3月の株価上昇は恐慌脱出の始まりか【後編】|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/6/3(水)  
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本文タイトル
3月の株価上昇は恐慌脱出の始まりか【後編】
~日本の金融恐慌脱出に必要な3つのステップとは~

金融恐慌から脱出するために「必ず踏まなければいけない3つのステップ」を徹底詳解!

先週お届けした前編では、今年3月から始まったNYダウの上昇理由について、クルーグマン教授の見解と私の見解とを交えつつ、100年前の過去に起こった恐慌の中に、現状の解決策のヒントとして読み取るべきことがあるのではないかというお話しをしました。今回の後編では、同じく日本で過去起こった金融問題を紐解き、現在の金融恐慌脱出のヒントを探ってみたいと思います。

 実は、私たち日本の投資家は、かなり恵まれています。 "100年に一度の危機"という言い方をよく耳にすると思いますが、今から100年も前のことなんか誰にも判るわけがありません。  しかし日本は、2000年代前半までの不良債権問題など、ほんの少し前に金融恐慌を経験しています。「日本の金融問題はどんな風に起きて、それがどう解消されたのか」を見ることに、金融恐慌脱出へのヒントが隠れているのではないでしょうか。

まず最初に、金融恐慌から脱却するためには、以下のような「必ず踏まなければならない3つのステップ」があることを理解して下さい。


1)金融資産厳格化の動きが始まる
 金融恐慌時には不良債権が出ますが、まず「不良債権がどれぐらいの規模なのか?」を明確にする必要があります。

2)耐えきれず、金融機関が破綻する
 不良化した資産が債権によって押しつぶされることもありますし、現在のシティグループのように実質的破綻はしているものの、国に救済される場合などさまざまな事態が起こります。

3)一方で、不良債権処理が進み、金融機関の業績が大幅改善する
 金融恐慌からの脱出で最重要なのが、この「業績改善」です。 きちんと景気がよくなっていないと、やはり株価は反転しません。しかも景気といっても、景気全体がよくなることではなくて、金融機関の業績がよくなることこそが重要です。


■日本では、資産査定厳格化後に株価が上昇。キーワードは、「金融再生プログラム」

 では次に、日本の不良債権問題の推移と、それがどう解消されたのかを具体的に見てみましょう。重要キーワードは、2002年10月に発表された「金融再生プログラム」、そして「トレンド転換の前には、金融恐慌がある」の2つです。


1)「金融再生プログラム」発表時点では、ルール変更に内外から批判の声
 2002年に発表された金融再生プログラムにより、今までは大丈夫だったものが不良債権化し、急にルールを変えられて不良債権が増えるじゃないかと金融機関とマスコミがかなり批判を行いました。

2)2002年5月には黒字予想だった、みずほ、三井住友、三菱東京、UFJ、りそなの大手メガバンクは、2003年3月期には合計5兆円もの大幅な赤字に転落してしまいました。また株価も、発表当時は1万円台だったものが、2003年4月には7607円(当時の最安値)にまで大幅に下落するなど、それくらい大きなインパクトがあったわけです。

3)それが1年後には、複数のメガバンクが黒字に転換しています。トレンド転換のためには、最終損益の業績改善が必要であり、その兆しが「2003年5月のりそなホールディングス国有化」でした。  ここで重要なのは、「業績が改善した金融機関みずほ、三井住友、三菱東京」と、「業績が改善していないUFJおよび業績がさらに悪化したりそな」の2つのグループに分かれていることです。


 次に、2003年3月末~2004年3月末までの「株価上昇率」を見てみましょう。


株価上昇率は、<みずほ 362.8%、三井住友263.2%、三菱東京128.9%、UFJ 461.0%、りそな 205.3%>という結果になっています。  なんと業績が改善していないUFJがいちばん上昇しており、業績悪化したりそなも株価が上がるという驚きの結果です。もちろん、みずほ、三井住友、三菱東京など業績が改善した金融機関も同じように上がっています。

