過去100年間のリセッション(景気後退)データが示す現在の経済悪化レベル|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/5/13(水)  
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過去100年間のリセッション(景気後退)データが示す現在の経済悪化レベル

リーマン・ブラザーズ・ショック後も、「株価下落、5カ月サイクル」は生きている!? 要注意は6月末!!

 世界の株式市場(米国、欧州、日本)で「1週間単位の出来高」が、400億株を超えるとマーケットはグラグラし始める。そして500億株を超えるとマーケットは下がり始める。600億株を超えるとマーケットは急落する。 下のグラフを見ていただくと、それが毎回、5カ月おきに繰り返されていることが分かります。


 1回だけ、このサイクルが崩れたことがあります。 それが昨年9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻した時です。156年間続いた会社が破綻したことにマーケットが驚き、この5カ月サイクルが崩れて、4カ月サイクルになりました。  しかし、その後また、いつものスタンスを取り戻し、それから5カ月後の今年2月9日にマーケットが破綻しました。その日からマーケットが下落し、しかも下落幅がリーマン・ブラザーズの時と同じ24%。5カ月ルールは、まだ生きていると言えるでしょう。  そうなると、これから5カ月後の「今年7月9日にマーケットが下落」する可能性が高いのではないでしょうか。 前後1~2週間のズレがありますから、おそらく6月末から7月初頭にかけてマーケットがグラッとくる可能性があるということを念頭に入れておいて下さい。

 欧州の機関投資家と話をしていると、「おそらく欧州から起きるのではないか?」という意見がよく出てきます。

そう考える理由としては、以下のようなことが挙げられます。

○匿名性排除により、スイスから資金がすごい勢いで流出していること
○リヒテンシュタインのように50年以上の歴史を持つオフショアがつぶれかかっていること

 実際にスイスの隣の「アングリア」というオフショアが破綻しました。それくらい、今、オフショアから資金が引き上げられていて、関連するスイス大手銀行が取り付け騒ぎ寸前になっています。こうした状況は、意外とマーケットでは知られていません。ちょうど先週くらいに、やっと金融機関の名前が出始めているといった状況です。

おそらく、それが6月末以降にグラッとくるかもしれないと私は予想しています。

 しかし今回は、(表現が悪いかもしれませんが)シティバンクが破綻するわけではなく、スイスの大手銀行が破綻するわけですから、「マーケットは一瞬クレバス的な下落はするけれども回復するタイミングは早い」のではないでしょうか。  とはいえ、8,000円割れや7,500円のような一瞬ヒヤッとする下落が、6月末あたりに起こる可能性はあるかもしれません。例えばGMのリストラのピリオドが6月末であり、およそ50~60万人のデトロイトの従業員が解雇される見込みです。非雇用者が増加すると、やはりマーケットは下落します。  デトロイトの大きな解雇、スイスのオフショアマーケットが大きな変革期を迎えている、などのインパクトがちょうど6月末近辺に起こり、マーケットの下落が生じる可能性はあるのです。


■過去100年のリセッション時の期間/株価下落率/GDPなどから世界経済を読み解く

 ファンダメンタルだけを見た場合、日経平均が7000円を割るとは思えないことを示すのが、私がまとめた「過去100年のリセッション時の期間/株価下落率/GDP/失業率」のグラフです。



1950年までのデータはさまざまな国際機関が持っていますが、それ以前の1930年代・1940年代はIMFも設立されておらず、最後にたどり着いたのが国連日本本部の持っていた「国際連盟による、1920年代からの世界のGDP成長率平均値」という紙ベースのデータでした。  ただし国際連盟なので基本的には先進国のみ、しかも当時は加重平均ではなく単純平均しか行っていません。このグラフの数字はすべてプラスになっておりますが、それは1920年代のデータに合わせる必要があったからです。今年のデータは、実際にはマイナス1.5%の予想ですが、このグラフではプラスになっています。なぜそうなったかというと、単純平均のデータしかない1920年代にベースをあわせたため...ということをあらかじめお断りしておきます。

