失策のツケは国民の税金で賄う、銀行資金集めのシナリオ|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/7/15(水)  
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失策のツケは国民の税金で賄う、銀行資金集めのシナリオ

米連邦預金保険公社(FDIC)がモラルハザードを誘因する理由

5月27日、米連邦預金保険公社(FDIC)は資本や収益状況などから経営に問題があると判断した金融機関が2009年3月末時点で305社に達したと発表しました。08年末の252社から3カ月で約2割増加したことになります。



「問題あり」と判断された銀行が300行を超え、うなぎ上りの状態です。経営に問題があると指摘される銀行数が増加していることも大きな課題ですが、それよりも私が注意を促したいのは、FDICがモラルハザードを助長しているという点です。それは、次のような中小銀行の動向に起因しています。

今、米国では平均的な預金金利の倍近い金利を設定する中小銀行が急激に増えつつあります。これらの銀行の狙いは、預金金利が低いこのタイミングで高い金利を設定することで、一気に資金を集めてしまおうというものです。

ここでの問題点は、こうして集めた資金を経営の流動性確保のために使おうとしている点です。おそらく、いよいよ倒産するという段になったらFDICが保証してくれるから「安心だ」とたかをくくっているのでしょう。

「8万ドルまでは4%の金利を出します」「万一のときは、FDICがあなたの預金を10万ドルまで保証してくれるので、安心してください」と言われれば、顧客の立場からすれば高い金利をもらいたくなるのが心情でしょう。

こんな取引が許されるなら、いくらでも預金は集まってしまいます。そして、いかさまが横行して最後は倒産してしまい、結局、納税者が負担するという図式になるわけです。

このようなことが起こらないようにするためには、例えば、大銀行が大会社に貸し出すレートを基準値として定め、それにプラスするパーセンテージ以内に預金金利をおさえるといった措置を決めても良いでしょう。

米連邦預金保険公社(FDIC)は5月29日、経営が悪化した銀行が預金金利を引き上げて資金調達するのを防ぐため、規制を強化すると発表していますが、これは当然の対応だと思います。


●日本でも同様の状況が起きている

こうしたモラルを欠いた銀行の手口は、実は米国だけでなく、日本においても全く同様のことが見受けられます。例えば、新生銀行が1%を超える金利を設定している定期預金を発表しています。これも高い金利で資金を集めてはいるものの、本当に「責任を取るつもりがあるのか」という点について、私は疑問です。万一の時には、あおぞら銀行と合併した挙句、「大きすぎて潰せない」という論理を盾にして、金融庁が公的資金を注入するだろうという算段をしているのではないかと勘ぐりたくなります。

さらには、日本振興銀行です。日本振興銀行は、4%近い金利を打ち出して約4千億円もの資金調達に成功していますが、この背景にある思惑は同じです。銀行であるがゆえにペイオフの対象として1千万円までは保証されるという制度を、念頭に置いているのは間違いないと思います。

先ほど、米国の銀行における金利対策でも指摘しましたが、日本でも同様に、金利の上限設定という規制を考えるべきでしょう。さらに言えば、他行よりも高い金利を設定する場合には、なぜ自分の銀行はそれだけの金利を設定する余力があるのか、説明を求めるべきだと思います。

日米両国とも、こうしたモラルを欠いた銀行が続出してきています。これでは、米国も日本もいくら保険機構が準備されていても足らないでしょう。こうした事態に対して米国はいち早く「規制」をすることで対処に乗り出しています。日本でも素早い対応をしてもらいたいと思います。

そして、最終的には納税者の負担になるということを決して忘れてはいけません。こうしたニュースが流れたときには、国民としてはもっと「怒り」を感じてもらいたいと私は思います。そのためにも、報道されている内容について鵜呑みにするのではなく、背景となっている状況や事実について自分で調べ、そして考察する習慣を身に付けてもらいたいと思います。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

5月31日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第101回 『この相場で「乗り換え」って「得」なの?!?!』

日経平均は、2度、10,000円を超えましたが、その後、勢いを失い、じわじわと下落を続けています。また、景気状態も、確かに一時のパニック的な状況からは"改善"しているようにみえますが、といって、このまま「景気回復」というような状態になるとも思えません。したがって、現状の景気状態を考えれば、「将来の総収益の現在価値」である株価がドンドンと上がるような環境ではないように思います(汗)

実際、経済統計からみて、株価の回復見込みは「極めて難しい」と言わざるを得ない状況であり、しばらくは「様子見」ということになりそうに感じます。

このような中、保有株式および投資信託の多くは「売り時」を逃してしまい、買い付け単価に比べて大きく下落している方も少なくないと思われます。というよりも、リーマンショックによる下げが、「100年に一度」といわれるくらいに大きく、しかも、急速だったことから、「あれよあれよ」という間にとんでもない株価になってしまったという形であり、そもそも「売り時」というべき時期がなかったと言った方が正確かもしれません。そういう意味では、この大きな含み損も「不可抗力」と考えるのが妥当なのかもしれません。

とはいえ、「不可抗力だから仕方ない」とは思えないわけで、できることなら「何とかしたい」と思うのが人情であり、多くの人か悩むところだと思います。

そこで、現在持っているモノよりも「少しでも戻りが速い」と思われるようなモノがあれば(または、勧められれば)、そちらに乗り換えようかと思うものであり、また、実際に実行された方もいらっしゃるかもしれません。

でも、「乗り換え」というのは、本当に効果的なのでしょうか。

例えば、AとBという投資信託があったとして、AをBに乗り換える理由としては、以下のようなものが考えられます。

1.Aが大きく下がったものの、Bはあまり下げなかったので「Bの方が良い」から・・・。
2.Aはあまり下げなかったものの、Bは大きく下げたから、今後の戻りはBの方が大きいと考えられるので・・・。
3.AもBも同じくらいに下げているものの、今後の相場環境から、AよりもBの方が上昇する可能性が高いから・・・。

