早くも失業率8%台に突入、米国は危機的な状況
6日米労働省が発表した2月の雇用統計によると、失業率は前の月に比べて0.5ポイント高い8.1%に悪化し、25年ぶりの高水準となったことが分かりました。雇用の減少は昨年1月から14ヶ月連続で、この間の減少数の累計はおよそ438万人に達しています。
以前から、私は「このままいくと米国の失業率は10%を越える可能性が高い」と主張していました。一方、米国の報道機関はこぞって「失業率は7%を超えるだろう」という程度の認識しか示していませんでした。
米国の雇用環境の変化を見ると、2008年以降米国の失業率は右肩上がりに上昇し、2009年1月時点でついに8%を超える水準に達しています。昨年から今までの米失業率ついてのいろいろな経済研究所の予想を振り返ってみると、「2009年の12月までに」ということであれば「失業率が8%を超える」と予想していたところは数社ありましたが、この2009年1月という早いタイミングで「8%超え」という予想をした研究所は皆無でした。
つまり、米国の統計専門会社においても、全く経済動向を読みきれておらず、事態を理解し切れていないということがわかります。
約1年間に渡って0.4ポイントずつの割合で上昇してきた失業率ですが、ついに先月は0.5ポイントの上昇を記録し、一気に8%台に突入する事態になってしまいました。これは危機的な状況だと見るべきでしょう。
米オバマ大統領は選挙の公約の中でも「雇用創出」を大々的にアピールしていました。就任後、初の公式記者会見でも「景気対策は最大400万人の雇用維持・創出が狙いで、米国が今必要としていることだ」と強調しています。
したがって今後、米国政府は人工的に雇用を創出するという施策を次々と打ち出してくるでしょう。オバマ大統領による「雇用創出のための施策」が果たしてどのくらい効果を発揮するのか、それがこの問題の焦点になっていくと思います。
●雇用創出を目的とした経済政策に、成功事例はない
私の結論を述べると、残念ながらオバマ大統領による「雇用創出のための経済施策」は全て失敗すると見ています。というのは、資本主義経済の100年の歴史を紐解いてみても、「雇用創出」それ自体を目的として上手く機能した経済施策というものはないからです。雇用は「経済政策が機能した結果」として創出されるものであり、それ自体を目的とするべきものではありません。
もしかすると、このような反論があるかも知れません。例えば、中国では農村の人手が余っているときに、灌漑施設や洪水対策のための土手の建設を進めることで彼らに仕事を与えることが出来ていたのではないか?と。確かに一時的に仕事を斡旋することにはなっていますが、雇用統計上から見れば意味はありません。また本質的な意味において「雇用」が創出されたとは言えないでしょう。
「雇用」を増やすという「目的」のためにお金を使うというのは、ケインズ経済学の「有効需要の創出」です。ですが、今の時代は100のお金を使っても100の効果が得られる時代ではありません。この事実をしっかりと認識するべきです。いい加減に古いマクロ経済から決別して、今の時代に合った考え方に変えていくべきだと強く思います。
さらに言えば、雇用創出を目的とすることは単に効果が期待できないばかりか、次の2点において有害だと私は思います。1つには、将来に対する借金を増やしてしまうことです。そしてもう1つには、米国債・米ドル、日本国債・日本円という金融そのものに対する信頼度が低下する可能性があるということです。特に、金融に対する信頼度は最も大切なことであり、これが破壊されればその被害は甚大になるだと思います。
ならば今の時代に合った考え方とはどのようなものかというと、何度も私は主張していますが、いわゆる「心理経済学」の考え方です。今、国民は資産を持っています。ですから、重要なのはその国民が保有している資産が市場に出てくるように仕向けることです。国家が輪転機を回して国民の資産を破壊するような事態だけは、絶対に避けなくてはいけないと私は思います。
オバマ大統領が考えている施策は、公共事業や研究開発などを含む大規模な景気対策による需要下支えといった、いわゆる古いマクロ経済の考え方に立脚しています。そして、それを約100兆円というこれまでに例がない大規模で実施しようとしているだけです。私に言わせれば、ダメなものは10倍にしてもより早くダメな結果が判明するだけだと思います。
オバマ大統領が誕生し、新しい流れは生まれつつありますし、米国内の期待は非常に大きいでしょう。しかし、100年間の資本主義経済の歴史で成功事例がないことを、100倍の規模で実行しようというのは、率直に言ってあまりに無謀だと私は感じています。
日本の政治家や役人も全く理解していませんが、オバマ大統領も早く時代遅れのマクロ経済の考え方から抜け出し、心理経済学の考え方を理解して実践してもらいたいと願っています。
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