マーケットは、オバマ新政権をどう見ているのか|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/3/25(水)  
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マーケットは、オバマ新政権をどう見ているのか

話題の「VIX(恐怖指数)」よりも、投資家が金価格に注目しなければいけない理由

現在の世界的経済危機は、「これからどうなるのか?」と聞かれても正直誰も判りません。 唯一判っているのは、「いま悪い状態にある」ということだけです。 そして「もしかするとよくなるのではないだろうか...」という期待と、「さらに悪くなるのではないだろうか」という恐れが混在している。それが現在の状況です。

当然、政府や当局サイド、企業も今よりも悪くしたいと考えている人はいません。それでも悪くなる時は悪くなる。それが現実です。 「それをどう見ればいいのか?」は、この会社がこうなったらこうだとか、そういうことでは現実は判りません。たとえホワイトハウスにいる人達でも判らないでしょう。 では何で見ればいいのか? それは「マーケットで見る」しかありません。 それがみんなの"総意"だからです。

そして私自身が、今回の経済危機を非常によく反映していると思うのが「金価格」です。この相場を振り返ってみると、非常に面白いことが判ります。 金価格は「金そのものが価値を持つ」という理屈において、究極的な混乱の時に買われるという傾向があるからです。だから相場が動くのです。 参考にするのは、ニューヨーク金先物市場の先切りを繋いだチャート(昨年3月14日~今年2月20日)です。


まず2008年3月14日、「ベア・スターンズが破綻し、JPモルガン・チェースが買収」した時に、金相場が初めて1,000ドルを越えました。1,000ドルという達成感がありますから、その後は15%近く下がり、その後また1,000ドル近くまで戻っています。 しかし今度は、1,000ドルを越えませんでした。 その失望感によって、750ドル近辺まで下がります。私はここで金相場は一回終わりを迎えたなと思いました。

その後の2008年9月15日、「リーマン・ブラザーズ破綻」が起きました。 金価格は、前のベア・スターンズ破綻のところから下がっていますから、マーケットはリーマン・ブラザーズの破綻を予想していなかったということです。 予想できていたのならば、ベア・スターンズ破綻の前に金価格が上がってきていたように同じ動きを示したはずです。経営が悪化していることは判っていたと思いますが、まさか破綻までいくとは予想できなかったということでしょう。 だから驚いたように、そこから金価格が物凄い勢いで上昇していきます。ところがこれも900ドルあたりで終わりました。もしかするとマーケットは、また次の時点でこれが続くということを見ていなかったのではないでしょうか。そして金価格は、700~750ドルあたりまで下がります。

これでもう終わりかと思いきや、「2009年2月27日 シティグループ実質国有化」に向けて上がっていきます。それでまた1,000ドル越えたましたが、これはマーケットが明らかに読んでいたということでしょう。

注目すべきは、「2008年11月5日 米国第44代大統領にオバマ氏選出」です。 今回の金相場で、2回目の1,000ドル越えの起点となった出来事は、驚いたことにこれでした。そこから不安が広がっているということです。 そこから金価格は上がりましたが、逆にニューヨーク・ダウは、ここを契機にさらに下がりました。米国大統領選挙の日、ニューヨークは400ドル下げ、今年の1月20日オバマ大統領の就任式の日に300ドル下げています。しかも、その間に10%以上下がっている。 つまりオバマ氏が米国大統領になるということが決まってから、株は下がり続け、金は上がり続けている。これはいったい何を意味しているのか?

