金や原油が直面する、需給関係以上の価格変動要因|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/4/8(水)  
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本文タイトル
金や原油が直面する、需給関係以上の価格変動要因

NY金価格は、2008年3月17日に史上最高値の1,033.9ドル/トロイオンスを付けました。このときは、ベアスターンズ証券の株価が急落して取り付け騒ぎが起こり、JPモルガンチェース銀行に1株2ドルで買い取られたときです。NY金価格が二度目に1,000ドルを超えたのは2009年2月20日の1,007.7ドルです。このときは、全米最大の保険会社AIGが9兆6千億円という史上最大の損失を計上し、米国政府は4度にわたりAIGを救済、支援規模は約1,800億ドルに膨らんだときでした。

また、シティーバンクの優先株250億ドル分を米国政府が普通株に転換して、36%の株主となり、事実上の国有化が行われた時期でもありました。こうした金融不安から、NY株価は8,000ドルから7,000ドルを割れるまで急落しました。

サブプライムローン問題に対処するためFRB(米連邦準備理事会)が10回にわたってフェデラルファンドレートを引き下げ、5.25%から0.0~0.25%に利下げしたため、急激なドル安・ユーロ高となりました。それと共にNY金価格は上昇しています。



NY金価格が二度目に1,000ドル超えたときは、ドル高になっていたのですが、米国株価が安くなったことに、金価格は反比例しています。


いずれも米国の金融不安が金価格を高くしたと言えましょう。ということは、今後の金価格を占うためには、米国の金融不安がどうなり、米国株価がどうなるかという見通しと裏腹の関係になるでしょう。つまり、株価が底を打ち、今後上昇する気配を見せれば、金に逃避していた資金は金を売却して引き出され、株式投資や債券投資に回るでしょう。

一方NY原油価格は、米国の金融不安が世界の実体経済に影響を与え、個人消費や鉱工業生産が低迷するとの見通しから、2008年7月11日の147.27ドル/バレルを天井に2009年1月15日には33.2ドルと77.5%下落しました。この値下がりに対処するために、OPEC(石油輸出国機構)は2008年9月から3度にわたり420万バレルの減産を決議しました。しかし、2009年の2月までに実際に減産されたのはその約8割です。減産が守られていない理由は、価格が4分の1以下に下落し、販売量も激減している産油国では、これ以上減産して国家収入が減ることに耐えられないためだと思われます。そして3月15日のOPEC総会では更なる減産は見送られました。

とはいえ、OPECによる2009年の原油需要の見通しは8,460万バレルです。この見通しはIEA(国際エネルギー情報機関)やEIA(米国エネルギー情報局)とほとんど変わりありません。ところがOPECによる非OPECの2009年の生産量は5,550バレルになると言います。これは旧ソ連邦やブラジルの増産によるとしています。そうなるとOPECに必要な生産量は2,910万バレルとなり、2月の生産量の2,803万バレルは、それをかなり下回っていることになります。OPECの見通しはEIAと少し異なっていますが、いずれにせよOPECの減産が本当に守られるとすると、需要がかなり減ったとしても、2009年の原油需給はそれほど緩まないことになります。

ただ、最近の金や原油の価格はこうした需給状況に関係なく、世界的な経済不安に大きく影響を受けていますので、あまり需給にとらわれない方が良いかもしれません。

そこで気になるのは世界の景気はどうなるかということです。一言で言うと、かなり悲観的でしょう。一時株価が盛り上がったので、ネガティブな情報に市場は飽き飽きしたのかと思ったのですが、更にマイナス要因が目白押しです。一つはご存知の自動車産業の問題ですが、GMとクライスラーが破綻すれば300万人の失業者が追加されます。かといって両社の古いタイプの車が売れる見込みは薄いでしょう。

もう一つの爆弾は、米国の商業不動産価格の値下がりによる不動産融資の焦げ付きの始まりです。日本のバブルはもっぱらこの問題でしたが、米国金融界は、その問題の前に、サブプライムローンという不良債券(証券化されたことによる問題なので、「不良債権」の問題ではない)問題で手ひどい打撃を受けています。オフィスビルや商業施設を担保にした借入れは、不動産価値の下落により担保割れとなっており、3月は7,000億ドルの不動産融資の1.8%が不良債権化し、過去数十年で最大だといいます。土地価格の下落は1990年代のそれを下回っていると言われ、全米700行の銀行がこの問題を抱えることになるだろうといいます。

