日本も、世界に影響力のある国家ファンドを創設せよ|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/11/11(水)  
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日本も、世界に影響力のある国家ファンドを創設せよ

株価収益率で見ると、ブラジル投資は魅力的

先月26日、経済協力開発機構(OECD)は、加盟30カ国の年金資産の時価総額について、2008年中に5兆4千億ドル(約490兆円)減ったとの試算を発表しました。昨年秋からの金融危機が響き、株式や債券などの運用資産が目減りしています。

実際、昨年の金融危機以来、世界で失われた金融資産の総額は軽く1000兆円を超える規模になっていると思います。その中で年金資産として計算できるものが490兆円ということです。ただし、今現在の時価総額ではかなり回復しているはずです。リーマンショック以来、下がり続けた世界の株式市場の時価総額が、2009年3月を底として回復の兆しを見せているからです。

今後ますます、資産を「どこで」「どのように運用するべきか」という点が重要なポイントになってくると思います。この点について、参考になる記事が2009年11月9日号のFORTUNE誌に掲載されていました。

BRICsのGDPの大きさを比較し、これから先どこの国に投資していくべきかを論じています。面白い着眼点だと思ったのは、「株価収益率(PER)」です。来年予測されるGDP成長率では中国・インドの評価が高くなるわけですが、「株価収益率」の面ではブラジルに期待できるという主張です。

確かに来年のGDP成長率で高い数字が予想される中国・インドも、株価収益率という点では米国とほぼ同じ「約20倍」です。一方で、ブラジルの株価収益率はわずか「13倍」に過ぎません。株価収益率は低くまだまだ過小評価されており、かつ米国よりも経済成長が見込めるのであれば、投資対象として「有力なのでは?」ということです。

個人的にはブラジルの株価収益率は20倍以上でも、まださらに将来性があると思います。ブラジルの通貨レアル暴落の危機が去ったと言える今、株をまとめて購入する大きなチャンスだといえるかも知れません。


●日本マネーのパワーがあれば、世界の金融市場で再び影響力を持つことが可能

29日、経済界が設立したシンクタンクである日本経済調査協議会は、日本版の政府系ファンド(SWF)の在り方について提言を発表しました。アラブ諸国のように個別の政府系ファンドを設立するより、世界2位の規模である外貨準備など公的部門の資産を有効活用することで政府系ファンドの機能を発揮するのが望ましいとしています。

拙著「最強国家ニッポンの設計図」でも述べているように、日本も国家ファンドを創設するべきだと私も強く思っています。日本の中にはまだまだ莫大な資金が眠っています。こうした資金については、国家が中心となって運用をするべきです。

ただし「日本政府が運用する」のはNGです。投資経験もない日本政府が運用しても、失敗するのは火を見るより明らかです。そうではなく世界中から実績のあるファンドマネージャーを集めてくるのです。そして、例えば彼らにそれぞれ1兆円ずつ供託するという方法を採用するべきだと私は思います。

こうした仕組みを作ると、国債買取機構と化している郵貯はひっくり返るでしょうが、一方で世界からいくらでも日本にお金が集まる契機になると思います。

日本はまだまだ世界経済の中で影響力を発揮することができるはずです。少なくとも、世界の金融システムに対して圧倒的な影響を与えるだけの資金を保有しているのは間違いありません。政府が管理するファンドの資産規模だけを見ても、UAE(約80兆円)、ノルウェー(約40兆円))を抑えて、日本は約130兆円で見事1位になっています。



金融危機で疲弊している世界の金融市場の中で、日本マネーが大きな影響力を発揮し、再び日本がリーダーシップを取ることも可能だと私は思っています。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

11月1日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。

大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第116回 『国債発行は「悪?」「善?」、どちら?!?!』

このところ「国債利回り」が上昇してきています。鳩山政権が誕生する直前は、おおよそ1.25%くらいでしたが、今では1.40%を超えています。要因としては、暫定予算の要求金額が90兆円を超える中、税収不足も補う必要があるので、国債の増発を決めたことが考えられます。責任者たる藤井財務相は「市場は(国債増発を)すでに織り込んでいるので、取り立てて問題にすることはない」という意向であり、政府債務残高が、多少、増加しても「気にすることはない」という感じに受け取れます。

