CEO辞任と引きかえの救済策で、GMの倒産は本当に無くなったのか|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/4/15(水)  
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本文タイトル
CEO辞任と引きかえの救済策で、GMの倒産は本当に無くなったのか

米ビッグスリーの現状は今尚厳しい

オバマ米大統領が演説し、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーへの追加支援の最終決断を1―2カ月先送りすることを明らかにしました。また、ニューヨークタイムズが報じたところによると、経営危機に陥った米クライスラーの株式全てを親会社の投資会社サーベラスが手放すことで米政府と合意したことが分かりました。

サーベラスも投資ファンドの割には、情けない限りだと思います。結局、2007年にダイムラークライスラーから9,000億円もの資金を使って買収したのに、見事に高い買い物をしただけになってしまいました。今後、サーベラスから分離するクライスラーをフィアットが救済する動きを見せています。ただ、フィアットにしてもそれほど経営に余裕があるわけではないですから、米政府による補助金などを利用することになると思います。

一方のGMも非常に厳しい状況が続いています。業績推移を見ても、2006年をピークに売上高は減少し続けており、利益に至っては5年連続で赤字です。



40ドルだった株価も、1ドルに届く勢いですから、まさにタッチダウン寸前という状況に変わりありません。



ワゴナー氏は40代の若さで2000年にGMのCEOに就任しましたが、振り返ってみれば、ワゴナー氏がトップになって以来GMには殆ど良いニュースはありませんでした。端的に言えば「散々な結果で終わってしまった」と言えるでしょう。ワゴナー氏の後任は、社長兼COOのヘンダーソン氏が就任しました。ワゴナー氏の元でCOOという立場で一緒に経営に携わっていた人ですから、今のこの追い込まれた状況を打開できると期待するのは、非常に難しいであろう思います。


●オバマ米大統領の真意は、GMを倒産させるのも厭わず

ワゴナー氏の辞任は「ワシントンで政府当局者と会い、GMのCEOを辞任するよう求められたため、これに従った」と自身で語っているように、政府によるGM救済策との交換条件のようなものです。逆に言えば、ワゴナー氏を辞任させた以上、政府はGMを救済せざるを得ないという図式になります。

ただし何が何でもGMを倒産させることはないのかと言えば、「そうではない」ということが今回のオバマ米大統領の演説を聴いていて分かりました。オバマ米大統領は、「オプションの1つとして会社を倒産させることもあり得る」という点について明言していました。

GMに対して存続を懸けた戦略を立案させるために60日間を与える一方で、「すでにつらい譲歩をした労働組合や従業員に、さらなる譲歩が求められるだろう。債権者は、いつまでも政府による救済を期待して粘ることはできないとの認識が求められる」とオバマ米大統領は語っています。

GMの再建計画が成功しなければ、連邦倒産法第11章(Chapter 11)又はさらに厳しい倒産法を適用することも辞さないと私は見ています。そのような状況になれば、当然のことながら労働組合は黙ってはいないでしょう。労働組合側は自らの権利を行使し、しばらくの間大規模なストライキを敢行する可能性が高いと思います。

そこから通常業務を再開するには大変な労力がかかりますし、傷は今よりも深くなってしまうと思います。しかし、それでも価値はあるでしょう。今のGMの状況を見ていると、一度倒産してみなければ労働組合側とまともな話し合いができないのではないか、と私は感じています。

もちろん倒産する前に労働組合との妥協案を模索できる方が良いと思いますが、もしそれが可能ならばすでに実現しているでしょう。こういう点を見ても、ワゴナー氏と共に経営陣に名を連ねていたヘンダーソン氏がCEOになったところで、抜本的な解決策がでてこないというのは容易に想像できます。

おそらくオバマ米大統領は、GMを一度倒産させてから再建するというオプションについて、誰かからアドバイスを受けているのでしょう。先日の演説でも、「何が何でもGMを救済すべきとは思っていない」という気持ちが現れていたと思います。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

4月5日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第90回 『「人の行く、裏に道あり」というけれど・・・』