日本の1月・2月の鉱工業生産指数も新聞等でそのグラフを見ると、急激な落ち込みに唖然とします。日本の景気は1973年のオイルショック時以上の落ち込みとなっています。中国やインドなど新興諸国による景気浮揚策が期待されますが、その余波が訪れるまでには未だ時間がかかると思います。

そうなれば、金価格は金融不安と共に上昇し、原油や非鉄金属、プラチナなどの工業用素材価格は景気の低迷と共に下落するでしょう。そして株価が底を打って景気回復の兆しが見えれば、それぞれ逆の動きとなると思います。




講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学 株式・資産形成講座講師
株式会社フィスコ コモディティー代表取締役社長
近藤 雅世

4月26日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、構成したものです
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第89回 『このようなボラタイルな相場で"長期運用"をするためには・・・』

3月中旬から日経平均株価は快進撃を続け、底値からは2,000円近い上昇になっています。足もとの実体経済は、決して「良い」とは言えませんが、とりあえず、「どうなってしまうのだろう」という不安自体は少し薄らぎつつあるので、先行きに対して(良い意味でも、悪い意味でも)見通せるようになってきました。それゆえ、今まで多大に付いていた株式に対するリスクプレミアムが小さくなり、その分、株価そのものは高くなったのだと思います。

確かに冷静に考えてみれば、何となく"安い"ような気がしますが、といっても日本だけが安いわけではなく、どの国も"スタートライン"に戻ったような株価水準ですから、ここから投資をするのであれば、最も成長率の高そうな国(例えば、中国やインドなど)を選び、その国の産業から銘柄を選ぶのが効果的なのかもしれません。そうすれば「将来」ここで仕込んでおいた株式等が「大輪の花を咲かせる可能性が高い」ので、現在の低水準の株式市場は「非常に魅力的な相場である」と考えることもできるわけです。

つまり、難しい時代ではありますが、逆にいえば、このような時こそチャンスであり、勉強の甲斐がある時代ともいえます。

とはいえ・・・

成長率が高い国、例えば、BRICs諸国などから選ばないと「ダメ」ということではなく、場合によっては新興国よりも「綺麗で大きな花を咲かせてくれる"株"」が日本市場にもあるかもしれません。将来のことですから、これだけは全くの未知数です。そういう意味では「右も左もわからない外国の企業」を探すよりも、身近でよくわかる日本の企業をじっくり研究し、この「100年に一度」といわれる"チャンス"を活かせば、予想以上の成果が上がるかもしれません。

というわけで、ここでは(別に外国市場でもいいのですが・・・)「日本市場をターゲットとして銘柄選定を行う」とした場合のことを考えてみましょう。本来、このような大きな下げの後に、いち早く上昇すると考えられているのは、一般的な代表銘柄(いわゆる、ブルーチップ銘柄)であるというのがセオリーです。

実際、ちょっと前までの「日本」であれば「優良」といわれる銘柄を「景気の谷」で買い、そして、しばらく保有し続ければ、それなりに上昇し、それなりに資産形成がなされていたのは事実です。しかしそれは、いつまで経っても日本の産業構造が変わらず、輸出中心にあらゆる産業が組まれていたからといえます(「優良銘柄」と言われる銘柄のほとんどが輸出産業に属する企業です)。

ところが、このリーマンショック以降の金融危機によって日本の産業構造は、「輸出主導型」から脱却する可能性が高いと思われ、また、そうでなければ、各国主要国の経済状態が本当に良くなるまでは、日本企業としても輸出で実績を高めることができないことから、従来型の優良銘柄が「いの一番に相場をけん引する」という可能性は低いように感じます(これは全くの私見ですから、実際の銘柄選定はご自身でお願いいたします)。

そういう意味では、今までの経験則を一旦クリアにして、今後10年、または、20年先を見据えた時に「何が起こっているか」を考え、それによってプラスになる業種から企業(銘柄)を発掘する必要があると考えています。

では、「それ(銘柄)」は何??? スイマセン、ご自身で研究してください(汗)