大きく分ければ。この3つが「乗り換えの理由(または、乗り換えを勧めるセールスの言葉)」ということになるのではないでしょうか。しかし、3つとも、これだけの理由で乗り換えを決定するのは問題が多いと言えます。

なぜなら、1.や2.の理由の場合、「AとBの下落率に違いがあった」としても「だから」といって、その後の相場展開が「確実にそうなる」とはいえないわけであり、また3.の場合のように、Bが魅力的であったとしても、Aを売る理由にはならないからです。Aが下がった時にBが上がるのであれば、Aを売ってBを買うのは合理的ですが、そうでないのであれば、「買い」は新規資金で考え、「売り」は売りとして、売り時を考える方が良いはずです。

つまり、「Aを売る」のであれば、現在が「本当に売り時か」をまずは判断すべきであり、Bとの対比で考える必要はないのです。同様に「Bを買う」のであれば、Bそのものを考慮すべきなのであり、今が本当に買い時であれば、現金で買うべきでしょうね。にもかかわらず、乗り換えを行ってみても、思い通りになるとは限りません。むしろ怖いのは、本当にAよりもBの方が市場の連動性において勝っているのであれば、さらに市場が下落した時に、「乗り換えによる損失」が乗り換えない場合よりも、結果的に「損失が拡大する」ということになります。

そういうことから、「あるモノを買いたいから」ということで、今保有しているものを売るのは「如何なものか」と私は思います。

ここで重要なことは、そもそも今保有している商品は、それなりの理由があって購入したはずですから、「何故、買ったのか」を思い出すことではないでしょうか。つまり、買おうと思った時点では「将来こうなる」という予想があって買っているはずですから、購入した時の予想が、現状、「どうなっているのか」を考えてみることが大切だと思います。まぁ、実際には予想通りにはならなかったので「下がっている」のでしょうが、「売る」のであれば、購入時点で想定していた状況が変わったのか否かを見極めることくらいは必要ではないでしょうか。

「状況が変わってしまった」のであれば、それは「乗り換え」云々ではなく、状況が変わった時点で売却をしないといけないわけであり、「次に乗り換える商品を見つけたから、今持っているものの売却を考える」というのは本末転倒ですよね。

以上から「乗り換え」というのではなく、売りは売りで「買った当時の予想」がどうなったのかを考えないといけませんし、そもそも「買う」のであれば、将来に対する予想が必要だと思うのです。「これが駄目だから、次はこれ」という方法で証券投資をしても、おそらく、利益は出ないでしょう。

そういう意味で、株式投資が常に長期運用である必要もありません。まぁ、購入時の予想が長期のものであれば、短期の変動で云々する必要はありませんから、どっしりと構えて、悠然と保有し続けるべきでしょうが、短期的な予想で買ったのであれば、別に無理に長期で保有する必要もないわけです。

例えば、投資対象国を決めてから、その国の中から銘柄を考えるような投資方法(一般に「トップダウン・アプローチ」と言います)の場合に、投資対象国として先進国を選んだとすれば、長期的な経済発展はあまり望めないので、なかなか長期運用をするのは難しいと思われます。先進国は人口が減少する上に、労働生産性がすでに高水準になっているため、さらに高めるのが難しいことから、経済成長を維持するためには、常にイノベーション(革新)を起こしていくしかありません。とはいえ、イノベーションなるものを常に起こし続けることは難しいため、株価は、概ね一定の幅を上下するだけに留まることが多いものです。

したがって、先進国の投資としては、なるべく安い時に買って、高くなれば売るという戦略で良いわけであり、その意味では短期運用になる時も多いと思われます(ただし、先進国内でも中小型株投資の場合には、長期投資になる場合が多いと思いますが・・・)。

他方、BRICsのような国の場合には、人口も増加しますし、資本設備も十分ではないことから、設備や技術が流入するだけで労働生産性を向上させることができるので、経済発展が飛躍的に高まる可能性があります。このような国であれば、将来の利益総額の現在価値である株価も長期にわたって上昇することが予想されます。とすれば、長期運用という意味で、多少株価が上げ下げしても、目先の動きにこだわる必要はないことになります。

要は、投資の際に「どのくらいの期間で」「どのくらいの成長力があるのか」を、"あらかじめ"予想してから購入することが大切であり、購入後も、その予想が現実化するのか否かを見極める必要があるといえます。したがって、その予想の期間が短期であれば、常に相場を眺めておいて、売買をすることが必要になります。

他方、長期運用であれば、その予想が"今"具現化していなくても、拙速に答えを出すべきではないのであり、ましてや、乗り換えなどは「論外である」と思うのです。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第107号、いかがでしたでしょうか。

アナログ放送終了間近(と言ってもあと2年ありますが)のこのタイミングで見事にテレビが壊れたので、量販店で地デジ対応テレビを購入し、話題のエコポイントを貰いました。

しかし、率直に言ってあまり換えたい品物が見つかりません。

更に量販店からは「特定の商品券に換えていただいた後、それを使ってうちの店舗で買い物をすると、カードに付与するポイントを多くしますよ」という案内があり、実質的に、エコポイント指定商品でなくても優遇購入できる仕組みが出来ていました。

どうせ政府主導でこのようなことをするのなら、1999年に登場した地域振興券のようなものをエコポイントとの引き換えにする方が、消費者も一手間で何でも買え、有効期限もあることから確実に経済の活性化に繋がるのにと思います。

ちなみにこの前に出された経済対策で貰った定額給付金も、我が家では今のところ貯蓄の位置付けになっています。。。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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