株価収益率で見ると、ブラジル投資は魅力的
先月26日、経済協力開発機構(OECD)は、加盟30カ国の年金資産の時価総額について、2008年中に5兆4千億ドル(約490兆円)減ったとの試算を発表しました。昨年秋からの金融危機が響き、株式や債券などの運用資産が目減りしています。
実際、昨年の金融危機以来、世界で失われた金融資産の総額は軽く1000兆円を超える規模になっていると思います。その中で年金資産として計算できるものが490兆円ということです。ただし、今現在の時価総額ではかなり回復しているはずです。リーマンショック以来、下がり続けた世界の株式市場の時価総額が、2009年3月を底として回復の兆しを見せているからです。
今後ますます、資産を「どこで」「どのように運用するべきか」という点が重要なポイントになってくると思います。この点について、参考になる記事が2009年11月9日号のFORTUNE誌に掲載されていました。
BRICsのGDPの大きさを比較し、これから先どこの国に投資していくべきかを論じています。面白い着眼点だと思ったのは、「株価収益率(PER)」です。来年予測されるGDP成長率では中国・インドの評価が高くなるわけですが、「株価収益率」の面ではブラジルに期待できるという主張です。
確かに来年のGDP成長率で高い数字が予想される中国・インドも、株価収益率という点では米国とほぼ同じ「約20倍」です。一方で、ブラジルの株価収益率はわずか「13倍」に過ぎません。株価収益率は低くまだまだ過小評価されており、かつ米国よりも経済成長が見込めるのであれば、投資対象として「有力なのでは?」ということです。
個人的にはブラジルの株価収益率は20倍以上でも、まださらに将来性があると思います。ブラジルの通貨レアル暴落の危機が去ったと言える今、株をまとめて購入する大きなチャンスだといえるかも知れません。
●日本マネーのパワーがあれば、世界の金融市場で再び影響力を持つことが可能
29日、経済界が設立したシンクタンクである日本経済調査協議会は、日本版の政府系ファンド(SWF)の在り方について提言を発表しました。アラブ諸国のように個別の政府系ファンドを設立するより、世界2位の規模である外貨準備など公的部門の資産を有効活用することで政府系ファンドの機能を発揮するのが望ましいとしています。
拙著「最強国家ニッポンの設計図」でも述べているように、日本も国家ファンドを創設するべきだと私も強く思っています。日本の中にはまだまだ莫大な資金が眠っています。こうした資金については、国家が中心となって運用をするべきです。
ただし「日本政府が運用する」のはNGです。投資経験もない日本政府が運用しても、失敗するのは火を見るより明らかです。そうではなく世界中から実績のあるファンドマネージャーを集めてくるのです。そして、例えば彼らにそれぞれ1兆円ずつ供託するという方法を採用するべきだと私は思います。
こうした仕組みを作ると、国債買取機構と化している郵貯はひっくり返るでしょうが、一方で世界からいくらでも日本にお金が集まる契機になると思います。
日本はまだまだ世界経済の中で影響力を発揮することができるはずです。少なくとも、世界の金融システムに対して圧倒的な影響を与えるだけの資金を保有しているのは間違いありません。政府が管理するファンドの資産規模だけを見ても、UAE(約80兆円)、ノルウェー(約40兆円))を抑えて、日本は約130兆円で見事1位になっています。
金融危機で疲弊している世界の金融市場の中で、日本マネーが大きな影響力を発揮し、再び日本がリーダーシップを取ることも可能だと私は思っています。
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