賢い投資は、各国通貨の2009年の動向を読み解くことから|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/3/11(水)  
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賢い投資は、各国通貨の2009年の動向を読み解くことから

為替介入は、いつどのタイミングで行われるのか!? その影響で投資がどう変わる!?

 まずは、今後の「為替介入の可能性」について簡単にまとめておきます。 2003~2004年の「100円防衛」においては、35兆円で介入を行いました。その後の日米インフレ格差を勘案すると、現時点で当時の100円は「85円」と同等水準。この程度になれば為替介入がありうると想定しています。

 日本の主要な輸出企業は、通常程度の景気減速なら、90円程度でも利益を出せる体力があるでしょう。しかし世界経済がここまで落ち込み、売り上げ急減のショックで大幅赤字になってしまいました。米国のような債務国は、株安や景気悪化がドル安をもたらし、いくらかの救いになるでしょう。ところが日本の場合は、景気悪化や株安で円高、さらに金融緩和で対抗する余地もなかった。この状態が長引くと、いずれ「為替介入やむなし」という対応になると考えています。

   問題は「米国がそれに対して同意するのか否か」です。先日、オバマ政権のヒラリー・クリントン国務長官が日本や中国を訪問するなかで、米国の財政赤字を支援すべく米国債購入で協力を求めたと報じられています。  今後またドル安になり、米国債も売られやすい状況になれば、「日本が為替介入でドル買いし、それで米国債を買う」ことは、それなりに受け入れてもらえるでしょう。  85円を突破してさらに行きそうだという状況では、まず介入でドル安・円高の抑止を図る。その時に日本人が、「外貨建て資産をなかなか巻き戻さない」行動を継続しているなら、為替介入を10兆円単位で行うことで、円高抑止の水準防衛やスピード調整は可能であろうと私は思います。

■"ドル建て資産に対する3つの投資スタイル"の特徴と投資のタイミングお教えします!

 では次に、日本人の外貨建て資産、特に「ドル建て資産に対する投資のスタイル」を整理しておきましょう。


 投資スタイルには、大きく分けて「バリュー投資」「モメンタム投資」「キャリー投資」の3つがあります。≪景気循環に沿ってドルが動く。景気下降局面から、回復期いっぱいがドル安局面である≫という話を踏まえて、それぞれの特徴と投資のタイミングを解説します。

1)バリュー投資
割安な物を買うのが、バリュー投資です。景気循環にそったドル循環の下半分くらいで買うのがいいわけで、バリュー投資のタイミングは、「景気回復期に入ってから、景気加速局面の初期くらいまで」ということになるでしょう。

2)モメンタム投資
相場の勢い、流れに沿って買うのがモメンタム投資です。景気が加速局面に入ってドル上昇局面になってからが好機です。

3)キャリー投資
日米の金利差の妙味を取るのがキャリー投資。金利差は今回なくなってしまいましたが、通常の景気循環なら米国金利が相対的に高い状態が続きます。その場合、全期間いつでもキャリー投資できるように見えます。しかしドル安局面は、為替市場の変動率が上がりやすく、金利差(リターン)を狙うにはリスクが高く、見合いません。投資のタイミングは、「もう少し経済・金融情勢が改善し、金利差が開いていく時」が狙い目ということになります。

 現状から判断すると、今後円高の時に割安な外貨建て資産をバリュー狙いで買う局面に入ってきます。しかし今回は、まだまだ景気回復軌道も安定せず怪しい部分もある。まだバリュー投資の入り口付近ですから、バリュー投資で早めに買った分ではイヤな思いをすることもあろうかと思います。ですから「時間と水準を分散しながら少しずつ買っていく」ということになります。早めに買った物が短期的に値上がりして報われるなら、それはそれで「早めに利益を出してしまう」というのも、この場面でのひとつの考え方だと思います。


■ドル、ユーロ、円をはじめ、"2009年各国通貨の注目ポイント"を徹底詳解!

 以上、申し上げてきたことから、各国の通貨ごとに今年のポイントを少し整理してみます。

1)ドル
 ドルは債務国通貨ですから、今の景気悪化・信用問題・金融緩和のもと、2010年から場合によっては2011年まで下落圧力を受け続けるでしょう。  ただし今年は、それなりの経済対策を打っていますから、「年半ばあたりから、かろうじてプラス成長になる場面」を期待しています。その場合、リスク資産の反発が見込まれ、ドルもしばしサポートされて一部失地を回復するような反発がありうると予測しています。 値ごろ感としては95~100円水準をイメージはしていますが、これは持続的なドル高・円安局面入りを意味するものではありません。ドルのファンダメンタルズはまだまだ脆弱であり、2010年にかけてドル安リスクが再燃する可能性が強いと見ています。

