雇用創出を目的にした経済政策は、真の雇用創出を生まない|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/3/18(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第92回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。
メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の一戸です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。
あなたの理想とする資産運用、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

本文タイトル
雇用創出を目的にした経済政策は、真の雇用創出を生まない

早くも失業率8%台に突入、米国は危機的な状況

6日米労働省が発表した2月の雇用統計によると、失業率は前の月に比べて0.5ポイント高い8.1%に悪化し、25年ぶりの高水準となったことが分かりました。雇用の減少は昨年1月から14ヶ月連続で、この間の減少数の累計はおよそ438万人に達しています。

以前から、私は「このままいくと米国の失業率は10%を越える可能性が高い」と主張していました。一方、米国の報道機関はこぞって「失業率は7%を超えるだろう」という程度の認識しか示していませんでした。



米国の雇用環境の変化を見ると、2008年以降米国の失業率は右肩上がりに上昇し、2009年1月時点でついに8%を超える水準に達しています。昨年から今までの米失業率ついてのいろいろな経済研究所の予想を振り返ってみると、「2009年の12月までに」ということであれば「失業率が8%を超える」と予想していたところは数社ありましたが、この2009年1月という早いタイミングで「8%超え」という予想をした研究所は皆無でした。

つまり、米国の統計専門会社においても、全く経済動向を読みきれておらず、事態を理解し切れていないということがわかります。

約1年間に渡って0.4ポイントずつの割合で上昇してきた失業率ですが、ついに先月は0.5ポイントの上昇を記録し、一気に8%台に突入する事態になってしまいました。これは危機的な状況だと見るべきでしょう。

米オバマ大統領は選挙の公約の中でも「雇用創出」を大々的にアピールしていました。就任後、初の公式記者会見でも「景気対策は最大400万人の雇用維持・創出が狙いで、米国が今必要としていることだ」と強調しています。

したがって今後、米国政府は人工的に雇用を創出するという施策を次々と打ち出してくるでしょう。オバマ大統領による「雇用創出のための施策」が果たしてどのくらい効果を発揮するのか、それがこの問題の焦点になっていくと思います。


●雇用創出を目的とした経済政策に、成功事例はない

私の結論を述べると、残念ながらオバマ大統領による「雇用創出のための経済施策」は全て失敗すると見ています。というのは、資本主義経済の100年の歴史を紐解いてみても、「雇用創出」それ自体を目的として上手く機能した経済施策というものはないからです。雇用は「経済政策が機能した結果」として創出されるものであり、それ自体を目的とするべきものではありません。

もしかすると、このような反論があるかも知れません。例えば、中国では農村の人手が余っているときに、灌漑施設や洪水対策のための土手の建設を進めることで彼らに仕事を与えることが出来ていたのではないか?と。確かに一時的に仕事を斡旋することにはなっていますが、雇用統計上から見れば意味はありません。また本質的な意味において「雇用」が創出されたとは言えないでしょう。

「雇用」を増やすという「目的」のためにお金を使うというのは、ケインズ経済学の「有効需要の創出」です。ですが、今の時代は100のお金を使っても100の効果が得られる時代ではありません。この事実をしっかりと認識するべきです。いい加減に古いマクロ経済から決別して、今の時代に合った考え方に変えていくべきだと強く思います。

さらに言えば、雇用創出を目的とすることは単に効果が期待できないばかりか、次の2点において有害だと私は思います。1つには、将来に対する借金を増やしてしまうことです。そしてもう1つには、米国債・米ドル、日本国債・日本円という金融そのものに対する信頼度が低下する可能性があるということです。特に、金融に対する信頼度は最も大切なことであり、これが破壊されればその被害は甚大になるだと思います。

ならば今の時代に合った考え方とはどのようなものかというと、何度も私は主張していますが、いわゆる「心理経済学」の考え方です。今、国民は資産を持っています。ですから、重要なのはその国民が保有している資産が市場に出てくるように仕向けることです。国家が輪転機を回して国民の資産を破壊するような事態だけは、絶対に避けなくてはいけないと私は思います。

