もはや為替において「リスク選好なのか、リスク回避なのか」を心配する必要はない!?
今日は、この先の景気展開についてお話します。
今でもまだ「リスク選好か、リスク回避か?」を重要なキーワードに、為替の世界や相場動向を説明する場合が多いようです。しかし5月以降、景気見通しがかなり進んでいます。「景気が回復するのか、それとも腰が折れて悪化するのか」を心配する必要はもうなくなってきた、もう景気回復基調だという方向で固まってきているのではないでしょうか。
そういう意味で、「景気先行き不安でリスク回避」とは、なかなかなりにくいと私は思います。
「リスク選好か、リスク回避か」という軸よりも、むしろリスク選好が大前提だと見ておいたほうがいいでしょう。いま言われているリスク回避は、むしろ正確には「リスク選好の一時的な調整局面」と言ったほうが正しいかもしれません。過去のリスク回避とは、ちょっと意味合いが違っているような気がします。
つまり、リスク選好かリスク回避のどちらに転ぶか判らないのではなく、「リスク選好がベースラインであり、それが強いのか、ちょっと一端様子見なのか」という相場になってきている。それを前提に為替を考える必要がある、ということです。
■今年4~6月期の株価動向は、「景気持ち直し方向」だが、はたしてその後は......?
では、そうなると何がどう変わってくるのでしょうか?
株価動向は、やはり一つの指標として見られています。ですから、株のインパクトが少し弱まってきて、金利差や景況格差に基づく金利差が、為替にも徐々にインパクトを与え始めるのではないかと私は見ています。
OECDの景気先行指数を見てみると、ここ最近の景気動向は更に最悪期を脱した動きが明確になってきている、急な動きになっていると言えます。まだマイナズゾーンではありますが、トレンドとしては明確にリバウンドしてきています。そういう動きを見ると、もし投資家がリスクを取っていなかったとしたら、リスクポジションを増さなければいけないということになってもおかしくないでしょう。
では次に「景気のサイクルと、どこにお金を持っていくか」です。
景気減速、利下げをしてインフレも沈静化し、そこにさらに景気対策が打たれています。それに沿って景気がリバウンドしてきていますから、お金が株に行くのは当然でしょう。
それをこの4~6月期に一気にやってしまったというのが、この先どうなのだろうかと思わせる要因です。もちろん流れは景気持ち直し方向ですから、株が反転下落するということではありません。いわゆる直近でリバウンドしている2009年3月から「一気に株価上昇に転じていく」「とにかく買っておけば間違いない」というところから比べると、そのスピードは変化し、今後は景気回復基調を一歩ずつ踏みしめながら上がっていくような相場になると思います。
■相場が景気回復基調へと向かう時、重要なテーマとなるのが「主要国金利政策の動向」
相場が景気回復基調へと向かう時、為替を見るにあたっても、やはり金融政策へ目が向いてきます。「今後の金融政策がどうなるのか?」が、徐々に相場のテーマになっていくと思います。
ただし現状の短期金利の動きを見ていると、すぐに利上げなどの大きな変化は見られません。先進国の3カ月物金利を見ても、オーストラリアとニュージーランドは相対的に比較的高いものの、他はほとんど差がありません。ですから短期金利の世界では、まだなかなか金利差がつきにくいというのが現状だと思います。そして金融緩和や量的緩和から、景気が底を打った流れの中で今後、「金融政策の正常化に向けた動きをいつどの国が始めるのか?」がテーマになってくるでしょう。
私は、やはりオーストラリアがいちばん早いと思います。前回、金融緩和から金融引き締めに転じた時もオーストラリアはいちばん早く、他国が利上げに転じたのはその後でした。実際、オーストラリアは、すでに金融政策の決定価格のスタンスが中立になっている、緩和気味のスタンスをやめつつあるなどの動きを見せています。ですから今回も、どうやら利上げに転じるのはオーストラリアがいちばん早そうです。
あとは欧州、日本、米国で考えた場合、日本はほとんど変化ありません。米国は、まだゼロ金利政策・量的緩和を続けていますが、米国債の買い入れ自体は今年10月で一応終了とすでに決めています。一方で例えば英国は、量的緩和拡大、買い入れ額の拡大に動いており、まだ金融政策の強化に動いているなど、各国の動きに少しバラつきが出てきています。ここから先、短期金利はそう簡単には動きませんが、そのあたりのスタンスをにらんだ中長期金利の動きにバラつきが出ており、金利差額も動いてくるでしょう。
今までは、株価動向で為替相場がリスク選好かリスク回避かと動いていました。しかし今後はそうではなく、「景気格差あるいは金利差が反映されるような動き」に徐々になっていくでしょう。少し先でその辺が焦点になり、2年債の利回りの金利差や10年債の金利差などが、今までよりも為替相場への影響を強めてくると私は予想しています。
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