2)ユーロ
 ユーロは、今年年後半から来年にかけてドルの脆さが再認識される中で、しっかりしてくるだろうと見ています。  ただし現時点では、米国が先にいろいろな対策を打って「年半ばにはプラス成長かもしれないという」期待感が出ている一方、ユーロ圏はいろいろな対応が後手にまわって経済はまだ悪化している最中です。金融の損失処理の遅れ、中東欧の債務問題なども足を引っ張り、金融問題もまだまだ尾を引く可能性があるでしょう。向こう数カ月は、ユーロの弱い面が何かと注目されやすいので、ちょっと下ブレしやすいと見ています。

 政策金利が米国より高めですが、「それ自体が政策対応の遅れを表しており、金利、景気、金融情勢も悪化余地がもっと大きい」いう議論があるくらいです。『ユーロはいろいろな国が混在しているが、それをたった一つの通貨や金利で管理することに耐えられなくなる』と離脱論や解体論も出てきており、それがまたユーロの「信用」という議論になっています。

 ただし私自身は、「離脱や解体といった制度的変更のハードルは相当に高く、その手前の議論に踏みとどまる」と考えます。今年後半に米国経済や世界経済が持ち直せば、ユーロへの過剰な悲観論は落ち着き、米国ほど突飛な財政・金融政策に至っていないことが再評価されたり、債務国である米国に対してユーロ圏は対外収支トントンくらいという優位性も手伝って、ユーロは持ち直す可能性を期待しています。

3)豪ドル
 豪ドルは、輸出品の過半を占めるコモディティの価格が下がって、米国に負けず劣らずの債務国でもあり、相当に売られています。しかし世界経済が今年辛うじて持ち直すと、コモディティもいくらか底堅さを増してきます。そのときに中国が8%成長を確保しているとしたら、長期的なコモディティの上昇軌道もストーリーとしてサポートされやすくなるでしょう。その場合、豪ドルも比較的早い段階で、しっかり目になる可能性が出てきます。

4)新興国
 新興国の中では、対外黒字で、財政出動や金融緩和など先進国型の経済対策を打てるアジア通貨が、相対的には早めにしっかりしやすいだろうと思っています。

5)円
 円はドルの対極です。お金を貸す側の国の通貨として、2010年、2011年あたりも円高リスクが続く可能性があります。米国経済が立ち直る場合も初期的に、米国で保守的に保有されていたマネーが外のリスク投資に出て行ったり、米国債投資を嫌がる状況になるなどして、ドル安・円高になりやすい面があります。

そういう意味で「基調的な円高リスクは残っている」ということです。ただ今年に関しては、米国経済がなんとか一回プラス成長に戻る場面で、リスクを嫌う機運が緩和され、「これまで買われすぎた円が売り戻されやすい」場面があるだろうと考えています。


講師紹介
大前研一
野村證券株式会社 金融市場調査部
マネージング・ディレクター 外国為替ストラテジスト
田中 泰輔

2月25日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第85回 『国民の7割は定額給付金で「日用品を買う」らしい!!』

定額給付金の支給が決定し、各地で支給に向けて動いています。というか、すでに受け取っている方の映像がTV等で報道されています。「貰えるもの」は、やっぱり貰うのが当たり前であり、拒否する必要はないと私は考えています(大阪出身です)。また、そもそも私たちが出した税金の還付に等しく、「つまり」は「自分のおカネ」なのであり、堂々と貰うべきだと思います(そこに何の「さもしさ」もないはずですから・・・)。

また、経済効果等を考えれば、貰ってから自分の意思で「他の主体に寄付する」のは良いのですが、「貰わない」ことにしてしまうと、国庫に返納され、もし、年度内に当該資金が使われなければ、景気にとって「最も悪い」ことになります。したがって、とりあえずは「貰うべきだ」と思います(野党の中には「貰わない」と決めているところが多いようですが、それは良くないので、受取りを拒否するくらいなら、政党が中心になって、任意に、寄付の"受け皿"を作るなどの施策を行うべきでしょうね)。

ところで、この給付金を「どのように使いますか?」というアンケートをしたところ、7割近くが「食費や日用品の購入」と答えたということです。まぁ、アンケートですから、正しいか否かはわかりませんが、普通に考えてみれば、12,000円という額で「豪華な旅行の"足し"に」という人は少ないでしょう。「足し」にする部分が、あまりにも少ないので、そもそも「豪華な旅行」という選択肢は少なく、日用品等になると考えるのは「当然」といえば当然ですよね。

ということは、この給付金のほとんどは「日用品等に流れる」ということになりそうですが、その時の経済効果はどうなのでしょうか?