 しかし、逆に言うとベースを合わせていますので、ギャップや影響力の違いは同じです。 よく言われているように、もし現在の世界経済が大恐慌なみに悪化しているのならば、「2007~2008年のGDP成長率ボトムが0.71」という数字は強すぎます。  つまり、現在の世界経済が大恐慌と同じくらい悪いとは言えないと私は思います。  失業率も1920年代が25.4%だったのに対して、中国の失業率がなかなか上がらないおかげで、いま世界の失業率は5.7%です。1920年代には存在しなかった中華人民共和国が、いますごく世界に影響を与えており、おそらく来年には日本のGDPを抜くでしょう。 その国がこれだけ経済成長を示していると、世界経済はなかなか悪くならないと言えるのではないでしょうか。

 ただし0.71であっても、これはかなり悪い数値です。第4次中東戦争とレーガンショックの中間くらい悪い状況だと思います。  第4次中東戦争と言ってもピンとこないかもしれません。 私は当時高校生でしたが、まずまずの経済環境だったはずのクラスメイトが学校の制服や教科書が買えない。それくらいに経済が厳しくなり、日本の景気はどうなるのかという不安が広がった時代でした。  1981年のレーガンショックの時は、GDP成長率ボトムが0.97で今よりはいいのですが...。 私は当時アメリカに住んでいたのですが、夜10時以降のテレビ放送ではCMがほとんどなく(スポンサーがいない)、代わりにテレビでは夜中まで地域の職業安定所の電話番号を告知するCMが流れ続けていました。それくらい当時の米国は景気が悪かったのです。  その当時よりも、現在のアメリカの経済状況のほうが悪いということは念頭に入れておいたほうがいいと思います。

講師紹介
大前研一
バークレイズ・キャピタル証券株式会社
チーフストラテジスト
宮島秀直

4月24日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第93回 『「箱モノ」のための追加補正って、本当に必要なの?!?!』

今年のGWは高速道路1000円の効果もあり、例年以上に行楽地が賑わったようです。帰りの渋滞は問題ですが、人が外出すれば、それなりに消費をするでしょうから、「消費喚起」にはつながったと思います。ということから、(正確には4-6月期のGDP統計をみなければなりませんが)麻生さんの狙いは当たったということになりますね。

とはいえ、これはあくまでも"一過性"であり、持続性があるとは思えません。今のような不景気ですから、たとえ一過性でも馬鹿にはできませんが、景気の押し上げ効果(というか、落ち行く景気を何とか食い止める効果)はあまり期待できません。そのため、このような単発的な景気浮上策しか持たない場合には、止めどなく政策を打ち続けなければならないということになります。

つまり、「ビタミン剤を飲んで一時的に元気になっている」に過ぎないので、時間が経てば、また元気がなくなり、「もう一本」という形になってしまいます。

というわけで、今回、またもや「追加景気対策」というものが発表され、今まさに国会で審議がされています。

誤解を恐れず内容についてお話すれば、「つまり」は、「箱モノ」をつくり一過性資金を供給するとともに「基金」によって必要に応じておカネを"持続的に"流していく、という仕組みになっているようです。したがって、この場合の「箱モノ」は何でもいいわけで、各省のお手盛り的な施設(国民的には、どう贔屓目(ヒイキメ)に見ても「バラマキ」としか言いようのないモノ)をつくることにして、一過性資金の供給に役立てたいということになっているのでしょう。

まぁ、それでも「国内総生産(国内総支出)=民間消費+民間投資+政府支出+純輸出」なので、政府支出だけでも常識を逸した増加をすれば、その期は何とかなる"かも"しれません。そのような気持なのか、やはり、"選挙"なのかは不明ですが、ともかく、政府資金により、形だけはGDPを押し上げる可能性はあるといえます。しかも、基金があるので、その後は追加対策をしなくても、必要に応じて資金が流れる仕組みをつくっていることから、民間が立ち上がるまでは、政府主導でGDPの下落を食い止めることは、ある程度、できるということなのでしょう。

けれども・・・

「政府支出だけで浮上させる」というのは、どうみても「正常な姿」とはいえません。「このような経済状態だから異常なこともやらなければ・・・」ということはわからなくはありませんが、といって、その財源は「将来の増税」と明言しているわけですから、迷惑な話ですよね。

今、執行していて、また、追加で行おうとしている政府の対策は、先ほどの「ビタミン剤」の話でいえば、体の調子が悪い人(つまり、日本経済)に対して根本治療することなく、高価なビタミン剤(箱モノなど)を借金で買い、それを飲み続けているようなものです。しかも、借金として必要額以上におカネを借りて、ビタミン剤を大量に買い、冷蔵庫(これが「基金」に当たります)に入れている感じです。