本音はともかく、政府としては「政府債務の増加は、現状、仕方ない」という立場であり、むしろ今後の経済動向によっては"追加"で刺激策を打たなければならないことから、さらに「債務残高が増加するかも」と考えている可能性があります。

実際、経済評論家と言われるような人の中には「景気を高めるためには、国債を増発すべき」と唱える人も出てきているようです。しかも、国債の増加には何の問題もなく、むしろ「善」であると考えているようです。というのは、国債増発を行えば、それだけ貨幣量が増加するのだから、デフレの解消につながるはず、というのが理由らしいです。また、極論ではありますが、「1ドル=120円で為替レートを固定にしてしまう」ということを主張する方もいるようです。

国債増発も固定相場制も、要は、自国の貨幣量を増加させれば、自ずと物価が上昇し、それに伴い、景気も回復に向かうという考え方が底流としてあるものと思われます。

さて、どうでしょうか?

上記の発想は「デフレ」を「おカネ不足」と考えているからだと思われますが、それは間違いです。現に今、貯蓄そのものは減少しているものの、個人金融資産残高は1400兆円を超えています。つまり、おカネ自体は世の中に一杯あるのです。「ない」のは「消費として使われるおカネ」がないだけなのです。消費として使われなければ、金融市場だけで動きまわるおカネを増やしても無駄なのです。

このような中で、政府がおカネをバラ撒いても、その原資が「将来の"自分"の税金(=「国債」)」であれば迷惑なだけであり、借金はいずれ返済しないといけないわけですから、「政府債務を増やす」と聞けば、その分、貯蓄を増やそうと考えるのが人情です。つまり、国債によって統計上のおカネを増やしてみても「消費として使われるおカネ」が増えないために、状況自体は全く変わらないと考えるべきです。いや、もっと悪くて、将来不安から、さらに多くの貯蓄をしようとするため、景気をさらに冷え込ませる可能性さえ否めません。

政府債務残高がもっと低ければ、国債を発行して、一時的に景気を高めることも「一つの案」としては頷けますが、今の日本では全く意味はないと思います。

では「固定相場は」ということですが、これも基本的に同じです。

というのは、120円/ドルにするために徹底した「円売りドル買い」を行うことになります。しかし、この場合、売るための「円」は特別会計で政府保証債を発行することになりますから、これは基本的に国債の増発と同じです。そして、その資金を使って「ドル」を買いますが、それは金融機関等から買い取ることになるので、結局、国債を増発して金融市場だけで動きまわるおカネを増やすだけになってしまうのです。つまり、統計的にはおカネが増えたように見えますが、「消費として使われるおカネ」が増えないので状況を変えることはできないのです。

とはいえ、確かに「円安なら輸出企業が儲かる」でしょう。でも・・・

日本が「売って儲かる」ということは、他国は「買うことで損をする」ことになります。この不況は日本だけではありません。日本の苦境を何とかするために「円安にして固定相場にする」というのは、他の国に甘えているだけなのであり、世界第2位(または、第3位)の経済大国である日本が行うべき行動ではありません。というか、そもそも、現在のようなグローバルな社会において、非現実と言わざるを得ないでしょうね。

このように不況を何とかしたいのであれば、家計の貯蓄を消費へとかき立てるための政策を考えるべきであり、国債を増発するという"思いつきのような経済政策"ではダメということなのです。以上から、国債増発(および、固定相場制)は「悪」ということになりますね。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第122号、いかがでしたでしょうか。

今日は11月11日と1並びの日。

ということで、今日をもじった記念日を調べてみると、電池の日(プラスマイナスを漢字の十一に見立てて)や靴下の日、ポッキーの日など、1年で一番記念日の多い日なのではないかという程たくさん出てきました(他には2月9日、8月8日が多そうでした)。

このメルマガでも少し前に、10月4日が「投資の日」だとお伝えしました。

数ある語呂合わせの中には「ちょっとそれは苦しいのでは?」と思うものもありますが、みんなが楽しく記念日を思い出せる工夫って、何かいいですよね。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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