米ビッグスリーの現状は今尚厳しい
オバマ米大統領が演説し、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーへの追加支援の最終決断を1―2カ月先送りすることを明らかにしました。また、ニューヨークタイムズが報じたところによると、経営危機に陥った米クライスラーの株式全てを親会社の投資会社サーベラスが手放すことで米政府と合意したことが分かりました。
サーベラスも投資ファンドの割には、情けない限りだと思います。結局、2007年にダイムラークライスラーから9,000億円もの資金を使って買収したのに、見事に高い買い物をしただけになってしまいました。今後、サーベラスから分離するクライスラーをフィアットが救済する動きを見せています。ただ、フィアットにしてもそれほど経営に余裕があるわけではないですから、米政府による補助金などを利用することになると思います。
一方のGMも非常に厳しい状況が続いています。業績推移を見ても、2006年をピークに売上高は減少し続けており、利益に至っては5年連続で赤字です。
40ドルだった株価も、1ドルに届く勢いですから、まさにタッチダウン寸前という状況に変わりありません。
ワゴナー氏は40代の若さで2000年にGMのCEOに就任しましたが、振り返ってみれば、ワゴナー氏がトップになって以来GMには殆ど良いニュースはありませんでした。端的に言えば「散々な結果で終わってしまった」と言えるでしょう。ワゴナー氏の後任は、社長兼COOのヘンダーソン氏が就任しました。ワゴナー氏の元でCOOという立場で一緒に経営に携わっていた人ですから、今のこの追い込まれた状況を打開できると期待するのは、非常に難しいであろう思います。
●オバマ米大統領の真意は、GMを倒産させるのも厭わず
ワゴナー氏の辞任は「ワシントンで政府当局者と会い、GMのCEOを辞任するよう求められたため、これに従った」と自身で語っているように、政府によるGM救済策との交換条件のようなものです。逆に言えば、ワゴナー氏を辞任させた以上、政府はGMを救済せざるを得ないという図式になります。
ただし何が何でもGMを倒産させることはないのかと言えば、「そうではない」ということが今回のオバマ米大統領の演説を聴いていて分かりました。オバマ米大統領は、「オプションの1つとして会社を倒産させることもあり得る」という点について明言していました。
GMに対して存続を懸けた戦略を立案させるために60日間を与える一方で、「すでにつらい譲歩をした労働組合や従業員に、さらなる譲歩が求められるだろう。債権者は、いつまでも政府による救済を期待して粘ることはできないとの認識が求められる」とオバマ米大統領は語っています。
GMの再建計画が成功しなければ、連邦倒産法第11章(Chapter 11)又はさらに厳しい倒産法を適用することも辞さないと私は見ています。そのような状況になれば、当然のことながら労働組合は黙ってはいないでしょう。労働組合側は自らの権利を行使し、しばらくの間大規模なストライキを敢行する可能性が高いと思います。
そこから通常業務を再開するには大変な労力がかかりますし、傷は今よりも深くなってしまうと思います。しかし、それでも価値はあるでしょう。今のGMの状況を見ていると、一度倒産してみなければ労働組合側とまともな話し合いができないのではないか、と私は感じています。
もちろん倒産する前に労働組合との妥協案を模索できる方が良いと思いますが、もしそれが可能ならばすでに実現しているでしょう。こういう点を見ても、ワゴナー氏と共に経営陣に名を連ねていたヘンダーソン氏がCEOになったところで、抜本的な解決策がでてこないというのは容易に想像できます。
おそらくオバマ米大統領は、GMを一度倒産させてから再建するというオプションについて、誰かからアドバイスを受けているのでしょう。先日の演説でも、「何が何でもGMを救済すべきとは思っていない」という気持ちが現れていたと思います。
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