オバマ景気刺激策の目玉はグリーンではない 注目は医療ニューディール政策|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/8/19(水)  
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オバマ景気刺激策の目玉はグリーンではない 注目は医療ニューディール政策

米国景気刺激策の目玉は、国民皆保険を目指す「12兆円の医療ニューディール政策」

米国の景気刺激策では、何がいちばんの目玉だったでしょう。お判りになりますか? 実は意外にも、12兆円という最大の予算配分先が「ヘルスケア関連」であり、その次が交通インフラなのです。これは議会予算局の数字ですから、かなり正しいと言えるでしょう。


なぜ、12兆円もの金額がヘルスケアに投入されるのかというと、「国民皆保険」を目指しているからです。日本が50年前に始めた国民皆保険を、米国はいきなり今後数年間でそれをやろうとしているのです。 その中でもいちばんお金を使うのが「エンプロイメント(雇用)」です。米国政府は、今回たくさんの公務員を解雇しました。それをカバーするために医療関係で救急救命士、医師、看護師、医療事務員などをたくさん雇おうというのがこのプロジェクトの意味であり、言葉は悪いですが「つじつまあわせ」的な部分があると思います。

そのための施策が、
1)医師や看護師を雇用するために、新たに総合病院をどんどん建設する
2)小規模の専門病院や診療所を、大きな総合病院へと変えていく

いま日本の場合なら、総合病院建設には(日本円にして)130億円以上は必要です。しかし小さな診療所なら10億円もかかりません。米国においては、それを政府が半分援助しましょうということです。消費者が自動車を買う時に半分援助するのと同じように、病院でも同じようなことを行おうとしているのです。


■今後の株価上昇で注目すべきは、医薬品ではなく「設備投資」や「最先端医療技術」分野

株式投資という視点で米国景気刺激策の動向を読み解くと、注目すべきは医薬品ではありません。事実ヘルスケアに12兆円が投入されているのに、医薬品やヘルスケア商品の株価は全然上がっていません。 株価が上がっているのは、ヘルスケア産業が成長拡大していく時に必要とされる「ヘルスケアテクノロジー」であり「ヘルスケア・キャピックス(設備投資)」の分野です。

ではここで具体的に、医療分野で注目すべき日本企業をいくつか挙げてみましょう。 まずは、世界中の数千件を超えるような症例を一瞬にして検索するシステムを提供する「富士フイルム」。最新鋭のエンドスコープ(内視鏡)を開発する「オリンパス」。日本では「テルモ」は、注射器をはじめとする使い切り医療機器のメーカーとして知られていますが、世界では心臓カテーテルのトップです(米国は、心臓カテーテル分野は弱いので日本に買いに来ることが多いのです)。そして脳波計や心電計、AEDなど総合医用電子機器メーカーであり、海外の投資家が非常に好きな銘柄である「日本光電」などが挙げられます。

なぜ、これらの企業に注目すべきなのかというと、米国の医療ニューディールの中で核となっている部分が「雇用」であり、それを引いた残りのいちばん大きな部分が「設備投資」だからです。薬品をたくさん買ってくれるというのは、きっとその先だと思います。 また確か今年は米国では、新薬開発や製造はストップをかけているはずです。そういう意味でも注目すべきは医薬品分野ではなく「最先端分野の医療機器」だと言えるでしょう。日本においてもヘルスケアセクターではなく、医療精密機器メーカーに注目して下さい。 会社四季報の「機械・電気・精密」分野で、医療機器を探せば簡単に見つかります。そして次の二点をチェックして下さい。まずは"マーケットシェア"。世界マーケットで十数パーセント以上を持つ企業は要チェックです。もう一つ注目すべきなのが、「海外の医療機器メーカーを買収している会社」です。こうした企業の株価は今後伸びていくと私は見ています。

講師紹介
大前研一
バークレイズ・キャピタル証券株式会社
チーフストラテジスト
宮島秀直

7月24日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第105回 『経済統計って、株価に影響を与えるの?!?!』

先週末はミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)がコンセンサスよりも悪かったということから、NYダウ平均株価が急落しました。株式相場では「よくある話」ではありますが、経済統計って、それほど影響が強いものなのでしょうか?

そうなのです、かなり影響があると考えていいと思います。でも、経済統計って、過去の経済活動の結果なのだから、「将来利益の現在価値の総額」である株価に影響を与えるのは納得できないと考える方もいるかもしれません。

確かに「経済統計」はすべて過去の経済活動の結果であり、将来を何ら示唆したものではありません(中にはアンケート調査などで「予測」をデータ化しているものもありますが・・・)。それなのに、何故、株価に多大な影響を与えるのでしょうか。

それを知るには、まず、株価の決定メカニズムが重要になってきます。ということで、「株式って、何」からお話しします。

株式を保有している人が「株主」であり、株主は、企業が稼いだ利益の中から「配当」が分配されます。ただ、配当をした残りは、当該企業が内部に貯めている(内部留保にしている)ので、もし、当該企業が解散をした場合には、負債等を除いた残余財産が株主のものになります。

つまり株主は、企業がこれから「稼ぐ」であろう利益の総額をすべて分配されることになります。また、それを期待して株式を購入するわけですから、「株価」というのは、当該企業が「将来稼ぐ」であろう利益をすべて合計したものに等しいといえます。

