収支が悪化し、GDPが衝撃的な数字になってしまったのです。同様な動きをしたのが、ドイツであり、ユーロ圏にありながら大きなマイナスになっているのだと思います。

他方、米国(および英国)は震源地ともいえる存在ですが、貿易収支は赤字であり、輸出の減少はGDPに対して大きく寄与するものではなく、むしろ、輸入が手控えられたことによって、貿易収支が改善方向にシフトしていることが考えられます。

また、内需の中心は「個人消費」なので、基本的に景気下落局面でも減退するスピードは遅いのが普通です。したがって、内需自体、減退はするものの、ある程度緩やかなものになることから、米国は日本にように衝撃的な数値にはならなかったと考えられます(日本が異常なのであり、十分、米国も衝撃的ではありますが・・・)。

この世界不況は、今後も当面続くと考えられていることから、外需が良くなる可能性は極めて薄く、このままではますます経済が失速することになるでしょう。

そういう意味から日本は、自国の高い技術を活かして、国内需要を喚起するような対策をしっかりと打ち出していかなければ、日本だけが「世界に取り残されたまま」という状態になってしまうかもしれません。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第89号、いかがでしたでしょうか。

昨日家のコタツが壊れたので、ひさびさ実購入を視野に、とある量販店の家電売り場に行ったのですが、その安さに驚愕しました。

特にテレビやDVDプレーヤーなどは下落率著しく、テレビは32型で9万円を切るものなどが幾つもありました。

見た目とクオリティに差があるのではないかと思い店員に尋ねると、機能量の差はあれ、今は安いものでも基本的な質はかなり良いとのことで、価格変動の最たる理由は韓国や台湾のメーカーを活用していることと急激な円高によるものだそうです。

地デジ切り替えのこともあり、1インチ1万円時代にもかなり購入を迷った私はコタツそっちのけでテレビコーナーに居ついてしまいました。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
一戸

| 配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み