一言でいえば、現時点ではマーケットはオバマ政権に「No!」と言っているということです。 そう判断せざるをえません。 報道されていることとマーケットの動きはまったく違います。 報道では、「オバマ氏が誠実な人柄だから経済を立て直してくれそうだ」と言われていますが(私もオバマ氏は誠実そうだとは思いますが)、しかしマーケットの動きは真反対だということ。これを投資家は見逃してはいけません。

事実、「政権交代で株価が何とかなるだろう」と言われていましたが、すでに裏切られていますよね? それはオバマ氏が怠けてそうなっているわけではありません。 それは如何ともしがたいマーケットの判断であり、それが実態だということです。 オバマ氏が大統領に就任して以来、金相場はまた新しいステージに入っていると思います。 だから1,000ドルを越えたのだと見るべきでしょう。

そしてシティグループが実質国有化され、「この後、金価格がどうなるのか?」が経済危機の実態を表しているという見方ができるのではないでしょうか。 最近、「恐怖指数」が注目を浴びていますが、われわれ個人投資家も含めて取引しているものではありません。それよりも金価格が重要だというのが私の考えです。

講師紹介
天海 源一郎
ビジネス・ブレークスルー大学院大学 株式・資産形成講座講師
株式ジャーナリスト/個人投資家/フリープロデューサー
天海 源一郎

3月12日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第87回 『世界のマネーフローに異変が・・・』

「経済統計」というのは「過去のデータ」なので「今がわかる」わけではありません。ましてや、経済統計によって現在の経済状態が変化することもありません。つまり、過去のデータによって株式相場や為替相場などを動かすことはないのであり、その意味では経済統計は相場と関係がないといえるでしょう。

しかし、「相場予測」というのは常に推測の中で行うので、そこには「不確実性」というものが否応なく入り込んでしまいます。その不確実性の部分において投資家の思惑が入り込み、相場に反映されるため、不確実な事柄が経済統計によって「確実なデータ」として示されると、それまでの推測が一気に修正されることになります。そのような修正過程が「相場の織り込み」という作業といえます。

したがって、「市場参加者がそれまで推測していた経済状況」と「実際の経済統計によって考えられる現実の経済」との間に大きな隔たりがなければ、相場は大きく変化しないことになります(ここで「推測している経済状況」のことを「コンセンサス」といいます)。これを「相場は織り込んでいた」というように表現します。

他方、市場のコンセンサスが経済統計と大きく異なると、市場は"本当の現実"を織り込んでいないことになるので、大きな変動が起きることになります。

このように「経済統計自体が相場を動かすのではない」ので、経済統計だけを眺めていても相場を理解することはできません。つまり、相場を理解するには市場が経済統計を「どのように見ているのか」を知ることが大切であり、その部分がないと、どのような経済統計も単なる「過去のデータ」に過ぎません。

そういう意味で、先日(3/18に)発表された米国の国際収支統計を見てみしょう。

経常収支の事前予測(コンセンサス)は「▲1371億ドル」だったものが、実際には「▲1345億ドル」でした。ほとんど変りませんし、むしろ、改善しているくらいです。したがって、上述から言うと、この統計は市場に織り込み済みであり、大きな変動を引き起こすことはないと考えられます。

しかし、米国時間の18日以降の為替レートは「ドル安傾向」が明確です。今回のドル安は対ユーロだけでなく、対円でも起こっています。

とはいえ、言うまでもないことですが、為替レートは一つの経済指標だけで変動するものではなく、また、政治状況なども大きく作用します。実際、18日以降のドル安は、オバマ大統領の経済対策に対する期待の薄れやAIGの役員報酬問題などが大きく関与していると思われるので、国際収支統計による部分は極めて限定的であるとも考えられます。

けれども、ここで「国際収支統計」という場合、その中身は「経常収支」だけではありません。というよりも、むしろ、米国の国際収支統計は資本収支の方が重要であり、世界的なマネーフローを観測する場合には、まず、米国の資本収支を確認すべきであるといえます。

国際収支=経常収支+資本収支+外貨準備高増(‐)減(+)=0

この式が国際収支統計の基本方程式ですが、ここで米国の通貨は世界の基軸通貨ですから、外貨準備の問題はあまり議論されません。したがって、問題になるのは「経常収支」と「資本収支(主に「対外資産の増減」および「負債の増減」からなっています)」になります。表面的には、上述の通り「経常収支(というよりも「経常赤字」)」がよく問題になるのですが、実際には、米国は自国で必要とする資金をはるかに上回る資金流入があり、これは長い間続いているので、経常収支の動向自体はファイナンスという意味で大きな問題ではないのです。

