米国景気刺激策の目玉は、国民皆保険を目指す「12兆円の医療ニューディール政策」
米国の景気刺激策では、何がいちばんの目玉だったでしょう。お判りになりますか?
実は意外にも、12兆円という最大の予算配分先が「ヘルスケア関連」であり、その次が交通インフラなのです。これは議会予算局の数字ですから、かなり正しいと言えるでしょう。
なぜ、12兆円もの金額がヘルスケアに投入されるのかというと、「国民皆保険」を目指しているからです。日本が50年前に始めた国民皆保険を、米国はいきなり今後数年間でそれをやろうとしているのです。
その中でもいちばんお金を使うのが「エンプロイメント(雇用)」です。米国政府は、今回たくさんの公務員を解雇しました。それをカバーするために医療関係で救急救命士、医師、看護師、医療事務員などをたくさん雇おうというのがこのプロジェクトの意味であり、言葉は悪いですが「つじつまあわせ」的な部分があると思います。
そのための施策が、
1)医師や看護師を雇用するために、新たに総合病院をどんどん建設する
2)小規模の専門病院や診療所を、大きな総合病院へと変えていく
いま日本の場合なら、総合病院建設には(日本円にして)130億円以上は必要です。しかし小さな診療所なら10億円もかかりません。米国においては、それを政府が半分援助しましょうということです。消費者が自動車を買う時に半分援助するのと同じように、病院でも同じようなことを行おうとしているのです。
■今後の株価上昇で注目すべきは、医薬品ではなく「設備投資」や「最先端医療技術」分野
株式投資という視点で米国景気刺激策の動向を読み解くと、注目すべきは医薬品ではありません。事実ヘルスケアに12兆円が投入されているのに、医薬品やヘルスケア商品の株価は全然上がっていません。
株価が上がっているのは、ヘルスケア産業が成長拡大していく時に必要とされる「ヘルスケアテクノロジー」であり「ヘルスケア・キャピックス(設備投資)」の分野です。
ではここで具体的に、医療分野で注目すべき日本企業をいくつか挙げてみましょう。
まずは、世界中の数千件を超えるような症例を一瞬にして検索するシステムを提供する「富士フイルム」。最新鋭のエンドスコープ(内視鏡)を開発する「オリンパス」。日本では「テルモ」は、注射器をはじめとする使い切り医療機器のメーカーとして知られていますが、世界では心臓カテーテルのトップです(米国は、心臓カテーテル分野は弱いので日本に買いに来ることが多いのです)。そして脳波計や心電計、AEDなど総合医用電子機器メーカーであり、海外の投資家が非常に好きな銘柄である「日本光電」などが挙げられます。
なぜ、これらの企業に注目すべきなのかというと、米国の医療ニューディールの中で核となっている部分が「雇用」であり、それを引いた残りのいちばん大きな部分が「設備投資」だからです。薬品をたくさん買ってくれるというのは、きっとその先だと思います。
また確か今年は米国では、新薬開発や製造はストップをかけているはずです。そういう意味でも注目すべきは医薬品分野ではなく「最先端分野の医療機器」だと言えるでしょう。日本においてもヘルスケアセクターではなく、医療精密機器メーカーに注目して下さい。
会社四季報の「機械・電気・精密」分野で、医療機器を探せば簡単に見つかります。そして次の二点をチェックして下さい。まずは"マーケットシェア"。世界マーケットで十数パーセント以上を持つ企業は要チェックです。もう一つ注目すべきなのが、「海外の医療機器メーカーを買収している会社」です。こうした企業の株価は今後伸びていくと私は見ています。
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