オバマ大統領が考えている施策は、公共事業や研究開発などを含む大規模な景気対策による需要下支えといった、いわゆる古いマクロ経済の考え方に立脚しています。そして、それを約100兆円というこれまでに例がない大規模で実施しようとしているだけです。私に言わせれば、ダメなものは10倍にしてもより早くダメな結果が判明するだけだと思います。

オバマ大統領が誕生し、新しい流れは生まれつつありますし、米国内の期待は非常に大きいでしょう。しかし、100年間の資本主義経済の歴史で成功事例がないことを、100倍の規模で実行しようというのは、率直に言ってあまりに無謀だと私は感じています。

日本の政治家や役人も全く理解していませんが、オバマ大統領も早く時代遅れのマクロ経済の考え方から抜け出し、心理経済学の考え方を理解して実践してもらいたいと願っています。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

3月8日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第86回 『財政出動は「致し方ない」としても、ここで「赤字国債」は?!?!』

先週末(3/14)、G20財務相中央銀行総裁会議が終わりました。が、「これ」といった目新しいトピックスはなく、今まで各国が行ってきた政策の追認みたいなことを声明しただけという印象です。まぁ、現状において「何をどうすれば良いのか?」について誰も正しい答えを出すことができない以上、この際、出来ることは何でもやるということ以外に手はないといえば、その通りかもしれません。

欧州としてはマーストリヒト条約との関係で数値目標には踏み込めないことから、今回の声明文には明記されませんでしたが、現在のような状況だけに「GDP2%の財政出動」というのも「やらないよりも、やった方が良いよね」ということではあります。

このGDP2%について与謝野財務相&経済・金融担当大臣は"2%を超える"追加財政出動を考えている旨を表明しています(数値目標を財務大臣自らが発言することは極めて異例だと思いますが・・・)。

その財源は・・・

「赤字国債もやむなし」と考えているようです。与謝野大臣は、すでに宗派(そもそもは「財政規律派」)を転向して、財政拡大路線になっている旨を表明しているので、今さら驚くことではありませんが、現状、日本経済を財政規律の観点で考えれば、極めて危険と言わざるを得ないでしょう。

家計も企業もおカネを使わない以上、ここで政府がおカネを使うことについては「致し方ない」のですが、といって、ここから赤字国債を出すことになれば、多少の経済成長を見込んでも、実質的に将来増税になることは決定的になってしまいます(現状でも、十分に、将来増税の可能性が高いのですが・・・)

その辺りの説明が全くないので、国民としてはかなり不安になっていまいます。

「景気が良くなった段階で消費税の引き上げを・・・」といっていますが、景気が良くなった途端に税率を弄ることなどできようはずもなく、ズルズルと良からぬ方向に進んで行きそうで、恐怖にも似た"不安心理"が日本中(または、世界中)に蔓延している感じです(本来、一時凌ぎの「景気浮上」ではなく、恒久的な「経済成長」が大切なのです)。

確かに"日本国債"に限って言えば、日本国内の消化がほとんどであり、デフォルトリスクは低いのですが、とはいえ「借金」である以上、返済されなければなりません。

国債を保有している人(の大半)が日本人であり、当該国債が償還をする際には、同じ国の日本人から集めた税金で返済するので、国内のマネーフローを一体として考えれば、おカネが国内で移動しただけで、何ら問題はありません。

とはいっても、国債残高が増加すれば、返済すべき資金を増やすために税金を多く集める(つまり、「増税」する)ことが必要になります。が、上記のように国内を一体として考えれば、「(税金を)払う人」も日本人であり、「(国債の利子や償還金を)受け取る人」も日本人なら、自分のおカネを自分に支払ってもらうだけだから問題なさそうです。

ところが、国債を保有している人は、大半が銀行等の金融機関であり、税金を払うのは(法人も払いますが)家計部門ということになります。つまり、家計は預金を銀行等にしていますが、その金利は非常に低い上に"増税"になる、一方、銀行等は低い預金金利を支払うだけで、それよりも高い国債の利払いや償還を受け取れることになるわけです。ここで法人は海外に拠点を移されては困る等の関係で、法人税を据え置いたとしますと、増税されるのは家計だけになってしまいます。

