大手金融機関の好業績を支える中小金融機関の倒産懸念|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/8/5(水)  
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大手金融機関の好業績を支える中小金融機関の倒産懸念

影で泣く中小金融機関に支えられている大手金融機関の好業績

7月22日に出そろった米金融大手6社の4~6月期決算は全社の最終損益が黒字となりました。収益の重しだった有価証券の評価損失が消え、各社が金融危機の影響から脱しつつあることを印象づけています。一方で、4~6月期は事業売却などの一時利益に支えられた面も大きく、業績が再び悪化する懸念が残っているとのことです。



私に言わせれば、今のタイミングで米金融機関大手が黒字になったというのは、まさに予想通りであり、かつての日本の事例から考えても当たり前のことだと思っています。

何度も私は指摘していますが、こうした金融危機からの回復途上においては「大手金融機関は利益が出過ぎる傾向があり、その一方で中小の金融機関が最悪期からなかなか脱出できない」という状況になります。

大手金融機関は政府によって救済してもらい、さらには利ざやも政府が確保してくれるために収益が一気に回復します。政府によって定められる金利や利ざやは、大手金融機関ほど有利な設定になります。そのため、逆に中小金融機関は「何とか倒産は免れている」というような厳しい状況に追い込まれることになるのです。

つまり、影で泣いている中小金融機関があり、そのお陰で大手金融機関は大きな利益を確保しているという図式です。米国主要金融機関の純利益が発表され、ウェルズファーゴなどは史上最高益などと言われていますが、私に言わせれば「実は全く喜ばしいことではない」ということになります。

このような状況は、かつての日本でも起こっていました。大不況に見舞われた日本の金融業界再編の中、メガバンクへの集約が進む過程で、当時の東京三菱銀行など大手銀行は利益を増やしていきました。大不況の真っ只中にあって、銀行の利益が先行して回復したのです。

その割には「貸し渋り」をしていましたから、「銀行本来の機能を果たさずに自分たちだけがぬくぬくと回復した」と言われても仕方がないでしょう。現在、米国の金融機関も同じ批判を受けても文句は言えないと思います。

その後、日本の銀行は資本不足に陥り、資本を増強せざるを得ない状況になりました。今回も東京三菱UFJ銀行や三井住友銀行は、資本増強を実施しています。今後、米国の金融機関も、日本の金融機関と同じようなパターンに陥る可能性が高いと私は見ています。だから、今回の好業績の発表をそのまま好評価するべきではないと思っています。


●日本の10年が1年に圧縮されている米国金融危機

オバマ米大統領は22日の記者会見で、金融危機の再発防止に向けた金融規制改革の一環として、大手金融機関がリスクの高い融資や取引を手掛ける際、破綻処理の原資などに充てる新しい「保険料」の徴収を検討する考えを明らかにしました。金融機関が過度にリスクを取り、金融システム不安につながるのを防ぐのが目的で、公的資金を使わずに金融安定化の枠組みを整える狙いもあるとのことです。

「金融危機の再発防止」に向けた施策ということですが、それ以上に目前の課題として迫っている「事業会社の倒産」という問題に対して早急に手を打つ必要があると私は思います。

現在、米国の金融機関は正常に機能しておらず、資金の貸し出しは殆どしていないか、あるいは貸し出すにしても高い金利を設定しています。このような状況であれば、今後一般の法人企業がどんどん破綻するという事態に陥ってしまいます。これもかつての日本が経験した道です。

この問題について、2009年7月27日号のBusinessWeek誌には「THE TIME BOMB IN CORPORATE DEBT」という記事が掲載されていました。今後、時限爆弾が次々と炸裂し、倒産企業が続出するだろうという内容です。アメリカン航空など、危険度が高いいくつかの会社が一覧で紹介されていましたが、まさに「倒産予備軍」といったところでしょう。