とはいえ、日本国内の企業群の中から長期的な観点で銘柄を選ぶには、今が「最適な時期だ」と思います。なぜなら、日本のような(成長力の乏しい)先進国の中にある企業の場合、新興国並みのリターンを得ることができるのは、実はこのような混乱期をおいて他にないからです。そういうことから、この時期に「買って、少し長めに(10年、とか、20年)持つべきだ」と思いますし、また、そういうスタンスで銘柄を選ぶとすれば、今がチャンスだろうと思います。

しかし現在、少し「先行きが見えるようになった」からといっても、まだまだボラタイルな(つまり、「変動の激しい」)相場ですから、買ってから「すぐに下落」ということも考えられます(しかも、大幅に下落することも少なくありません)。

現状、「将来(例えば10年先に)は非常に有望である」と思っていても、全体の相場が下落方向に推移するのであれば、ほとんどの銘柄は全体と同じように下落方向に推移することが多いものです。そうなるとなかなか安心して「バイ&ホールド(買って、保有)する」ことは難しくなってしまいます。買って下落すると、「目先ではない」と心では思うものの、現実の相場を目の前にすれば、このまま「奈落の底に落ちてしまう」ような気持ちになってしまうのが人情というものです。

このような場合、「新聞」「TV」「ネット」などにおける"株"に関するものは「一切見ない」というのも一つの方法であり、一般に「塩漬け」といわれる状態にしておくのが、もっともポピュラーなやり方といえます。しかしこれだと、ただ資産の目減りを「指をくわえてみている」ということであり、何とも不甲斐ない気分になります(いくら「10年先には上がる」と信じていても・・・)。

このような場合、例えば、先物・オプションなどのデリバティブといわれる商品を駆使すれば、「下げ」方向による損失を軽減することが可能になります。

個人投資家は、一般に、株式・投資信託などの金融商品を"保有する"ということによって資産を形成しようとします。したがって、どうしても「下げ相場」に対してネガティブな構造になっています。しかも、今後、日本を含めて先進国の株式相場というのは、おそらく超長期の罫線を引いたとしても「単調な上昇」にはならないと思われます。つまり、「保有し続ける」というだけの戦略では、資産を十分に"増やす"ことはできなくなる可能性があるといえます。

それは、如何に「良い銘柄」を発掘し、購入しても、全体相場が下落する中では一般にマーケットに引きずられて下落し、本来の「銘柄の良さ」を活かすことができなくなるかもしれないということを意味します。ということは「バイ&ホールド戦略のまま」では、自分の資産価値を増加させることはおろか、保全すらできなくなる可能性さえあるといえます(これはポートフォリオをうまく組んだとしても、全体が下落すると、うまく機能しなくなるからです)。

このように、長期にわたって一本調子で右肩上がりに上昇するような成長国であればいざ知らず、日本のように成熟しきった国で資産形成を行う場合には、臨機応変な対応が必要であり、特に「相場が下落する」と予想される時には、マーケットの変動に対して「中立(ニュートラル)」にしておいて、本来の銘柄の「良さ」の部分だけで勝負をするという戦略なども考える必要があることを意味します。とはいえ、そのような戦略を組むには、どうしても「先物・オプションの知識」が欠かせないものになってしまいます。

現状、日本では小泉・竹中政権によって金融の自由化・規制緩和が急速に進み、90年代に比べて飛躍的に先物・オプションが使いやすい状態になっていることから、個人投資家でも少額でいろいろなことができるようになっています。それだけに、逆説のように感じるかもしれませんが、日本で「長期運用をする」のであれば「銘柄の選定力」に加えて、先物・オプションを駆使することが、以前よりも重要になり、大切なものになっていると私はみています。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第95号、いかがでしたでしょうか。

週末に実家に帰ったのですが、とある共済から制度改定の手紙が届いていました。

内容は契約中商品の保障範囲が広がったことと金額が月1,000円程度上がったということ。

安さが魅力の共済だけに、金額改定は少々残念なところですが、大幅な価格上昇無く一般の生命保険にサービスが近づくのは利用者にとってありがたいことです。

金融ビッグバンから10年が経ち、最近ようやく保険会社のセールスパーソンから「いつでも厚めに保険をかけていれば安心」というトークだけでなく、「必要な時期に必要な分の保険だけを」という提案も耳にするようになりました。

どんな提案をされても自分に必要な保険だけを選別できる、そんな賢い消費者に、私達一人一人がならなければなりませんね。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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