オバマ政策で拡大する米財政赤字 史上最悪GDP比13%|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/4/1(水)  
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オバマ政策で拡大する米財政赤字 史上最悪GDP比13%

米国の自己資本規制への対応は、かつて批判した日本と同じ対応だ

17日、米連邦準備理事会(FRB)は3月末に実施する予定だった銀行の持ち株会社の自己資本規制の厳格化を2年間凍結すると発表しました。一部の優先株の自己資本への算入を制限する方針でしたが、導入を2011年3月末に先送りする方針とのことです。

かつて日本も、まだ大蔵省だった頃、BIS規制への対応に四苦八苦していました。厳格にBIS規制の基準を満たそうとすると、日本の銀行は国際的な銀行業務を遂行できなくなる可能性が予想されました。そこで、色々な方便を使い、Tier I、Tier IIといった定義を変えることで、その当時の邦銀経営の実態に合わせたルールに変えて運用したのです。

当時、米国は日本の対応を厳しく批判していましたが、今回FRBが発表した自己資本規制の厳格化を2年間凍結するという措置は、当時の日本と全く同じ対処だと言えます。当面、厳格なルール適用を見送り、自己資本の参入方法を甘くすることで「ルールを現状に合わせる」という形を選択したのです。

旧大蔵省の人たちからすれば「それみたことか」という心境でしょう。あれだけ日本を批判しておきながら、危機に直面すれば「同じことをやるじゃないか」と感じていることと思います。

また、米連邦準備理事会(FRB)は18日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、今後半年間で長期国債を最大3,000億ドル(約29兆円)買い取る方針を決めたと発表しています。



米国の10年国債利回りを見てみると、国債を買う人が少なくなり、2009年1月中旬頃から上昇していましたが、ここに来て落ち込みを見せているのが分かります。この原因となっているのがFRBによる長期国債の購入です。これでは殆ど「タコが自分の足を食べている」状況と変わらないと私は思います。

米国債の資金流入状況については、少し回復の兆しが見えています。昨年の11月には米国債が大々的に売られたので資金流出が激しかったのですが、昨年12月~今年1月になって、それほど大きな金額ではありませんが、再び資金流入に転じています。これは日本や中国などが、若干量の米国債を購入したためです。

現在の金融危機の状況から考えると、将来、米国債がデフォルトする可能性はあると思いますが、その時には日本や中国は大きな損失を被ることになります。貴重な米ドルを支払ってまで購入した米国債が、果たしてそれに見合う投資効果を発揮してくれるのかどうか、今後の展開に注目したいところです。


●米国はさらに厳しい局面を迎える

18日、米商務省が発表した2008年暦年の経常赤字は6,732億6,500万ドル(約66兆1,800億円)となり、前年に比べ7.9%縮小となっています。また、20日米議会予算局(CBO)は2009会計年度の財政赤字は史上最悪の1兆8,450億ドル(約177兆円)と前年度の4倍になる見通しと発表しました。

このままオバマ政策を続けていくと、今後10年間に渡って米国予算の赤字は10兆ドル(約1,000兆円)を超えるという推測が出ているようです。オバマ米大統領が極端なまでの政策を推し進めてくれるのは、有難い反面、米財務省としてはさすがに赤字が膨らみすぎる懸念を拭い去れない状況になってきているのだと思います。

2009会計年度の財政赤字は史上最悪の1兆8,450億ドルということですが、この金額は米GDPの約13%に相当します。日本に当てはめると、GDP500兆円に対して65兆円の財政赤字ということですから、どれだけ大きな規模か想像できると思います。



米国の財政赤字の推移を見ても、5%程度で推移していたGDP比の赤字割合が09年度になって「急激に」跳ね上がっているのが見て取れます。

米国の経常収支は06年を底として反転してはいるものの、大きなマイナスで留まっています。貿易・財政・個人という米国が抱える3つ子の赤字も解消されてはいません。

これらのことから、米国経済は相変わらず厳しい局面を脱しておらず、今後さらに難しい状況を迎えていくということが予想されます。「日本と同じ轍を踏まない」などと言っておきながら、今の米国は結局かつての日本と同じような状況に陥っています。

米国は日本が経験したことを間近で見ていたはずですし、そこから学び得たものもあったはずです。そうした経験を活かした対応をしてもらいたいものだと思います。危機に直面したら、そこから得た教訓を後世に伝えていく、そして後世の人たちはそれを充分に活かしていくということが、改めて重要なことだと感じます。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

3月22日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第88回 『日経平均株価、快進撃!のワケ』

7,000円割れ寸前であったのが、3/10(安値7,021.28円)だったので、そこから営業日にして13日で1800円もの上昇になりました(3/27高値8843.18円)。まさに「快進撃」という感じです。銀行預金などであれば、25年分くらいの利子を3週間足らずで得たことになります。

・・・で、この3週間で"何か"が大きく変わったのでしょうか?

