経営破たんよりも多い、企業の上場廃止理由とは?|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/9/16(水)  
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経営破たんよりも多い、企業の上場廃止理由とは?

上場廃止企業数は、法人税制の改正で減っていくだろう

帝国データバンクが8月10日発表した「上場廃止企業実態調査」によると、年初から7月末までに上場廃止となった企業数は110社。業界再編やグループ再編による上場廃止が増えているほか、経営破綻による上場廃止も増加。過去最多だった2008年の149社を上回るペースで推移しているとのことです。

上場廃止企業数が過去最多を上回るペースと聞くと、いかにも不況の影響で経営悪化した結果だと思ってしまいますが、実はそうではありません。理由別の上場廃止件数を見ると、完全子会社化(34件)、株式の全部取得(29件)が大きな割合を占めており、経営破たん(24件)、虚偽記載(4件)、時価総額基準(3件)などの理由はそれほど多くないことが分かります。



先日、政府は企業グループに対する法人税制について見直しに入ったことを発表しました。それによると、親会社がグループ内の100%子会社から受け取った配当を課税所得に算入しない仕組みを導入するとのことです。これが実現すると上場廃止理由でトップを占めている「完全子会社化」「株式の全部取得」をする必要がなくなっていくだろうと私は見ています。

現在の法人税の仕組みでは、子会社からの配当を親会社が受け取ったときにも課税されていますが、これはおかしな考え方だと私は思います。なぜなら、そもそも配当とは税金を払った後に支払われるものだからです。

こうした仕組みになっているために、税効率や決算を考慮した結果、大企業は利益を出している子会社を非上場にして、100%子会社として再吸収することを考えます。それが今日の上場廃止企業数の増加につながっているのだと私は思っています。

完全子会社化をしなくても、100%子会社から受け取った配当を課税所得に算入しない仕組みになれば、「子会社を独立させて上場させてみたものの、税効率も良くないから、今度は非上場に戻して再吸収してしまおう」というような"方針の定まらない子会社運営"の改善にもつながるので、私は非常に良いことだと思います。


●チャイ・エックスの買収は、野村にとって大成功事例だ

8月12日、野村ホールディングス傘下で欧州株を中心に私設株式市場を運営するチャイ・エックスは、シンガポール取引所と共同で日本株を含めたアジア株の大口取引サービスを始めると発表しました。両者は折半出資で運営会社を設立し、2010年前半にサービスを始めるとのことです。

野村が2007年に買収した米エージェンシーブローカー大手のインスティネット社が、今のチャイ・エックスにつながっています。当時からインスティネット社は米機関投資家向けの委託電子取引をグローバルで取り扱っており、野村のハイテク電子取引システムを強化する戦略の一環として傘下に組み込まれました。

シンガポール取引所と言えば、東証も株を保有していて、日本と関係性が深い取引所ですが、実は今回の動きは東証を否定することにつながる側面があります。チャイ・エックスは、専門家によるプライベート取引において大きな強みを持っており、アジア株に乗り出した際には、東証の取り扱いシェアにも大きな影響が出てくると思います。



実際、チャイ・エックスの強さは、欧州の主な株式指数売買の取り扱いシェアに顕著に現れています。例えば、FTSE100(英)の取り扱いシェアでは、証券市場:65.7%に対して、チャイ・エックス:21.9%まで伸びてきています。その他、Dax30(独)、AEX25(蘭)、CAC40(仏)などでも、チャイ・エックスは15%強のシェアを獲得しています。

手数料が安く、アルゴリズム取引に対応できるシステムレベルの高さ、という点がチャイ・エックスの強みです。現在のところ、既存の取引所ではチャイ・エックスのシステムレベルに追いついていません。これは東証にももちろん当てはまることです。

ロンドン証券取引所の7月月間の証券会社別の株式売買シェアで、野村グループが初めてトップになったというニュースがありました。昨秋に買収したリーマン・ブラザーズ欧州部門の取引システムや顧客網が本格的に寄与し始めたという見方もあるようですが、私は違うと思います。

リーマン・ブラザーズを買収したからではなく、チャイ・エックスによるシェア獲得が大きな要因だと思います。野村にとって、チャイ・エックスの買収は、野村の数ある買収施策の中で、際立って成功し、利益に貢献している事例だと言えるでしょう。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

8月23日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第109回 『リーマンショックから1年、今後の金融政策は?!?!』