ここから何が判るかというと、「業績が改善している金融機関、改善していない金融機関があっても株価は全体的に上昇する」のだということです。 このように「金融機関全体を捉えて株価が上がるのか否かを見なければ、将来ビジョンを見つけることはなかなか困難である」。そのことをよく覚えておいて下さい。


講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「デジタルネイティブの時代」 東洋経済新報社 (2009/05)

5月13日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第96回 『何故、今、国債利回りが上昇するの?!?!』

このところ世界的に国債利回りが上昇してきています。これは(各国ともですが)景気の底支えのために財政支出を増やしていることから、その財源として国債発行を増加していることが原因であると考えられます。また、それに関連して、米国債等の格付けが引き下げられるという噂が浮上していることも大きいと思います。

とはいえ、通常「国債」は当該国の通貨建てで発行している限り、デフォルト(利払い遅延や元本の償還が不能)リスクはありません。なぜなら、返済が滞る状態が予想される場合には、政府は「徴税権」を使って増税することにより、返済が可能になるからです。また、中央銀行と連携をすれば、たとえ中央銀行が直接国債を引き受けなくても、市場から中央銀行が国債を買い続けることで借り換えがスムーズに行えることになります。ただ一点、問題になるのは、政府債務残高が高まることによって当該国でクーデターが起こる可能性あれば、その時にはデフォルト・リスクが浮上します(しかし、その点は先進国ではあまり考慮されることはありません)。このような理由から国債流通利回りは、当該国内において「リスクフリー(無リスク)レート」としても機能するのです。

にもかかわらず、国債利回りが上昇をしたり、格付けが引き下げられたりするのは、どういうことなのでしょうか。

確かに、邦貨建てで発行している限り、国債にはデフォルト・リスクは発生しないことになります(クーデターを除いて)。したがって、その意味では日本のように政府債務残高が歴史的にみて「高すぎる」からといっても、それだけの理由で「利回りが上昇する」ということにはならないはずです。しかし(何らかのリスクに伴う)国債利回りの上昇は、当該国にデフォルト・リスクがない場合でも、起こる可能性があるのです。

それが当該国の「通貨価値に対するリスクプレミアム」です。

現代社会において、先進国の「おカネ(当該国通貨)」には、そもそも何の保証も担保も設定されていません。「ある」のは「(国家的な)信用」だけですから、当該国の信用が低下すれば、通貨価値は減価してしまいます。そして、その通貨が減価すれば、当該通貨で建っている債券は為替差損が生じることになるので、誰もが「持ちたくない」と思うようになるのは「理の当然」といえます。

そのため、通貨自体が下落するような国の債券(国債)には、リスクプレミアム(上乗せ金利)が付くことになり、利回りが上昇することになるのです。つまり、国債のデフォルト・リスクに対するリスクプレミアムではなく、当該通貨に対する減価リスクが、国債を保有することに対するリスクになるので、それに対してリスクプレミアムが要求されると考えるのが正しいといえます。

さらに、「国債の増発」とはその裏で「通貨の増発」を意味します。通貨の「量」が増加すれば、当然、通貨の購買力(1単位のおカネでモノを買う力)が低下するため、通貨自体は減価するので、その点からも当該国通貨が売られることになります。そうすると上述の理由から当該国債に対するリスクプレミアムが要求さえることになります。ここで「通貨量の増加」が物価を押し上げるくらいに景気を刺激してくれればよいのですが、実際には、単に銀行部門に資金が滞留することも多く、そうなった場合には、いわゆるホームレスマネー(「利」だけを求めているため、帰るべきところを失ってしまったおカネ)となり、世界をさまようことになります。つまり、おカネが本国から出奔してしまうわけであり、当該国の景気を刺激することなく、通貨の減価だけをもたらすことになってしまいます。

このような現象を「キャリートレード」というのですが、日本でも「円キャリートレード」という事態により、円安が進み、日本国債の格付けも下げられたことは記憶に新しいところです。

