下げ幅拡大の要因は何だったのか!? 9月の株式市場動向から今後の市場を予想する
9月の株式市場では、以下のような出来事がありました。
(1)国内の動向
●民主党内閣発足(鳩山政権誕生)
●G20などで金融機関への自己資本規制強化の方針が伝えられる
●野村HDの増資発表
●亀井金融担当大臣のモラトリアム法案が提案される
(2)米国の動向
●経済指標の改善が足踏み、雇用の悪化続く
(3)為替&金利の動向
●ドル売り加速(90円を割り込む展開)
今回のメルマガでは、「企業の決算発表という季節イベントをどう見ていけばいいのか」を考えるためのファクターとして、9月の市場動向を振り返ってみたいと思います。
(1)国内の動向
8月30日の総選挙で大勝し、「民主党内閣(鳩山政権)」が誕生。この時点までは、日経平均が高値を取りに行く状況でマーケットが非常に好感している状況だと思われていました。
しかし9月シルバーウィーク明けの24日、25日頃には、G20などで金融機関への自己資本規制強化の方針が伝えられたのです。簡単に言えば、同じような過ちを繰り返してはいけないという要旨であり、金融機関の自己資本増強や役員報酬等への制限など、金融株の中でも銀行等のセクターに対してネガティブに働く話が伝わりました。
そこに輪をかけた要因が、「野村ホールディングス(以下、野村HD)の増資発表」、「亀井金融担当大臣からモラトリアム法案が提案される」の2つです。
G20の自己資本規制強化を見越していたのか否かは判りませんが、野村HDが増資を発表し、さらに増資額が数千億円規模と大きかったため、マーケットが、「野村HDが増資を発表したのであれば他の金融機関も追随するのではないか?」と見て銀行株などを売り始めたのです。
こうした動きを受けて、せっかく連休明けに上げた日経平均株価が、翌日、売り気配から始まって、下げ幅を拡大する流れになっていったわけです。
そしてもう一つの要因が、亀井金融担当大臣からモラトリアム法案が提案された出来事です。モラトリアム法案は、返済猶予法案とも言われる通り、返済に困った中小企業の返済期限を少し先延ばしにして猶予を与えようという法案です。中小企業の立場に立てば、それほど悪い発想ではありません。
しかし一方では、返済を猶予すると貸し出し側金融機関のバランスシートが悪化するかもしれない、また猶予がある分だけ「貸し出して不良債権になる金額が見えてこない」などのさらなる不安を招いてしまい、これが銀行や証券も含めて金融機関の株が売られるきっかけになってしまったのです。
金融株にとっては、マイナス材料が一挙に飛び出したという感じです。亀井金融担当大臣の発言は以前から出ていましたが、特にG20の後、実際に法案を提出するということで話がより具体的になってきたことが株価下落の要因の一つです。そして偶然ですが、亀井金融担当大臣の法案提案と同時に野村HDが増資を発表。そのために朝から売り気配で、マーケットが大きく下落する展開になってしまいました。
一般投資家にとってこういう見方は難しいと思いますので、もう少し詳しく説明してみましょう。増資で発行済み株式数が増えても、利益額は1年の分が翌年に倍になるということはありません。特に今回の野村HDは発行済み株式数が多く、一株あたり利益の希薄化(一株あたりの価値が下がる)懸念がマイナス要因になりました。そこへ更に亀井金融担当大臣の話が伝わり、他の金融機関も追随するのではないかと考えて、それでは発表される前に売ってしまおうという流れになってしまったというわけです。
(2)米国の動向
さらにその後、月末も日本の株価は下がりました。同時期の欧米マーケットは上がってはいたものの、やはりジグザグがありました。
要因は「米国の経済指標改善が足踏みになってきたこと」と「雇用悪化が続いていること」です。それがマーケットで懸念され、ニューヨークも上昇トレンドの中の下落。日本のマーケットも下落となりました。
(3)為替の動向
一方為替ではドル売りが加速し、90円を一気に割り込む展開になりました。9月前半は横ばい状態でしたが、後半になってマイナス要因が続出。これが株価下落に繋がりました。
■誰が株式を売り買いしていたのか? 主要市場における投資家行動からヒントを得る!
では、その時期に「誰が株式を売り買いしていたのか?」を見てみましょう。
投資主体別売買動向の売り越しを見ると、9月第4週に外国人投資家の売り越しが目立っています。他に売り越しているのは、前月より若干減ってはいますが信託銀行、それから投資信託も売り越し額が少し大きくなっています。とはいえ、やはり目立つのは外国人投資家で、直近ではまた少し買い越しに転じつつあるようですが、9月相場が下落に繋がっているところで、ちょうど売り越しになっている状態です。逆に新興市場では、外国人投資家はずっと買い越しです。
非常に面白い傾向ですが、東証は売り越し、新興市場は買い越しとなっています。こうした投資家動向は、東京証券取引所ホームページで毎週木曜午後に発表されていますので、ご興味ある方はチェックしてみてください。
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