9月15日でリーマンショックから丸1年になります。それを目の前にして、ガイトナー米財務長官も「金融支援の縮小」を示唆する発言をしています。現状、「米国の金融システムは盤石である」とはいわないまでも、1年前に比べれば、かなり改善してきているので、ここからは「特別の支援は必要ない」ということのようです。

これはかなり正しい認識だと思っています。

そもそも「金融」というシステムは、経済にとって「なくてはならないもの(必要条件)」ではありますが、金融システムが立派だからといっても、経済が良くなるわけではありません(十分条件ではない)。つまり、今回のリーマンショックのように金融システムの必要最低限度の機能さえ毀損するような状態の場合、経済は動かなくなるので、そのための「手当て」は必要。だから、それが今まで行われていた金融機関等への「特別な支援」になるわけです。

世間では「金融機関だけに支援をするのはおかしい」という議論がありますが、実は「金融機関自体を救う」という意味ではなく、「金融システム」という"社会インフラを守る"というだけのことであり、そのための支出は「必要経費」と考えるべきものと言えます。ただ、「社会インフラを守る」といっても、公的資金によって個別金融機関を支援することにもなるため、その点が悩ましいところなのです。

なので、そもそも個別金融機関への支援は「できればやらない方が良い」わけですから、金融システムが、ある程度、自律的に機能するようになれば、すかさず「支援活動を終了する」ことが大切になってきます。そういう意味で、ガイトナーさんは正しいことを言っているのであり、現状の米国経済を見た場合、「当然」ということになります。

また同様に、金融緩和政策についても「そろそろ考えた方が良い時期」と私は思っています。金融"引締"政策への転換という意味ではありませんが、実体経済の活動に比べて貨幣量が多すぎる場合、経済にどうしても歪(ひずみ)が生まれ、良からぬ問題を引き起こすことがよくあります。

すでに現在、ドルが多すぎることから「金先物相場が1000ドルを超え」「ドルが各国通貨に対して安くなっている」という状態にあります。

さすがに「原油先物」は、前回の140ドル/バーレルを超える急騰の時に世界的にも大きな問題になったものですから、各国とも政府の規制当局の監視が厳しくなっていることもあり、ここには投機性資金が流れにくい状態だとは思います。しかし、このまま「大量のドル」を放置しておくと、実体経済を揺るがすような問題を"また"引き起こしかねないという懸念があります。

当然、「えぇ~、ここで金融引締め!考えられない」という方も多いと思います。確かに「引締」は厳しいかもしれません。実際日本でも、日銀が「もうそろそろ"超"の部分の付く金融緩和は終了しようかなぁ~」というコメントをすると、すかさず政府筋や国会議員の方からブーイングが来ました。でも、そのために金融緩和をズルズルと引きずってしまい、変な形の「物価上昇」「資産価格の高騰」、および、「円キャリートレード」を招いてしまいました。

同様に今回の「大量放出のドル」による悪影響も、ここから酷くなる可能性があるので、いち早く対策を講じるべき時だと、私は見ています。おそらく米国金融当局も同じ考えだと思います。

とはいえ、現状、「金融緩和政策を転換する」ということになれば、相場に影響が及ぶことになる可能性は否めないでしょうから、その意味では、今後、米金融当局の高官発言などを注視する必要があると考えています。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第115号、いかがでしたでしょうか。

近所で評判のマッサージ屋さんに久々行ってみようと思い、出かけたのですが、残念なことにそのお店は既に閉店。。

代わりにそこに建っていたのは、着物やフィギュア、本などいろいろな「歴史グッズ」を扱ったお店でした。

最近は歴史ブームだと聞きますが、周囲にはイタリア風のおしゃれなお店ばかりが並ぶ街の一角にまでそんなお店があるなんて、ブームの力って凄いですよね。


自分も少し歴史に凝ってみようかと思い、自宅に帰ってあれこれパソコンでキーワード検索していると、戦前戦後の「相場師列伝」に関するサイトが出てきたので(いわゆる日本の歴史とはちょっとズレましたが)見てみると、100年近くも昔の日本にこんな凄い人生を送った人がいたのかと、ただただ驚かされるばかりでした。

そのうちの何人かは自身の相場観を本に書いている様子、ちょっと探して読んでみようと思っています。

次回のグローバルマネー・ジャーナルは再来週30日(水)にお届けします、皆さん有意義なシルバーウィークをお過ごしください!    

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