では現状は・・・

世界各国で国債増発合戦を行っているので、その点では甲乙つけがたい状態ですが、辛うじて、ユーロ圏では発行量についての条約があり、日本や米国ほどは発行していません。その意味ではユーロは「一歩有利」といえます。他方、日本はそもそもリーマンショック以降の発行量というよりも「もともとの残高自体があまりにも多かった」ことから「国の信頼性」という意味で日本は他の国・地域に対して劣っているということになります。

したがって、各通貨の強さは「ユーロ>米ドル>円」ということになり、日本国債にも通貨下落に対するリスクプレミアムが付き、利回りがじりじりと上昇してきているのだと思います。

ところが、実際の「通貨の価値」という意味では、当該国の対外純資産が重要になってきます。これは、国民全体の対外資産から対外負債を引いたものなので、この値が多いほど、減価する可能性が低いと考えられています。これを基準に考えれば、「円>ユーロ>ドル」ということになります。しかも「日本の国債」ですが、これは日本国内での消化がほとんどであり、他国の保有はかなり限定的です。ということは、通貨価値云々によって、日本国債が売買される心配は非常に少ないということになります。

したがって、国債を保有する上での危険性としては「米国>ユーロ>日本」という序列になっているといえます。そのため、日本国債の格付けは高くなり、米国などの国債格付けが「引き下げられるのではないか」という噂が浮上したのだと思います。

以上のような状況から、デフォルト・リスクはないものの、日本国債も含めて、世界的に(保有に伴うリスクプレミアムが付加されたため)国債利回りが上昇したわけです。

しかし、国債利回りの上昇というのは、国内経済にとって、非常に大きなダメージを与えます。特に、景気が悪い時における金利上昇は、経済に対する悪影響が最も強く出ることになります。というのは、上述の通り、国債利回りは当該国にとって「リスクフリーレート」と考えられているものであり、国内のすべての金利の「ベース」となる金利として考えられています。したがって、国債利回りが上昇すれば、それに伴って、例えば、住宅ローン金利なども上昇する可能性がありますし、設備投資等のための借入金利なども上昇することになるかもしれません。

景気が好調の時であれば、事業収益率の向上を見込めるので、ある程度金利が高くなっても問題は少ないのですが、現在はそのような状態ではないだけに、この上昇分は(住宅ローンの場合)生活費の高騰を意味しますし、(設備投資等の借入の場合)事業によるロスの発生を意味することになります。そのため、特に、低金利であれば「何とかなった」事業であっても、このように国債利回りが高くなる状況においては、事業の継続等が不可能になり、事業からの撤退を余儀なくされる主体が続出することから、さらに景気を押し下げることになってしまいます。

現在、日本国債においては「過去からの債務残高が多すぎる」ことから、通貨に対する「リスクプレミアム」が高っているので、今後も利回りが上昇する可能性があります。とはいえ、日本は「対外純資産が世界一多い」ということから、米国債のような格付けの引き下げが取り沙汰されるようなことはないと思われるので、その意味からの金利上昇懸念は少ないでしょう。

ところが、リーマンショックにより、世界各国の景気が悪くなっていることから、日本の経常収支(中でも「貿易収支」)も赤字化しつつあります。これは対外純資産を減少させる要因なので、十分に注意をする必要があるといえます。日本の対外純資産が「すぐに枯渇する」という状況にはありませんが、現状、これしか「日本円の魅力がない」ので、海外投資家はここを注視していると思います。したがって、今後、日本の金利状況を占う上でも、国際収支統計をじっくりと観測する必要があると私は考えています。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第102号、いかがでしたでしょうか。

週末に、講師と受講生をお招きしてのリアルセミナーを開催しました。

講演中は皆さん熱心にメモを取りながら講師の話に集中しておられ、その後に設けた質疑応答でもその熱心さをうかがわせる、レベルの高い質問が飛び交っていました。

講演の後の懇親会ではみな思い思いの運用ゴールについて語り合い、運営側のこちらも大変刺激を受けました。

「歴史的株安の今こそ資産運用を始める時!」を最も肌に感じた一日でした。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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