答えとしては「ほとんど経済効果なし」ということになります。

「何故?」という声が聞こえそうですが、この給付金、経済学的にみて、日用品等に使ってしまっては意味がないのです。この給付が「生活者支援」であれば、それも良いのですが、「消費向上」の場合には、ほとんど効果なしになってしまうのです(何かの「消費喚起」にはつながるかもしれませんが、「消費の全体的な向上」ということにはならないでしょう)。

でも、日用品等といっても「消費」には違いないのであり、「使った」ということは「貯蓄」ではないので、マクロ経済的には「消費項目が高まるといえないのか?」と考えてしまいそうですよね。たぶん、多くの人もそう思っているのでしょう。だから、TVのインタビューでも(先ほどのアンケートでも)「日用品に使う」と答える人が多かったのだと思いますし、映像でも洗剤などを買っているシーンが流れていました。

しかし・・・

「日用品」というのは、この定額給付がなかったとしても"必ず"買うものです。したがって、定額給付のおカネで日用品を買えば、年間で購入するはずの日用品代が、この定額給付の分だけ少なくなることになります。その「浮いたおカネ」は、やっぱり、浮いたままであり、使わなかったのと同じになるのです。

例えば、毎年100万円を日用品に使っていたとします。そして、所得は変わらず、日用品は必ず使うモノばかりであり、今年も買うことになるとします。ここに12,000円が定額給付として支給され、そのおカネで日用品を買うとします。しかし、日用品は100万円しか要らないわけであり、日用品のために自分のおカネで消費したのは98万8,000円になります。つまり、12,000円分が支出しなかっただけということになります。

使わなかったおカネはどこに行ったのか、というと、他に贅沢な消費をしない場合には、「貯蓄」が増加したことになります。つまり、本当に「使わなかった」だけであり、消費が増加することにはならないのです(ただ、通常よりも「価格の高い洗剤」「価格の高い食料品」などを購入したとすれば、その「価格の高い」分だけ、消費が増加することになります)。

このように定額給付金で日用品を買うというのは、「日用品代」というファンドを想定すれば、その金額は一般に変わらないので、消費に回らなかったのと同じになってしまうのです。つまり、定額給付金をもらったら「すぐに銀行に預金した」のと、最終的には経済効果が同じであり、貯蓄タイミングが、幾分、違うだけに過ぎないのです。

では、どうすれば「景気に良いことになるのか?」というと・・・

やっぱり"パァ~と"使ってしまうことです。特に「もったいない」と思うようなことに使ってしまうことが、このような景気が悪い時には大切なのです。今、どこかのコマーシャルで「mottainai(もったいない)」というものを流していますが、それを覆す行動が良いことになります(といっても、環境問題からいえば「無駄」は良くないですよ)。

しかし日本人は、なかなかそのような行動に慣れていません。況してや、この不景気に将来どのようになっていくかもわからない状態で「使いましょう」といわれて、「無駄なもの」に使う人はいないでしょうね。それを期待する(政府の)方が間違えているといえます。

「家計は使わない」「企業も生産をしない」ということ、だから、「政府が使うべきだ」というのが、ケインズの有効需要における公共事業の役割になるわけです。政府が使うべきものを国民に「使ってください」と支給するのが、今回の定額給付という考え方ですから、発想が全く違っていることになります。

与党は「国民は給付を待ち望んでいるし、実際、貰った人々は喜んでいる」とみているようですが、それは当たり前の行動なのであり、「喜んでいる」というのと「政策効果がある」というのは全く別であるということを認識すべきです。

政府に「無駄におカネを使われる」くらいなら、戻ってきて「助かる」というのは当たり前であり、おカネを受け取って「ありがたい」と思わない人はほとんどいません。しかも、その原資は「自分のおカネ」ですから・・・。

でも、政府は「無駄」といわれても「使う」ことは可能であり、それを実行するから(誰も使わないような状態において)経済が良くなる可能性もあるのです。うまく公共投資の乗数効果を使えば、「無駄」に見える使い方も有効になることもあるのです。

とはいえ、定額給付金は既に出してしまったのであり、それは仕方ないので、後は結果を見る以外にないでしょう。

結果は、半年くらい経ってみないとわかりませんが、現時点で「7割が日用品等を買う」と言っている以上、最終的な効果は「ほとんど皆無」ということになりそうですね。

これからも政府は(現在までの"3段ロケット"に加え)4段、5段の景気対策を打ってくるのでしょうが、景気対策を「打ち出せば良い」「国民受けするものを行えば良い」ということではないはずです。政府には「政府しかできない真のおカネの使い方」というものがあるので、その点をよく考え、公共投資としての乗数効果が高い、しっかりとした対策を打ち出していくことを期待したいものです。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第91号、いかがでしたでしょうか。

私事ですが、今年に入ってインターネットで調べたスポーツや英語のサークルに足を運ぶことが増えました。

当然初対面の人ばかりなのでまずは自己紹介となるのですが、私が資産形成学習を仕事にしていると話すと、必ず聞かれるのが「今は買い時か、まだ待った方がいいか」との質問。。

そんな話をきっかけに相手の運用体験を掘り下げていて感じるのは、「みな売り買いのタイミングを待ち過ぎている」ということです。

これは「底値で買えない」または「最高値で売れない」という意味ではなく、ピークをかなり過ぎても一向に必要な売り買いの行動を取らないという意味です。

いくら運用益が出ても、売らなければ実利益はゼロ。

加えて日本の株価は一気に下がることはあってもジワジワとしか戻らない特徴があるようですし、自分の売買目標値を超えたら着実に行動に移していただくのが精神的にも懐的にも良いのではないかと思います。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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