以上から、今後これ以上、赤字国債を発行し続ければ、そのシワ寄せは全て一般"家計"だけが背負うことになってしまいます。そうなることは「火を見るよりも明らか」なので、今後、経済が回復するようになれば"増税"が確実なので、優秀な人材ほど他国に流出する可能性が高くなるでしょうね。そうなると経済は成長しないので、日本国の通貨たる「円」は大幅に減価することになるでしょう(というよりも、市場は先読みするので、景気が回復する前から円は減価を始めるでしょう)。

他方、政府としても増税をして利払いや償還金を手当てしたのでは、上記のようなことになるため、そのようなことを避けようと法律を改悪し、中央銀行(日銀)が国債を直接引き受けられるようにしたとしましょう。その場合でも「国債はいずれ返済しなければならない」という事実は変わらないので、"ツケ"を後世に先送りしただけになってしまい、「こんな国にいたくない」という若者は海外に流出することから、やはり通貨価値の減価は避けられないと思われます。ということから、政府紙幣なる「無利子永久国債」を発行しても、それは結局、日銀の金庫に眠るだけであり、円の通貨の源泉である日本銀行の信用は地に落ち、事態は改善しないまま、通貨価値は大幅に減価することになることが考えられます。

つまり、これから政府債務を増やせば、いずれの方法をとっても、日本国の通貨たる「円」の価値が大幅に減価することになるということを意味します。

日本は資源の大半を輸入によって賄っています。したがって、「円」が大幅に減価するような事態になれば、エネルギーを中心とした資源を手に入れられなくなり、あっという間に「貧困国」になってしまうでしょう。

ところで、多くの論者は「国債の増発はインフレにつながる」ということで警告を鳴らします。しかし、現状において、(昨年のように)原油等の資源が急激に高騰するような事態にならない限り、一足飛びにインフレになったり、高金利になったりする可能性は薄いと考えています。けれども、上述の通り「通貨価値の下落」が現実化することになれば、輸入品価格の上昇を招き、必然的に大幅にインフレになることから、円安を避けようと高金利にするため、国民経済が混乱する可能性は十分に高いとみています。

但し、政府債務残高が高くても「将来、日本が経済成長する」ということであれば、国力の裏付けとなる国民所得の増加を伴うので、通貨価値は減価しにくくなることも考えられます。

したがって、赤字国債を出し、政府債務を増加させる以外に、現状、打つ手がないのであれば、その資金によって「今後の経済成長が必ず遂げられる」というような分野に重点を置くべきであろうと思います。逆に、政策効果が見込めない、単なるバラマキでは「日本経済の将来は全くない」というよりも、「崩壊に導く」だけになるでしょう。

たとえば、「環境問題対策」ということであれば、日本は世界一のスキルを持っています。したがって、その点にしか、この難局を乗り切れないと考えるのであれば、分野を絞って、しかも、国民全体が理解できるようなビジョンを示し、思い切った形で推進させる他、現状、政府にできることはないと思います。

上述の通り、現状、政府部門しか動ける主体はないので、財政出動は「やむを得ない」ことではあります。しかし、「だから」といって、定額給付金や高速道路料金1000円などといったものでは意味がなく、また、政府紙幣や日銀の直接引き受け解禁などという姑息な政策は世界的にも信用されないし、実際、効果もありません(逆効果になるだけでしょう)。

政府は、この難局に対して、もっと正面から取り組む姿勢と、それなりのビジョンを明確に示していただきたいものです(「国民の顔(支持アンケートなど)」を窺うのではなく、もう少し先を見据えた政策を打ち出すべきだと思います)。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第92号、いかがでしたでしょうか。

多くの人が投資をする目的は「副収入を得るため」ではないかと思います。

給与以外の収入について幾つか挙げてみると・・・

○資産運用
○家賃
○アフィリエイト(インターネット広告を使った成果報酬)
○執筆活動などの印税
○講演料

(まだまだあると思いますが)こんなところでしょうか。

本を書くことや大きな会場で講演を行うことなどは少々ハードルが高いと思いますが、こうした副収入源を一つ、二つ意識して持っておくことは大変有益だと思います。

今の日本は経済成長も乏しく、金銭的不都合が諦めの理由になることもしばしば。

一度しかない人生を極力後悔の少ないものにするために、金銭的なものはどうにもならないなんて諦めず、「足りないものはどうにかして埋める」クセを自分自身につけたいものです。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
一戸

| 配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み