話題の「VIX(恐怖指数)」よりも、投資家が金価格に注目しなければいけない理由
現在の世界的経済危機は、「これからどうなるのか?」と聞かれても正直誰も判りません。
唯一判っているのは、「いま悪い状態にある」ということだけです。
そして「もしかするとよくなるのではないだろうか...」という期待と、「さらに悪くなるのではないだろうか」という恐れが混在している。それが現在の状況です。
当然、政府や当局サイド、企業も今よりも悪くしたいと考えている人はいません。それでも悪くなる時は悪くなる。それが現実です。
「それをどう見ればいいのか?」は、この会社がこうなったらこうだとか、そういうことでは現実は判りません。たとえホワイトハウスにいる人達でも判らないでしょう。
では何で見ればいいのか?
それは「マーケットで見る」しかありません。
それがみんなの"総意"だからです。
そして私自身が、今回の経済危機を非常によく反映していると思うのが「金価格」です。この相場を振り返ってみると、非常に面白いことが判ります。
金価格は「金そのものが価値を持つ」という理屈において、究極的な混乱の時に買われるという傾向があるからです。だから相場が動くのです。
参考にするのは、ニューヨーク金先物市場の先切りを繋いだチャート(昨年3月14日~今年2月20日)です。
まず2008年3月14日、「ベア・スターンズが破綻し、JPモルガン・チェースが買収」した時に、金相場が初めて1,000ドルを越えました。1,000ドルという達成感がありますから、その後は15%近く下がり、その後また1,000ドル近くまで戻っています。
しかし今度は、1,000ドルを越えませんでした。
その失望感によって、750ドル近辺まで下がります。私はここで金相場は一回終わりを迎えたなと思いました。
その後の2008年9月15日、「リーマン・ブラザーズ破綻」が起きました。
金価格は、前のベア・スターンズ破綻のところから下がっていますから、マーケットはリーマン・ブラザーズの破綻を予想していなかったということです。
予想できていたのならば、ベア・スターンズ破綻の前に金価格が上がってきていたように同じ動きを示したはずです。経営が悪化していることは判っていたと思いますが、まさか破綻までいくとは予想できなかったということでしょう。
だから驚いたように、そこから金価格が物凄い勢いで上昇していきます。ところがこれも900ドルあたりで終わりました。もしかするとマーケットは、また次の時点でこれが続くということを見ていなかったのではないでしょうか。そして金価格は、700~750ドルあたりまで下がります。
これでもう終わりかと思いきや、「2009年2月27日 シティグループ実質国有化」に向けて上がっていきます。それでまた1,000ドル越えたましたが、これはマーケットが明らかに読んでいたということでしょう。
注目すべきは、「2008年11月5日 米国第44代大統領にオバマ氏選出」です。
今回の金相場で、2回目の1,000ドル越えの起点となった出来事は、驚いたことにこれでした。そこから不安が広がっているということです。
そこから金価格は上がりましたが、逆にニューヨーク・ダウは、ここを契機にさらに下がりました。米国大統領選挙の日、ニューヨークは400ドル下げ、今年の1月20日オバマ大統領の就任式の日に300ドル下げています。しかも、その間に10%以上下がっている。
つまりオバマ氏が米国大統領になるということが決まってから、株は下がり続け、金は上がり続けている。これはいったい何を意味しているのか?
一言でいえば、現時点ではマーケットはオバマ政権に「No!」と言っているということです。
そう判断せざるをえません。
報道されていることとマーケットの動きはまったく違います。
報道では、「オバマ氏が誠実な人柄だから経済を立て直してくれそうだ」と言われていますが(私もオバマ氏は誠実そうだとは思いますが)、しかしマーケットの動きは真反対だということ。これを投資家は見逃してはいけません。
事実、「政権交代で株価が何とかなるだろう」と言われていましたが、すでに裏切られていますよね?
それはオバマ氏が怠けてそうなっているわけではありません。
それは如何ともしがたいマーケットの判断であり、それが実態だということです。
オバマ氏が大統領に就任して以来、金相場はまた新しいステージに入っていると思います。
だから1,000ドルを越えたのだと見るべきでしょう。
そしてシティグループが実質国有化され、「この後、金価格がどうなるのか?」が経済危機の実態を表しているという見方ができるのではないでしょうか。
最近、「恐怖指数」が注目を浴びていますが、われわれ個人投資家も含めて取引しているものではありません。それよりも金価格が重要だというのが私の考えです。
|