ところが、「今のおカネ」と「来年のおカネ」では、時間的な関係から、同じ100円でも価値が違うことになります。例えば、市場金利が10%であった場合、今の100円は来年になれば110円(100円×1.1)です。ということは、来年の100円よりも、今の100円の方が価値は高いことになります(今の100円=来年の110円>来年の100円)。

ここでは「来年」に基準を合わせましたが、今の時点に合わせる(つまり、現在価値にする)と、来年の100円は今の時点では「100÷1.1」より90.909...円ということになります(来年の100円=今の90.909...円<今の100円)。

以上から、毎年、100円稼ぐ企業があったとして、その毎年の利益を現在価値に直すと下のようになります。

0年目(初年度)100円、1年目90.909...円(100÷1.1)、2年目82.636...円(100円÷1.1の2乗)、3年目75.131...円(100÷1.1の3乗)、4年目・・・

このようにして算出した将来利益の現在価値をすべて合計すれば、当該企業の理論的な株価になるわけであり、数値としては1000円(*)になります。

(*)詳しくは解説しませんが、無限等比数列の和の公式から「100÷0.1」という計算式により算出することができます(初項100円、公比1.1)。このようにして株価が決定されると考える方法を「配当割引モデル」といいます。すべての投資家がこの方法によって「株価が決定されている」と考えているわけではありませんが、株価決定のメカニズムとしてはわかりやすいので、ここではこの方法を中心にして解説を続けます。

このようにして株価が形成されているとすれば、現在に対して「より遠くの利益(つまり、遠い未来の利益)の変動」よりも、現在に対して「より近い利益(つまり、今期末、または、次期の利益など)の変動」の方が、割引率が小さいので、株価に対する影響が強いことがわかります。

現在に対して「より近い利益水準」を予想するのであれば、現在時点でわかっている雇用状況、資本設備状況、外的経済状況などを考慮し、これまでの経営実績を勘案すれば、(予想する人々によって多少の凸凹があっても)何らかの値が予想できるはずです。そして、多くの人々がそれぞれ好き勝手に予想しても、統計的にはある一定の値に収斂するはずであり、もし収斂しなくても「中心値(または、平均値)」は存在することになります。この収斂した値(または、中心値など)を「コンセンサス」といいます。

そして、このような近い将来の利益水準におけるコンセンサスが株価決定に大きな影響を及ぼすことになるのですが、このコンセンサス自体も、足元の経済統計によって変動することから、投資家の多くは、足元の経済統計を気にすることになるのです。

理由は以下の通りです。

例えば、現在8月ですが、各国とも現在発表されているGDPは4-6月期のものです(つまり、過去のデータ)。しかし、発表された4-6月期のGDPが予想していた値よりも高くなっていたとすると、外的経済状態が予想以上に良かったことになるので、今期末の業績は、当初のコンセンサスの水準よりも高くなると予想する投資家が増加するからです。

このように最も株価にとって影響度合いが強い今期末の業績が、4-6月期のGDP発表によって当初のコンセンサスよりも高まったとすれば、現在の株価は割安ということになり、株価はGDP発表によって妥当な水準まで上昇することになります。

以上からわかるように、経済統計自体は「過去のデータ」に過ぎませんが、株価は当該経済統計が発表される前から多くの人々によって予想され、それに基づいて、現在の株価が形成されているので、「予想」している値と違っている場合には、株価を大きく変動させることがあるのです。

したがって、「サプライズ」というのは、ある経済統計の値が単に「非常に悪い(または非常に良い)」ということではなく、予想している値(つまり、コンセンサス)と「違う」という驚きを意味します。だから、例えば、GDP統計がマイナス15%になったとしても、予想段階で(つまり、コンセンサスが)「マイナス18%」であれば、「悪い」という驚きではなく、「良い」という驚きになることから、株価は上昇することの方が多いものです。

ここでGDP統計を例に出しましたが、鉱工業生産指数や第三次産業活動指数、マネーストック統計、雇用統計なども、事前にエコノミスト等が予想し、コンセンサスが形成されています。したがって、「コンセンサスっていうのがあるんだ~」と思っていた方は、今後、それぞれの統計を漠然と見るだけではなく、「コンセンサスはどうか」を気にしておくと、株価への影響度合いが、今まで以上に、良く理解できると思います。

このようにして株価が形成されていることから、株価とは、換言すれば、当該企業の将来業績の予想におけるコンセンサスそのものといえます。

ということは、日経平均やNYダウなどは、それらの個別株を総合したものですから、今後の経済状況についてのコンセンサスを「数値」として表したものと考えることができます。そのため、株価指数(例えば、日経平均や東証株価指数など)というのは、景気変動に対して6カ月から1年くらいの先を表していると考えられています。

このような性質から、景気動向指数の先行指数に、東証株価指数が採用されているのです。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第111号、いかがでしたでしょうか。

先日、知人から日本酒ファンドなるものの存在を教えて貰いました。

ひと口数万円程度を出資した投資家には、投資先銘柄の日本酒が届いたり、作っている蔵の見学会イベントがあったりと、日本酒をこよなく愛する方にとっては「これぞ趣味と実益を兼ねた金融商品」という感じです。

他にも面白いファンドがないのかと思いネット検索してみると、音楽ファンド、農業ファンド、レストランファンドなど、幾つかそうしたものが出てきてビックリ。

どれもお小遣い程度で始められるようなので、何か一つやってみようと物色中です。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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