日本経済も、米国同様、危うい橋を渡り始めている
10日財務省は、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」の総額が9月末時点で864兆5226億円に達したと発表しました。6月末に比べ4兆2669億円増加し、過去最大を更新したことになります。これを10月1日時点の推計人口の1億2756万人で計算すると、1人あたりの借金は約678万円となってしまいます。
日本のGDPは94年をピークに、その後、横ばいのまま500兆円前後になっています。この事実は誰もが分かっているはずなのに、なぜさらに借金を膨らませるのか、私には理解できません。返済できる見込みなどないのに、政府は余りにも楽観的に考えすぎだと思います。
ただこうした日本の経済状況に対して「楽観的」に過ぎるのは、実は政府だけではありません。マーケットの動向を見ていると、こちらも私に言わせれば「楽観的」な判断をしていると懸念を抱きます。
先日債券市場では、新発10年物国債利回りが9日終値1.475%まで上昇し、約4カ月半ぶりの高い水準になりました。これは日本国債への信用度が低下した当然の結果だと私は思っていましたが、ここに来て利回りが1.34%まで一気に下落する様相を呈しています。
「債券利回りの下落」=「債券価格の上昇」ですから、論理的には日本国債への信用度が上がった場合に起こるべき事象です。しかし国の借金が過去最大を記録し、民主党政権も上手く機能していない現状で、日本国債への信用度が上がるのはおかしな話です。
おそらく、「民主党も一時的に調子が悪いけれど、500億円規模の経費削減計画もあるようだし、持ち直すのではないか」という浅はかな見解をマーケットの参加者が抱いているのでしょう。さすがに、この考え方は単純すぎて危険だと私は思います。こんな楽観的な思考をしていると、いずれ日本国債はデフォルトしてしまいます。そして、日本はかつてのニュージーランド、ロシア、アルゼンチンの二の舞になる可能性すらあります。
米国のように金融機関が破綻することもなく、日本は米国ほどひどい状況ではないと思っている人も多いでしょうが、日本も米国と同じく「かなり危うい橋を渡り始めている」と私には感じられます。
●ファンド側のモラルが低下している
証券取引等監視委員会は12日、投資ファンドのウィズダムキャピタルを行政処分するよう金融庁に勧告しました。同社が運用・管理する未公開株に投資するファンドで、本来は1株25万円で取得できる株式を50万円にかさ上げして購入するなどの違法行為が発覚したとのことです。
ファンドというのは、お客さんから預かった資金を運用し、そこから投資リターンを得てそれを配分する、というのが本来の業務です。今回の不正行為は、投資行為そのものを行わず、あたかも投資利益が上がっているように見せかけるというもので、相当質の悪い行為だと思います。
具体的には、例えばこのようなやり取りを行ったのだと思います。
1)あなたの会社における本来の価値は50億円です 2)しかし、今回は100億円投資します 3)差分の50億円はすぐに返却してください
そして、この返却分の50億円を投資リターンのように見せかけて、ファンド運用が順調だと偽ったということでしょう。こうした行為は、ファンドのモラル低下を顕著に示していると言えるでしょう。
また、国内大手投資ファンドのユニゾン・キャピタルはインサイダー取引の疑いで、同社の幹部が強制調査を受け、同幹部は強制捜査が行われた翌28日に死去したというニュースもありました。強制捜査の翌日に死去したというタイミングを考えると、明らかに不自然だと判断せざるを得ません。こうした動きを見ていても、ファンド側のモラル低下を感じずにはいられません。
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