「大きく変わった」というわけではありませんが、まぁ、下記のようなことが投資家マインドを幾分温めたとみられます。


○ 米銀の不良債権処理策が打ち出され、相場に好感されていることから、信用不安がかなり和らいでいること

○ 日経平均が7,000円を割りそうになると株式買取機構の話がクローズアップされることから、当面の株価の「下値が見えた」と感じられること

○ 今回の景気刺激策の目玉だった「定額給付金」および「高速道路料金1000円」等の効果がTV・新聞などの報道で流されていること

○ 追加景気対策についても、途切れなく、ドンドンと打ち出す旨、政府・自民党から聞こえてくること

などなど・・・


とはいえ、何となく「このような材料で高くなるの~」と首を傾げたくなるような内容であり、25%も上がった要因としては如何にもインパクトが「なさ過ぎ」というようにも感じます。

実際のところは、単なる「値ごろ感」に加え、期末を睨んだ「お化粧買い」という実需ベースの買いと、ヒステリックな売りの減少が相場を引き上げたと考えるのが最も妥当なのではないでしょうか。つまり、「これ」と言った買い材料はないものの、「安い(と言うよりも、「安すぎる」)ということからの「買いの増加&売りの減少」という、需給ベースだけの動きといえそうです。

しかし、一般に「株価」とは企業における「将来利益の現在価値の総額」と考えられています。であるのなら、「単なる需給で上昇した」と言うのではなく、将来に対する「明るさ」が相場を引き上げたとみるのが、「経済学的な見方になるのでは・・・」と考えている方も多いのはないでしょうか。

確かに、「買う」と判断した人の多くは「明るさが出てきた」と思っているはずです。でないと、「将来がなお暗い」と思うのであれば、買おうという判断はなされなかったでしょうから・・・

実際、「お化粧買い」というのは"瞬発力"こそあるものの"持続性"はないので、「ここ3週間余りも継続して買い続けている」ということは、「お化粧買い」の域を超えています。まぁ、「提灯(先導役としての「買い」)」として、そのような買いがあったのかもしれませんが、やはり、「お化粧買い」以外の買いが大量に入ってきたことが、今回の上昇につながったとみて間違いないと思われます。

ということは、「将来は明るい」ということ???

いやぁ~、現状の日経平均のPERは予想ベースで100倍を超えています。雇用状況を見ても良くないですし、貿易収支も大幅な赤字になっています。景況感も改善がみられず、物価もデフレ気味に推移しています。状況からみて、現下の情勢はむしろ「悪化している」と考えていい状態にあり、どこをみても「良い」と判断できる材料はありません。つまり、「暗いまま」といえます。

では何故、今、株価は明るさを示しているのでしょうか? これは「株価」の決定メカニズムに答えがあると考えています。

株価は、上述の通り、「将来利益の現在価値の総額」なのですが、ここで「将来」という部分が重要になります。「将来」というのは「永遠」を指すわけではありません。つまり、ある程度「有限の将来」といえます。

「有限」とすれば、「今から3年先までの利益の総額」と「今から10年先までの利益の総額」では、その「総額」は大きく異なりますよね。一般には「3年先まで・・・」よりも「10年先まで・・・」の方が数値は大きいはずですから、「10年先まで読み込める」のであれば。その方が株価としては高くなるはずです(長い期間を「読む」には、経済がある程度「安定している」ということが大切になります)。

つまり、「市場が読んでいる期間の長さ」によって、株価は大きく異なってくるということなのです。

ここで「市場が読んでいる期間の長さ」というのは、市場参加者が予想可能な期間の長さの平均になるので、多くの人が短い期間しか予想できないような時期には、市場も短い期間しか予想できないことになり、(より長い期間読むことができる時よりも)株価が下落することが多いものです。それが、まさに、つい先日の日経平均7,000円割れ間近の時の状態です。

一般に株価は3年から5年先くらいの経済状態およびその時の利益水準を予想して形成されていると考えられていますが、今年3月初旬には、多くの人が目先"半年先の経済予測"さえ難しい状態になっていたので、普通よりも短い(例えば、1年先までを読むのが「精いっぱい」という状態である)ため、株価もそれに合わせて大きく下落をしたということだと考えることができます。

他方、現状では(なお、不透明感は強いものの)、現在行っている設備投資の手控えや雇用調整の効果が"年後半"くらいには現れ、在庫調整も年末までには完了する可能性があると考える人も出始めていることから、早ければ「年末に景気は底入れするかも」と予想する向きも増えてきつつあります。

日本の景気の底が、例えば、今年末であるとすれば、それ以降の景気について(当然、世界的な状況にも左右されますが)来年以降は回復シナリオも作ることができるようになります。

株価というものは、所詮、「予想の産物」ですから、確固たるものはありませんが、多くの人が「長いスパンの予想ができる(つまり、経済的に安定してくる)」ようになれば、予想できなかった時期よりも、株価は高い水準になって当然といえます。これは特に「材料」というものがなくても、何となく「前が開けた」というムードだけで、株価が一変するものなのです。

確かに「予断を許さない」という感じではありますが、4月新年度を迎え、経営トップやエコノミストなどが様々な将来予測をいろいろと出してくるシーズンになります。そこで出てくる予想を手掛かりに投資家も「予想できる期間が長くなる」ことから、株価を引き上げる可能性も否めません。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第94号、いかがでしたでしょうか。

先週の土曜に、知り合いを通じて英会話サークルに参加して来ました。

自己紹介タイムで自分の番がまわって来たので、仕事で資産形成を学ぶプログラムを運営していることを説明しようとしたのですが、個々の単語は分かっていても実際には言いたいことの半分くらいしか伝えることが出来ませんでした。。

英語も資産形成も、上達のコツは経験の積み重ねあるのみ!

そう自分に言い聞かせてこれからも頑張ろうと思いました。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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