現状、実体経済が「非常に良くなった」というわけではありませんが、株価だけは景気の良い状態が続いています。そのため、「4月危機説」「5月危機説」など「また下がる」系の話がいろいろと出ています。真偽の程は定かではありませんが、2か月足らずで3割近い上げになっているのですから「そうなるかも」と思うのも仕方のないことでしょう。

実際、今後、大きな下げが起こるかもしれませんが、一般的な相場で言えば、「もう」は「まだ」也で、軽い(もしかしたら、少し深めの)押し目はあるかもしれませんが、期待(?)しているような下げは起こらないことの方が多いものです(私見です・・・汗)。

この理由は至って簡単で多くの投資家が「下がるかも」と思っているからなのです。「下がる」と思っている人が多いのに「何故?」と思うでしょうが、それが「相場」と言うモノであり、難しい点なのです(相場はそもそも「天邪鬼なものだ」と考える投資家が多いのもそのためです)。今回はこの「相場の天邪鬼性」について考えてみたいと思います。


◆パニックの理由

まず、今回のような大きな下落が起こった原因について考えてみます。このような大きな「下げ(または「上げ」)は通常の精神状態の中で起こるものではなく、一種の集団的なヒステリー状態によって起こると考えられています。80年代の土地バブルも同じで、「日本の国土は米国よりも狭いので、そのうち、買うことのできる土地がなくなる」と多くの人が真剣にそう思ったことによって引き起こされました。つまり、本来「いつもある」ものがなくなるかもしれないという恐怖に直面すると、人間はパニックに陥り、見境なく皆と同じ行動を取ってしまうという習性があり、その大衆による急激な行動によって、通常では考えられない「パニック」が起こってしまうのです。

「上げ」によるパニックは「買える株がなくなってしまう」というような笑い話のような解説をそのまま信じてしまうことによって「今買うしかない」と多くの人が同時に考えてしまうことによって起こります。「下げ」のパニックも同様に「今売らないとドンドン下落して損失が拡大する(または、保有株の発行企業が倒産する)」と多くの人々が信じ、同時に一斉に売り出すために起こります。

このような状態でパニックになった場合、「価格」は関係なくなり、高騰相場においては「モノ(この場合、株券)が欲しい」、または暴落相場においては「モノをおカネに換えたい」という一心で行動してしまうことになります。こうなると一切の価格的な目処がなくなり、とんでもない値段になってしまいます。これがパニックであり、今回は「とんでもない大幅な下げ」になったわけです。


◆通常の相場

他方、通常の相場ではこのようなパニックは起こりにくいものです。なぜなら、日々刻々と相場は変動しますが、その変動を引き起こす投資家心理は、パニックの時のそれとは大きく異なるからです。例えば、値段に関係なく「売りたい」または「買いたい」という投資家とは、「どうしても今資金が必要だから売りたい」または「持合い関係があり、どうしても買わなければならない」という種の人々をさしますが、そのような人々の数は全体の数からすれば非常に少なく、相場変動の主たるプレイヤーとはならないと思われます。

では、通常相場の一般投資家(主たるプレイヤー)は、どう考えているのでしょうか?

通常相場の一般投資家は「株価」を見ながら投資をします。つまり、価格に関係なく「売ったり」「買ったり」するのではなく、(ある程度のレンジはありますが)この価格だから「買う」または「売る」という行動を取るのが普通です。したがって、「下がる」と買いが入ってきますし、「上がる」と売りが入ってくることによって、パニックに見られるような価格形成(つまり、異常な上昇、または、異常な下落)は起こらないのが通常の相場といわれる状態です。

ここで全ての投資家が、ある株価よりも「下がったら、必ず買う(または、「上がったら、必ず売る」)」ということではありません。投資家はそれぞれ「こうなったら買おう(または「売ろう」)」という価格を持っているものの、その価格は投資家それぞれまちまちなので、同じ価格であっても「買いたい」という投資家と「売りたい」という投資家が存在することになります。だから、それらの間で取引が成立するのです。