米国は今、金融危機の第3フェーズにいます。第1フェーズは流動性危機、第2フェーズは不良資産の償却による資本の毀損、第3フェーズは銀行の貸し渋りによる事業会社の倒産、そして失業の増加です。

日本の場合には10年くらいの時間をかけて第3フェーズへと移行しましたが、米国は同じ過程をわずか1年余りで歩んできています。第1フェーズの流動性危機に十分に対処しなかったため、一気に第3フェーズに雪崩れ込んでしまったのだと思います。日本は、ダイエーやカネボウといった大企業の倒産を経験しました。これから米国でも同じようなことが起こってくるでしょう。

政府に救済された金融機関の業績が上向いてきたからと言って、「金融危機からの脱却の兆しが見える」などと言っている場合ではない、と私は思っています。もう少し日本の事例なども参考にしつつ、現在の状況、及びこれから予想される事態について見極めてもらいたいと感じています。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

7月26日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第104回 『政権選択選挙!でも、その後は・・・?!?!』

先日、漸く、各党ともマニフェストが出揃いました。が、本当に実行してくれるのかと疑問になるモノも多いように感じます。特に自民党は、現状、与党であり、政権を担当しているわけですから、「これから10年で可処分所得を100万円増やす」というのは「何故、今できていないのか」「今出来ないものが、今度の総選挙が終わって出来るのか」という疑問が出てきます。これについては「考えていることがある」という説明でしたが、具体的な方法となるとはっきりしません。国民としては「その方法を聞きたい」のであり、それを「もっと早くからやっておけばよかったのでは」と考えてしまいます。

また、財源問題について、民主党を批判しているわりには、やっぱり消費税の増税しかなく、目新しいものがあるように思えません。それしかないのであれば、これ以上のバラマキはやめて、今後の政府債務の返済の財源にあててくれた方が、よっぽどうれしいと感じます。「今、(政府)支出を増やして、景気を良くします」は良いけれど、その資金は「後で払っていただきます」というのが、財源を示した「責任あるマニフェストだ」と考えているのでしょうか?

さらに成長戦略ですが、「年2%の成長を維持できるように経済政策を行う」という文言だけであり、その中身がよくわかりません。まさか「政府支出だけで持続可能性がある」と考えているわけではないでしょうから、「どのように2%成長を実現するのか」について、もっと具体的なモノを示していただきたいと思います。

まぁ、こう見てくると、やっぱり「(従来型の)公約」に過ぎず、「守るつもりなどないのだな」と思ってしまうのは私だけでしょうか?

「だから民主党が良い」ということではありませんが、与党だった自民党の次回以降についてのマニフェストという意味では、些かパンチにかけていると言わざるを得ないように感じます。

また、政権自体、どうなるかはわかりませんが・・・

民主党を中心とする政権になったとしても、すでに高水準に達している政府債務残高がスカッと消えてなくなるわけもなく、"官"の無駄遣いを徹底的に粛清したとしても、それだけで現在ある債務残高がなくなることもないので、結局は、将来的に国民が負担することになるのは間違いありません。その上、「消えた年金問題」ということから明らかになったように、皆さんが負担している年金が本当に「どうなるのか」という点も、厳密に言えば、よくわからないとしか言いようのない状態です。

その意味では、今後、どの政党が政権をとっても同様のことですが「自分のことは自分で」という社会になり、その上、政府の借金といっても「負担は負担」として国民がカバーしていく以外にないということだけは間違いありません。そうはいっても、日本自体が高度成長するような状態ではありませんし、今後、可処分所得が2ケタの伸びをしていくことは難しい状態です。というか、逆に、可処分所得の面からすると「少なくなる可能性の方がずっと高い」と考えるのが現実的だと思います。

そうなると・・・

公的年金があるとしても、老後の生活については決して十分ではなく、現役時代から貯蓄を高めていかなければならないということになります。が、実際には、現役時代の可処分所得が減少するのであれば、貯蓄を増やすのは難しいわけです。