つまり、経常収支の面では、米国は常に多額の赤字なのですが、そもそも米国には自国が必要とする資金額よりも、はるかに多い資金が流入をし続けていたので、米国自身が資金的に目詰まりする可能性は少なく、ドル相場に直接影響がある事態にはならないと考えられていたのです。しかも、米国国内にとって必要となる以上の資金は、米国から他国への資金流出として、たとえば中南米やアジアなどに流されることになり、世界的なマネーフローを形成していたのです。言わば、米国は世界のマネーフローの「ポンプ」として機能しているのです(日本、欧州から資金を調達し、一部を米国内で使い、残りの大半を中南米やアジアなどに流していたことになります)。

したがって、国際収支を見る際には、資本収支で「米国への資金流入が多額である」ということを確認する必要があることになります(ここで潤沢に資金が入っていれば、経常赤字が多くても問題が少なく、ドル相場の安定が維持されることになります)。

ところが、リーマンショック以降、この図式が大きく変わったことが、今回の国際収支統計で明らかになりました。





この図表からわかるように、2008年の負債サイドが急速に減少していることわかります。資金の入り(つまり、「負債の増加」)が少なくなったので、その分、資金の出(対外資産の増加)を絞り、米国自身が必要とする資金(経常赤字分)を確保しているという感じです。

しかし、細かく内容を見てみると、2008年第2四半期以降、米国への入りが急速にしぼんできていることがわかりますが、特にリーマンショックがあった第4四半期に至っては、負債が「マイナス」になっています。これは負債が返済に回っているということを意味するので、米国から資金が引き上げられているということになります(これが昨年末の「円高」を誘因したと考えられます)。それをカバーするために、海外投資に回っていた資金を回収し、自国にとって必要となる資金を調達しているという形になっています。

つまり、すでに米国への資金流入はストップし、資金回収をしないと自国ではファイナンスができないような状態にまでなっていたということなのです。これは極めて深刻な事態です。

米国が他国へ供給していた対外資産を回収するということは、中南米やアジアなどの諸国の資金が滞ることを意味するため、再度、どこかでクラッシュが起こる可能性があるということを意味します。そのような事態はどうしても避けなければならないので、中南米等からの資金回収を増やすことは難しいわけですが、といって、以前のように米国に潤沢に資金が流入することも、現状において期待できません。

経済状態が悪化していることから、今までほど多額に資金が必要にはならないので、米国の経常赤字自体は収束する可能性はありますが、対外負債を多額に抱えている状態には変わらないので、各国が資金回収を推し進めれば、米国はそのためにファイナンスをせざるを得ない状態に追い込まれることになってしまいます。

ということで、今後、米国のファイナンスがうまくいかない状態が続くようだと、必然的に「ドルの大幅な減価」の可能性が高まることになるでしょう。

市場が米国の国際収支状況を「どこまで読みこんでいるのか」は不明ですが、2008年第4四半期には極めて緊迫した状態になっていることは確かであり、2009年に入っても、状況が変わっていない、というよりも、むしろ悪化していることから、世界的なマネーフローには、今後、さらに注視していく必要があるとみています。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第93号、いかがでしたでしょうか。

長期投資を考える際に着目するポイントの一つに「信託報酬の安さ」がありますが、ここを重視した時にまず思い浮かぶ投資商品に、ETF(上場投資信託)があると思います。

日本では2000年代に入ってから、投資商品やセクター別にその数が増えつつあり、現在では60本以上を数えるほどになりました。

更にアメリカではその10年ほど前からETFの取引が行われ、今は総数700本、アメリカ以外の国でも総数700本のETFが取引されているそうです。

実際私の近くにも、ポートフォリオの大部分をETFで組成している友人がいます。

欧米のように今後日本でもETFの数が増えてくれば、ETFという形を通じてあらゆる金融商品が株式市場だけで買えるようになる日も近いのかも知れません。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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