なぜ「似た投資期待感のある中国とインド」で、市場明暗は分かれたのか|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/11/18(水)  
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なぜ「似た投資期待感のある中国とインド」で、市場明暗は分かれたのか

なぜ中国金融市場にリスクマネーが流れ込んでいるのか!? その理由を判りやすく解説!


リスクマネーの今の動きを考える上では、日本株よりも、まず中国という国を見ておく必要があり、これは知識として必須だと言えるでしょう。 例えば、中国工商銀行。10月30日に発表した今季1-9月期決算の純利益が、昨年同期比7.7%増の999億1000万元(約1兆3200億円)と、その額は日本の3メガバンクを合併させても勝てない程です。(伸びとしては小さいものの、)世界ナンバーワン時価総額規模の金融機関が、上場していながら国営。国の力を持った金融機関が非常に強い力を発揮しているということに着目して下さい。


株価を見ると、中国金融機関は10月までしっかり上がっており、上昇基調にあります。途中ちょっと下がってはいますが、最終的にはプラスが維持されている。 これは、どうしてなのか? その理由を考えてみましょう。

国の関与という意味では、中国と非常に近いエクイティストーリー(株価が上がるために必要な成長シナリオや戦略)の国はインドだと私は考えています。 中国とインドの共通項は、「人口が多い」、「いまだ先進国とは言えず発展している段階にある」ことが挙げられます。その結果、次に何が起こるかというと、「消費が圧倒的に増えてくる」、「支出の掛け算の人口も多い、その途中には国を代表するような企業が生まれてくる」のではないでしょうか。日本が成長発展してきたのと同じことを、いま中国とインドはものすごいスピードでキャッチアップしようとしています。従って、どちらの国に対しても非常に近い理由で投資ができると考えることができるでしょう。


しかし実際には、インドは10月には非常に苦しかった。例えばインドのHDFC銀行は、インド第2位の金融機関で、日本で言えば地方銀行トップの横浜銀行に相当します。業績はすごくいいにも関わらず、利益比はまだ半分くらいと小粒感があり、10月の株価も下がっています。中国とインドの状況および投資への期待感は似ているのに、なぜ中国の工商銀行は純利益約1兆3200億円と物凄く、一方でインドの株価は上がらないのでしょうか。それはインドにおいては、国の関与がきわめて小さいからです。

ですから、まず私たちは、「中国の特殊性である国の関与というところに、いまリスクマネーが流れ込んでいる」ことを知識として知っておく必要があります。そうすると民主党の郵政を巡る問題は国の関与を外していこうとすることであり、非常にネガティブである。アメリカの短期的な問題、国の関与を外していこうとする流れがネガティブに働き、中国の金融機関にお金が流れ込んでいる理由がハッキリしてくるわけです。 しかし私たちは、金融にだけ注目していればいいわけではありません。


■グローバル投資家たちにとって魅力ある投資先は、すでに「日本<中国」となっている!

国力においては、もちろん金融が中心であることに変わりはありません。しかし、例えば私たちが"お家芸"と考えている「自動車」においても、中国の自動車事情から、その経済成長がいかに"群を抜いているか"を読み解くことができます。 例えば、中国3大自動車メーカーの最大手「上海汽車(サイクモーター)」は、10月31日、2009年第3四半期決算の純利益が「昨年同期比9.7%倍の25億2800万元(約333億5000万円)」だと発表しました。これは日本で言えば、ちょうど日産くらいの規模に匹敵すると考えていただくと判りやすいかもしれません。日産、ホンダ級の会社がトップにいるということです。 同じく上海汽車を1-9月期で見ると、純利益78.5%増、売上高21.5%増、自動車販売台数47.3%増の194万8000台、そして自動車業界で世界10強に入ることが予想されています。ここまでの規模は、他の新興国にはありません。

私たちはどうしても、トヨタ、日産、ホンダ、スズキなど日本国内をベースに見ますが、やはりグローバルな投資家たちは、日本の自動車メーカーにはあまり興味を持っていません。11月4日に閉幕した「東京モーターショー2009」は、前年が140万人という大変な参加人数でしたが、今回はそこから56%も減ってしまっています。その理由は明確で、外資系企業が2社しか参加してくれなかったからです。 この事実は、何を意味するのでしょうか?

実は、東京モーターショーに先立ち、上海モーターショー2009、第30回バンコク国際モーターショー(タイ)が開催され、来年にはインドのニューデリーでも今年で9回目を迎えたモーターショー「AUTO EXPO」が開催されます。外資系企業が日本に来なかった最大の理由は、今のこの不況です。しかし上海、バンコク、来年のニューデリーにせよ、BMWやGMなど外資系は軒並み参加。日本だけが参加する価値がないと思われ、無視されているということです。 今回の東京モーターショーでいちばん驚くべきことは、日産と仲のよい仏ルノーすらも参加しなかったことです。こういうことが今、日本で起こっています。私たちは日本に住んでいるので、世界から完全に無視されていることにあまり気づいていない、またはあまり気づきたくない。しかしグローバルな投資家は、日本に魅力がないならば、上海やタイ、インドの企業に投資すればいいじゃないかと考えるでしょう。


