ドル一強の基軸通貨体制が変わる、力を増すユーロの未来|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/10/21(水)  
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ドル一強の基軸通貨体制が変わる、力を増すユーロの未来

もはやドル下落の要因しか残されていない

バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は1日の議会証言で、ドルを基軸とする国際通貨体制の見直し論が浮上していることに関し「近い将来に起きるリスクとはみていない。ただドル安がインフレにつながることを視野に入れる必要がある」と語りました。世界の外貨準備に占める米ドルの比率が一段と低下しています。また、国際通貨基金(IMF)によると、6月末時点で各国・地域が保有する外貨準備の米ドル比率は62.8%となり、欧州連合(EU)の単一通貨ユーロが導入された1999年以来で最低を更新しました。

世界銀行のゼーリック総裁が「世界の主要基軸通貨としてのドルの地位を当然視するべきでない」という不用意な発言をしてしまい、ドル不安定を助長させる結果となっています。バーナンキ議長としては、「近い将来の話ではない」と反発せざるを得ないのは当然でしょう。



ただバーナンキ議長の気持ちは分かりますが、実際のところ外貨準備の通貨構成比率の推移を見ると、ドルが基軸通貨としての力を失いつつあるのは明白です。99年には外貨準備におけるドルの構成比率は約75%でしたが、現在わずか62%にまで低下しています。これだけを見ても大変な下落率です。

一方、ユーロは99年当時20%に満たなかった構成比率を現在では27%にまで上昇させてきています。欧州諸国においてリスボン条約の批准が進んでおり、今後はますます「欧州=1つの国」という体裁が整ってきます。そうなると、米国よりも大きな経済を持つ国ということになりますから、ユーロの構成比率は27%でも少ないと言えます。将来的にはユーロの割合が30%~35%という割合が妥当ではないかと私は思っています。

ゼーリック総裁によると「人民元」への期待もあるようですが、私は時期尚早だと感じます。未だに人民元はフロート制(変動相場制)に移行しておらず、自由に交換できる通貨ではないのですから、まだ時間はかかると判断するべきでしょう。

ポンド、円、スイスフランなど他の通貨全体で約15%の割合を占め、「ユーロ35%・ドル50%」というのが今後の現実的な推移だと私は見ています。このような形になるとさらにドルの暴落は避けられないでしょうが、もはや将来ドルが値上がりする要因そのものが非常に少ないと理解するべきだと私は思います。


●米失業率は年内にも10%に達する勢い

米労働省が2日発表した9月の雇用統計によると、失業率は前月より0.1ポイント高い9.8%に達したことが分かりました。



米国の場合には10%の失業率に達するのは時間の問題でしょう。下手をすると今年中に10%の大台に達するのではないかと私は見ています。対前月比での雇用者数の増減を見ても、2008年以降未だに継続的なマイナスが続いています。さすがにピークを迎えた2009年1月時のマイナス60%という水準からは回復しつつあるものの、未だにマイナス20%近い数値ですから決して低くはありません。

また仮に米国の景気が回復してきたとしても、雇用が回復することにつながるとは限りません。現在の米国企業のメンタリティから考えた場合、景気が回復しても早々に雇用を増やそうとは考えないでしょうから、いわゆる「雇用なき回復」に陥る可能性は極めて高いと私は思います。

このような現状を受けて、10月5日号のTIME誌には「Unemployment Nation」という特集記事が組まれていました。10人に1人が失業しているというのはどういう事態なのか、という点について詳しく言及しています。

例えば、州別に見る失業率。州によっては5%程度で日本と同じくらいの水準に留まっているところもありますが、逆に15%を超える失業率に達している州がいくつもあるとのことです。州によってはすでにかなり厳しい状況に追い込まれているのが分かります。

また業界別に見ると、家具業界の失業率が22.5%と高い水準になっています。家を建てる需要が減り、結果として家具も必要とされないということでしょう。当然のことながら建設業界も高い水準で16.5%です。さらには、自動車などの輸送機械業界:16.2%、政府関連業界:15.8%と続きます。

建設業界の立て直しや政府関連雇用の創出なども掲げていた「オバマプラン」は一体どのように機能しているのか?と疑いたくなります。実態としては殆ど効果を表していないと言わざるを得ないでしょう。

五輪招致の失敗や外交政策などで支持率の低下を招いているオバマ政権ですが、今後はさらに厳しい状況を迎えることになると思います。米経済の建て直しという最も重要な仕事に対するパフォーマンスが低ければ、オバマ大統領に対する失望感が広がっていくのは避けられないでしょう。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