このようなやり方では病気は治りません。根本的に何が必要なのかを考え、また、"自然治癒力"を高めるような治療を施さなければ、病気を治すことはできないのです。

これは経済政策でも同じであり、政府支出をいくらしても、民間側の立ち上がりがなければ、いつまで経っても景気は悪いままです。

通常ならば、輸出がけん引して経済を立ち直らせることが出来ましたが、現状、世界経済全体が悪いので、そう簡単に輸出が回復することはないと思われます(とはいえ、中国経済を当てにしている部分も多いのですが・・・)。

したがって、ここは内需を充実させると同時に、オバマ大統領も絶賛する日本が誇る技術(省エネ技術など)に、さらに、磨きがかかるような方策を打ち出すべきであり、そこでは「目先の景気ではない資金の付け方」というものがあると思います。それを政府が手助けすれば、それこそ、"経済の自然治癒力"が働き、民間から盛り上がってくると思います(といって、今回の予算にあるように「研究会をする施設(つまり、箱モノ)をつくる」のに資金を使ってみても、あまり効果的とはいえないのであり、研究・調査・教育といった分野に直接資金が流れる必要があると思います)。

また「将来に対する不安」を取り除くことも重要だと思います。

育児の資金補助(何故、3―5歳までに限定するのか不明ですが)も大切でしょう。しかし、やはり、介護等の問題は大きいと考えています。介護に携わる人々の平均的な給与では家庭を持つことすらままならないと聞いています。そのような職場環境が持続的だとは到底思えないのであり、その点についての「不安」が国民に浸透しているのではないでしょうか。人は誰しも老いを迎えます。老いに対する不安があれば、消費をせずに貯蓄に回すのは当然です。

年金問題にしても「100年安心」という触れ込みで改革されたはずなのに、舛添厚生労働大臣は「そのようなことを政府は言っていない」とうそ吹いています。

年金・介護などといった「将来の生活にかかわる根本問題」をクリアーにして、本当の意味で「100年安心」という福祉行政を行えば、自然と貯蓄が取り崩され、消費が喚起されるはずなのです。

しかし・・・

今の政府は、年金・介護についてはほとんど手つかず状態のまま、研究・教育にも冷淡な状態で、目先の箱モノ造りのために将来の税金を引き上げようとしています。これでは将来不安を政府が自ら増幅させているようなものであり、消費が喚起されるはずはありません。

「今、株価が上がっているのは、政策が正しかったから」と思っているのかもしれませんが、それは大きな間違いだと思います。今、株価が上がっているのは、政策効果でも何でもなく、パニック的に下落した部分に対する「戻り」に過ぎず、しかも、その株式相場的な安心感は、米国等の状況にリンクしているといえます。

5000円も6000円もした高速代金が1000円になれば、誰しも喜びますし、12000円の定額給付でも、くれるならもらうに決まっています。とはいえ「だから」といって、増税が決まっている状況で、積極的に消費に回すわけはないのであり、そのくらいのことは株式市場としてもわかっているはずです。

今回の追加対策が今国会を通るのか、それとも、野党の攻撃によって成立せず、解散に追い込まれるのかは、今の状態では不明ですが、もし、予算案が通れば、市場としては国債の利回り等に注意が必要になってくるように感じます。

さすがにここで、「ビタミン剤を購入する」ために赤字国債を発行するとなれば、国債の引受け手も当惑するでしょうから、「デフォルト」という不安が一気に高まるものと思われます(実際には「デフォルトはあり得ない」としても・・・)。そうなれば、日本国債に対するリスクプレミアムが上昇し、利回りが高まるかもません。そのようなことが起こると、株式市場にも影響が及ぶことになるので、その点について、今後、大いに注視する必要があると私はみています。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第99号、いかがでしたでしょうか。

ゴールデンウィークに久々日光へ行ってきました。

20年前に行った当時は東照宮内の鳴竜の下で一人一人立ち止まって手を叩き、竜を鳴かせることが出来たのですが、今は係の方が代表して拍子木を打ち、鈴の音に似たその竜鳴音を観光客に聞かせるルールに変わっていました。

その帰り、ふと出口の傍にかかっていた絵馬を見ると「株価が早く回復しますように」との切なる願いが。。。

社の中が幻想的な雰囲気だったせいか、急に現実に引き戻されたような気がしましたが、その瞬間私もつい心の中で同じことを祈ってしまいました。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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