上海汽車を例に取ると。6カ月間で株価が101%上昇、株価が倍になっており、10月でさえも圧倒的に上昇しています。上海汽車は、上海総合株価指数の中で、通常のいわゆる外資には開放していない会社であり、私たち普通の投資家は投資ができません。自国のマーケットの中で中国自身が投資しているということも考えられますが、外資系の投資銀行などは免許を取って参入しています。決して中国の個人投資家だけが参加しているという状況ではなくなっているのです。中国という国に人・物・金が集まっており、その中でも特に"資金"が集まっているということが、まさに上海汽車の業績に反映されているのではないかと私は考えています。 同じく中国の自動車メーカー「東風(ドンフェン)汽車」も、上海汽車ほどではないにしろ株価61%上昇とまあまあの業績です。10月6日に米国とオーストラリアの利上げ、10月20日のブラジルの金融規制というプラスとマイナスが混在した中で、株価としては右肩上がりになっているわけですから、中国が非常に好調であるということがここでも判ります。

つまりグローバル投資家の視点に立てば、彼らは「日本と中国のどちらに投資するのか?」という視点を持っているということです。日本の株式市場は幸か不幸か、現在でも50%が外国人投資家によって売買代金が左右されてしまっています。私たちが外国人投資家の視点で日本を見た時には、残念ながら「自動車を初め、日本は中国に比べると魅力がない」と思わざるを得ない状況にあることを知っておいて下さい。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「巨大バブルがやって来る!~金融危機終息後の「モラトリアム相場」の読み方~」 小学館 (2009/7/30)

11月18日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第117回 『「相場が安定している」とは、どういうこと?』

リーマンショックから1年以上が経ち、「株価が安定してきている」という話をよく聞きます。「株価が安定している」とはどういうことでしょうか?

言うまでもありませんが、「乱高下せずに、株価の値動きが大人しい」ということですよね。でも、何故、「安定している」のでしょうか?

というか・・・

そもそも「安定している状態」とはどのような状態なのでしょうか?

投資家の思惑がバラバラだったら「乱高下」するように思いますが、実はそうではないのです。「意外」と思われるかもしれませんが、投資家の思惑がバラバラである時の方が「相場」というものは安定するものなのです。

まずは「投資家の思惑がバラバラ」ということについてお話します。

通常投資家は「ある株価」よりも高いと「売りたい」、「ある株価」よりも低いと「買いたい」と考えるものです。ここで「ある株価」とは、投資家が個々に想定している売り買いの「基準になる値」であり、投資家は、この「基準となる値」と実際の株価を比べながら売買をしていると考えられます。「そのような値など考えたこともないし、意識したこともない」という方もいるでしょう。しかし、「売る」ということは、その株式の株価が「高い」と思っているわけであり、その「高い」の基準になっているのが、自分の考えている「基準となる値」ということになります(「買い」は逆です)。

この「基準となる値」ですが、これは上述の通り、投資家それぞれで違うものであり、しかも、いろいろな要因によって刻々と変化するものなのです。例えば、相場にとって何か良い材料が出たり、または、相場の雰囲気が良くなってくれば、自分が想定している「基準となる値」が上がり、「売るのをやめよう(または、「買おう」)」ということになるわけです(他方、悪材料が出たり、相場の雰囲気が悪くなれば、「売ろう(または、買うのをやめよう)」いうになるわけです)。

とはいえ、相場にとって「良い材料が出た」と感じるのも、「相場の雰囲気が良くなった」と感じるのも、ともに「主観」ですから、人それぞれ感じ方は違うことになります。感じ方が違うわけですから、相場に対する投資家の思惑も"バラバラ"ということになります。

このように「投資家の思惑がバラバラ」である状態においては、ある事象(経済統計やイベントなど)による「基準となる値」への影響も、個々の投資家によってまちまちなので、例えば、A氏が「良い」と思う材料が、必ずしも、B氏が「良い」と思うとは限らないということになります。

ところが、株式市場ように多くの投資家が、勝手気ままに「基準となる値」を想定すると、その「基準となる値」は一つの平均的な値に収れんしてくるものなのです。「基準となる値」が収斂してくると、多少、売りたい人(買いたい人)が増えても、ほぼ同数の買いたい人(売りたい人)が見つかることになるので、市場価格の下落幅は大きいものにはならないのです。つまり、「どちらに動くかわからない」と思う投資家が大勢を占めるような相場ほど、相場は安定した動きをすることになるのです。

他方、投資家のほとんどが一方向、例えば「下がる」と考えるような相場状況においては、逆に「上がる」という投資家が少ないので、市場では売買が成立せず、少ない「買い」に向かって「売り」が殺到する形になることから、相場としては急激な下落になってしまうのです(急騰の場合は逆です)。

以上から、「相場が安定している」ということは、多くの投資家の思惑がバラバラであるということであり、換言すれば、投資家の多くは「上がるのか」「下がるのか」を思いあぐねている状態ともいえます。

ところがこのような状態は、市場関係者側から言えば、フラストレーションが高まるので、方向性が見えてくるようなイベントや異常な値の経済統計が発表されれば、その方向に「大きく動いてしまう」ということもよくおこります。したがって、今のように"安定している相場"の状況においては、特に相場における材料に注意を払う必要があると考えています。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第123号、いかがでしたでしょうか。

半年に一度、講師と受講生の皆さんをリアルにお呼びして開催しているセミナーを、今週末にまた行うことになりました。

私は主催する側ですが、最新のテーマで金融専門家の話が聞けることや、同じ個人投資家として受講生の皆さんと意見交換出来る瞬間が嬉しく、その意味では私もお越しいただく皆さん同様、今から当日をとても楽しみにしている一人です。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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