そこで考えられるのが「資産形成」です。

つまり、人間が"もっと働いて"可処分所得を増やし、老後のための貯蓄をするという考え方ではなく、現時点で持っているおカネにも「働いてもらいましょう」というのが、ここでいう「資産形成」です。だからといって、預貯金をやみくもに取り崩して「積極的に株式や投信を購入すれば良い」ということではありません。

人間が収入を得るために働く場合にも「何でもいいから働く」というのでは、からだも持ちませんし、効率も悪いでしょう。

おカネも同じです。

ある一定時期に必要な資金の場合には、当該時点よりも前に自由になっている必要があるわけであり、かつ、必要額よりも少なくなっていては問題です。そのような資金は「安全性資金」として、債券や公社債を中心とする投資信託にするしかありません。

逆に、当面の生活資金に問題はないものの、年金等が不安だという場合、運用できる期間が超長期(20年とか30年という長いスパン)であれば、将来のインフレ等を考えてみても、株式投資が一番効率の良い運用といえます。

当然、株式投資の場合には、目先の上下はありますし、今回のリーマンショックのようなことが起これば、一時的に大きな損失になる可能性もあります。しかし、このような危機的な状態で「売る」選択をしないでよいおカネで、しかも、購入時に、ある程「銘柄の選択眼」を持っていれば、将来的には立派な資産になっているはずなのが「株式」という金融商品なのです。

ここでは極端な話を例として示しましたが・・・

資産形成を行っていくためには、必ず、おカネの資金性とそれに合致した金融商品をマッチさせる能力が必要になってきます。そのためには「今後の人生について考えること」「金融商品の属性を理解すること」「経済動向等と金融商品の関係を知ること」「税制を含めた経済システムを研究すること」などが重要になるのですが、現在の日本の教育の中では、この部分が大きく欠けていて、学校では教えてくれません。

とはいえ、「教えてくれなかったから、わからない」では済まされない状況にきています。これは政権が交代しても同じです。というよりも、むしろ二大政党になり、政権与党が時期によって交代するようになれば、財政規律の問題は、もっと難しい状態になる可能性があります。

なぜなら、財政問題を先延ばしすればするほど、その後に来る国民負担は重いものになってくるからです。

今回の「政権選択選挙」は本当に重要ですから、以前の小泉郵政選挙の時のように「フラッと1票、チャッカリ4年(多くの国民が、流れだけで何も考えずフラット1票投じた結果、その政党が圧倒的多数を取ってしまうと、国民の利益とは関係なく、チャッカリ4年、任期満了まで解散がなく、長期政権が誕生する)」などということにならないように、厳しい目で政策を見ていくことが大切です。中でも、財政状態が現在のようなことになっている以上、おいしい政策は害になる可能性が高く、むしろ国民負担の増加しか招かないということは忘れてはいけないと思います。

そういう目で政策を眺めると同時に、他方では、自分なりに資産形成を考えておくべきだと思います。いくら政権が代わっても「自分のことは自分で」ということにしかならないのですから、しっかりとしたスタンスで資産形成を考えることが肝要ですし、ますます、その重要性は高まることになると私は考えています。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第110号、いかがでしたでしょうか。

日経平均は再び一万円を回復しました。

しかしながらここから先もこの半年と同じように続伸していくかについては皆さん懐疑の念を抱かれるところだと思います。

一方で、私はこういう「まだまだ割安と感じつつも株価の向きも伸びのスピードも予測し辛い」局面こそドルコスト平均法での買い付け時かなと考えています。

株価に活発な動きがあれば、投資家の皆さんは比較的投資タイミングを計り易いと思いますが、じわじわと少しずつ上がっていくような相場で投資のタイミングを見極めるのは難しいことです。

結果何も行動しないうちに、気付けばもう数千円伸びていたなんてことにならないよう、気長にコツコツと時間分散投資を続けていこうと思っています。

来週のメルマガはお盆休みにさせていただきます、また再来週のグローバルマネー・ジャーナルでお会いしましょう!    

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