◆「上がる」「下がる」の裏側

とはいっても、ここで注意が必要なのは、上げ相場の場合ある水準で「買える」のは売りの株数までしか買えない(下げ相場の場合には買いの株数までしか売れない・・・但し、以下、上げ相場のみで記述します)ということです。つまり、1000円で買いたい株数が10万株あっても、1000円で売りたい株数が1万株しかなければ、1万株しか買えません。残りは「1000円で買いたい」ということで買い指値(として9000株)が残っているだけです。こうなると「どうしても買いたい」と思う一部の人は、値段に関係なく買う(成行き買い)という行動に出るか、または、1010円で買いたいということで上の値段で買うという行動に出ることになるでしょう。そうすると、株価自体はその一部の買い手によって1010円まで引き上げられますが、1000円で指している人は買えなくなってしまいます。

このように「買いたい」という人がいくら多くても、現値(1010円)では買えないことから、買い圧力だけが増加する時があるのです。しかも、「本当に上がり続ける」と多くの投資家が思うような状態であるなら、1000円で指している人の大半が値段を切り上げて1010円(または、それ以上)で買うはずですが、実際には「また下がる」と思って、あくまでも「今は買えない1000円」と言う値段で待つことが多くなります。

上げ相場において「また下がる」と思う人々は、上記のように「買う気満々」だけど「下がった時に買いたい」という人々なのです。そして、このような人々は上げ相場において増加し、「下がる」と信じて、今は買えそうにない値段で指値を入れて待つことから、ドンドンと下値に「買い指値の株数」が増加することになります。逆に売りたい人々も「下がるかも」という恐怖感があるものだから、あまり高い値段で指さず、現値近辺で売れるのを待つことが多くなります。したがって、上方向の売り待ちの株数は少ない状態になります。

このような状態で「当然下がる」というような悪材料が出た場合、下落はするものの、買い待ちしている指値によって吸収され、予想されたほど下がらない時があります。これを「織り込み済み」などと表現します。他方、それほど「良い」とは言えない材料でも、売り待ちが少ないため、ちょっとの買いで値段が飛び、予想以上に上昇する時があります。一般に「サプライズ」というのがこれに当たります。

このように上げ相場において多くの人が「もうすぐ下がる」と思っている場合(今のような相場ですね)、実際には買い待ちをしていることが多いため、皆が予想しているほどは下がらないものなのです。他方、上方向には「高値で指しても売れそうにない」と思うため、目立った売り物も存在せず、ちょっとした好材料で予想以上に上昇する場合が多いのです。常に下方向に恐怖感がある中で、適当な押し目を作りながら相場が形成されている場合、ショック的な下落はほとんど起こらず、徐々に上昇し続けるということが多いのも、このような仕組みになっているからなのです。これが人々の目には「天邪鬼」に映るのです。

今後注意すべきは「総強気」になった時です。あの人もこの人も「手のひらを返した」ように相場に良いことをいうようになれば、その時はすでに「バブル」ですから、そこで乗るのは危険といえます。昔からよく言われる株の格言に「人のゆく、裏に道あり、花の山」というものがあります。格言ではありますが、実際の人間の心理を突いたものであり、「下がる」「下がる」と皆が言う時は、逆に「買い場」なのかもしれません。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第96号、いかがでしたでしょうか。

週末に、とある投資家の集いがあり、参加してきました。

そこではみな個々に最近の投資成績や考え方などをシェアしあうのですが、中にお一人、非常に辛い体験をされた方がいらっしゃいました。

その方は2007年にサブプライム問題が起きた際、馴染みの証券マンから「これだけ株価が下落すれば投資のチャンス」と言われ、退職金全額をファンドに預け、翌年のリーマンショックで一気にその3/4を失ってしまったというお話をされていました。

実際景気の底がどこかということは誰にもわからないわけですが、いくら割安が明らかであっても更なるマイナスを考慮した投資の仕方は常に大切です。

運用収入は人生を豊かにしてくれるものですが、その一方で「投資は余資で」が改めて身にしみました。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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