10月4日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。

大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第113回 『ここで"国債増発"って、どうよ!?』

概算要求は麻生政権からの引き継ぎである88兆円を大幅に超え、95兆円になったようです。主な要因は「マニフェストの完全実現」ということのようで、約束したことだから組み込むのは当たり前ということなのでしょう。また、ここにきて「国債増発もやむなし」という話が出てきています。

私はテッキリ特別会計を云々して不足分を補うのだと思っていましたが、報道の伝えるところによると、とりあえず特別会計はまだ切り込めていない状態なので、来年度予算では国債を増発して充てたい意向とのことのようです。しかも、予想以上に税収も落ち込んでいるので、この落ち込みは政府としても想定外であり、この税収の落ち込みをカバーするくらいの国債増発は国民の理解が得られるものと考えているようです。

でも・・・

理由はどうであれ、ここで国債増発はないでしょう。あれだけ「無駄を省けば財源云々は心配いらない」と言いきっていたのですから、今更、「時間がないです」「(税収などの)見込み違いです」という話は単に言い訳にしか聞こえません。

もし、「もっと切り込めば財源は何とかなる」というのであれば、それを手当てしてからマニフェストにある政策をすればいいだけであり、政権与党になっているのに、まだ、野党のように「探せばあるので、先に(国債を発行し)使わせてください」というのは如何なものでしょうか。

「プラオリティ(優先順位)」「費用対効果」「不要不急の政策は後回し」などという大義名分を掲げて「八ッ場ダム工事」を凍結したり、補正予算の執行を見直したわけなので、同様に、自分たちがやりたいことについても切り込む必要があると思います。財源があるのなら、または、補正予算の執行停止分で行えるのであれば、「どうぞご自由に!」ということですが、国債の増発を伴うのであれば、それなら、もう一度マニフェストで行おうとしている施策を"徹底的"に見直してほしいと思います。

例えば、「高速道路無料化のための社会実験経費」に6000億円を付けているようですが、そもそも「高速道路無料化」は"必要"で"緊急"な施策なのでしょうか。「実験だから」という気持ちもあるのでしょうが、資金がない今、どうしても必要な予算とは思えないのですけれど・・・

その他にも、少なくとも「来年度」に限らば"必要性""緊急性"が認められない施策もあるでしょうから、そのようなものは「マニフェストに書いているから」というだけで、財源のない中、来年度予算に付けるのは問題だと思います。

「マニフェストを実現しました」と言いたいのはわかるのですが、それって、全く国民目線になっていないということを理解すべきです。「財源があってやる」なら問題はありませんが、国債を増発をしてまで「マニフェストだけはやる」という姿勢は、単なる「わがまま」としか映りません。

本当に国債増発をした場合、参議院選挙ではかなり難しいことになると思います。

ここは苦しいかもしれませんが、国債増発はせず、埋蔵金なり、行政の無駄削減なりで、しっかり財源を確保し、その範囲内でやれることだけやるという姿勢を望みます。国民の多くはバラマキを警戒していますし、それは「もうやめて!」と思っています。苦しいのは国民の大半がわかっているので、補正予算の切り込みも好感をもって見ていたのです。

「国債の増発は世論の動向で決めたい」と鳩山首相は言っているようですが、それなら、是非、国債の増発だけはやめていただきたいと思っています。まだ、概算要求であり、ここから切り込むのでしょうから、マニフェストにこだわるのではなく、財源にこだわって欲しいものです。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第119号、いかがでしたでしょうか。

週末に、とある投資勉強会に参加してきました。

景気先行き不安はまだあるものの、一年前のどん底だった市況からいち早く回復を果たした新興国に話題は集中し、次なる投資先はどこかで大いに盛り上がったので、ついでに経済発展期待の高い国々の総称をいくつか調べてみました。

・BRICs(ブラジル/ロシア/インド/中国)
・NEXT11(ベトナム/フィリピン/インドネシア/韓国/パキスタン/バングラデシュ/イラン/ナイジェリア/エジプト/トルコ/メキシコ)
・VISTA(ベトナム/インドネシア/南アフリカ/トルコ/アルゼンチン)
・MEDUSA(マレーシア/エジプト/ドバイ/サウジアラビア)
などなど。

単に幾つかの国を列挙してネーミングしたものもあれば、それぞれの国の頭文字を取って命名されたものもあります。

また、ここに挙がった国々の中には「本当に経済発展していくのか?」と疑問視される国もあり、その意味では玉石混交といった感じです。

さて、皆さんならこれらのうち、どの国に興味を持たれるでしょうか?

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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